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巻の三 いざ、後宮!! 狙うは皇帝、ただ一人!!
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というわけで。
「後宮、恋愛興味なし皇帝を籠絡!! 三か月大作戦!!」となったわけなんだけど。
(こりゃダメだ……)
恋愛未経験のわたしでも、五日で投げ出したくなる状況だった。
まず、そもそもに皇帝が後宮に姿を現さない。
どこかにお気に入りのご寵姫がいて、その方のところに入り浸り中……とかいうのなら、まあなんとか理解できる。その場合、世継ぎとか心配されないだろうから、わたしが後宮に呼ばれることもなかったんだけど。
後宮に集められた姫君たちだって、あれこれ手を尽くしてる。
管弦の宴を催しますので是非、ご臨席賜りますようお願いいたします。
舞踊をお目にかけたく――。
わたくしは、唄を少々――。
庭園の花が見事に咲きましたのよ――。
月が綺麗ですので、ぜひご一緒に――。
珍しいお菓子が手に入りましたの――。
などなど、あの手この手で後宮に誘うけど……。
「忙しい」
「興味ない」
「必要ない」
皇帝陛下の返事は、にべもなかった。取り付く島もない。島影すら見えない。
(これでどうやって攻略しろっていうのよ)
声はすれども姿は見えず。まるでアナタは「屁」のような――ではなく。声もしなけりゃ姿も見えない。まるでアナタは「屁」以下です。陛下だけに。(下ネタ)
姿どころか、声すら聞いたことない状態で、相手をメロメロにできる方法があるなら教えて欲しいもんだわ。
唯一の方法として、「手紙を送る」、「絵姿を送る」、「贈物をする」なんていうのもあるけど、全部他の妃候補たちが実行してるし、全部突っ返されてるのよね。
八方ふさがりじゃない。
(これはもう、挑戦失敗で、半額だけ受け取る方向に諦めたほうがいいのかな)
三百貫は貰えるって話だし。
そうすれば、残りの借金は二百五十貫。一か月の生活費が約十貫だから、全額あてたとしても二十五ヶ月、約二年。
さすがに全額はあてられないから、その半分としたら約四年、三分の一としたら約七年。
できないことはない。できないことはない返済計画だけど。
(問題は父さまよね)
あのお人よしのことだ。
わたしがコツコツ地道に返済している間にも、絶対借金を膨らますような詐欺に遭う。
今だって、「琉花が苦労しないように、お金を増やせる絵を譲ってもらったよ」とか母さまと話ていそうだもん。普段の商いとかは、番頭さんたちがなんとか支えてくれてるけど、そういう日常のすき間的なところから、ポロッと借金をこさえちゃうのよね、父さまの場合。
そうなるとわたしは、借金のためにグルグル同じところを回ってるような状態に陥ることになる。返しても返しても終わらない借金地獄。
そうなった時に、何度も啓騎さんに頼るわけにはいかないから、自分でどうにかするしかないんだけど。
(そうなったら、自分の身売り……政略結婚しかない)
十八歳。
身体はいたって健康。
病歴はほぼナシ。
前か後か、判断がつく程度には存在する身体の凹凸。
ぬばたまの……とか、カラスの濡れ羽色とか、称賛されるようなシロモノじゃないけど、それなりにキレイな黒髪をしてると思う。少しクセがあるけど、腰に届くほどの長さなのは自慢。
顔は、……まあ、「このままほっとけば人ごみに紛れてわかんなくなるんじゃない?」程度で、「うわ、すごいもん見ちゃった。夢でうなされそう」なんて言われるようなブスじゃないと思う。(多分)
だから、このまま後宮を出ても、それなりに箔をつけて嫁げるとは思うけど。
(好色ヒヒ爺だったらやだな~)
金があっても、愛もほしい。
愛されるだけじゃなくって、愛したいのよ。
そのためには、相手にもある程度の条件をつけたくなるじゃない。
年齢はそこまで離れてない相手。
わたしが十八だから、二十代半ばぐらいかな。啓騎さんと同じ程度。
背は、わたしより頭一つ分ぐらい高い人。向かい合った時、相手の鎖骨ぐらいにわたしの頬がくるぐらいの高さかな。ちょっとかがんでもらって、ちょっと背伸びをして上手いぐあいに口づけが出来る高さ。(って、キャーッ!! わたしったら何をっ!!)
顔だちは、そこそこでヨシ。あまりに美しすぎたり、カッコよすぎたりするのは、並ぶのに腰が引けちゃうから遠慮したい。仲良く十人並み。
わたしが家業を手伝っても(というか、父さまを見張りに行っても)文句を言わず、許してくれる懐の深さ。商いに精通しろとは言わないけど、理解はしてほしい。
あと、これが一番大事なんだけど、わたしを無条件で愛してくれること。わたしのどこを愛せばいいのかわかんないけど、それでも一途に愛してくれることが絶対条件。浮気なんて許さない。愛人なんてあり得ないわ。
そういう意味で言ったら、皇帝なんて問題外中の問題外なのよ。
年齢は、条件に当てはまっているらしいけど、それ以外が全部ダメ。
見たことないから、あくまでウワサだけど、結構カッコいいらしいじゃない? 皇帝陛下。皇帝の身分目当てで後宮入りした姫も多いけど、なかには、その美貌に惚れて入ったって人もいるとかどうとか。
そんな美姫が惚れるようなカッコいい人は、わたしにつり合わない。
それに、わたしが家のことで留守にするのは許してくれなさそうだし。というか、そんな時間、取れなくなっちゃうだろうし。
なにより一番大事な、「わたしだけを無条件に愛してくれる」なんて永遠にできないだろうし。だって、後宮だよ? 引く手あまただよ? 皇帝なんていう、何をしても許されるのだフッフッフッな身分の人が、一途に愛してくれるわけないじゃない。それだけの魅力、わたしにあるわけもないし。わたしよりもっと魅力的な姫なら腐るほどいるし。
そういう意味で完全に選外圏外な皇帝陛下だけど、じゃあ「はい、そうですか」って放置はできない。
会えぬなら、会ってみせよう、皇帝陛下。
会わぬなら、会いに行くまで、皇帝陛下。
借金完済のため、ここはひとつ、わたしのために恋の犠牲になってもらいます。
「後宮、恋愛興味なし皇帝を籠絡!! 三か月大作戦!!」となったわけなんだけど。
(こりゃダメだ……)
恋愛未経験のわたしでも、五日で投げ出したくなる状況だった。
まず、そもそもに皇帝が後宮に姿を現さない。
どこかにお気に入りのご寵姫がいて、その方のところに入り浸り中……とかいうのなら、まあなんとか理解できる。その場合、世継ぎとか心配されないだろうから、わたしが後宮に呼ばれることもなかったんだけど。
後宮に集められた姫君たちだって、あれこれ手を尽くしてる。
管弦の宴を催しますので是非、ご臨席賜りますようお願いいたします。
舞踊をお目にかけたく――。
わたくしは、唄を少々――。
庭園の花が見事に咲きましたのよ――。
月が綺麗ですので、ぜひご一緒に――。
珍しいお菓子が手に入りましたの――。
などなど、あの手この手で後宮に誘うけど……。
「忙しい」
「興味ない」
「必要ない」
皇帝陛下の返事は、にべもなかった。取り付く島もない。島影すら見えない。
(これでどうやって攻略しろっていうのよ)
声はすれども姿は見えず。まるでアナタは「屁」のような――ではなく。声もしなけりゃ姿も見えない。まるでアナタは「屁」以下です。陛下だけに。(下ネタ)
姿どころか、声すら聞いたことない状態で、相手をメロメロにできる方法があるなら教えて欲しいもんだわ。
唯一の方法として、「手紙を送る」、「絵姿を送る」、「贈物をする」なんていうのもあるけど、全部他の妃候補たちが実行してるし、全部突っ返されてるのよね。
八方ふさがりじゃない。
(これはもう、挑戦失敗で、半額だけ受け取る方向に諦めたほうがいいのかな)
三百貫は貰えるって話だし。
そうすれば、残りの借金は二百五十貫。一か月の生活費が約十貫だから、全額あてたとしても二十五ヶ月、約二年。
さすがに全額はあてられないから、その半分としたら約四年、三分の一としたら約七年。
できないことはない。できないことはない返済計画だけど。
(問題は父さまよね)
あのお人よしのことだ。
わたしがコツコツ地道に返済している間にも、絶対借金を膨らますような詐欺に遭う。
今だって、「琉花が苦労しないように、お金を増やせる絵を譲ってもらったよ」とか母さまと話ていそうだもん。普段の商いとかは、番頭さんたちがなんとか支えてくれてるけど、そういう日常のすき間的なところから、ポロッと借金をこさえちゃうのよね、父さまの場合。
そうなるとわたしは、借金のためにグルグル同じところを回ってるような状態に陥ることになる。返しても返しても終わらない借金地獄。
そうなった時に、何度も啓騎さんに頼るわけにはいかないから、自分でどうにかするしかないんだけど。
(そうなったら、自分の身売り……政略結婚しかない)
十八歳。
身体はいたって健康。
病歴はほぼナシ。
前か後か、判断がつく程度には存在する身体の凹凸。
ぬばたまの……とか、カラスの濡れ羽色とか、称賛されるようなシロモノじゃないけど、それなりにキレイな黒髪をしてると思う。少しクセがあるけど、腰に届くほどの長さなのは自慢。
顔は、……まあ、「このままほっとけば人ごみに紛れてわかんなくなるんじゃない?」程度で、「うわ、すごいもん見ちゃった。夢でうなされそう」なんて言われるようなブスじゃないと思う。(多分)
だから、このまま後宮を出ても、それなりに箔をつけて嫁げるとは思うけど。
(好色ヒヒ爺だったらやだな~)
金があっても、愛もほしい。
愛されるだけじゃなくって、愛したいのよ。
そのためには、相手にもある程度の条件をつけたくなるじゃない。
年齢はそこまで離れてない相手。
わたしが十八だから、二十代半ばぐらいかな。啓騎さんと同じ程度。
背は、わたしより頭一つ分ぐらい高い人。向かい合った時、相手の鎖骨ぐらいにわたしの頬がくるぐらいの高さかな。ちょっとかがんでもらって、ちょっと背伸びをして上手いぐあいに口づけが出来る高さ。(って、キャーッ!! わたしったら何をっ!!)
顔だちは、そこそこでヨシ。あまりに美しすぎたり、カッコよすぎたりするのは、並ぶのに腰が引けちゃうから遠慮したい。仲良く十人並み。
わたしが家業を手伝っても(というか、父さまを見張りに行っても)文句を言わず、許してくれる懐の深さ。商いに精通しろとは言わないけど、理解はしてほしい。
あと、これが一番大事なんだけど、わたしを無条件で愛してくれること。わたしのどこを愛せばいいのかわかんないけど、それでも一途に愛してくれることが絶対条件。浮気なんて許さない。愛人なんてあり得ないわ。
そういう意味で言ったら、皇帝なんて問題外中の問題外なのよ。
年齢は、条件に当てはまっているらしいけど、それ以外が全部ダメ。
見たことないから、あくまでウワサだけど、結構カッコいいらしいじゃない? 皇帝陛下。皇帝の身分目当てで後宮入りした姫も多いけど、なかには、その美貌に惚れて入ったって人もいるとかどうとか。
そんな美姫が惚れるようなカッコいい人は、わたしにつり合わない。
それに、わたしが家のことで留守にするのは許してくれなさそうだし。というか、そんな時間、取れなくなっちゃうだろうし。
なにより一番大事な、「わたしだけを無条件に愛してくれる」なんて永遠にできないだろうし。だって、後宮だよ? 引く手あまただよ? 皇帝なんていう、何をしても許されるのだフッフッフッな身分の人が、一途に愛してくれるわけないじゃない。それだけの魅力、わたしにあるわけもないし。わたしよりもっと魅力的な姫なら腐るほどいるし。
そういう意味で完全に選外圏外な皇帝陛下だけど、じゃあ「はい、そうですか」って放置はできない。
会えぬなら、会ってみせよう、皇帝陛下。
会わぬなら、会いに行くまで、皇帝陛下。
借金完済のため、ここはひとつ、わたしのために恋の犠牲になってもらいます。
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