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第二章 相し笑みてば
二、相し笑みてば(一)
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「うわ、ちっちぇえ~」
自分の隣に立つ男、川島が声を上げた。
「猿みたい……とは言わないが、これはかなりちっちゃいな」
「当たり前だろ。赤子だぞ」
「そりゃあ、そうだけどさ……」
素直すぎる感想を咎めると、少しだけ口を曲げた。
子が生まれた祝いに訪れたのに、「ちっちぇえ」はないだろう。
「そうよ異母兄さま、この子はこれでも大きいほうなのよ」
同調して咎めるのは赤子の母親。自分の息子を「小さい」と表現されたのが気に食わないらしい。異母兄である川島よりもさらに大きく口をひん曲げている。
「考えてもみてよ、自分の腹からこんな大きなものを生み出すのよ? そりゃあ、小さく感じるかもしれないけど、腹の中で育てて産むとなったら、充分大きいのではなくって? 異母兄さまは、こんな大きな物を腹から生み出せますの?」
「うっ……」
異母妹の真っ当すぎる反論に、川島はたじろぐしかない。
「川島の負けだね」
「そうだな」
自分のもう片側に立つ少年、異母弟の忍壁の意見に頷いておく。
これで異母妹阿閉と自分、そして忍壁。三人の意見に押された川島は、ショボンと肩を落とした。
「まあまあ、そんなに川島をいじめないであげてよ。悪気があって言ったわけじゃないんだから」
助け舟をだしたのは、草壁。この赤子の父親であり、阿閉の夫。自分の異母兄。
草壁は、異母弟である自分と忍壁、それと妻の異母兄である川島の祝いを快く受け入れてくれた。
「小さいというのは、かわいいと同義だと思うよ。小さいものは愛らしく、いとおしい。そうだろ? 阿閉」
「そ、それはそうですけど……」
優しく夫に諭され、少しだけ曲げた唇を元に戻す。「小さい」を「愛らしい、いとおしい」と表現されれば、嫌な気はしない。
「赤子はね、とても愛らしいんだ。何度見たって飽きないぐらいにね」
草壁が、赤子を眺める目を細めた。
真新しい白い絹に包まれ、まだ目も開かぬ幼子。これが腹から出てきたのかと思えば、やはりこの子は大きいのだろう。
女性の腹はこんなにも大きなものを育み、命をかけて産み落とす。産み落とすだけじゃない。その腕に懐き、乳をふくませ、子を慈しむ。
「触ってみるかい?」
ジッと眺めていたからか。ほら、と草壁に促された。
「手に触れてごらんよ」
言われるままに自分の指を伸ばし、布の隙間からのぞかせていた赤子の手に触れる。
――キュッ。
「あ、掴んだ」
驚いた忍壁が声を上げた。
「そうなんだ。赤子はね、手に触れたもの、何でも掴むんだよ。かわいいよね」
指をキュッと掴む赤子。小さな指を全部使っても、自分の指一本掴みきることはできない。小さな小さな手。
「掴む」というより「しがみつく」。この世に生を受けた不安に、助けを求めてすがりつかれたよう。
そんな気がした。
「それにね、足でも同じことをするんだ」
「足でも掴むの?」
「そうだよ」
どうやって? 疑問に思った忍壁が、赤子の包まれていた布をバッとはぎ取る。くるまれていた布が消え、冷たい空気に触れたせいで、それまでスヤスヤ眠っていた赤子が驚き、泣き声を上げた。
「あー、もう。ほら、貸してごらんなさい」
一方的に泣き続ける赤子に戸惑っていたら、脇から阿閉が赤子を抱き上げた。掴まれていた指が、スルッと抜け落ちる。
「ほぉら、よしよし。泣かないの」
体を右へ左へと揺らし、腕の中の赤子をあやす阿閉。
「二人目ともなると、やっぱ手慣れてるね」
忍壁がそんな感想を漏らし、草壁が肩をすくめた。
実際、阿閉に抱き上げられた赤子はすぐに泣き止み、再び眠りに落ちていった。草壁と阿閉に生まれた子は、この赤子は初めてではない。この子には三つ年上の姉がいる。
弟が生まれ姉になったばかりの氷高。まだ母親に甘え足りない年頃なのか、それとも一端の姉気取り、母親気分なのか、阿閉が赤子を抱いたまま牀に腰掛けると、自分も牀によじ登って赤子の顔を覗き込む。
「――異母兄さまも、抱いてみる?」
赤子の機嫌が良くなったからか、阿閉が提案した。川島は「え?」と驚きはしたものの、素直に異母妹から押し付けるように渡された甥っ子を抱きとめた。
「落っことさないでよ」
「わかってる。大丈夫だ」
「どうだか」
「大丈夫」と言いながら、その手つきはどこか危なっかしい。
見てるこっちまで緊張で息を止めてしまいそうだ。ここにいる誰もが川島の一挙手一投足に注視する。いや――。
「氷高も抱っこしてあげようか?」
一人取り残された格好になっていた氷高に声をかける。
「いいの?」
「もちろん」
パアッと顔が明るくなった姪っ子。姉になったとはいえまだ幼い。弟ばかりが大事にされることは、やはり寂しかったのだろう。抱き上げ、大人たちの輪に入るようにしてやると、嬉しそうな声を上げた。
「悪いね」
「いや、これぐらい構わないさ」
草壁の謝罪を軽く受け流す。
「あら、ちょうどいいじゃない。大津さまも異母兄さまと同じように、将来の練習をしておいたほうがいいわ」
「将来って?」
忍壁が訊ねる。
「将来は将来よ。大津さまのところにだって、将来お子が生まれるでしょうから。その練習として子を抱いてみるのも悪くないと思うわ。もちろん、それは忍壁さまも同じよ。いずれは明日香と結婚して子を成すでしょうし」
ケロリと言ってのけた阿閉。娘を抱き上げてもらっても、草壁のような恐縮は感じてないらしい。
自分と忍壁は、突然飛んできた流れ矢のような話に戸惑うしかないというのに。忍壁など、矛先が自分に向いたせいで、「ゲッ」と軽く呻いている。
「さあ、次は忍壁さまですわよ」
「ほら、忍壁」
川島が、やや持て余し気味、腕の中の困りものを被けるように忍壁に押し付けた。
「わわわ……」
最初こそ慌てたものの、川島よりは手つきのいい忍壁。
「慣れてるな、お前」
それは川島も思ったようで。
「そりゃあ、ボクは泊瀬部はもちろんだけど、託基や磯城も抱っこしてるしね。なんなら磯城なんて、襁褓も変えた経験あるよ」
「それは頼もしいな」
「そういやお前んとこは、幼い弟妹が多いんだったな」
フフンと鼻を鳴らした忍壁。ここにいるなかで、氷高を除いて一番年下なのに、一番手慣れてるふうに言われ、まんざらでもないらしい。
実際、忍壁の腕の中の赤子は、川島の時より安心しているように思えた。
「そういえば大津さま、山辺に、あの子にまだそういう兆しは見えませんの?」
「阿閉――」
阿閉が、忍壁に持っていかれた話題を強引に引き戻す。
草壁が妻をたしなめようとするが、阿閉はどこ吹く風だった。なかなか懐妊しない異母妹を心の底から案じているのか。それとも――。
「残念ながら、ね。こういうのは授かりものだと思うし。それに、あの子はまだ幼いしね」
「幼いっていっても、もう十六じゃありませんか。嫁いで四年、もうそろそろそういう話だって――」
「阿閉」
短く、ハッキリと草壁が妻を遮る。遮られた阿閉のほうは、まだ言い足りないのか、でも夫に従うしかないのが不満なのか、再び頬を膨らませ、プイッとそっぽを向いた。
「それを言ったら、オレのところもだぞ。オレなんて、もう二十六にもなるのに、まだ子の一人も生まれていない。年齢的なことを言うなら、オレのほうが先だろ」
「泊瀬部はまだ十四だからね~。もう少し難しいんじゃない?」
「お前のとこも同じだろうが、忍壁。明日香にはまだ妻問いできてないんだろ?」
「そりゃ、明日香は泊瀬部よりさらに年下、まだ子供だからね~」
川島が嘆き、忍壁が混ぜっ返す。その繰り返しで、阿閉の不満も霧散していく。
「ねえ、おおつのおじさまには、まだあかちゃんいないの?」
二人のやり取りを聞いていた氷高が言った。
「そうだね、まだ子はいないかな」
「じゃあ、あたちがおじさまのおよめさんになってあげる!!」
「え?」
「やまべおばちゃまといっしょにあかちゃんつくってあげる!! ひだかもあかちゃんほしいもん!!」
「こりゃあ熱烈な結婚の申し入れだな」
「じゃあ、あと十五、いや二十年ぐらい赤子はお預けだね」
川島と忍壁が茶化した。
「長いなあ。川島のところの比じゃないぞ」
自分も合わせて言い、場を和ませるように笑う。
その声に眠れぬ不満を抱いたのか、赤子がむずがりはじめた。「ふにっ」と上げられた弱々しい抗議に、阿閉が再び赤子を抱き取る。
母親の腕の中で、安心した赤子。自分の肩に頬を寄せる幼い氷高。
赤子を抱き、軽く体を揺らす阿閉。幼い娘を取られたようで寂しがる草壁。そんな兄弟たちの様子を笑って眺める忍壁。
新しく生まれた命を寿ぐように、うららかな風が室に吹き込み、庭に咲いた梅の木が甘い香りを漂わせ、枝に止まったホトトギスが鳴き声を上げる。
父帝の第二皇子、日嗣の御子と目される草壁皇子。彼と妻、阿閉皇女との間に生まれた第二子。――のちに珂瑠皇子と名付けられる。
癸未の年、二月。春。
それは、僕を絡め取る新たな縁。
自分の隣に立つ男、川島が声を上げた。
「猿みたい……とは言わないが、これはかなりちっちゃいな」
「当たり前だろ。赤子だぞ」
「そりゃあ、そうだけどさ……」
素直すぎる感想を咎めると、少しだけ口を曲げた。
子が生まれた祝いに訪れたのに、「ちっちぇえ」はないだろう。
「そうよ異母兄さま、この子はこれでも大きいほうなのよ」
同調して咎めるのは赤子の母親。自分の息子を「小さい」と表現されたのが気に食わないらしい。異母兄である川島よりもさらに大きく口をひん曲げている。
「考えてもみてよ、自分の腹からこんな大きなものを生み出すのよ? そりゃあ、小さく感じるかもしれないけど、腹の中で育てて産むとなったら、充分大きいのではなくって? 異母兄さまは、こんな大きな物を腹から生み出せますの?」
「うっ……」
異母妹の真っ当すぎる反論に、川島はたじろぐしかない。
「川島の負けだね」
「そうだな」
自分のもう片側に立つ少年、異母弟の忍壁の意見に頷いておく。
これで異母妹阿閉と自分、そして忍壁。三人の意見に押された川島は、ショボンと肩を落とした。
「まあまあ、そんなに川島をいじめないであげてよ。悪気があって言ったわけじゃないんだから」
助け舟をだしたのは、草壁。この赤子の父親であり、阿閉の夫。自分の異母兄。
草壁は、異母弟である自分と忍壁、それと妻の異母兄である川島の祝いを快く受け入れてくれた。
「小さいというのは、かわいいと同義だと思うよ。小さいものは愛らしく、いとおしい。そうだろ? 阿閉」
「そ、それはそうですけど……」
優しく夫に諭され、少しだけ曲げた唇を元に戻す。「小さい」を「愛らしい、いとおしい」と表現されれば、嫌な気はしない。
「赤子はね、とても愛らしいんだ。何度見たって飽きないぐらいにね」
草壁が、赤子を眺める目を細めた。
真新しい白い絹に包まれ、まだ目も開かぬ幼子。これが腹から出てきたのかと思えば、やはりこの子は大きいのだろう。
女性の腹はこんなにも大きなものを育み、命をかけて産み落とす。産み落とすだけじゃない。その腕に懐き、乳をふくませ、子を慈しむ。
「触ってみるかい?」
ジッと眺めていたからか。ほら、と草壁に促された。
「手に触れてごらんよ」
言われるままに自分の指を伸ばし、布の隙間からのぞかせていた赤子の手に触れる。
――キュッ。
「あ、掴んだ」
驚いた忍壁が声を上げた。
「そうなんだ。赤子はね、手に触れたもの、何でも掴むんだよ。かわいいよね」
指をキュッと掴む赤子。小さな指を全部使っても、自分の指一本掴みきることはできない。小さな小さな手。
「掴む」というより「しがみつく」。この世に生を受けた不安に、助けを求めてすがりつかれたよう。
そんな気がした。
「それにね、足でも同じことをするんだ」
「足でも掴むの?」
「そうだよ」
どうやって? 疑問に思った忍壁が、赤子の包まれていた布をバッとはぎ取る。くるまれていた布が消え、冷たい空気に触れたせいで、それまでスヤスヤ眠っていた赤子が驚き、泣き声を上げた。
「あー、もう。ほら、貸してごらんなさい」
一方的に泣き続ける赤子に戸惑っていたら、脇から阿閉が赤子を抱き上げた。掴まれていた指が、スルッと抜け落ちる。
「ほぉら、よしよし。泣かないの」
体を右へ左へと揺らし、腕の中の赤子をあやす阿閉。
「二人目ともなると、やっぱ手慣れてるね」
忍壁がそんな感想を漏らし、草壁が肩をすくめた。
実際、阿閉に抱き上げられた赤子はすぐに泣き止み、再び眠りに落ちていった。草壁と阿閉に生まれた子は、この赤子は初めてではない。この子には三つ年上の姉がいる。
弟が生まれ姉になったばかりの氷高。まだ母親に甘え足りない年頃なのか、それとも一端の姉気取り、母親気分なのか、阿閉が赤子を抱いたまま牀に腰掛けると、自分も牀によじ登って赤子の顔を覗き込む。
「――異母兄さまも、抱いてみる?」
赤子の機嫌が良くなったからか、阿閉が提案した。川島は「え?」と驚きはしたものの、素直に異母妹から押し付けるように渡された甥っ子を抱きとめた。
「落っことさないでよ」
「わかってる。大丈夫だ」
「どうだか」
「大丈夫」と言いながら、その手つきはどこか危なっかしい。
見てるこっちまで緊張で息を止めてしまいそうだ。ここにいる誰もが川島の一挙手一投足に注視する。いや――。
「氷高も抱っこしてあげようか?」
一人取り残された格好になっていた氷高に声をかける。
「いいの?」
「もちろん」
パアッと顔が明るくなった姪っ子。姉になったとはいえまだ幼い。弟ばかりが大事にされることは、やはり寂しかったのだろう。抱き上げ、大人たちの輪に入るようにしてやると、嬉しそうな声を上げた。
「悪いね」
「いや、これぐらい構わないさ」
草壁の謝罪を軽く受け流す。
「あら、ちょうどいいじゃない。大津さまも異母兄さまと同じように、将来の練習をしておいたほうがいいわ」
「将来って?」
忍壁が訊ねる。
「将来は将来よ。大津さまのところにだって、将来お子が生まれるでしょうから。その練習として子を抱いてみるのも悪くないと思うわ。もちろん、それは忍壁さまも同じよ。いずれは明日香と結婚して子を成すでしょうし」
ケロリと言ってのけた阿閉。娘を抱き上げてもらっても、草壁のような恐縮は感じてないらしい。
自分と忍壁は、突然飛んできた流れ矢のような話に戸惑うしかないというのに。忍壁など、矛先が自分に向いたせいで、「ゲッ」と軽く呻いている。
「さあ、次は忍壁さまですわよ」
「ほら、忍壁」
川島が、やや持て余し気味、腕の中の困りものを被けるように忍壁に押し付けた。
「わわわ……」
最初こそ慌てたものの、川島よりは手つきのいい忍壁。
「慣れてるな、お前」
それは川島も思ったようで。
「そりゃあ、ボクは泊瀬部はもちろんだけど、託基や磯城も抱っこしてるしね。なんなら磯城なんて、襁褓も変えた経験あるよ」
「それは頼もしいな」
「そういやお前んとこは、幼い弟妹が多いんだったな」
フフンと鼻を鳴らした忍壁。ここにいるなかで、氷高を除いて一番年下なのに、一番手慣れてるふうに言われ、まんざらでもないらしい。
実際、忍壁の腕の中の赤子は、川島の時より安心しているように思えた。
「そういえば大津さま、山辺に、あの子にまだそういう兆しは見えませんの?」
「阿閉――」
阿閉が、忍壁に持っていかれた話題を強引に引き戻す。
草壁が妻をたしなめようとするが、阿閉はどこ吹く風だった。なかなか懐妊しない異母妹を心の底から案じているのか。それとも――。
「残念ながら、ね。こういうのは授かりものだと思うし。それに、あの子はまだ幼いしね」
「幼いっていっても、もう十六じゃありませんか。嫁いで四年、もうそろそろそういう話だって――」
「阿閉」
短く、ハッキリと草壁が妻を遮る。遮られた阿閉のほうは、まだ言い足りないのか、でも夫に従うしかないのが不満なのか、再び頬を膨らませ、プイッとそっぽを向いた。
「それを言ったら、オレのところもだぞ。オレなんて、もう二十六にもなるのに、まだ子の一人も生まれていない。年齢的なことを言うなら、オレのほうが先だろ」
「泊瀬部はまだ十四だからね~。もう少し難しいんじゃない?」
「お前のとこも同じだろうが、忍壁。明日香にはまだ妻問いできてないんだろ?」
「そりゃ、明日香は泊瀬部よりさらに年下、まだ子供だからね~」
川島が嘆き、忍壁が混ぜっ返す。その繰り返しで、阿閉の不満も霧散していく。
「ねえ、おおつのおじさまには、まだあかちゃんいないの?」
二人のやり取りを聞いていた氷高が言った。
「そうだね、まだ子はいないかな」
「じゃあ、あたちがおじさまのおよめさんになってあげる!!」
「え?」
「やまべおばちゃまといっしょにあかちゃんつくってあげる!! ひだかもあかちゃんほしいもん!!」
「こりゃあ熱烈な結婚の申し入れだな」
「じゃあ、あと十五、いや二十年ぐらい赤子はお預けだね」
川島と忍壁が茶化した。
「長いなあ。川島のところの比じゃないぞ」
自分も合わせて言い、場を和ませるように笑う。
その声に眠れぬ不満を抱いたのか、赤子がむずがりはじめた。「ふにっ」と上げられた弱々しい抗議に、阿閉が再び赤子を抱き取る。
母親の腕の中で、安心した赤子。自分の肩に頬を寄せる幼い氷高。
赤子を抱き、軽く体を揺らす阿閉。幼い娘を取られたようで寂しがる草壁。そんな兄弟たちの様子を笑って眺める忍壁。
新しく生まれた命を寿ぐように、うららかな風が室に吹き込み、庭に咲いた梅の木が甘い香りを漂わせ、枝に止まったホトトギスが鳴き声を上げる。
父帝の第二皇子、日嗣の御子と目される草壁皇子。彼と妻、阿閉皇女との間に生まれた第二子。――のちに珂瑠皇子と名付けられる。
癸未の年、二月。春。
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