灰色猫にはご用心。~ご主人さまは猫ですか?~

若松だんご

文字の大きさ
26 / 35

第26話 覚悟。

しおりを挟む
 「リーナ……」

 ようやく指を解放したクラウドが、その名を呼ぶ。
 力任せにリーナを引っ張ると、崩れるようにしなだれかかったその体を抱きしめる。

 「クラウドさま……」

 抱きとめられた形になったリーナが、クラウドを見上げる。
 普段なら恥ずかしくて離れたくて仕方ないのに、今のリーナは違った。

 (離れたくない……)

 恥ずかしくないわけじゃない。けれど、この温もりのそばにいたいと思ってしまった。
 森で、自分の想いを伝えたせいだろうか。それとも、口づけを交わしてしまったせいだろうか。不思議な熱が、リーナの体の奥に灯ってしまっている。
 もう、何かを理由にして、この気持ちを抑えることは出来ない。
 ギュッとクラウドの身体を抱きしめる。猫の時と違って、その身体はリーナの腕では抱えきれないほど逞しく、大きい。
 クラウドが、その精悍な顔をリーナに近づける。リーナもこの後訪れるであろう、甘美な口づけを求めて目を閉じた。
 重なる唇。
 クラウドの舌が、リーナの唇をなぞるように舐める。何度も舌を這わされ、舌先で唇をつつかれると、リーナは抵抗することなく、その口を少しだけ開き、クラウドを受け入れた。

 「ンンッ、ファ、ン……」

 息とも喘ぎともわからない音が漏れる。
 舌を絡めとられ、口蓋を舐めつくされる。背中に回された腕に力がこもり、リーナは息すら出来なくなるが、それすらも心地よいと感じてしまっている。

 「ンッ……」

 一方的に蹂躙されていることに我慢できなくなって、自分から舌を差し出す。クラウドがしているように、自分の舌を彼の口へと忍ばせる。すると、今度はクラウドの口腔内で、その舌を味あわれた。舌裏をなぞるように舐め上げられ、吸い上げられる。混じり合った唾液を音を立て、嚥下される。お返しをしてやろうと思っても、上手くいかず、結局はクラウドに翻弄されるだけだった。
 さんざんリーナの口を味わってから、ようやくクラウドがその唇を離した。二人の間を、銀色の筋が糸のようにつながり滴り落ちる。

 「あっ……」

 リーナが羞恥心を取り戻すよりも早く、クラウドがその雫を指ですくい上げ舐めとった。その仕草のなまめかしさに、リーナの胸がドキンと跳ねる。

 「リーナ……」

 熱のこもった声で呼ばれる。

 「呪いなど関係ない。お前が好きなんだ」

 「クラウドさま……」


 「リーナ。俺を、愛してはくれないか?」

 訊かれなくても、リーナの答えは決まっている。
 はい……と、かすかに頷くと、彼の濡れた唇に口づけた。

 「リーナッ…‼」

 再び奪われるような口づけ。貪るように唇を奪われ、リーナもクラウドの身体にすがりつく。
 リーナの後頭部に回された手が、まとめ上げた髪をほぐすように解いた。栗色の髪が波打ち、リーナを縁取る。

 「あっ……、ンッ……!!」

 クラウドの唇は、次第に頬、耳朶へと這ってゆく。そのたどる道筋が、リーナの肌を粟立たせる。
 そのままゆっくりと、宝物のように身体をベッドに横たえられ、リーナは、自分を見下ろす精悍な頬に手を添えた。深い青色の瞳に熱がこもる。添えた手のひらに、何かを誓うような口づけが与えられる。

 「リーナ……」

 何度もリーナの頬や唇に口づけを落とす。その間にもクラウドの手がお仕着せのドレスにかかる。
 本当なら、その手を払いのけて貞操を守らなくてはいけないのに、今のリーナにその理性は残っていなかった。クラウドの手に身を委ね、ドレスを脱がすに任せる。

 「あっ……」

 ドレスを取り払われ、下着姿になったことに、かすかな羞恥心がもたげる。
 どれだけ覚悟を決めても、やはり恥ずかしい。

 「キレイだ……」

 そう言って、クラウドが、むき出しになった鎖骨の辺りを指でなぞった。

 「あっ……!!」

 触れられたところがゾクゾクする。たったそれだけのことなのに、どうしようもなく反応してしまう。

 「柔らかくて温かい、キレイな肌だな。シミ一つないキレイな肌だ」

 そんなことはない。ご令嬢たちのように手入れしているわけでもない、普通の肌だ。でも、クラウドに嘆息混じりに言われると、本当にキレイな肌なんだと錯覚してしまう。
 そんな肌の上、つうっと人差し指で、胸の谷間近くまでなぞられる。

 「ンン……、あ……、あっ」

 「だけど、これは邪魔だな」

 指がコルセットを弾く。硬いだけのコルセット越しに、その振動を受けてビクンと体が跳ねる。
 肩に口づけながら、クラウドがコルセットの紐を緩め始めた。

 「こんなところまで、柔らかいだなんて」

 「ンンッ……‼」

 リーナの丸い肩にクラウドがかぶりつく。軽く歯をたてられ、痛いはずなのに気持ちいい。いつの間にかコルセットは緩め外され、その下のキャミソール一枚だけの姿にされてしまう。
 呼吸するたびに胸が上下し、リーナの視界にも、その先端が尖り始めているのが映った。

 (やだっ、恥ずかしいっ!!)

 そう思うのに、クラウドはその先端を口に含む。キャミソールの薄い布越しに、彼の熱い舌を感じ、身をよじらせる。

 「んぅっ……、ぁ……、ああんっ!!」

 「硬くなってきたな」

 「言わないでっ……、くださっ……ンッ!!」

 コリッとその先端を舌で舐め上げられ、吸い上げられると、自分でも信じられないような甘い声が出た。ゾクゾクと震えるような感覚が背中を伝い、腰を浮き上がらせる。
 もう片方の空いている尖端は、キャミソールごと指で捩じるようにつまみ上げられた。

 「あっ、やあぁっ……‼」

 逃げ出したいほどの気持ちよさ。しかし、クラウドに組み敷かれた今、その快楽から逃れることは許されず、唯一動かせた首を、イヤイヤとふることしか出来ない。

 「もっと味あわせろ」

 ようやく口を離したクラウドが、今度は乱暴にキャミソールを下ろした。尖った胸の先端が軽く引っかかり、少し間を置いてから、弾けるようにプルンッとその姿を現す。
 露わになった胸を、クラウドの大きな手がすかさず包み込む。

 「ンンッ……‼」

 胸を揉みしだかれ、彼の手のなかで自分の胸が自在に形を変えているのを見るのは、とても淫らで、リーナは興奮した。熱いクラウドの手。揉みしだかれる自分の胸。

 「こんなに柔らかいのに、ここはコリコリと硬い」

 クラウドの手のひらが、尖端をなでる。

 「あっ……!!」

 たったそれだけの刺激で、体が大きく跳ねる。体がどうしようもなく熱くなって、息が止まりそう。大きく息を吸おうと必死に口を開ける。
 その反応に気をよくしたのか、クラウドが手のひらをクリクリと動かした。

 「あっ、あっ、それっ……。やっ、あ、あっ……」

 ビクビクと、丘に上がった魚のように身体を震わせる。硬い尖端をもてあそばれるたび、短い嬌声が上がる。

 「これだけでそんなに感じていると、後が辛いぞ」

 クラウドの手が双丘から離れた。
 自分の見せてしまった淫らな反応に、もしかして嫌われてしまったのか。
 一瞬、そんな考えが心をよぎったが、すぐにそれは間違いだと気づく。
 再び伸びてきた手が、腰のあたりでとまっていたキャミソールを、下のペチコート、ドロワーズとともにリーナの体から一気に剥ぎ取った。

 「やっ……‼」

 無防備なほど何もまとっていない体が、クラウドの目の前に晒される。
 恥ずかしさのあまり、手で隠そうとするが、すぐに腕を押さえつけられてしまった。

 「キレイだ……」

 リーナの体を余すところなく見つめ、クラウドが呟く。
 その言葉にすら、リーナの体は反応する。
 恥ずかしいけれど、このままもっとクラウドに愛されたい。
 陶然とした感情のまま、リーナは彼に身を捧げる覚悟を決めた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【短編】淫紋を付けられたただのモブです~なぜか魔王に溺愛されて~

双真満月
恋愛
不憫なメイドと、彼女を溺愛する魔王の話(短編)。 なんちゃってファンタジー、タイトルに反してシリアスです。 ※小説家になろうでも掲載中。 ※一万文字ちょっとの短編、メイド視点と魔王視点両方あり。

愛されないと吹っ切れたら騎士の旦那様が豹変しました

蜂蜜あやね
恋愛
隣国オデッセアから嫁いできたマリーは次期公爵レオンの妻となる。初夜は真っ暗闇の中で。 そしてその初夜以降レオンはマリーを1年半もの長い間抱くこともしなかった。 どんなに求めても無視され続ける日々についにマリーの糸はプツリと切れる。 離縁するならレオンの方から、私の方からは離縁は絶対にしない。負けたくない! 夫を諦めて吹っ切れた妻と妻のもう一つの姿に惹かれていく夫の遠回り恋愛(結婚)ストーリー ※本作には、性的行為やそれに準ずる描写、ならびに一部に性加害的・非合意的と受け取れる表現が含まれます。苦手な方はご注意ください。 ※ムーンライトノベルズでも投稿している同一作品です。

お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。

下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。 またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。 あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。 ご都合主義の多分ハッピーエンド? 小説家になろう様でも投稿しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

お隣さんはヤのつくご職業

古亜
恋愛
佐伯梓は、日々平穏に過ごしてきたOL。 残業から帰り夜食のカップ麺を食べていたら、突然壁に穴が空いた。 元々薄い壁だと思ってたけど、まさか人が飛んでくるなんて……ん?そもそも人が飛んでくるっておかしくない?それにお隣さんの顔、初めて見ましたがだいぶ強面でいらっしゃいますね。 ……え、ちゃんとしたもん食え? ちょ、冷蔵庫漁らないでくださいっ!! ちょっとアホな社畜OLがヤクザさんとご飯を食べるラブコメ 建築基準法と物理法則なんて知りません 登場人物や団体の名称や設定は作者が適当に生み出したものであり、現実に類似のものがあったとしても一切関係ありません。 2020/5/26 完結

期間限定の関係のはずでは?〜傷心旅行に来たら美形店長に溺愛されてます〜

水無月瑠璃
恋愛
長年付き合った彼氏から最悪な形で裏切られた葉月は一週間の傷心旅行に出かける。そして旅先で出会った喫茶店の店長、花村とひょんなことから親しくなり、うっかり一夜を共にしてしまう。 一夜の過ちだとこれっきりにしたい葉月だが、花村は関係の継続を提案してくる。花村に好感を抱いていた葉月は「今だけだしいっか」と流されて関係を続けることになるが…。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

押しつけられた身代わり婚のはずが、最上級の溺愛生活が待っていました

cheeery
恋愛
名家・御堂家の次女・澪は、一卵性双生の双子の姉・零と常に比較され、冷遇されて育った。社交界で華やかに振る舞う姉とは対照的に、澪は人前に出されることもなく、ひっそりと生きてきた。 そんなある日、姉の零のもとに日本有数の財閥・凰条一真との縁談が舞い込む。しかし凰条一真の悪いウワサを聞きつけた零は、「ブサイクとの結婚なんて嫌」と当日に逃亡。 双子の妹、澪に縁談を押し付ける。 両親はこんな機会を逃すわけにはいかないと、顔が同じ澪に姉の代わりになるよう言って送り出す。 「はじめまして」 そうして出会った凰条一真は、冷徹で金に汚いという噂とは異なり、端正な顔立ちで品位のある落ち着いた物腰の男性だった。 なんてカッコイイ人なの……。 戸惑いながらも、澪は姉の零として振る舞うが……澪は一真を好きになってしまって──。 「澪、キミを探していたんだ」 「キミ以外はいらない」

処理中です...