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オカシなカンケイ
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「――少し、よろしいかしら」
風にゆれた庭園の花が、四阿に新たな来訪者を告げる。
「ご歓談中、失礼いたしますわ」
にこやかに、そして少しだけ申し訳無さそうな声。
「アーケスティア……」
現れたのは、アーケスティアと呼ばれた令嬢。
四阿にいた令嬢たちが、「とんでもございませんわ」と彼女を迎え入れる。
四阿にいたのは、この学園に通う名家の令嬢たち三人と令息一人。花に囲まれ、優雅に語らい合っていたところを訪れたのも、ともに机を並べる学友の令嬢。そして、その背後には黒い身なりの彼女の執事。
学業の合間、休み時間に令息、令嬢が語り合う。そこに新たな令嬢が加わる。
この学園なら、どこにでもある、普通な光景かもしれない。
そのまま、五人でお茶を飲み、テーブルの上にあるお菓子でも食したとしたら。しかし。
「あの、申し訳ないのですが、彼をお借りしてもよろしいでしょうか」
四阿の中を見渡し、アーケスティアが言った。
その豊かなストロベリーブロンドの髪をゆらし、白い頬に細い指を添えて。
「彼にどうしてもお願いしたいことがありまして。それでこちらに参りましたの」
ごめんなさいね。
長いまつげに縁取られ、ぱっちりした空色の目が、恐縮で細められる。
その姿に、四阿に軽く緊張が走る。飲みかけのティーカップは、カチャリとソーサーに戻され、楽しいお茶の時間が終了したことを告げる。
「お願いしたいこととは?」
ここには、「彼」と呼ばれる人物は一人しかいない。令息も、彼女が訪れた理由を薄々理解していたのだろう。彼女のために空席を作ろうと立ち上がり、そのまま彼女に向き直った。
「ええ。急にごめんなさいね。でも、わたくし、どうしても食してみたいものがあって。それを、アナタにそろえていただきたいの」
は?
令息だけでなく、座ったままの令嬢たちまで目を見開く。
食べたいものを? 買ってくる? 令息が?
この学園、令息、令嬢の連れているお抱え執事やメイドだけでなく、学園で働くメイドや従僕もたくさんいる。彼らは常に、生徒である令息令嬢が快適に学園生活を送れるように働いている。今だって、四阿に広げられているティーセットはすべて学園のメイドが用意したもの。令嬢が令息に頼まなくても、メイドたちに頼めば、いくらでもそろえてくれる。
それなのに、なぜ令息に頼む?
「わかりました。では、何をそろえたらよろしいですか?」
軽く目をつむり、息を吐き出してから令息が問うた。反論、拒否するつもりはないらしい。
「では、三番街にあるアンリ・シャンパルティエのフィナンシェに、オーギュスタン・デメルのカヌレ・デ・ボルドー、その四軒先のローデヴェイクのキュベルドン。それとアレッキオ・デル・ゾルデのスフォリアテッレと、ラ・ジア・ブリジッタのトルタ・パラディーゾ。それからラ・マール通り、サン・アンジェリナの期間限定シャインマスカット・タルトをお願いできるかしら」
チョット待て。
誰もが思う。
そんなに大量の注文、誰が覚えられるっていうんだ?
指定された店、指定されたお菓子。まるで呪文。
「……わかった。買ってくるよ」
「よろしくお願いいたしますわ」
ゆっくりと歩き出した令息の背中を、アーケスティア嬢の笑顔が見送る。
――あんなに、ご注文されなくても。
――おかわいそう。
――家のことがあるから、逆らえないのでしょう。
残された令嬢たちのヒソヒソ話。
あの令息の家は、新しく始めた事業に、令嬢の家から莫大なお金を出資してもらっている。
令息の家は身分も低い、新興の事業家貴族。令嬢の家は代々続く名家で、王家にも繋がる血統と、莫大な資産を持つ。
事業は親がやっていることとはいえ、あの令息も令嬢に逆らうことができないのだろう。もし令嬢の機嫌を損ねたら。そのせいで出資を止められたりしたら、令息の一家は事業に失敗し、路頭に迷うことになる。
だから、令嬢が欲しいと言えば、なんだって買いに走る。いつだって、令嬢のわがままを引き受ける。下僕扱いにも耐え続ける。
そんな境遇に耐える令息を労ろうと用意したお茶会だったのに。
「あの、そのようなお買い物、執事にでも頼めばよろしいのでは?」
令嬢の一人が非難する。
せっかくのお茶会を台無しにされたことに、令息の境遇になけなしの正義感が絞り出した言葉。残りの二人も同意見なのか、勇気を出して非難した令嬢を左右から支えるように寄り添い頷く。
「あら。申し訳ありません」
クルリとふり返ったアーケスティア。
「執事には、これからお茶を淹れてもらわなくちゃいけませんから。お手空きなのはユリウスしかおりませんもの」
学友である令息を執事と同等、いやそれ以下の扱いをしたのに、まったく悪びれてない。
声は鈴を転がしたかのように愛らしいのに、その内容に令嬢たちは絶句するしかない。
「では、ごきげんよう」
軽やかに一礼すると、執事を連れて去っていくアーケスティア。
優雅で気品あって美しい名家の令嬢。しかしその中身は、学友の令息の弱みを利用して、下僕扱いを楽しむ高慢で意地悪な性格。
「なんて娘なの……」
絞り出された令嬢たちの言葉が風に乗る。
*
「よろしいのですか、お嬢様」
背後、一歩後ろに従う執事の言葉。
その言葉に、止まるでもなくふり向くでもなく、ただ前だけを見て、庭園を歩き続ける。
だって、なにが「よろしいのか」、訊かれている意味はわかっているから。
ユリウスにあんな無茶な買い物を頼んで――。
学友の令嬢たちに嫌われるようなことをして――。
「よろしいのですか」に含まれるのはこの二つ。だから、ふり向かない。止まらない。
「いいのよ」
今更、どう思われたって。
「高慢なお嬢様」、「家の権力、財力をカサにきたお嬢様」
わたしの評価はそんなところかしら。
学園で一、二を争う名家の生まれ。容姿。知性。
黙っていれば、その生まれにふさわしい美しい令嬢なのに、学友の弱みにつけこんでやりたい放題のワガママぶり。今もこうして、家の力関係を利用して、学友令息を顎で使う――悪女。
どれだけ美しくても、地位があっても、それでは誰も近寄らない。近寄りたくない。だから、いつだって一人ぼっち。あいさつ程度は交わすけど、それ以上踏み込んでくる者はいない。
でも。
それでいいのよ。
誰にも近寄ってほしくないの。
どうせ、家の資産とか地位とか、そういうの目当ての連中だし。わたしとお近づきになれたら、自分の家に利益があるのではないか。手に入れて、トロフィーワイフのように隣に飾っておいても悪くないだけの容姿もある。
近寄ってくるのは、大抵、そういう連中。だから、ぼっちでちょうどいいの、わたしは。
ワガママ娘って思われても、なんとも思わないわ。
(ユリウスさえ、わかってくれれば)
彼は違う。
彼にはあと少しでいいから、わたしに近づいてほしい。
だから、お父さまにお願いして、彼の家の事業に出資していただいた。出資していることを理由に、他の令嬢より一歩先んじて彼に近づけるから。実際、彼の家の事業は投資するに値するだけの立派なものだったし。
幼なじみのユリウス。
彼はいつだって笑っていて、怒ったところを一度も見たことない。頭のネジが二、三本抜けてるんじゃないかってぐらいのヘラヘラぶり。
「もうちょっとシャキッとしなさいよ」とか言いたくなるけど、わたしは、彼のそういうところが好きなんだからどうしようもない。
そう。
わたしは彼、ユリウスが好き。
彼が、「スティアの髪はキレイだね」って褒めてくれたから、毎晩ハゲそうなほどブラッシングしてる。「スティアの肌は抜けるように白いね」って褒めてくれたから、絶対日焼けの跡を残さない。「ずっと聞いていたい声だね」って褒めてくれたから、好きでもないジンジャーハニーティーをかかさず飲んでる。彼が細いわたしの指を褒めてくれたから。選んだドレスを褒めてくれたから。彼が好きなのは知性あふれる女性って聞いたから。たくさん本を読む女性って聞いたから。
だから。だから一生懸命努力した。
ただの幼なじみじゃない。ただの学友じゃない。その先へ、一歩でも前に進むために努力を重ねた。
だけど。
(上手く行かないのよね……)
わざと身につけた、この居丈高な態度がいけないのかもしれない。
独り占めしたくて続けるワガママがいけないのかもしれない。
だって。
彼の好みのタイプは「心優しい女性」だから。
こんな態度ばっかりじゃ、絶対「好き」になってもらえない。
けど。
(今更、どうやって変えたらいいのよ)
ワガママ女って思われてるのに。急に心優しくなっても「気持ち悪い」とか、「何を企んでるんだ」って思われるのがオチ。好きになんてなってもらえない。
彼には本当のわたしを見てほしいのに、身につけたワガママが邪魔をする。
(世の中、上手くいかないものねえ)
深くふかくため息をもらす。
「ねえ。とりあえずだけど、お茶の支度をしてくれないかしら」
「お茶……でございますか?」
「そうよ。ああ言った手前、お茶の用意をしておかなくちゃね」
「承知いたしました」
執事が胸に手を当て、うやうやしく頭を下げる。
「では、キャンディに似合いそうなお茶を用意しておきましょう」
「そうね。それがいいわ。どうせ今日も、キャンディでしょうし」
ユリウスにお菓子を買いに行かせたのは、今日が初めてじゃない。
いつだってユリウスは、あの呪文のような怒涛の注文を覚えてられなくて、キャンディを買ってくる。「これで勘弁してくれないかな」と、おずおず差し出される瓶詰めキャンディ。
(まあ、そのキャンディが欲しくてわざとやってるんだけどね)
キャンディに含まれる意味は、「あなたのことが好きです」
そのキャンディを彼から受け取る。色とりどりのキャンディの入った瓶。一番最初に取り出して食べるのは、彼の目と同じ色、赤いキャンディ。
どうせユリウスのことだから、キャンディにそんな意味が含まれてるとか、わたしがどの順番で食べてるとか気づいてないんだろうな。
優しいくせに、どこまでも鈍感な彼。
そこがまた愛おしくも焦れったい。
「いっそのこと、マカロンでも頼んでみたらどうですか?」
「え? は? ま、マカロンッ!?」
驚くわたしに、頷く執事。
「二番街にマカロンの美味しい店があるそうですよ。いつも贈られるキャンディと同じ店ですが。たまにはマカロンを食べてみたいとお願いしてみてはいかがでしょう」
「だだだ、ダメッ! ダメ、ダメ、ダメッ! そんなことしてウッカリバレたらどうすんのよ!」
マカロンのお菓子言葉は、「特別な人」
それを彼にねだるだなんて。そそそ、そんなこと! そんなことっ!!
頬に手を当て、昇りきった熱を下げようとするけど、上手くいかない。熱が指まで感染してジンジンしてくる。
「バレてもよろしいのでは?」
「ダメに決まってるでしょっ!!」
バレて「ごめんね」されたらどうすんのよ! ボクはそんな気持ちはないんだとか言われたら、わたし、きっと立ち直れない。深くふかく地面にめり込んで、二度と地上に這い上がれない気がする。
「まどろっこしい……」
軽い舌打ち音とともに、風に乗って聞こえた執事のホンネ。
わかってるわよ。わかってるから、そんなふうに言わないでよ。
ジレジレなんてかわいいもんじゃない。かったるいノロノロ恋愛してるってわかってるから、それ以上なにも言わないでよ。頼むから。
*
(さて……)
頼まれた(命じられた?)ものを買うため、いつものように二番街へと足を向ける。
(三番街にあるアンリ・シャンパルティエのフィナンシェに、オーギュスタン・デメルのカヌレ・デ・ボルドー、その四軒先のローデヴェイクのキュベルドン。それとアレッキオ・デル・ゾルデのスフォリアテッレと、ラ・ジア・ブリジッタのトルタ・パラディーゾ。それからラ・マール通り、サン・アンジェリナの期間限定シャインマスカット・タルト、か)
言われたことは全部覚えている。
あの鈴の音を転がしたような声で言われたことは全部。一字一句間違えることなく覚えてる。
だけど。
(ま、いっか。キャンディで)
覚えたことはすべて消去。
カランと音を立て、いつもの店の扉を開ける。
「あら、いらっしゃい坊っちゃん」
「こんにちは」
むせ返りそうなほど、甘い香りに満ちた店内。
カウンターのむこう、若い女性の店員の笑いに、あいさつを交わす。
色とりどりのお菓子の並んだショーケース。
白いホイップ。柔らかそうなパステルカラー。甘くビターなチョコレート。ふんだんに使われた果物。とろけるキャラメル色のソース。
きっとどれも美味しいんだろう。どれも女の子が喜びそうなお菓子。
だけど。
「すみません、そのキャンディを詰めてもらえませんか?」
カウンター越しにボクの挙動を見守っていた店員に告げる。指さした先にあったのは、いつも買い求める色とりどりのキャンディ。
「承知いたしました」
軽く笑って店員が空の瓶にキャンディを詰め始めた。
いつも買っているからだろう。
好きな色を好きなように瓶詰めしてくれる売り方なのに、どの色をどれだけ入れるかなど訊ねられはしなかった。
(注文、覚えられるほど買ってるのかな)
いつも多めに入れてもらってる赤色のキャンディ。それから空色。後は店員の判断に任せて詰めてもらっている。
(覚えられてるとしたら……恥ずかしいな)
どうしてその色を? とか訊ねられたことはないけど、やはりどこか気恥ずかしい。
赤色はボクの目の色。空色のは彼女の目の色。
キャンディのお菓子言葉は、「あなたのことが好きです」
ボクが贈ったそのキャンディを、彼女が口にするのを見るたび、愉悦のような、背徳感のようなものが体を走る。彼女のプルンッと愛らしい唇に吸い込まれる、赤いキャンディ。ゾクゾクする。
だから、わざと覚えられなかったフリをして、キャンディを買い求める。「これで勘弁してくれないかな」って渡すけど、本当は「これを食べてほしいんだ」
(ボクがこんなことしてるって知ったら、彼女、どう思うかな)
先ほどの四阿。
あそこで学友の令嬢たちとお茶をしたのも、わざとだった。ああして令嬢に囲まれていれば、絶対彼女はやってくる。そして、令嬢たちからボクを引き離すために、無理難題を言いつけてくる。
周囲には、「ワガママ令嬢に振り回される哀れな令息」、「家のこともあって、命令に従うしかないかわいそうな人」と見えているんだろうけど、実際は違う。
家の事業は、彼女の父親なら飛びついてきそうなものを、ボクがわざと父さんに提案した。そうして関係を作っておくことで、他の学友よりも一歩前に先んじたかったから。
幼なじみのアーケスティア。
彼女が、利害まみれで近づいてくる輩から身を守るために、わざと居丈高に、嫌われるように振る舞っていることを知っている。本当の彼女は、臆病で寂しがり屋で、とっても頑張り屋だってことを、ボクだけが知っている。
ボクは、スティアが好きだ。
ボクが「アーケスティアの髪はキレイだね」って褒めたら、寝不足になりそうなぐらい懸命にブラッシングするようになった。「アーケスティアの肌は抜けるように白いね」って褒めたら、絶対日焼けしないようにパラソルを手放さなくなった。「ずっと聞いていたい声だね」って褒めたら、苦虫噛み潰したような顔でジンジャーハニーティー(蜂蜜多め)を飲むようになった。細い指を褒めたら。選んだドレスを褒めたら。知性あふれる女性が好きって言ったら。たくさん本を読む女性が好きって言ったら。
ボクの好みの女性になろうと努力するスティア。普段の、ツンケンしたワガママな彼女とは違う、ボクだけが知ってるスティアは、とても一生懸命でかわいらしくて、愛おしい。
ただの幼なじみじゃない。ただの学友じゃない。彼女を独り占めしたくて、こうして従属するフリをしている。
だけど。
(そろそろ別の手を考えるか……)
下僕扱いも悪くないけど、もう少し関係を変化させたいと思う。
彼女を「スティア」と呼んでもいいのはボクだけ。ボクだけが彼女を「スティア」と呼べる関係。
彼女の名前を甘く囁いて、その唇に赤いキャンディをそっと指で押し込んで。それから彼女の前で思わせぶりに水色のキャンディを口に含む。耳まで真っ赤になったスティアを抱き寄せて、その様子を堪能するのもいいか――ん?
ふと目に留まった、パステルカラーのまあるいお菓子。焼き上げた柔らかな二枚の生地に、同じ色のクリームを挟んだお菓子。黄色に黄緑、オレンジに、ベージュに、ブラウン。色とりどりにトレーに並ぶなかで、特にピンクに目を惹かれた。
(スティアの髪みたいだな)
淡くふんわりとしたストロベリー色。マカロン。きっと手にしたら、彼女の髪と同じで甘い香りがするんだろう。
「たまには、マカロンなんてのもいかがですか」
その声に顔を上げると、キャンディの瓶を包装し終えた店員と目が合った。
「そのマカロン、最近は若い女の子に大人気なんですよ」
「そ、そうなんですか」
「ええ。それか、その隣のマドレーヌとかね」
女性店員の軽いウィンク。
「坊主、マロングラッセもいいぞお」
なぜか厨房から出てきた主までカウンター越しに勧めてくる。二人共、営業用に笑っているというより、こっちの事情を勝手に察してニマニマしている。
「い、いえ。今日はこのキャンディで充分です!」
言って、女性店員に代金を渡す。
「またよかったらお買い上げくださいね~」
「ウチのはどれも絶品だぞぉ」
背後に、クスクスと笑う声が聞こえる。
(遊ばれた……)
マカロンのお菓子言葉は、「特別な人」
マドレーヌのお菓子言葉は、「アナタと更に仲良くなりたい」
マロングラッセのお菓子言葉は、「永遠の愛」
それを知っててあの二人は勧めてきた。
(しばらくは、あの店に買いに行くのをやめようかな)
ボクがどうしてキャンディばっかり買ってるのか、その理由まで見透かされてる。
けど。
(次にマカロンを買って帰ったら、スティア、どんな顔するかな)
意味を知って目を白黒させる? それとも、なんにも気づかずにパクッと食べちゃう?
キャンディと同じように、意味に気づかず食べられてしまうのも、それはそれで楽しいかもしれない。
(でも、気づいてくれたら、うれしいかな)
マカロンの意味に気づいて、白い肌を真っ赤に染め上げるスティア。いつものワガママお嬢様でいられなくなって、あわてて必死に取り繕うスティア。
想像するだけで笑いがこみ上げる。
ワガママお嬢様じゃないスティア。それはとても愛おしくて愛らしい、本当のスティア。ボクだけが見てもいい、ボクだけのスティアの素顔。
ゆるんだ頬のまま、鼻歌が出そうになるのをこらえ、彼女の待つ学園へと帰ることにした。
風にゆれた庭園の花が、四阿に新たな来訪者を告げる。
「ご歓談中、失礼いたしますわ」
にこやかに、そして少しだけ申し訳無さそうな声。
「アーケスティア……」
現れたのは、アーケスティアと呼ばれた令嬢。
四阿にいた令嬢たちが、「とんでもございませんわ」と彼女を迎え入れる。
四阿にいたのは、この学園に通う名家の令嬢たち三人と令息一人。花に囲まれ、優雅に語らい合っていたところを訪れたのも、ともに机を並べる学友の令嬢。そして、その背後には黒い身なりの彼女の執事。
学業の合間、休み時間に令息、令嬢が語り合う。そこに新たな令嬢が加わる。
この学園なら、どこにでもある、普通な光景かもしれない。
そのまま、五人でお茶を飲み、テーブルの上にあるお菓子でも食したとしたら。しかし。
「あの、申し訳ないのですが、彼をお借りしてもよろしいでしょうか」
四阿の中を見渡し、アーケスティアが言った。
その豊かなストロベリーブロンドの髪をゆらし、白い頬に細い指を添えて。
「彼にどうしてもお願いしたいことがありまして。それでこちらに参りましたの」
ごめんなさいね。
長いまつげに縁取られ、ぱっちりした空色の目が、恐縮で細められる。
その姿に、四阿に軽く緊張が走る。飲みかけのティーカップは、カチャリとソーサーに戻され、楽しいお茶の時間が終了したことを告げる。
「お願いしたいこととは?」
ここには、「彼」と呼ばれる人物は一人しかいない。令息も、彼女が訪れた理由を薄々理解していたのだろう。彼女のために空席を作ろうと立ち上がり、そのまま彼女に向き直った。
「ええ。急にごめんなさいね。でも、わたくし、どうしても食してみたいものがあって。それを、アナタにそろえていただきたいの」
は?
令息だけでなく、座ったままの令嬢たちまで目を見開く。
食べたいものを? 買ってくる? 令息が?
この学園、令息、令嬢の連れているお抱え執事やメイドだけでなく、学園で働くメイドや従僕もたくさんいる。彼らは常に、生徒である令息令嬢が快適に学園生活を送れるように働いている。今だって、四阿に広げられているティーセットはすべて学園のメイドが用意したもの。令嬢が令息に頼まなくても、メイドたちに頼めば、いくらでもそろえてくれる。
それなのに、なぜ令息に頼む?
「わかりました。では、何をそろえたらよろしいですか?」
軽く目をつむり、息を吐き出してから令息が問うた。反論、拒否するつもりはないらしい。
「では、三番街にあるアンリ・シャンパルティエのフィナンシェに、オーギュスタン・デメルのカヌレ・デ・ボルドー、その四軒先のローデヴェイクのキュベルドン。それとアレッキオ・デル・ゾルデのスフォリアテッレと、ラ・ジア・ブリジッタのトルタ・パラディーゾ。それからラ・マール通り、サン・アンジェリナの期間限定シャインマスカット・タルトをお願いできるかしら」
チョット待て。
誰もが思う。
そんなに大量の注文、誰が覚えられるっていうんだ?
指定された店、指定されたお菓子。まるで呪文。
「……わかった。買ってくるよ」
「よろしくお願いいたしますわ」
ゆっくりと歩き出した令息の背中を、アーケスティア嬢の笑顔が見送る。
――あんなに、ご注文されなくても。
――おかわいそう。
――家のことがあるから、逆らえないのでしょう。
残された令嬢たちのヒソヒソ話。
あの令息の家は、新しく始めた事業に、令嬢の家から莫大なお金を出資してもらっている。
令息の家は身分も低い、新興の事業家貴族。令嬢の家は代々続く名家で、王家にも繋がる血統と、莫大な資産を持つ。
事業は親がやっていることとはいえ、あの令息も令嬢に逆らうことができないのだろう。もし令嬢の機嫌を損ねたら。そのせいで出資を止められたりしたら、令息の一家は事業に失敗し、路頭に迷うことになる。
だから、令嬢が欲しいと言えば、なんだって買いに走る。いつだって、令嬢のわがままを引き受ける。下僕扱いにも耐え続ける。
そんな境遇に耐える令息を労ろうと用意したお茶会だったのに。
「あの、そのようなお買い物、執事にでも頼めばよろしいのでは?」
令嬢の一人が非難する。
せっかくのお茶会を台無しにされたことに、令息の境遇になけなしの正義感が絞り出した言葉。残りの二人も同意見なのか、勇気を出して非難した令嬢を左右から支えるように寄り添い頷く。
「あら。申し訳ありません」
クルリとふり返ったアーケスティア。
「執事には、これからお茶を淹れてもらわなくちゃいけませんから。お手空きなのはユリウスしかおりませんもの」
学友である令息を執事と同等、いやそれ以下の扱いをしたのに、まったく悪びれてない。
声は鈴を転がしたかのように愛らしいのに、その内容に令嬢たちは絶句するしかない。
「では、ごきげんよう」
軽やかに一礼すると、執事を連れて去っていくアーケスティア。
優雅で気品あって美しい名家の令嬢。しかしその中身は、学友の令息の弱みを利用して、下僕扱いを楽しむ高慢で意地悪な性格。
「なんて娘なの……」
絞り出された令嬢たちの言葉が風に乗る。
*
「よろしいのですか、お嬢様」
背後、一歩後ろに従う執事の言葉。
その言葉に、止まるでもなくふり向くでもなく、ただ前だけを見て、庭園を歩き続ける。
だって、なにが「よろしいのか」、訊かれている意味はわかっているから。
ユリウスにあんな無茶な買い物を頼んで――。
学友の令嬢たちに嫌われるようなことをして――。
「よろしいのですか」に含まれるのはこの二つ。だから、ふり向かない。止まらない。
「いいのよ」
今更、どう思われたって。
「高慢なお嬢様」、「家の権力、財力をカサにきたお嬢様」
わたしの評価はそんなところかしら。
学園で一、二を争う名家の生まれ。容姿。知性。
黙っていれば、その生まれにふさわしい美しい令嬢なのに、学友の弱みにつけこんでやりたい放題のワガママぶり。今もこうして、家の力関係を利用して、学友令息を顎で使う――悪女。
どれだけ美しくても、地位があっても、それでは誰も近寄らない。近寄りたくない。だから、いつだって一人ぼっち。あいさつ程度は交わすけど、それ以上踏み込んでくる者はいない。
でも。
それでいいのよ。
誰にも近寄ってほしくないの。
どうせ、家の資産とか地位とか、そういうの目当ての連中だし。わたしとお近づきになれたら、自分の家に利益があるのではないか。手に入れて、トロフィーワイフのように隣に飾っておいても悪くないだけの容姿もある。
近寄ってくるのは、大抵、そういう連中。だから、ぼっちでちょうどいいの、わたしは。
ワガママ娘って思われても、なんとも思わないわ。
(ユリウスさえ、わかってくれれば)
彼は違う。
彼にはあと少しでいいから、わたしに近づいてほしい。
だから、お父さまにお願いして、彼の家の事業に出資していただいた。出資していることを理由に、他の令嬢より一歩先んじて彼に近づけるから。実際、彼の家の事業は投資するに値するだけの立派なものだったし。
幼なじみのユリウス。
彼はいつだって笑っていて、怒ったところを一度も見たことない。頭のネジが二、三本抜けてるんじゃないかってぐらいのヘラヘラぶり。
「もうちょっとシャキッとしなさいよ」とか言いたくなるけど、わたしは、彼のそういうところが好きなんだからどうしようもない。
そう。
わたしは彼、ユリウスが好き。
彼が、「スティアの髪はキレイだね」って褒めてくれたから、毎晩ハゲそうなほどブラッシングしてる。「スティアの肌は抜けるように白いね」って褒めてくれたから、絶対日焼けの跡を残さない。「ずっと聞いていたい声だね」って褒めてくれたから、好きでもないジンジャーハニーティーをかかさず飲んでる。彼が細いわたしの指を褒めてくれたから。選んだドレスを褒めてくれたから。彼が好きなのは知性あふれる女性って聞いたから。たくさん本を読む女性って聞いたから。
だから。だから一生懸命努力した。
ただの幼なじみじゃない。ただの学友じゃない。その先へ、一歩でも前に進むために努力を重ねた。
だけど。
(上手く行かないのよね……)
わざと身につけた、この居丈高な態度がいけないのかもしれない。
独り占めしたくて続けるワガママがいけないのかもしれない。
だって。
彼の好みのタイプは「心優しい女性」だから。
こんな態度ばっかりじゃ、絶対「好き」になってもらえない。
けど。
(今更、どうやって変えたらいいのよ)
ワガママ女って思われてるのに。急に心優しくなっても「気持ち悪い」とか、「何を企んでるんだ」って思われるのがオチ。好きになんてなってもらえない。
彼には本当のわたしを見てほしいのに、身につけたワガママが邪魔をする。
(世の中、上手くいかないものねえ)
深くふかくため息をもらす。
「ねえ。とりあえずだけど、お茶の支度をしてくれないかしら」
「お茶……でございますか?」
「そうよ。ああ言った手前、お茶の用意をしておかなくちゃね」
「承知いたしました」
執事が胸に手を当て、うやうやしく頭を下げる。
「では、キャンディに似合いそうなお茶を用意しておきましょう」
「そうね。それがいいわ。どうせ今日も、キャンディでしょうし」
ユリウスにお菓子を買いに行かせたのは、今日が初めてじゃない。
いつだってユリウスは、あの呪文のような怒涛の注文を覚えてられなくて、キャンディを買ってくる。「これで勘弁してくれないかな」と、おずおず差し出される瓶詰めキャンディ。
(まあ、そのキャンディが欲しくてわざとやってるんだけどね)
キャンディに含まれる意味は、「あなたのことが好きです」
そのキャンディを彼から受け取る。色とりどりのキャンディの入った瓶。一番最初に取り出して食べるのは、彼の目と同じ色、赤いキャンディ。
どうせユリウスのことだから、キャンディにそんな意味が含まれてるとか、わたしがどの順番で食べてるとか気づいてないんだろうな。
優しいくせに、どこまでも鈍感な彼。
そこがまた愛おしくも焦れったい。
「いっそのこと、マカロンでも頼んでみたらどうですか?」
「え? は? ま、マカロンッ!?」
驚くわたしに、頷く執事。
「二番街にマカロンの美味しい店があるそうですよ。いつも贈られるキャンディと同じ店ですが。たまにはマカロンを食べてみたいとお願いしてみてはいかがでしょう」
「だだだ、ダメッ! ダメ、ダメ、ダメッ! そんなことしてウッカリバレたらどうすんのよ!」
マカロンのお菓子言葉は、「特別な人」
それを彼にねだるだなんて。そそそ、そんなこと! そんなことっ!!
頬に手を当て、昇りきった熱を下げようとするけど、上手くいかない。熱が指まで感染してジンジンしてくる。
「バレてもよろしいのでは?」
「ダメに決まってるでしょっ!!」
バレて「ごめんね」されたらどうすんのよ! ボクはそんな気持ちはないんだとか言われたら、わたし、きっと立ち直れない。深くふかく地面にめり込んで、二度と地上に這い上がれない気がする。
「まどろっこしい……」
軽い舌打ち音とともに、風に乗って聞こえた執事のホンネ。
わかってるわよ。わかってるから、そんなふうに言わないでよ。
ジレジレなんてかわいいもんじゃない。かったるいノロノロ恋愛してるってわかってるから、それ以上なにも言わないでよ。頼むから。
*
(さて……)
頼まれた(命じられた?)ものを買うため、いつものように二番街へと足を向ける。
(三番街にあるアンリ・シャンパルティエのフィナンシェに、オーギュスタン・デメルのカヌレ・デ・ボルドー、その四軒先のローデヴェイクのキュベルドン。それとアレッキオ・デル・ゾルデのスフォリアテッレと、ラ・ジア・ブリジッタのトルタ・パラディーゾ。それからラ・マール通り、サン・アンジェリナの期間限定シャインマスカット・タルト、か)
言われたことは全部覚えている。
あの鈴の音を転がしたような声で言われたことは全部。一字一句間違えることなく覚えてる。
だけど。
(ま、いっか。キャンディで)
覚えたことはすべて消去。
カランと音を立て、いつもの店の扉を開ける。
「あら、いらっしゃい坊っちゃん」
「こんにちは」
むせ返りそうなほど、甘い香りに満ちた店内。
カウンターのむこう、若い女性の店員の笑いに、あいさつを交わす。
色とりどりのお菓子の並んだショーケース。
白いホイップ。柔らかそうなパステルカラー。甘くビターなチョコレート。ふんだんに使われた果物。とろけるキャラメル色のソース。
きっとどれも美味しいんだろう。どれも女の子が喜びそうなお菓子。
だけど。
「すみません、そのキャンディを詰めてもらえませんか?」
カウンター越しにボクの挙動を見守っていた店員に告げる。指さした先にあったのは、いつも買い求める色とりどりのキャンディ。
「承知いたしました」
軽く笑って店員が空の瓶にキャンディを詰め始めた。
いつも買っているからだろう。
好きな色を好きなように瓶詰めしてくれる売り方なのに、どの色をどれだけ入れるかなど訊ねられはしなかった。
(注文、覚えられるほど買ってるのかな)
いつも多めに入れてもらってる赤色のキャンディ。それから空色。後は店員の判断に任せて詰めてもらっている。
(覚えられてるとしたら……恥ずかしいな)
どうしてその色を? とか訊ねられたことはないけど、やはりどこか気恥ずかしい。
赤色はボクの目の色。空色のは彼女の目の色。
キャンディのお菓子言葉は、「あなたのことが好きです」
ボクが贈ったそのキャンディを、彼女が口にするのを見るたび、愉悦のような、背徳感のようなものが体を走る。彼女のプルンッと愛らしい唇に吸い込まれる、赤いキャンディ。ゾクゾクする。
だから、わざと覚えられなかったフリをして、キャンディを買い求める。「これで勘弁してくれないかな」って渡すけど、本当は「これを食べてほしいんだ」
(ボクがこんなことしてるって知ったら、彼女、どう思うかな)
先ほどの四阿。
あそこで学友の令嬢たちとお茶をしたのも、わざとだった。ああして令嬢に囲まれていれば、絶対彼女はやってくる。そして、令嬢たちからボクを引き離すために、無理難題を言いつけてくる。
周囲には、「ワガママ令嬢に振り回される哀れな令息」、「家のこともあって、命令に従うしかないかわいそうな人」と見えているんだろうけど、実際は違う。
家の事業は、彼女の父親なら飛びついてきそうなものを、ボクがわざと父さんに提案した。そうして関係を作っておくことで、他の学友よりも一歩前に先んじたかったから。
幼なじみのアーケスティア。
彼女が、利害まみれで近づいてくる輩から身を守るために、わざと居丈高に、嫌われるように振る舞っていることを知っている。本当の彼女は、臆病で寂しがり屋で、とっても頑張り屋だってことを、ボクだけが知っている。
ボクは、スティアが好きだ。
ボクが「アーケスティアの髪はキレイだね」って褒めたら、寝不足になりそうなぐらい懸命にブラッシングするようになった。「アーケスティアの肌は抜けるように白いね」って褒めたら、絶対日焼けしないようにパラソルを手放さなくなった。「ずっと聞いていたい声だね」って褒めたら、苦虫噛み潰したような顔でジンジャーハニーティー(蜂蜜多め)を飲むようになった。細い指を褒めたら。選んだドレスを褒めたら。知性あふれる女性が好きって言ったら。たくさん本を読む女性が好きって言ったら。
ボクの好みの女性になろうと努力するスティア。普段の、ツンケンしたワガママな彼女とは違う、ボクだけが知ってるスティアは、とても一生懸命でかわいらしくて、愛おしい。
ただの幼なじみじゃない。ただの学友じゃない。彼女を独り占めしたくて、こうして従属するフリをしている。
だけど。
(そろそろ別の手を考えるか……)
下僕扱いも悪くないけど、もう少し関係を変化させたいと思う。
彼女を「スティア」と呼んでもいいのはボクだけ。ボクだけが彼女を「スティア」と呼べる関係。
彼女の名前を甘く囁いて、その唇に赤いキャンディをそっと指で押し込んで。それから彼女の前で思わせぶりに水色のキャンディを口に含む。耳まで真っ赤になったスティアを抱き寄せて、その様子を堪能するのもいいか――ん?
ふと目に留まった、パステルカラーのまあるいお菓子。焼き上げた柔らかな二枚の生地に、同じ色のクリームを挟んだお菓子。黄色に黄緑、オレンジに、ベージュに、ブラウン。色とりどりにトレーに並ぶなかで、特にピンクに目を惹かれた。
(スティアの髪みたいだな)
淡くふんわりとしたストロベリー色。マカロン。きっと手にしたら、彼女の髪と同じで甘い香りがするんだろう。
「たまには、マカロンなんてのもいかがですか」
その声に顔を上げると、キャンディの瓶を包装し終えた店員と目が合った。
「そのマカロン、最近は若い女の子に大人気なんですよ」
「そ、そうなんですか」
「ええ。それか、その隣のマドレーヌとかね」
女性店員の軽いウィンク。
「坊主、マロングラッセもいいぞお」
なぜか厨房から出てきた主までカウンター越しに勧めてくる。二人共、営業用に笑っているというより、こっちの事情を勝手に察してニマニマしている。
「い、いえ。今日はこのキャンディで充分です!」
言って、女性店員に代金を渡す。
「またよかったらお買い上げくださいね~」
「ウチのはどれも絶品だぞぉ」
背後に、クスクスと笑う声が聞こえる。
(遊ばれた……)
マカロンのお菓子言葉は、「特別な人」
マドレーヌのお菓子言葉は、「アナタと更に仲良くなりたい」
マロングラッセのお菓子言葉は、「永遠の愛」
それを知っててあの二人は勧めてきた。
(しばらくは、あの店に買いに行くのをやめようかな)
ボクがどうしてキャンディばっかり買ってるのか、その理由まで見透かされてる。
けど。
(次にマカロンを買って帰ったら、スティア、どんな顔するかな)
意味を知って目を白黒させる? それとも、なんにも気づかずにパクッと食べちゃう?
キャンディと同じように、意味に気づかず食べられてしまうのも、それはそれで楽しいかもしれない。
(でも、気づいてくれたら、うれしいかな)
マカロンの意味に気づいて、白い肌を真っ赤に染め上げるスティア。いつものワガママお嬢様でいられなくなって、あわてて必死に取り繕うスティア。
想像するだけで笑いがこみ上げる。
ワガママお嬢様じゃないスティア。それはとても愛おしくて愛らしい、本当のスティア。ボクだけが見てもいい、ボクだけのスティアの素顔。
ゆるんだ頬のまま、鼻歌が出そうになるのをこらえ、彼女の待つ学園へと帰ることにした。
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