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8.にゃーず・リポート
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【猫化ドロップに対する実証実験】
目的:舐めると猫化するという怪しげな事象が、本当に起き得るのか実証する。
原理:この怪しげなドロップを舐めると猫になれる。しかし、その猫化時間、条件などはまだ未確定。猫化時間がどれぐらいなのか、今後のための治験。
実験方法:ドロップを一つ舐める。ただし、猫化したのを第三者に見られぬよう、実験は自室にて行う。また、猫化している間、スマホを取り出したり、食事を作ったりすることは不可能となるので、スマホは予めテーブルの上に置いておき、食事も用意しておく。万が一を考えて、部屋のカーテン、玄関の鍵は閉めておく。また、窓から出入りすることを考慮して、窓の鍵は開けておく。玄関からの帰還もあり得るので、そちらの鍵は持っておく。
実験開始:18:00、午後六時をもって、実験を開始する。ドロップを一つ舐めると、数分も経たず体が猫化し始める。ドロップを舐め終わる頃には、完全猫化。
(うおおおぉ~)
猫化に対して、痛みなどはナシ。みるみるグングン体が小さくなっていくことに驚くのみ。数分後、視界の変化が収まったところで、部屋にあった姿見で容姿を確認。
容姿、猫。
灰色と白の毛並み。ハチワレ猫。
タシタシと動く尻尾も健在。
お腹と顔の一部、足の先は白い。後は全体的に灰色。目は琥珀。たぶん、「カワイイ」の部類。――自分でなければ。
猫化した自分の周りに、着ていた服が落ちてる形跡はナシ。猫化とともに、どこかに消えたんだろうか。そういう点で、「魔法少女」とか「戦隊ヒーロー」の変身に近い変化の仕方。
って、実験リポートを書いてるんじゃなくて。
(いざ!)
前脚で窓を開け、ベランダに出る。
(た、高い……)
見上げる仕切り板。人型だったときよりも何倍にも大きくそびえ立ってるように見える。でも。
(やるっきゃない!)
予め用意しておいたダンボールとか椅子とか。乗り越えるべき板の反対側、ベランダの隅まで移動して、心と体の準備を整える。
大丈夫。
今のあたしは猫。
どんくさい人型のどかじゃなくて、俊敏な猫型のどか。
この壁を乗りえた先。あたしの大好きなシノさまが待っている。
あたしが駆けつけたら、そしたら、きっと絶対「アナタには敵わないな」とか「よく頑張ったな」とか褒めてくださるのよ! 「あまり無茶なことをするな」って怒るかもしれないけど、それでもこの一途で健気な想いは受け止めてくださるはず!
それに。
老師。あたし、いけるでしょうか。
心の中、ポコンと湧いた仙人みたいな風貌の老師に問いかける。
――うむ。今こそ長年の修行の成果を見せる時!
なぜかビョウビョウと吹きすさぶ風。老師とあたし、長くこの険しい山の中で究極奥義を極めんと、辛く厳しい修行に耐えてきた。(という設定)
だから、だからあたしならできる!
無事あの壁を乗り越えて、シノさまを取り返してみせます!
――その心意気や良し! 今こそ、我が流派最高の奥義を顕現するのぢゃ!
では!
(うおりゃあぁぁあぁぁっ! 石破! ニャンニャンマオマオ拳!)
トトトト、ピョンピョンピョーン!
野生のケモノのように、音も立てずにしなやかに、素早く! それが石破ニャンニャンマオマオ拳!
(うぉっとっとっとぉおぉっ!)
――とはいかない、踏み台にした椅子がコケたけど、気にするな! 板の上部にはしがみつけた! 後は体を持ち上げて、反対側にたどり着くだけ――って。
(おしり! おしりが持ち上がんない!)
老師! お願いですから、ちょいっと押してくれませんか――
(ぎゃあおわぁっ! ――痛ったあ……!)
誰に押してもらったわけでもないのに、勝手にバランス崩した体。ギリギリ板は越えたけど、代わりにドベチャと向こう側に墜落。
猫になっても、どんくささは変わらないのね。猫らしからぬ、無様な着地。
(で、でもまあ、目標地点には到達できたし、板の向こうで老師も「うむ」ってうなずいてるし……って。あったあ!)
側溝に横たわるシノさまアクスタ。
ああ、お会いしたかった、シノさま。頬ずり、抱きしめてもいいですか?
って、そんなことしてる場合じゃないのよ!
志乃さま、まだお留守のようだけど、いつ帰ってくるかわかんないし。万が一のため、猫化してるけど、だからって安心していいもんじゃないし。
シノさまを見つけたからには、サッサととんずら、自分の部屋に戻るに限る!
(でも、これ、どうやって持って帰ろう)
取りに来るまでは考えてたけど、帰るは想定してなかった。
アクスタ、今のあたしの手、肉球じゃ持ち上げることも無理だし。だからって、咥えていくのは、歯で傷つけちゃいそうだし。
(とりあえず、側溝から通してお帰りいただく?)
なるべくそーっと鼻でアクスタを押して。多少の傷はついちゃうかもだけど、それ以外に持ち出す方法がない。
カサ。カサカサ。カサカサカサ。
ちょっとずつ、傷をつけないように丁寧にご移動願う。側溝、あまり汚れてないせいか、これなら上手く行きそう……。あと、もう少し……。もうちょっと……。
カラリ。
「あれ? お隣の猫?」
ギクギクギクギクゥ!
開いた窓。顔を出した志乃さま。
あたしの毛、ぶわわわっと、オールスタンディングオベーション。
「なんか物音がすると思ったら。お前、逃げ出してきたのか?」
サンダル引っ掛けベランダに出てきた志乃さま。そのままヒョイッとあたしを抱き上げる。
(うぎゃわあぁぁっ!)
志乃さまの腕のなか、あたしパニック。
とりあえず、最優先事項であるアクスタ奪還、自分の部屋側ベランダに追いやることはなんとか成功したけど。成功したけどっ!
「――あれ? また留守か」
お部屋を通り抜けて、あたしの部屋に正規ルートで向かった志乃さま。あたしを部屋に返還してくださろうとしたのだろうけど。無駄に鳴り響くだけのインターホン再び。
ごめんなさい。部屋主はここにいます。ニャオン。
「仕方ない。帰るまで待つか」
そう言ってお部屋リターン。あたし同伴。
「またおじいさんに何かあったのかな」
いえ。祖父は元気です。おそらく。
今日も元気に、お店に出す栗きんとんを作ってると思います。
「にしても、お前、ムチャするなあ。どうやってあのベランダ越えてきたんだ?」
トスンと床に座り、あたしの喉を指で撫でる志乃さま。
シノさまの「無茶なことを」(お叱り)じゃなく、志乃さまから「ムチャするな」(感想)をもらうなんて。ビミョウな心境、ゴロニャンニャン。志乃さま、とても上手な猫可愛がりですこと。そのお手前に、喉を鳴らしたくなる。ゴロニャン。
「まあ、いいか。とりあえず、お前、お腹空いてないか?」
ゴソゴソと手近にあったカバンを探った志乃さま。取り出したのは、――あたしのゴハン? 「にゃ~る」?
一本舐めたら止まらニャイ~、止まらニャイったら止まれニャイ~♪ みんなだいしゅき、ニャアニャアにゃ~る、もう一本! の「にゃ~る」マグロ味。赤いスティック状のおやつ。猫用。
猫ならこれ大好きだよね? 喜んで食べる(舐める)のが普通だよね?
食べやすいように、ピッと端を切られた「にゃ~る」。それと志乃さまの顔を何度も見比べる。
(これ、食べたほうがいいよね?)
ここまでしてもらって、「食べない」って選択はないよね? 食べたことないけど、食べたら意外に美味しかったり――する?
(えいっ!)
ペロッ。
(????)
もう一度。ペロ。
(????????)
「?」が増えた。
これ、美味しいの? ホントに?
どこにもマグロ感はないし、美味しいのカケラもない。不味くないだけマシってぐらい。食べ物であることは認識できるけど、ベタっとした何かを食べてるっていう感じしかない。
(でも、全部食べたほうがいいよね?)
だって、これ、せっかく志乃さまが用意してくださったものだし。宇宙に放り出されたような不思議な味だけど、不味くて食べられないってわけでもないし。猫っぽく疑われないためにも、食べ物を粗末にしないためにも、完食したほうが――。
ヒョイ。
「お前、こういうの好きじゃないのか」
取り上げられた「にゃ~る」。
「好きじゃないなら、無理に食べなくていいぞ」
いや、でも……。それでいいのかな?
「おいで」
あたしを、あぐらの上に載せた志乃さま。って、志乃さまの上に? あたしっ!?
ウニャン。
思わず声が出る。
志乃さまの手が、優しくあたしの背を撫でる。
くり返し、くり返し。背中を撫で終わった手が、時折クンと頭を押さえるように触れて、そのまま背中を撫でていく。
顎もそうだったけど、志乃さま、猫の気持ちいいところ、よくわかってる! 首から上と尻尾の手前。その辺り、特に耳の後ろ! サイコーです!
人間だったら速攻逃げ出したい部位だけど、猫だったら、猫だから……、ウニャン。――ウニャッ!?
あたしの体を持ち上げた志乃さま。耳の後ろの辺りに顔を近づけて――
「……お前、いい匂いだな」
ねっ、猫吸いっ!?
志乃さま、思いっきりスーハー匂いを嗅いでいらっしゃるっ!?
耳の後ろだけじゃない。そのまま首筋、背中へと嗅がれる部位が移動していく――って。
(ウギャオワウヘホワニョヘ~~ッ!)
シタバタモガモガ。
猫っ! 猫だからって吸わないでぇっ!
推しソックリさんに、匂いを嗅がれるってどんなプレイよっ!
(フンギョエェッ~~!)
声にならないあたしの叫びが響く。
実験考察:猫化して志乃さまに拾われた時は、性別確認だけでなく、猫吸いにも注意。
でないと、あたし、トロントロンのクタンクタンになっちゃいます。ヘチョ。
目的:舐めると猫化するという怪しげな事象が、本当に起き得るのか実証する。
原理:この怪しげなドロップを舐めると猫になれる。しかし、その猫化時間、条件などはまだ未確定。猫化時間がどれぐらいなのか、今後のための治験。
実験方法:ドロップを一つ舐める。ただし、猫化したのを第三者に見られぬよう、実験は自室にて行う。また、猫化している間、スマホを取り出したり、食事を作ったりすることは不可能となるので、スマホは予めテーブルの上に置いておき、食事も用意しておく。万が一を考えて、部屋のカーテン、玄関の鍵は閉めておく。また、窓から出入りすることを考慮して、窓の鍵は開けておく。玄関からの帰還もあり得るので、そちらの鍵は持っておく。
実験開始:18:00、午後六時をもって、実験を開始する。ドロップを一つ舐めると、数分も経たず体が猫化し始める。ドロップを舐め終わる頃には、完全猫化。
(うおおおぉ~)
猫化に対して、痛みなどはナシ。みるみるグングン体が小さくなっていくことに驚くのみ。数分後、視界の変化が収まったところで、部屋にあった姿見で容姿を確認。
容姿、猫。
灰色と白の毛並み。ハチワレ猫。
タシタシと動く尻尾も健在。
お腹と顔の一部、足の先は白い。後は全体的に灰色。目は琥珀。たぶん、「カワイイ」の部類。――自分でなければ。
猫化した自分の周りに、着ていた服が落ちてる形跡はナシ。猫化とともに、どこかに消えたんだろうか。そういう点で、「魔法少女」とか「戦隊ヒーロー」の変身に近い変化の仕方。
って、実験リポートを書いてるんじゃなくて。
(いざ!)
前脚で窓を開け、ベランダに出る。
(た、高い……)
見上げる仕切り板。人型だったときよりも何倍にも大きくそびえ立ってるように見える。でも。
(やるっきゃない!)
予め用意しておいたダンボールとか椅子とか。乗り越えるべき板の反対側、ベランダの隅まで移動して、心と体の準備を整える。
大丈夫。
今のあたしは猫。
どんくさい人型のどかじゃなくて、俊敏な猫型のどか。
この壁を乗りえた先。あたしの大好きなシノさまが待っている。
あたしが駆けつけたら、そしたら、きっと絶対「アナタには敵わないな」とか「よく頑張ったな」とか褒めてくださるのよ! 「あまり無茶なことをするな」って怒るかもしれないけど、それでもこの一途で健気な想いは受け止めてくださるはず!
それに。
老師。あたし、いけるでしょうか。
心の中、ポコンと湧いた仙人みたいな風貌の老師に問いかける。
――うむ。今こそ長年の修行の成果を見せる時!
なぜかビョウビョウと吹きすさぶ風。老師とあたし、長くこの険しい山の中で究極奥義を極めんと、辛く厳しい修行に耐えてきた。(という設定)
だから、だからあたしならできる!
無事あの壁を乗り越えて、シノさまを取り返してみせます!
――その心意気や良し! 今こそ、我が流派最高の奥義を顕現するのぢゃ!
では!
(うおりゃあぁぁあぁぁっ! 石破! ニャンニャンマオマオ拳!)
トトトト、ピョンピョンピョーン!
野生のケモノのように、音も立てずにしなやかに、素早く! それが石破ニャンニャンマオマオ拳!
(うぉっとっとっとぉおぉっ!)
――とはいかない、踏み台にした椅子がコケたけど、気にするな! 板の上部にはしがみつけた! 後は体を持ち上げて、反対側にたどり着くだけ――って。
(おしり! おしりが持ち上がんない!)
老師! お願いですから、ちょいっと押してくれませんか――
(ぎゃあおわぁっ! ――痛ったあ……!)
誰に押してもらったわけでもないのに、勝手にバランス崩した体。ギリギリ板は越えたけど、代わりにドベチャと向こう側に墜落。
猫になっても、どんくささは変わらないのね。猫らしからぬ、無様な着地。
(で、でもまあ、目標地点には到達できたし、板の向こうで老師も「うむ」ってうなずいてるし……って。あったあ!)
側溝に横たわるシノさまアクスタ。
ああ、お会いしたかった、シノさま。頬ずり、抱きしめてもいいですか?
って、そんなことしてる場合じゃないのよ!
志乃さま、まだお留守のようだけど、いつ帰ってくるかわかんないし。万が一のため、猫化してるけど、だからって安心していいもんじゃないし。
シノさまを見つけたからには、サッサととんずら、自分の部屋に戻るに限る!
(でも、これ、どうやって持って帰ろう)
取りに来るまでは考えてたけど、帰るは想定してなかった。
アクスタ、今のあたしの手、肉球じゃ持ち上げることも無理だし。だからって、咥えていくのは、歯で傷つけちゃいそうだし。
(とりあえず、側溝から通してお帰りいただく?)
なるべくそーっと鼻でアクスタを押して。多少の傷はついちゃうかもだけど、それ以外に持ち出す方法がない。
カサ。カサカサ。カサカサカサ。
ちょっとずつ、傷をつけないように丁寧にご移動願う。側溝、あまり汚れてないせいか、これなら上手く行きそう……。あと、もう少し……。もうちょっと……。
カラリ。
「あれ? お隣の猫?」
ギクギクギクギクゥ!
開いた窓。顔を出した志乃さま。
あたしの毛、ぶわわわっと、オールスタンディングオベーション。
「なんか物音がすると思ったら。お前、逃げ出してきたのか?」
サンダル引っ掛けベランダに出てきた志乃さま。そのままヒョイッとあたしを抱き上げる。
(うぎゃわあぁぁっ!)
志乃さまの腕のなか、あたしパニック。
とりあえず、最優先事項であるアクスタ奪還、自分の部屋側ベランダに追いやることはなんとか成功したけど。成功したけどっ!
「――あれ? また留守か」
お部屋を通り抜けて、あたしの部屋に正規ルートで向かった志乃さま。あたしを部屋に返還してくださろうとしたのだろうけど。無駄に鳴り響くだけのインターホン再び。
ごめんなさい。部屋主はここにいます。ニャオン。
「仕方ない。帰るまで待つか」
そう言ってお部屋リターン。あたし同伴。
「またおじいさんに何かあったのかな」
いえ。祖父は元気です。おそらく。
今日も元気に、お店に出す栗きんとんを作ってると思います。
「にしても、お前、ムチャするなあ。どうやってあのベランダ越えてきたんだ?」
トスンと床に座り、あたしの喉を指で撫でる志乃さま。
シノさまの「無茶なことを」(お叱り)じゃなく、志乃さまから「ムチャするな」(感想)をもらうなんて。ビミョウな心境、ゴロニャンニャン。志乃さま、とても上手な猫可愛がりですこと。そのお手前に、喉を鳴らしたくなる。ゴロニャン。
「まあ、いいか。とりあえず、お前、お腹空いてないか?」
ゴソゴソと手近にあったカバンを探った志乃さま。取り出したのは、――あたしのゴハン? 「にゃ~る」?
一本舐めたら止まらニャイ~、止まらニャイったら止まれニャイ~♪ みんなだいしゅき、ニャアニャアにゃ~る、もう一本! の「にゃ~る」マグロ味。赤いスティック状のおやつ。猫用。
猫ならこれ大好きだよね? 喜んで食べる(舐める)のが普通だよね?
食べやすいように、ピッと端を切られた「にゃ~る」。それと志乃さまの顔を何度も見比べる。
(これ、食べたほうがいいよね?)
ここまでしてもらって、「食べない」って選択はないよね? 食べたことないけど、食べたら意外に美味しかったり――する?
(えいっ!)
ペロッ。
(????)
もう一度。ペロ。
(????????)
「?」が増えた。
これ、美味しいの? ホントに?
どこにもマグロ感はないし、美味しいのカケラもない。不味くないだけマシってぐらい。食べ物であることは認識できるけど、ベタっとした何かを食べてるっていう感じしかない。
(でも、全部食べたほうがいいよね?)
だって、これ、せっかく志乃さまが用意してくださったものだし。宇宙に放り出されたような不思議な味だけど、不味くて食べられないってわけでもないし。猫っぽく疑われないためにも、食べ物を粗末にしないためにも、完食したほうが――。
ヒョイ。
「お前、こういうの好きじゃないのか」
取り上げられた「にゃ~る」。
「好きじゃないなら、無理に食べなくていいぞ」
いや、でも……。それでいいのかな?
「おいで」
あたしを、あぐらの上に載せた志乃さま。って、志乃さまの上に? あたしっ!?
ウニャン。
思わず声が出る。
志乃さまの手が、優しくあたしの背を撫でる。
くり返し、くり返し。背中を撫で終わった手が、時折クンと頭を押さえるように触れて、そのまま背中を撫でていく。
顎もそうだったけど、志乃さま、猫の気持ちいいところ、よくわかってる! 首から上と尻尾の手前。その辺り、特に耳の後ろ! サイコーです!
人間だったら速攻逃げ出したい部位だけど、猫だったら、猫だから……、ウニャン。――ウニャッ!?
あたしの体を持ち上げた志乃さま。耳の後ろの辺りに顔を近づけて――
「……お前、いい匂いだな」
ねっ、猫吸いっ!?
志乃さま、思いっきりスーハー匂いを嗅いでいらっしゃるっ!?
耳の後ろだけじゃない。そのまま首筋、背中へと嗅がれる部位が移動していく――って。
(ウギャオワウヘホワニョヘ~~ッ!)
シタバタモガモガ。
猫っ! 猫だからって吸わないでぇっ!
推しソックリさんに、匂いを嗅がれるってどんなプレイよっ!
(フンギョエェッ~~!)
声にならないあたしの叫びが響く。
実験考察:猫化して志乃さまに拾われた時は、性別確認だけでなく、猫吸いにも注意。
でないと、あたし、トロントロンのクタンクタンになっちゃいます。ヘチョ。
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