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28.愛しいからこそ、言えない本音
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「――叔母のことは、なんとなくだが、わかっていた」
夜遅く、帰ってきたマンションのリビングで。並んでソファに腰掛け話を聴く。
「会社のことも、咲良のことも。ただ確証が得られなかっただけで。時間の問題だった」
彼はそう言うけど。おそらくすべてが判明しても、彼はためらっただろう。
会社を咲良さんを陥れたのが、実の叔母だなんて。叔母が自分の死を願っていただなんて。心が受け入れきれない。
今だって、ずっとうつむいたままで、声も暗くて。一点を見つめ続ける、張り詰めた横顔は、見てるあたしの胸をキツく締め付けてくる。
「でもこれで、すべてをハッキリさせることができた。感謝する」
「翔平さん……」
思い詰めたような眼差しが、わずかに柔らかくなる。
「ただ。ただ、頼むからああいうことは二度としないでくれ」
「ああいうこと?」
「キミが囮になって、暴行犯を捕まえること」
ああ、それか。
なんかいろんなことがありすぎて、ちょっと前のことが、ものすごく過去のことに感じられる。
そっか。
わたしが誘拐されたのって、今日のことだったか。
「咲良を襲った奴らは、捕まえたいと思っていた。必ず捕まえて、地獄に叩き落としてやると。でも、それでキミが犠牲になったら。僕は……」
ギュッと膝の上で握られた拳。かすかに震えている。
「……ごめんなさい」
その拳に、そっと自分の手を重ねる。
「わたし、自分の周りにそういうヤツがいるってわかって。それで、翔平さんの役に立てればって。それで、その……」
「透子……」
「わたしっ、翔平さんのこと、好き、だからっ! だから、役に立ちたかった、のっ!」
想いが涙といっしょに、ブワッと溢れた。
「離婚されるほど、嫌われてもっ! それでもっ!」
「好き」とも「愛してる」とも言ってくれない。どれだけセックスしても、赤ちゃんはくれない。その心は、まだ咲良さんを想っていて。わたしとは、身体だけの関係だったとしても。離婚されても、それでも役に立てれば、まだ妻でいられるような気がしたから。
一瞬、逮捕された彼の叔母のことが頭をよぎった。自分の愛した人は、自分の姉だけを見ていて。姉が死んでも自分にふりむいてくれることはない。その辛さ。絶望。少しだけ理解できる。
「わたし、アナタの役に立ちたかったの!」
ふりむいてくれなくても。せめて。
「透子」
泣きじゃくるわたしを、抱きしめてくれた翔平さんの腕。
「すまない。そんなふうに思わせてたんだな」
「しょうへい、さっ……!」
感情、大爆発。
「怖かった! ホントはすっごく怖かった!」
囮になって、更科をおびき寄せて。
高校まで柔道をやっていた。一応これでも黒帯、有段者。
でもだからって、怖くないと言えばウソになる。わたしが戦ったことあるのは、あくまで試合のなかであって、あんなナイフをちらつかせるようなヤツとなんて、そんな戦い方、わたしは知らない。知りたくもない。
「すまなかった」
翔平さんが謝る。けど。
「バカ! バカバカバカ!」
何に怒ってるのか、自分でもわからない。でも私を受け止めてくれるその広い胸をポカポカ叩く。
「バカバカバカバカバカバカ……」
叩かれても叩かれても、翔平さんは何も言わない。何も言わずにわたしを抱きしめ続ける。わたしのすべてを受け止めてくれる。
「バカ、バカ、バカ……、バカ」
そうしてるうちに、わたしのなかの何もかもが涙とともに流れ落ちて、心が凪いでいく。拳もゆっくり力を失っていく。
「透子……」
落ち着くのを見計らったように、静かに翔平さんの唇が落ちてきた。
(――バカ)
心が最後の抵抗をみせる。
キスされたって、許さないんだからね?
*
「――離婚を切り出したのは、キミの周りにそういう輩が集まりだしてると気づいたからだ」
泣き疲れたわたしの頭を抱き寄せ、静かに翔平さんが語る。
「父が病を理由に、引退をほのめかすようになって。僕が社長に就任するとなれば、叔母は必ず動く。そう思ったから、離婚を宣言した。キミに叔母の手が伸びないように」
「そう、だったんですね」
彼の肩口に頭をもたれさせ、その説明を聴く。
あの快気祝いの席でのことは、わたしを守るためだったんだ。
「それなのに。まさか、嫌ってると思われるとは。心外だ」
「いや、だって! 翔平さん、一度も『好き』とか言ってくれなかったし!」
なんかわたしが、全面的に悪いように感じられて、身を起こし、真っ向から反論!
「『好き』もなにもなくて! わたし、ていの良いセフレにでもされてるのかと!」
「セフレ? 僕は、好きでもないヤツとセックスする趣味はないが?」
怒るわたしに、不思議がる翔平さん。
「そっ、それに! ずっとゴムつけてた! ずっと避妊してた!」
結婚してるのに! わたしを好きなら、どうして避妊してたのっ!?
「子どもが欲しかったのか?」
グッ。
そんなド直球に返されると、答えに詰まる。
「避妊してたのは、もう少しだけキミと二人っきりの生活を楽しみたかったからだが……。そうか」
へ?
ゴロンとソファに仰向けに転がったわたしの身体。
「子ども、作るか」
ほへ?
「いや、ちょっ、待ってっ!」
自然に、当たり前のように真顔のまま、わたしのブラウスのボタンを外していく翔平さん。
「わたしたち、離婚してますよねっ!?」
「――してない」
「へ? ヒァン!」
「あの時、離婚を宣言しただけだ。キミだって離婚届に記入してないだろう?」
「そ、そうなんですけどっ! あァン!」
チュッ。チュッ。
ブラウスの合間からブラまでずらし、彼の唇が、わたしの乳首を吸い上げる。
その優しくて、ねっとりとした愛撫。身体の奥に火が灯される。
「愛してる、透子」
彼が真剣な眼差しでわたしを見る。
「セックスしたことで、想いが伝わってると思っていた僕のミスだ。愛してる、透子。キミの不安が消えるまで。何度でも言う。――好きだ、透子」
「翔平さん……」
「キミが僕のところに来てくれて、本当によかった。父が強引に押し進めた結婚だが、今では父に感謝している。キミと結婚出来て、心の底からうれしく思っている」
普段、そんなに喋ることのない翔平さんの言葉。それも、わたしへの愛を囁いてくれる言葉。
うれしくて。うれしくて。
その首にわたしの腕を回し、彼の唇にキスをする。
「にしても、悪くないな。子どもか」
キスをくり返して。
その合間に彼が言った。
――悪くないって、なにが?
「子どもができたら。キミもあんな無謀なことはできなくなるだろうから」
「ムッ……!」
無謀っ!?
「キミが僕の愛を受けて、大人しくしてくれれば、僕の心臓も穏やかにいられる。安心して社長職を継ぐことができる」
言って、再び愛撫に戻る翔平さん。頬に。首筋に。鎖骨に。何度もキスをくり返す。けど。
「ダメだな。――透子。脱いでくれ」
は?
身を起こした翔平さんに、軽く首をひねる。――脱いでくれってナニ?
「このままだと、勢い余って、服を引き裂いてしまいそうだ」
「はあっ!?」
服を引き裂く?
「それほどまでに、透子がほしいと言ったら、――イヤか?」
イヤじゃない。イヤじゃない。むしろ、そこまで求められてすっごくうれしい。
「じゃあ、翔平さんも脱いで」
わたしだけ脱ぐのは割に合わない。
「わかった」
翔平さんは、自分のネクタイをワイシャツをスラックスを。
わたしは、脱がされかけて中途半端になっていたブラウスを、ブラジャーを。一瞬ためらって、下のキュロットを。そして下着を。すべて脱ぎ捨てた。
最後に脱ぎ捨てた下着。もう感じ始めてるのか、脚の間から、トロっと粘ついた液が、下着との間で糸を引いていた。
「……透子」
お互い裸になって、向かい合って立つ。
こういうのって、互いにケモノみたいにサカッてるみたいで恥ずかしい。でも、今のわたしは、ケモノのように彼を求めてる。隔てるものもなにもない。まっさらなわたしで、彼とセックスしたい。
今のわたしには、「愛してる」とか「好きだ」とかはどうでもいい。ただひたすらに、彼とセックスすることだけを望んでる。
「ンッ……」
それは彼も同じだったようで。伸びてきた手がわたしの頬を包むと、そのまま熱い唇を押しつけられた。わたしも彼が欲しくて、口を開き、その舌を絡める。
互いに腕を回し、相手を抱き寄せると、わたしの固くなった乳首が彼の胸板でこすれ、彼の屹立がわたしのお腹の上でビクビクと震えた。
触れ合う肌が気持ちいい。この先にある快感に震え、脚の間からトロトロと流れ落ちる液。
「このまま、いいか?」
少し身を離してみれば、わたしのお腹をヌラヌラと光らせる、彼の先走り。彼の屹立は、筋がハッキリわかるほど、血管が浮かび上がってる。
互いに、もう限界なんだ。
「――ください」
わたしの身体、ずっとアナタを求めてる。
ズプン。
「あっ、ああっ!」
腰を下げた彼に、すくい上げるようにして突き立てられ――
「ヒアッ、アッ! しょっ、翔平さっ、なに、をっ――、アアッ!」
そのまま抱き上げられる。
「掴まってろ。寝室まで運ぶ」
「えっ、そっ、アッ、ハアっ、アッ!」
わたしの自重で、彼の陰茎がわたしのナカに沈んでいく。ゴチュッとわたしの奥にぶつかる音が、身体のなかから響く。
「やっ、そん、なっ、あヒッ、イッ、アッ……」
彼の歩く振動が、さらに拍車をかける。身体を揺すられるだけでも辛いのに、振動がさらに子宮を突き上げてきて。
「そんなに締め付けるな。歩けなくなる」
「ムッ、ムリィ……!」
だったら降ろして! 抜いて!
「イク! イッちゃっ、アッ、アアッ!」
「透子」
足早に寝室に駆け込んだ彼。そのままベッドに倒れ込むと、叩きつけるように激しい抽送をくり返す。
「アッ、いっ、アアッ……!」
「クッ……!」
襲った快感に背を仰け反らし、身体の奥、彼の迸りを受け止める。
(あ、つい……)
ゴム越しとは違う、熱くわたしを満たすもの。その熱さに、つま先までビクンビクンと震えた。
「透子。愛してる」
嵐のような激情のあと。彼がささやく。
「わたしも。翔平さんが好き」
どちらからともなく、身体をつなげたまま、キスをくり返す。汗で額に張り付いた髪を梳く彼の瞳は、とても甘く優しくわたしを映す。
身体が満たされ、心も満たされ。
今のわたし、とっても幸せ。
翔平さんと結婚できてよかった。
「――透子」
ズルリと抜け落ちた陰茎。それを追いかけるように、白濁がわたしの脚の間から、トロリと流れ落ちる。
(もったいない)
そう思えたのは一瞬だった。
「あっ、ンンッ!」
今度はベッドに四つん這いに転がされ、次の瞬間には、覆いかぶさるように、彼が後ろから襲いかかる。
「大丈夫だ。何度でも注いでやる」
「翔平、さ、――ンンッ!」
ゾクゾクした快感が、背中から這い上がってきて、思わず身を震わせる。
「キミが孕むまで。僕がこんなにも愛してるのだということを、キミが思い知るまで」
「アッ、ああっ、アヒッ、ンっ……」
ゴチュゴチュ。ドチュドチュ。
身体の奥から脳天まで、激しく突かれる音が響く。
グチュグチュ。ジュプジュプ。
わたしのなかで、二人の体液が混じり合う音がする。
パンパン。パチュパチュ。
肉のぶつかり合う音。
ギシギシとベッドの揺れる音。
「翔平さんっ、しょうへい、さんっ!」
淫らな熱が、部屋に満ちる。理性を保ちたくて。必死にすがるように、うわ言のように愛しい名前をくり返す。けど。
「逃げるな、透子。それでは、終われない」
「そんなこと、言われたってぇっ! アッ、アアッ!」
激しい快感に、無意識に逃げ出しかけた腰が、彼に掴まれ引きずり戻される。
これ、ダメだ。ダメ。
「こんなのっ、――おっ、おかしく、なるぅっ!」
気持ち良すぎて、狂いそう。目の前がチカチカする。嬌声の上げ過ぎで、飲み込みそびれた唾液が滴る。
「構わない。もっと感じてくれ」
「そっ、そんなぁっ、ヒグッ! あ、ヒッ、ああっ、イッ、ああっ、あっ、ああっ!」
彼の律動が、さらに速く激しく乱れていく。
「そんなっ、あっ、イッちゃ、イッちゃ、うっ!」
「イけ。僕も……、限界だ、透子!」
ひときわ強く腰を打ちつけ、ドクンと奥深くで爆ぜた彼。
「あぁああっ!」
溜まった快感が、わたしのなかでパアンと弾ける。
「あ、ああ……、あ……」
彼が脈打つたび、わたしのナカが何度も痙攣してうねる。
もっと奥に。もっとたくさん彼を求めて。
「透子……」
「翔平さん……」
互いにハアハアと乱れた息。汗ばみグッタリした身体。でも。
――もっと欲しい。
彼の屹立が、わたしのナカで力を取り戻す。そのことに、わたしの身体がブルリと震える。
もっとくれるんだ。もっと愛してくれるんだ。
それがうれしくて、その先をねだるように、振り仰ぎキスを求める。
――もっとちょうだい。
自分が、こんなに貪欲で淫乱だとは思わなかった。
どれだけ愛されても、もっと愛されたいと思う。愛したいと願う。
「愛してる、透子」
その言葉とともに、挿ってきた屹立ごと彼を受け止める。
汗ばみ、淫らに匂い立つ身体が重なり、一つになる。
今のわたし、とっても幸せだ。
夜遅く、帰ってきたマンションのリビングで。並んでソファに腰掛け話を聴く。
「会社のことも、咲良のことも。ただ確証が得られなかっただけで。時間の問題だった」
彼はそう言うけど。おそらくすべてが判明しても、彼はためらっただろう。
会社を咲良さんを陥れたのが、実の叔母だなんて。叔母が自分の死を願っていただなんて。心が受け入れきれない。
今だって、ずっとうつむいたままで、声も暗くて。一点を見つめ続ける、張り詰めた横顔は、見てるあたしの胸をキツく締め付けてくる。
「でもこれで、すべてをハッキリさせることができた。感謝する」
「翔平さん……」
思い詰めたような眼差しが、わずかに柔らかくなる。
「ただ。ただ、頼むからああいうことは二度としないでくれ」
「ああいうこと?」
「キミが囮になって、暴行犯を捕まえること」
ああ、それか。
なんかいろんなことがありすぎて、ちょっと前のことが、ものすごく過去のことに感じられる。
そっか。
わたしが誘拐されたのって、今日のことだったか。
「咲良を襲った奴らは、捕まえたいと思っていた。必ず捕まえて、地獄に叩き落としてやると。でも、それでキミが犠牲になったら。僕は……」
ギュッと膝の上で握られた拳。かすかに震えている。
「……ごめんなさい」
その拳に、そっと自分の手を重ねる。
「わたし、自分の周りにそういうヤツがいるってわかって。それで、翔平さんの役に立てればって。それで、その……」
「透子……」
「わたしっ、翔平さんのこと、好き、だからっ! だから、役に立ちたかった、のっ!」
想いが涙といっしょに、ブワッと溢れた。
「離婚されるほど、嫌われてもっ! それでもっ!」
「好き」とも「愛してる」とも言ってくれない。どれだけセックスしても、赤ちゃんはくれない。その心は、まだ咲良さんを想っていて。わたしとは、身体だけの関係だったとしても。離婚されても、それでも役に立てれば、まだ妻でいられるような気がしたから。
一瞬、逮捕された彼の叔母のことが頭をよぎった。自分の愛した人は、自分の姉だけを見ていて。姉が死んでも自分にふりむいてくれることはない。その辛さ。絶望。少しだけ理解できる。
「わたし、アナタの役に立ちたかったの!」
ふりむいてくれなくても。せめて。
「透子」
泣きじゃくるわたしを、抱きしめてくれた翔平さんの腕。
「すまない。そんなふうに思わせてたんだな」
「しょうへい、さっ……!」
感情、大爆発。
「怖かった! ホントはすっごく怖かった!」
囮になって、更科をおびき寄せて。
高校まで柔道をやっていた。一応これでも黒帯、有段者。
でもだからって、怖くないと言えばウソになる。わたしが戦ったことあるのは、あくまで試合のなかであって、あんなナイフをちらつかせるようなヤツとなんて、そんな戦い方、わたしは知らない。知りたくもない。
「すまなかった」
翔平さんが謝る。けど。
「バカ! バカバカバカ!」
何に怒ってるのか、自分でもわからない。でも私を受け止めてくれるその広い胸をポカポカ叩く。
「バカバカバカバカバカバカ……」
叩かれても叩かれても、翔平さんは何も言わない。何も言わずにわたしを抱きしめ続ける。わたしのすべてを受け止めてくれる。
「バカ、バカ、バカ……、バカ」
そうしてるうちに、わたしのなかの何もかもが涙とともに流れ落ちて、心が凪いでいく。拳もゆっくり力を失っていく。
「透子……」
落ち着くのを見計らったように、静かに翔平さんの唇が落ちてきた。
(――バカ)
心が最後の抵抗をみせる。
キスされたって、許さないんだからね?
*
「――離婚を切り出したのは、キミの周りにそういう輩が集まりだしてると気づいたからだ」
泣き疲れたわたしの頭を抱き寄せ、静かに翔平さんが語る。
「父が病を理由に、引退をほのめかすようになって。僕が社長に就任するとなれば、叔母は必ず動く。そう思ったから、離婚を宣言した。キミに叔母の手が伸びないように」
「そう、だったんですね」
彼の肩口に頭をもたれさせ、その説明を聴く。
あの快気祝いの席でのことは、わたしを守るためだったんだ。
「それなのに。まさか、嫌ってると思われるとは。心外だ」
「いや、だって! 翔平さん、一度も『好き』とか言ってくれなかったし!」
なんかわたしが、全面的に悪いように感じられて、身を起こし、真っ向から反論!
「『好き』もなにもなくて! わたし、ていの良いセフレにでもされてるのかと!」
「セフレ? 僕は、好きでもないヤツとセックスする趣味はないが?」
怒るわたしに、不思議がる翔平さん。
「そっ、それに! ずっとゴムつけてた! ずっと避妊してた!」
結婚してるのに! わたしを好きなら、どうして避妊してたのっ!?
「子どもが欲しかったのか?」
グッ。
そんなド直球に返されると、答えに詰まる。
「避妊してたのは、もう少しだけキミと二人っきりの生活を楽しみたかったからだが……。そうか」
へ?
ゴロンとソファに仰向けに転がったわたしの身体。
「子ども、作るか」
ほへ?
「いや、ちょっ、待ってっ!」
自然に、当たり前のように真顔のまま、わたしのブラウスのボタンを外していく翔平さん。
「わたしたち、離婚してますよねっ!?」
「――してない」
「へ? ヒァン!」
「あの時、離婚を宣言しただけだ。キミだって離婚届に記入してないだろう?」
「そ、そうなんですけどっ! あァン!」
チュッ。チュッ。
ブラウスの合間からブラまでずらし、彼の唇が、わたしの乳首を吸い上げる。
その優しくて、ねっとりとした愛撫。身体の奥に火が灯される。
「愛してる、透子」
彼が真剣な眼差しでわたしを見る。
「セックスしたことで、想いが伝わってると思っていた僕のミスだ。愛してる、透子。キミの不安が消えるまで。何度でも言う。――好きだ、透子」
「翔平さん……」
「キミが僕のところに来てくれて、本当によかった。父が強引に押し進めた結婚だが、今では父に感謝している。キミと結婚出来て、心の底からうれしく思っている」
普段、そんなに喋ることのない翔平さんの言葉。それも、わたしへの愛を囁いてくれる言葉。
うれしくて。うれしくて。
その首にわたしの腕を回し、彼の唇にキスをする。
「にしても、悪くないな。子どもか」
キスをくり返して。
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「ムッ……!」
無謀っ!?
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言って、再び愛撫に戻る翔平さん。頬に。首筋に。鎖骨に。何度もキスをくり返す。けど。
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は?
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「このままだと、勢い余って、服を引き裂いてしまいそうだ」
「はあっ!?」
服を引き裂く?
「それほどまでに、透子がほしいと言ったら、――イヤか?」
イヤじゃない。イヤじゃない。むしろ、そこまで求められてすっごくうれしい。
「じゃあ、翔平さんも脱いで」
わたしだけ脱ぐのは割に合わない。
「わかった」
翔平さんは、自分のネクタイをワイシャツをスラックスを。
わたしは、脱がされかけて中途半端になっていたブラウスを、ブラジャーを。一瞬ためらって、下のキュロットを。そして下着を。すべて脱ぎ捨てた。
最後に脱ぎ捨てた下着。もう感じ始めてるのか、脚の間から、トロっと粘ついた液が、下着との間で糸を引いていた。
「……透子」
お互い裸になって、向かい合って立つ。
こういうのって、互いにケモノみたいにサカッてるみたいで恥ずかしい。でも、今のわたしは、ケモノのように彼を求めてる。隔てるものもなにもない。まっさらなわたしで、彼とセックスしたい。
今のわたしには、「愛してる」とか「好きだ」とかはどうでもいい。ただひたすらに、彼とセックスすることだけを望んでる。
「ンッ……」
それは彼も同じだったようで。伸びてきた手がわたしの頬を包むと、そのまま熱い唇を押しつけられた。わたしも彼が欲しくて、口を開き、その舌を絡める。
互いに腕を回し、相手を抱き寄せると、わたしの固くなった乳首が彼の胸板でこすれ、彼の屹立がわたしのお腹の上でビクビクと震えた。
触れ合う肌が気持ちいい。この先にある快感に震え、脚の間からトロトロと流れ落ちる液。
「このまま、いいか?」
少し身を離してみれば、わたしのお腹をヌラヌラと光らせる、彼の先走り。彼の屹立は、筋がハッキリわかるほど、血管が浮かび上がってる。
互いに、もう限界なんだ。
「――ください」
わたしの身体、ずっとアナタを求めてる。
ズプン。
「あっ、ああっ!」
腰を下げた彼に、すくい上げるようにして突き立てられ――
「ヒアッ、アッ! しょっ、翔平さっ、なに、をっ――、アアッ!」
そのまま抱き上げられる。
「掴まってろ。寝室まで運ぶ」
「えっ、そっ、アッ、ハアっ、アッ!」
わたしの自重で、彼の陰茎がわたしのナカに沈んでいく。ゴチュッとわたしの奥にぶつかる音が、身体のなかから響く。
「やっ、そん、なっ、あヒッ、イッ、アッ……」
彼の歩く振動が、さらに拍車をかける。身体を揺すられるだけでも辛いのに、振動がさらに子宮を突き上げてきて。
「そんなに締め付けるな。歩けなくなる」
「ムッ、ムリィ……!」
だったら降ろして! 抜いて!
「イク! イッちゃっ、アッ、アアッ!」
「透子」
足早に寝室に駆け込んだ彼。そのままベッドに倒れ込むと、叩きつけるように激しい抽送をくり返す。
「アッ、いっ、アアッ……!」
「クッ……!」
襲った快感に背を仰け反らし、身体の奥、彼の迸りを受け止める。
(あ、つい……)
ゴム越しとは違う、熱くわたしを満たすもの。その熱さに、つま先までビクンビクンと震えた。
「透子。愛してる」
嵐のような激情のあと。彼がささやく。
「わたしも。翔平さんが好き」
どちらからともなく、身体をつなげたまま、キスをくり返す。汗で額に張り付いた髪を梳く彼の瞳は、とても甘く優しくわたしを映す。
身体が満たされ、心も満たされ。
今のわたし、とっても幸せ。
翔平さんと結婚できてよかった。
「――透子」
ズルリと抜け落ちた陰茎。それを追いかけるように、白濁がわたしの脚の間から、トロリと流れ落ちる。
(もったいない)
そう思えたのは一瞬だった。
「あっ、ンンッ!」
今度はベッドに四つん這いに転がされ、次の瞬間には、覆いかぶさるように、彼が後ろから襲いかかる。
「大丈夫だ。何度でも注いでやる」
「翔平、さ、――ンンッ!」
ゾクゾクした快感が、背中から這い上がってきて、思わず身を震わせる。
「キミが孕むまで。僕がこんなにも愛してるのだということを、キミが思い知るまで」
「アッ、ああっ、アヒッ、ンっ……」
ゴチュゴチュ。ドチュドチュ。
身体の奥から脳天まで、激しく突かれる音が響く。
グチュグチュ。ジュプジュプ。
わたしのなかで、二人の体液が混じり合う音がする。
パンパン。パチュパチュ。
肉のぶつかり合う音。
ギシギシとベッドの揺れる音。
「翔平さんっ、しょうへい、さんっ!」
淫らな熱が、部屋に満ちる。理性を保ちたくて。必死にすがるように、うわ言のように愛しい名前をくり返す。けど。
「逃げるな、透子。それでは、終われない」
「そんなこと、言われたってぇっ! アッ、アアッ!」
激しい快感に、無意識に逃げ出しかけた腰が、彼に掴まれ引きずり戻される。
これ、ダメだ。ダメ。
「こんなのっ、――おっ、おかしく、なるぅっ!」
気持ち良すぎて、狂いそう。目の前がチカチカする。嬌声の上げ過ぎで、飲み込みそびれた唾液が滴る。
「構わない。もっと感じてくれ」
「そっ、そんなぁっ、ヒグッ! あ、ヒッ、ああっ、イッ、ああっ、あっ、ああっ!」
彼の律動が、さらに速く激しく乱れていく。
「そんなっ、あっ、イッちゃ、イッちゃ、うっ!」
「イけ。僕も……、限界だ、透子!」
ひときわ強く腰を打ちつけ、ドクンと奥深くで爆ぜた彼。
「あぁああっ!」
溜まった快感が、わたしのなかでパアンと弾ける。
「あ、ああ……、あ……」
彼が脈打つたび、わたしのナカが何度も痙攣してうねる。
もっと奥に。もっとたくさん彼を求めて。
「透子……」
「翔平さん……」
互いにハアハアと乱れた息。汗ばみグッタリした身体。でも。
――もっと欲しい。
彼の屹立が、わたしのナカで力を取り戻す。そのことに、わたしの身体がブルリと震える。
もっとくれるんだ。もっと愛してくれるんだ。
それがうれしくて、その先をねだるように、振り仰ぎキスを求める。
――もっとちょうだい。
自分が、こんなに貪欲で淫乱だとは思わなかった。
どれだけ愛されても、もっと愛されたいと思う。愛したいと願う。
「愛してる、透子」
その言葉とともに、挿ってきた屹立ごと彼を受け止める。
汗ばみ、淫らに匂い立つ身体が重なり、一つになる。
今のわたし、とっても幸せだ。
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