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一章
12.レベルアップ(二回目)
しおりを挟む新しく増えていたアイコンに『食事処』というのがあった。
早速起動させてみる。
メニューが現れ、『購入』と『調理』の二つが選べるようになっている。
まずは『購入』だ。
・カレーライス(2SP)
・牛丼(2SP)
・塩ラーメン(2SP)
動物園内のレストランか!
なんというか、動物園だとか、水族館だとかに出てくるような定番メニューだ。
メニューはこの三つしかない。
いざとなったら助かるのかもしれないが、とりあえずメニューを増やしてほしい。野菜が無いし、あと出来ればスイーツが欲しい。
今は購入するつもりもないので、『調理』を見てみることにした。
嫌な予感しかしないが。
・カイマンマンの唐揚げ
なるほど、SPは消費しないようだ。
俺はそっとホームボタンを押した。
次はSPの確認だ。
個人メニューから開いて確認してみると、なんと、186も増えていた。
ワニ男が3SPで十二匹倒したから、合計で36SP。ということは、あの怪物ワニは150SPあったという事になる。
なんとも美味しい。いや、食わないけど。
さて、それでは早速レベルを上げてみるか。
「八雲さん、職業のレベルを上げるのって、損してませんか?」
「え? ……あ、本当だ!」
「なるほど、マスターたちはそうなのですね。私はまだ関係なさそうですが」
30SP使ってレベルを上げても、ステータスは合計13しか上がらない。だったら各ステータスを30SP使って30上げてしまった方がお得というわけだ。気付かなかった。
そうと分かれば、早速ステータスを上げて行こうと思ったのだが、一つ気になることができた。
例えば攻撃力を10上げたとして、俺はその反動に耐えられるのだろうか。
中学の時に同級生が言っていた。「俺は自分のパンチに拳が耐えられなくて、よく怪我をする」と。
それに、ルージュの攻撃で鋼の剣がボロボロになって崩れてしまったという事もある。
そこら辺のことを考えたら、少し怖い。
実験してみよう。
「ちょっと、皆。まだステータスは上げないでくれ。ちょっと試してみたいことがある。
ルージュ、殴らせてくれ」
「すごく嫌なんですが」
「大丈夫だって。どうせ効かないだろ」
「まぁ、そうだとは思いますけど。じゃあ、下半身なら良いですよ」
「よし、ありがとう」
俺は、中学の時に教えてもらった殴り方を思い出しながら構え、八割ぐらいの力で殴ってみる。
「糞蜘蛛がぁ!」
ゴンッ、という鉄でも殴ったかのような鈍い音がした。
やっぱり俺の拳の方が痛い。ルージュは全く平気そうだ。ただ、凄く渋い顔をしている。
「確かに全然痛くはありませんでした。心以外は」
「レン、俺の手に『癒しの光』を掛けてくれ」
「うん」
淡い光が発生し、俺の拳の痛みが引いた。
次に攻撃力を5だけ上げてみる。
「よし、もう一回行くぞ」
「何の意味があるんですか? もうやめていただきたいのですが」
「必要な事なんだ。我慢しろ」
「はぁ……」
再び構え、先程と同じぐらいの強さで殴ってみた。
「このポンコツ騎士め!」
殴った瞬間、拳に痛みが走った。
さっきよりよほど痛い。
やはり攻撃力を上げた分、自分に返ってくるダメージも大きくなるらしい。
再びレンに手を治療してもらい、今度は耐久力を10上げてみた。
これで攻撃力、耐久力共に、111だ。
「多分これで最後だ」
「……はい。もう泣きそうなので、最後にしてください」
「駄クズがぁ!」
お、今度はあまり痛くない。
やはり耐久力を上げると、自分の攻撃の反動も防いでくれるようだ。
ということは、敏捷と反応速度、魔力と魔力耐性もそれぞれ対になっているのだろう。体力だけは関係ないのかもしれないが。
俺はそれを全員に伝え、二つの値が同じになるように設定することにした。
皆で相談しつつ何を上げるか考える。
「俺はとりあえず、病のバッドステータスのせいで体力が減りやすいみたいだから、体力を中心に上げてみようと思う」
「私は悩むのですが、敏捷中心にしようかと思います。もっと速く走りたいですしね」
全員ジト目でルージュを見つめた。
気持ちは一緒だ。勘弁してくれ。
「私は魔法特化にしてみようと思います。雑魚ぐらい一撃で倒したいですしね」
「ぼくはどうすればいいかなぁ?」
「レンはどうなりたいんだ?」
「つよくなりたい!」
アバウトだなぁ。
どうしたものかと思って春川さんを見ると、彼女はにっこりと微笑んだ。
今度はちゃんと考えがあるらしい。
前回は見捨てられたしな。
「それだったら、あえて攻撃特化にして、50レベルに達した時に格闘家を取ればいいのよ。それでゆくゆくはモンクを狙ってみればいいの」
「ふーん?」
「要するに、戦いながら味方を助ける、みたいな職業かな」
俺が簡単に要約すると、レンは嬉しそうに頷いた。
そういった方向性が良いらしい。
ということで、各々の強化の方向性が決まった。
今度こそステータスを上げて行こう。
まずは体力に30振って、次に敏捷に20……って、振れないぞ。敏捷に5振ったところで、『これ以上強化できません』と出てきてしまった。
「八雲さん、これ、合計で50しか強化できないみたいです」
「なるほど、あとはレベルを上げろってことか」
仕方ない。
まだ確定していなかったので、一度キャンセルする。
それなら、敏捷が低いから反応速度に合わせ、魔力と魔力耐性は均等に上げ、残りを体力に振ろう。
そして残ったSPの内、100だけ貯めておいて、残りはレベル上げに回すことにした。
ということで、こうなった。
名前 :イクト ヤクモ
所属PT:アラクネマスター
状態 :病(中)
体力 :40→57
攻撃力 :106→120
耐久力 :101→120
敏捷 :36→53
反応速度:47→53
魔力 :32→40
魔力耐性:33→41
SP :73→89(+186、-170)
職業 :狂戦士LV3→6(NEXT60)
スキル :狂化LV1→2(30→27min)、自動回復LV1→2、精神汚染耐性LV1→2
だいぶ強くなったような気がする。
スキルも狂戦士がLV5になった時に、レベルアップした。多分LV5ずつでレベルアップしていくのだろう。マックス10ぐらいだとありがたい。
ちなみにスキルの狂化の隣にある(27min)は、待機時間のようだ。
一度強化を唱えた後、暫くの間は使えないようだったから、恐らくそうだろう。
さて、他に何か新しい機能はついていないだろうか。
念のため、色々と探ってみる。
所持アイテムに売却と贈与の機能が付いていることに気付いた。
俺は即、カイマンマンの肉を売却する。おかげで2SP入った。
俺が持っているのはカイマンマンの肉が二個だけだったので、残りは全てルージュに入っているのだろう。
「なぁ、ルージュ。あのワニ男の肉と怪物ワニの肉って、お前食べるか?」
「た、食べませんよ。あんな気色悪いもの」
元が蜘蛛だけに気にしないかと思ったが、そうでもないらしい。
「もし良かったらさ、所持アイテムにある贈与の機能を使って、春川さんとレンに分けて上げてくれないか?」
「はぁ、別に構いませんが、なぜでしょうか?」
「あのアイテムって、売るとSPになるらしいんだ。だから、ステータスの低い二人を少しでも底上げできたらと思って」
「なるほど、承知しました。私から見たらマスターも十分低いんですが、マスターはよろしいので?」
「うっさいわ! 俺は強い!」
ルージュが二人にアイテムを贈与した。
これで少しでもステータスを上げて行ってもらって、俺の代わりに戦えるようになってもらおう。まぁ、ルージュがいる限り、必要ないかもしれないが。
俺も最低限自分の身は自分で守れるようにするため、スマツの操作を続ける。
ちょっと楽しくなってきたというのもあるけど。
あと機能が増えているのは、武器&防具だ。
購入、売却、加工の三つになっていた。
加工は灰色になっていて、押すことができない。
そういえば武器も防具も買っていないし、加工するものがそもそもなかった。
試しに何か買ってみようかと思い、武器を選ぶ。
・青銅の剣(10SP)
・鉄の剣(20SP)
・鋼の剣(30SP)
・ミスリルの剣(50SP)
・青銅のナイフ(5SP)
・鉄のナイフ(10SP)
・スティールダガー(20SP)
・ミスリルダガー(35SP)
・鉄の爪(15SP)
・鋼の爪(25SP)
・ミスリルの爪(45SP)
おお、滅茶苦茶増えてる。しかもファンタジー定番のミスリル装備まで追加されていた。
……って、まさか!?
ガバッと顔を上げ、ルージュを見てみると、すでに手遅れだった。
おそらくミスリル製だと思われる剣を、うっとりと眺めている。
また壊れたらどうするのだろう。
いや、深くは考えまい。自分のことに集中しよう。
だが実際のところ、俺もミスリルダガーにすごく惹かれている。買っちゃおうかな……。
いや、まだ我慢しておこう。牛刀包丁で十分戦えているのだ。ちゃんと血を拭いたり、研いだりと、手入れを続けていれば、まだまだ使えるはずである。
結局俺は何も買わず、一番に操作を終えたのが俺だったため、全員の操作が終わるのを待つことにした。その間レンのを見てやる。
「レンはステータス中心に上げた方が良いかもな。武器があっても使えないだろう」
「うん、たたかえるようになりたい」
「まぁ、それはもう少し先になると思うけどな」
レンは彼の希望もあり、俺のようにSPを貯めておくなんて悠長なことはせずに、一気にレベルを上げていった。
名前 :レン クズミ
所属PT:アラクネマスター
状態 :健康
体力 :9→21
攻撃力 :10→30
耐久力 :7→29
敏捷 :11→23
反応速度:18→24
魔力 :19→35
魔力耐性:17→35
SP :70→33(+193、-230)
職業 :白魔法使いLV3→7(NEXT:70SP)
スキル : 癒しの光LV1→2(5/5→6/6【12min】)、解毒の聖水LV1→2(5/5→6/6【12min】)、退魔の光LV1→2(5/5→6/6【12min】)
結果、とてもバランスよく育ってしまったが、これはこれでいいだろう。
器用貧乏になってしまうような気も、しなくはないが。いや、万能型なんだ。うん。
あと、食材を売ると、一律で1SPらしい。
春川さんも終了し、俺に結果を見せてくれた。
名前 :ナオ ハルカワ
所属PT:アラクネマスター
状態 :健康
体力 :10→17
攻撃力 :17→21
耐久力 :14→21
敏捷 :26→38
反応速度:30→38
魔力 :35→67
魔力耐性:37→69
SP :96→68(+192、-220)
職業 :黒魔法使いLV2→6(NEXT:60SP)
スキル :炎弾LV1→2(5/5→6/6【12min】)、水刃LV1→2(5/5→6/6【12min】)、
風刃LV1→2(5/5→6/6【12min】)、岩弾LV1→2(5/5→6/6【12min】)
春川さんの魔力が一気に上がっている。
本当に魔力特化型になったようだ。
さらに春川さんは武器を買っていた。
杖だ。
俺の武器メニューにはなかったが、春川さんのところにはあったらしい。レンにも見せてもらったところ、レンのところにもあった。
春川さんの買った杖は、指輪を捨てに行く映画の魔法使いが使っていたような長いものではなく、魔法学校に通う眼鏡の少年が使っていたような短いものである。スタッフやロッドより短い、ワンドといったところだ。
30SPもした、割と良いやつらしく、パーティーの火力アップに期待したい。
さて、あとはルージュだけだが、何だか見るのが怖いな……。
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#ヒラ俺
この度ついに完結しました。
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途中迷走してました……。
今までありがとうございました!
---
追記:2025/09/20
再編、あるいは続編を書くか迷ってます。
もし気になる方は、
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