乙女ゲームで唯一悲惨な過去を持つモブ令嬢に転生しました

ここはどこ？

「……逃げよう」
　辺りには、異臭が漂い鮮血が飛び散り拷問の跡とでも言うように人が吊るされ、手足がそこら中に転がっている
　そんななか少女は手足に足枷と手枷をつけられ監禁されている
　いつもの少女ならこのまま諦めて一日中感情を殺し、無為な一日を過ごしていただろう
　けれど今日は違う
　なぜなら……前世の記憶を取り戻したから
　彼女の前世は、絢瀬蒼蘭あやせそら普通の大学生唯一の長所と言ったら鋼のメンタル
　例えば全校生徒の前で転けても何も無かったかのように話始め、強盗犯が来ても焦ること無く冷静に生徒の避難誘導をして強盗犯に立ち向かう胆力
　なので彼女にとって別にこの光景など「臭っそれにちょっとグロいなホラーみたい」この程度だ
　そんな彼女の転生理由
　それは小さい女の子が信号無視のトラックに轢かれそうな所を、華麗に庇った結果トラ転…つまりトラックに轢かれて転生した
「逃げるけど…この枷どうしよう」
そんな少女には、先程言ったように鉄で出来た足枷と手枷がついていて、引っ張っても自分の肌が擦れて血が出るだけだ
「……魔法使えないかな？」
　彼女の記憶が戻る前の少女が知っていた魔法という対抗手段
　魔法とは、魔力を使い現象を起こすことを言う
　例えば水を出すことが出来たり、珍しいのなら傷を治すことが出来るものもある
　人には、魔法の得意不得意があり大体の人が「火」「水」「風」「土」の四つのうちどれかを持っている
　稀に「光」「闇」など珍しい魔法を持っている者もいる
「うーん切るなら風かな？」
　風？……切る…風の刃？
「風刃」
　 スパンッ
　ガシャンッ
　魔法すごいなぁ
　手足にはめてあった枷は、綺麗に真っ二つに切れ落ちた
「よしっ逃げよう」
　足を踏み出した瞬間けたたましい音と共にドアが開いた
「なんだ？今の音は」
　現れた人は、それはそれは体型がムキムキでいかにも脳筋ですって言っているような体型の大男だった
　その大男は、枷の外れた私を見て目を丸くした
「は？何故外れている？まさか魔力の覚醒…」
「今チャンスかな？」
「水圧」
　次の瞬間筋肉ムキムキ男は、大量の水によって行動不可能な状態となった
「ドアも開いているし逃げよ」
　ドアを出た先は、階段で階段を登った瞬間吹き飛ばされた
　多分だがこうやって逃げようとした人を逃がさないようにする為だろう
　けれど今の彼女には、刺激を与えてはいけなかった
　今日、前世の記憶が戻った衝撃は、思いの外少女にとって負担だったのだろう
　彼女の体は、光を放ちそこら一帯を焦土と化した