乙女ゲームで唯一悲惨な過去を持つモブ令嬢に転生しました

雨夜 零

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自論:女の嫉妬は世界で一番怖い

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 リー叔父さんの所を離れた後、私はパーティーホール体育館に向かった
「リー叔父さんの新入生代表挨拶なんて宛にならない!」と思い、自分で考えて来たのは正解だった
 そうしてパーティーホールに向かって歩いていると…ものすごい速さで走って転ぶ少女を見た
 しかも走って転んだ先にいるのは…リアム王太子殿下
「え?ん?んんん?」
 私には色々とキャパオーバーだった
 まずリアムには深紅の髪に深緑色の瞳のナイスバディの美女…確か乙女ゲームでは、悪役令嬢のシュリ・アーシアナ公爵令嬢が腕を絡まして胸を押し付けている
 対して少女は、桃色の髪にルビーのような瞳の美少女…乙女ゲームのヒロインだ
 名前はリリー・ムーア
 親友が言うには、優しく慈悲深く大人しい性格で…で……?
「なんか違くない?」
 転んだヒロイン…リリーは、リアムを潤んだ上目遣いで見上げながら、シュリの事を凄い形相で睨んでいる
 その姿は前世で言うだろう
 ……女の前だけ態度の変わるすごくタチの悪い系の

 少し前の三人の会話を振り返ってみると
「アーシアナ嬢…腕を離してくれないか?」
 リアムがそう問うと
「嫌ですわリアム様、私の事はシュリと呼んでくださいと言ったではないですか!」
 と、更に胸を押し付けながら上目遣いで媚びるように応えた
 そこにものすごいスピードで突っ込んでくるリリーヒロイン
 リアムの少し前辺りで派手に転び「いったーい」と言って蹲っている
 その言葉にリアムは、ため息を一つつきリリーヒロインに手を差し伸べようとした所...
 ガシッとシュリ悪役令嬢が王太子殿下を掴み去ろうとした
 それに黙っていないのがリリーヒロイン。そうヒロインは、簡単に諦めないのだ
 こうして女同士無言の戦い睨み合いが始まった

「王太子殿下には悪いけど…巻き込まれる前に去ろう」
 あの二人の後ろに龍と虎が見える……
 悪役令嬢はあれが普通なんだろう…多分
 けどヒロインは…大人しくないし慈悲深そうでもなく、優しくもなさそう……転生ヒロインとか?小説ラノベや乙女ゲームでは、よくある話だよね
 転生ヒロインは偏見かもしれないが、大体痛い性格だと思っている
 小説ラノベや乙女ゲームでは、痛すぎる勘違いが原因で首と胴体がお別れしたり、国を追放されるのは前世の小説ラノベや乙女ゲームではお決まりだ
 巻き込まれるのは勘弁だな
 私がそう思い去ろうとしたらバチッとリアムと目が合った
 その瞬間…さっきまで死んだような目をしていたリアムの目が、一瞬で救世主を見るような目に変わった
 私はそれに気づき逃げようとしたが…時すでに遅し
「久しぶりだねシエル嬢。待たせてしまって済まない。美しい華に囲まれてしまってね」
 キラキラな王子様スマイルで言われた。しかも前に約束をしてた設定ですか…
 "女の嫉妬は見苦しい"とは本当によく言ったものだ。貴方の後ろにいるその般若…華と形容した者は、先程貴方と接していた顔を醜く歪めてもはや般若のようですよ?
 そう思いながら私はカーテシーをした
「王太子殿下ごきげんよう。約束など気にしなくて平気ですわ。どうぞその美しい華達といらしてください」
 直訳するとこうだ
『こんにちは王太子殿下。そもそも約束などしていないので気にしないでください。どうぞその美しい華達と一緒にいらしてください』
 その言葉にリアムは一瞬表情が固まったがすぐに王子様スマイルで応えた
「約束を破ることはできないよ。だから行きましょう?シエル嬢?」
 その言葉に私は顔を青くした
 今のリアムの言葉は、聞き方によっては脅しだ
 リアムはこう言っている
『確かに約束はしていないね。少しこの状態から逃げたいんだ協力してくれるね?シエル嬢?(圧)』
 これくらいは言っている
 ついでに言えば圧もある…これは権力がある人だけ出来る半強制的な行い……脅しだろう 
 ……角が立たないように連れて行こう
「確かにそうですね。私はこの後新入生代表挨拶があるのでパーティーホールまで一緒に行きましょう」 
「ありがとうございます」
 私は淑女の仮面を被り、リアムは王太子としての王子様スマイルを被った
 そうして私とリアムは去った
 私は気づかなかった…ヒロインと悪役令嬢が不気味な笑みを浮かべながらこちらを見ていた事を

 その時密かにこの光景を見ていた男がいた
 学園長リーヴァイ・スロールだ
 彼はシエルの前では見せない冷淡な表情で呟いた
「シュリ・アーシアナとリリー・ムーア…要注意だな」
「あのクソ王太子は殺す。俺の姪に手を出しやがって」
  この事はシエルの父ブルーワの耳に入り
 ブルーワは青筋を浮かべルシウス国王に抗議書を送った

       
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