乙女ゲームで唯一悲惨な過去を持つモブ令嬢に転生しました

雨夜 零

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国王の受難

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 sideルシアス


 私…俺はルシアス・A・ベグニアス
 スファルニア公爵家現当主であるブルーワ・スファルニアの親友であり、この国の国王だ
 正直俺は、ブルーワに仕事以外では信用されていないと思っている
 なぜなら…シエル・スファルニア誘拐事件では真っ先にブルーワに疑われ誤解を解くのに一年かかったからだ
 それだけではなく、女には誰にでも手を出すとでも思っているのか知らんが、シエル嬢の顔を見た瞬間「お前には絶対に見せないからな」と言われた
 俺は妻一筋なのに…
 他にも、シエル嬢の誘拐から一年が経った頃ブルーワが未だに必死に探しているから善意で「手伝おうか?」と聞いたのに…
 少し逡巡した後「お前は何もするな」と絶対に含みがある言葉を返された

 そんなある日多分親友のブルーワから手紙が来た
 相変わらず本題だけだったが…


 拝啓   ベグニアス国王陛下

 学園のルールを一から変える許可を頂きたい

 ブルーワ・スファルニア


 俺はこれを見てピーンと来た
 これは…シエル嬢見つかったな?と
 だから俺はからかいを含めた手紙を送った
 途中背筋に悪寒が走ったが、浮かれていた為その意味を気づけなかった
 後日俺は、悪寒の正体を知ることになり、あんな手紙を送った事を深く後悔することになるのだが…この時の俺はウキウキだった


 拝啓   ブルーワ・スファルニア公爵家当主殿

 セレスティア学園については好きに変えてもらって構わない
 ついでに気に入らない奴の処遇もね
 そういえば話は変わるが娘は見つかったかい?
 見つかったのなら早く見せて欲しいのだが
 どうせなら我が息子の妻…まずは筆頭婚約者候補にでもならないか?
 親友の娘なら大歓迎だよ

 ルシアス・A・ベグニアス


 この後からパッタリと手紙が来なくなり仕事が増える事になったルシアスは、もうシエル嬢にちょっかいをかける事を辞めると密かに心に誓った

 それから3年の月日が経った
 今日は息子の入学式…正直不安がある
 もし息子リアムがシエル嬢に惚れでもしたら……俺がブルーワに殺される
 そんな事を思いながら王宮の執務室の机で突っ伏していると俺の専属執事…セグナが入ってきた
「失礼します。国王陛下…スファルニア公爵家現当主様からのお手紙です」
 俺の事情を知っているセグナは、憐憫の眼差しを向けてきた
 そんな視線を向けるなら助けて欲しい…
「まあ…ただの手紙かもしれないしな!」
「それは無理があります」 
 おいっ俺の空元気を返せよセグナ
 そして現実を見せつけるな
「さっさと開けたらどうです?」
「お前…さっきから酷いな」
 つい本音が出た俺にセグナはいい笑顔で言う
「私には関係ありませんから」と

 そうして五分考えた末に手紙を開けた瞬間…俺の手が凍ったり燃えたり、砂が目に入ったり…つい大声で紙に向かって「手紙に魔法付与する方法なんてあったか!?」と叫んだ
 まぁ…その真相はもう1枚入っていた紙に書かれていたが


 ルシアス・A・ベグニアス国王陛下

 旦那様は、随分とお怒りのようで…魔力を込めながら手紙を書いていたので何かしらの影響があるかもしれません…
 注意して開けてください。

 スファルニア公爵家
 執事長セバス


「……切実にもっと目立つようにして欲しかった」
 そう思い怪我を治そうとしたらさっきから無言でいたセグナが、目の前の俺の姿、次に机に置かれた手紙の内容を読んで
「───っwww」
 爆笑した
 それを見て俺は相変わらずだと呆れた
 セグナは、スファルニア公爵家執事長であるセバスの双子の兄だが、少々…結構カッチリとした事が嫌いな性格だ
 なのに何故かセレスティア学園の執事科では首席という結果を取っていた天才だ
 過去…この話はやめよう
 そんなセグナは、俺への普段の態度がそもそも無礼……軽い為、アーシアナ家に目を付けられているが駒にできないかセグナは忠誠心だけは、信用している
 だが…「ムカつくな」
「www何か言いました?」
 その瞬間ブチッと音が脳に響き渡った。そして俺はいい笑顔でセグナに言った
「仕事1.5倍追加な?」と

             ✿.•¨•.¸¸.•¨•.¸¸❀✿❀.•¨•.¸¸.•¨•.✿
 この後セグナは猛省しました


 ブルーワ・スファルニアの手紙の内容


 拝啓 ルシアス・A・ベグニアス国王陛下

 随分と御子息はご自由のようですね?子供の面倒も見れないのか?
 もし宜しければ御子息をスファルニア公爵家に招待したい少しこっちに王太子を連れて行って躾をしたい
 既に御招待の用意はできています。
 是非前向きに検討をよろしくお願いします。

 ブルーワ・スファルニア

 改めてこの手紙を読んだルシアスは息子に向けて憐憫の念を向けた
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