オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!

みさちぃ

文字の大きさ
35 / 120

その14 立ち入り禁止区域にて

しおりを挟む
やばい!
隣国王太子殿下を引っ叩いてしまいピンチ!ピンチです!!

「はははっ。ますます気に入った。」

いや…叩かれてそのセリフ…危ない人ですか?

「ヴィクセレーネと言ったな。
公爵令嬢か。家柄的には問題ないな。
さあ、我が国では丁重にもてなしてやる。
喜べ。
それではこの国に国王に許しを貰いに行くとしようか。」

喜べません!

ダマガラン王太子殿下に手を引かれた。力の差ありすぎてずるずる引きづられて行く!!
「嫌っ!!」
「嫌なのか?抱えていって欲しいのか?」
「違う。何でそういう解釈になるの!もう手ぇ離して!」

「ダマガラン王太子殿下!!」
少し遠くから声がした。
誰かが走ってきた。よく見えないがこの声は…

「ルース!!」

慌てて息を切らしてルースが走ってきた。
何でここにいるの?
そんなことはどうでもいい!助けて!!

ルースはダマガラン王太子殿下の前に立った。

「ハイドフランツ=ダマガラン王太子殿下、彼女を離してくれないかな?」
「嫌だ。私は彼女を連れて帰る。私の妃にするのだ。」
「彼女を渡すわけにはいかないんだ。」
「君は誰だ?」
「ルーズローツ=ディ=サー=ザインだ。」
「ザイン公爵家の次男か…」

ルースは頷いた。
そのままずっとダマガラン王太子を見ていた。

「そういうことか…」

ダマガラン王太子が大きなため息をついた。
と、思ったら私から手が離された。
なんか蛇に睨まれたカエルのようだ。ザインって呪文か何かなの?

私は慌ててルースの後ろに隠れた。

「申し訳ないけど、彼女だけには絶対手を出さないで欲しい。」

そう言って私の手を引っ張ってその場を後にした。

さっきのルースはかっこよかったな。と、思いながらルースに手を強く引かれながら歩いていた。

無言だ。かなり怒っている。
この頃ルースいつも怒ってない?
私はやはり何か気に触ることした?

「シャーリー…ったく、こんなところで何してるんだ。ここは騎士団からは少し離れているよ。王族が住む領域なんだ。だから君はここにいてはいけないんだ。」
「えっ!!」

つまり私は立ち入り禁止区域にいたってこと!

「もう僕が見つけたからいいものの、他の人だったら侵入罪で捕まるよ。」
「…ごめんなさい。」
「でもよかった。シャーリーが無事で。
あいつに何かされた。」
「うん。大丈夫。ありがとう。ルースが来てくれてよかった。」

ルースが突然立ち止まった。そして頬に手を当てた。

「赤くなってる。どうしたの?」
「ちょっと光る…冷たいものをつきつけられて…」
「あいつ…許さない…」

あ、ルースの目つきが怖い。

「わ、私があんなところにいたのが悪いんだから。それに痛くないし!大丈夫よ。」
「他には。」
「…ちょっと……」

触れただけだけど、頬にキスされたなんて言ったらどう思うんだろ。
私はとっさに頬を抑えた。

「ちょっと、何?」

怖い!怖いんですが…ルース。
怒りのオーラを納めてください。
視線が痛い…。

私は下を向いて答えた。

「頬に…触れたというか…キ…スされたというか…。」

あ!いや。納めてください。
黒いです。
ルースの周り真っ黒です。

突然ルースがつないでいる方の手を引っ張った。
私はルースに引き寄せられた。
そして私の頬にキスをしてきた。

「…上書き。本当に君は隙だらけなんだよ。」

ルースはそれだけ言うとくるりと周り私に背中を見せて歩き出した。

私はルースに手を引かれたまま歩いた。

私の顔は今真っ赤だ。見られたくない。よかった。
私は頬に手を置きながらルースの背中を見ていた。
恥ずかしいが嬉しい。


※※※
「ハイドフランツ殿下、どちらにいかれてました?」
「また金髪碧眼…この国は嫌な奴ばかりだな。」
「何かいわれましたか?」

この国の王太子レオンハルト殿下が前に立ちはだかった。

「ちゃんとこの部屋にいて下さいと言いましたよね?」
「あの…なんか怪しい影を見つけたから…」
「怪しい影?侵入者がいましたか?」
「迷子だったみたい。ザイン公爵家の紋章が入った青いリボンをした子猫ちゃんだったよ。」
「シャーリーが来てたのか?」
「かわいいね。多分数年すればこの国で三本の指に入るくらい綺麗になるな。できれば国に連れて帰りたかったけど、ザイン公爵の次男に連れていかれちゃった。」
「連れて帰る、だと?!」
「ひっ!!あ、いや。冗談だよ。冗談。はははっ。」
やはり金髪碧眼、この国の王族は苦手だ。


ダマガラン王国内で言われていることがある。

『ザインの持ち物には手を出すな。国が滅ぶ。』
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

【完結】【35万pt感謝】転生したらお飾りにもならない王妃のようなので自由にやらせていただきます

宇水涼麻
恋愛
王妃レイジーナは出産を期に入れ替わった。現世の知識と前世の記憶を持ったレイジーナは王子を産む道具である現状の脱却に奮闘する。 さらには息子に殺される運命から逃れられるのか。 中世ヨーロッパ風異世界転生。

転生令嬢の涙 〜泣き虫な悪役令嬢は強気なヒロインと張り合えないので代わりに王子様が罠を仕掛けます〜

矢口愛留
恋愛
【タイトル変えました】 公爵令嬢エミリア・ブラウンは、突然前世の記憶を思い出す。 この世界は前世で読んだ小説の世界で、泣き虫の日本人だった私はエミリアに転生していたのだ。 小説によるとエミリアは悪役令嬢で、婚約者である王太子ラインハルトをヒロインのプリシラに奪われて嫉妬し、悪行の限りを尽くした挙句に断罪される運命なのである。 だが、記憶が蘇ったことで、エミリアは悪役令嬢らしからぬ泣き虫っぷりを発揮し、周囲を翻弄する。 どうしてもヒロインを排斥できないエミリアに代わって、実はエミリアを溺愛していた王子と、その側近がヒロインに罠を仕掛けていく。 それに気づかず小説通りに王子を籠絡しようとするヒロインと、その涙で全てをかき乱してしまう悪役令嬢と、間に挟まれる王子様の学園生活、その意外な結末とは――? *異世界ものということで、文化や文明度の設定が緩めですがご容赦下さい。 *「小説家になろう」様、「カクヨム」様にも掲載しています。

転生しましたが悪役令嬢な気がするんですけど⁉︎

水月華
恋愛
ヘンリエッタ・スタンホープは8歳の時に前世の記憶を思い出す。最初は混乱したが、じきに貴族生活に順応し始める。・・・が、ある時気づく。 もしかして‘’私‘’って悪役令嬢ポジションでは?整った容姿。申し分ない身分。・・・だけなら疑わなかったが、ある時ふと言われたのである。「昔のヘンリエッタは我儘だったのにこんなに立派になって」と。 振り返れば記憶が戻る前は嫌いな食べ物が出ると癇癪を起こし、着たいドレスがないと癇癪を起こし…。私めっちゃ性格悪かった!! え?記憶戻らなかったらそのままだった=悪役令嬢!?いやいや確かに前世では転生して悪役令嬢とか流行ってたけどまさか自分が!? でもヘンリエッタ・スタンホープなんて知らないし、私どうすればいいのー!? と、とにかく攻略対象者候補たちには必要以上に近づかない様にしよう! 前世の記憶のせいで恋愛なんて面倒くさいし、政略結婚じゃないなら出来れば避けたい! だからこっちに熱い眼差しを送らないで! 答えられないんです! これは悪役令嬢(?)の侯爵令嬢があるかもしれない破滅フラグを手探りで回避しようとするお話。 または前世の記憶から臆病になっている彼女が再び大切な人を見つけるお話。 小説家になろうでも投稿してます。 こちらは全話投稿してますので、先を読みたいと思ってくださればそちらからもよろしくお願いします。

お人好しの悪役令嬢は悪役になりきれない

あーもんど
恋愛
ある日、悪役令嬢に憑依してしまった主人公。 困惑するものの、わりとすんなり状況を受け入れ、『必ず幸せになる!』と決意。 さあ、第二の人生の幕開けよ!────と意気込むものの、人生そう上手くいかず…… ────えっ?悪役令嬢って、家族と不仲だったの? ────ヒロインに『悪役になりきれ』って言われたけど、どうすれば……? などと悩みながらも、真っ向から人と向き合い、自分なりの道を模索していく。 そんな主人公に惹かれたのか、皆だんだん優しくなっていき……? ついには、主人公を溺愛するように! ────これは孤独だった悪役令嬢が家族に、攻略対象者に、ヒロインに愛されまくるお語。 ◆小説家になろう様にて、先行公開中◆

溺愛最強 ~気づいたらゲームの世界に生息していましたが、悪役令嬢でもなければ断罪もされないので、とにかく楽しむことにしました~

夏笆(なつは)
恋愛
「おねえしゃま。こえ、すっごくおいしいでし!」  弟のその言葉は、晴天の霹靂。  アギルレ公爵家の長女であるレオカディアは、その瞬間、今自分が生きる世界が前世で楽しんだゲーム「エトワールの称号」であることを知った。  しかし、自分は王子エルミニオの婚約者ではあるものの、このゲームには悪役令嬢という役柄は存在せず、断罪も無いので、攻略対象とはなるべく接触せず、穏便に生きて行けば大丈夫と、生きることを楽しむことに決める。  醤油が欲しい、うにが食べたい。  レオカディアが何か「おねだり」するたびに、アギルレ領は、周りの領をも巻き込んで豊かになっていく。  既にゲームとは違う展開になっている人間関係、その学院で、ゲームのヒロインは前世の記憶通りに攻略を開始するのだが・・・・・? 小説家になろうにも掲載しています。

悪役令嬢に転生したので地味令嬢に変装したら、婚約者が離れてくれないのですが。

槙村まき
恋愛
 スマホ向け乙女ゲーム『時戻りの少女~ささやかな日々をあなたと共に~』の悪役令嬢、リシェリア・オゼリエに転生した主人公は、処刑される未来を変えるために地味に地味で地味な令嬢に変装して生きていくことを決意した。  それなのに学園に入学しても婚約者である王太子ルーカスは付きまとってくるし、ゲームのヒロインからはなぜか「私の代わりにヒロインになって!」とお願いされるし……。  挙句の果てには、ある日隠れていた図書室で、ルーカスに唇を奪われてしまう。  そんな感じで悪役令嬢がヤンデレ気味な王子から逃げようとしながらも、ヒロインと共に攻略対象者たちを助ける? 話になるはず……! 第二章以降は、11時と23時に更新予定です。 他サイトにも掲載しています。 よろしくお願いします。 25.4.25 HOTランキング(女性向け)四位、ありがとうございます!

悪役令嬢に転生しましたが、行いを変えるつもりはありません

れぐまき
恋愛
公爵令嬢セシリアは皇太子との婚約発表舞踏会で、とある男爵令嬢を見かけたことをきっかけに、自分が『宝石の絆』という乙女ゲームのライバルキャラであることを知る。 「…私、間違ってませんわね」 曲がったことが大嫌いなオーバースペック公爵令嬢が自分の信念を貫き通す話 …だったはずが最近はどこか天然の主人公と勘違い王子のすれ違い(勘違い)恋愛話になってきている… 5/13 ちょっとお話が長くなってきたので一旦全話非公開にして纏めたり加筆したりと大幅に修正していきます 5/22 修正完了しました。明日から通常更新に戻ります 9/21 完結しました また気が向いたら番外編として二人のその後をアップしていきたいと思います

異世界転生した私は甘味のものがないことを知り前世の記憶をフル活用したら、甘味長者になっていた~悪役令嬢なんて知りません(嘘)~

詩河とんぼ
恋愛
とあるゲームの病弱悪役令嬢に異世界転生した甘味大好きな私。しかし、転生した世界には甘味のものないことを知る―――ないなら、作ろう!と考え、この世界の人に食べてもらうと大好評で――気づけば甘味長者になっていた!?  小説家になろう様でも投稿させていただいております 8月29日 HOT女性向けランキングで10位、恋愛で49位、全体で74位 8月30日 HOT女性向けランキングで6位、恋愛で24位、全体で26位 8月31日 HOT女性向けランキングで4位、恋愛で20位、全体で23位 に……凄すぎてびっくりしてます!ありがとうございますm(_ _)m

処理中です...