狂━クルイ━

狩野 理穂

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狂部屋

日常②

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「…………い、おい!起きろ、伊藤!」
「はい、すいません!」
 私は勢いよく起立し、先生に頭を下げた。
 周りでクラスメイトが笑っている。優奈ちゃんだけがなぜだか悲しそうな顔で私を見ている。
 やめてよ。そんな目で見ないでよ。
「伊藤。最近どうした。朝は遅刻ギリギリ、授業中に寝る、帰りも遅いらしいじゃないか」
 たしかにその通りだ。
 バーフェクト・ガールと呼ばれていた時代もあった私だが、ここ最近はぼーっとしている。今も寝ちゃってたし……
 あれ?寝てた?不思議と寝ていたような感覚はない。いつの間にか授業が始まっている感じだ。
 とりあえず、これからはしっかりしないと。優奈ちゃんから何か言われても言い返せない。
「とりあえず座れ。後で職員室に来るように」
 言い訳も何も出来ない。大人しく職員室に行こう。

 よし。授業が終わった。先生のところに行かないと。
 ……あれ?職員室ってどこにあるっけ。最近行ってないからな……
「ねえ、優奈ちゃん。職員室ってどこだっけ」
 一緒に弁当を食べていた優奈ちゃんにきく。
「何言ってるの?1週間前も行ってたじゃない」
 優奈ちゃんが驚きの表情で言った。
 でも、何を言っているんだろう。『1週間前も行っていた』?
 1週間前どころか、しばらくは何も起こしていない。職員室に行く理由はないはずだ。
 でも、1週間前か……。たしか、具合が悪くなったのもその頃だったはず。
 ああ━━また来る。あの感覚が。なにも、見えない━━
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