拝啓、消えたあなたへ

夜咲

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過去

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「翔太さん?」

「愛莉、話聞いてほしい」

ソファーに座ると横ではなく、向かいに座った。

「別れないよ、別れの話なんて聞かないよ」

「俺は別れる気ないって、そんな顔しないで」

翔太さんは昨日のような暗い声ではなくいつものトーンに戻っている。

「嫌だ...翔太さん浮気してる」

翔太さんは目を真ん丸にした。

「お昼女の人と一緒にカフェにいたでしょ。私の知らない人」

「その事もちゃんと説明するから聞いて、浮気なんかじゃないから」

翔太さんはゆっくり話しだした。

「俺、2年前まで付き合ってた子がいた」

「結婚の話もしてた、ずっと一緒にいようって」

「プロポーズも成功したけど結婚式の前日、彼女はいなくなっちゃった」

「え...?」

「数日後に電話がかかってきた」

「彼女は、ごめんなさい。寂しかった。ってただひたすら泣いてた」

「いなくなったその日初めて本当に愛してくれる人に出会って、駆け落ちしたってどこか幸せそうに言った」

「それから俺は考えたんだ。すぐにわかった、俺は彼女に安定しか求めていなかった」

「ずっとを繰り返すことで彼女を縛り、愛すこともできずにいたんだって」

「出会った時の愛莉に俺は一目惚れした。ちゃんと愛したいって思えた」

「愛莉だけにはそんな思いさせたくないから、だから...」

美優さんが翔太さんに言った一言がようやく理解できた。

今度こそはってこれだったんだね。

話してる時の翔太さんは見たこともないくらい弱くて思いっきり抱きしめた。

翔太さんは静かに静かに泣いていて、私もそんな翔太さんに泣けた。

「そういえば今日のお昼のは?」

「あれは、愛莉のことで...」

「元カノの話とか言ったら嫌かなって相談してた。」

「その人には言わない方がいいって言われたけどね。」

「言ってくれてありがとう。」

「違う話で誤魔化そうともしたけどでも言わなきゃなって。」

そうだよね、翔太さんが浮気なんてするはずない。

隼人も心配してたからちゃんと言っておかないと。

「翔太さん、大好きだよ。」

翔太さんの涙を拭いながら言った。

「もう本当に泣かさないでよ...」

私の手を握って抱きしめられた。

「俺も好き、愛してる。」

「幸せにするからね。」

そんな甘い甘い言葉を聞いて私は眠りについた。
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