信州観劇日記

演劇実験室カフェシアター

『青森県のせむし男』演劇実験室カフェシアター (ネオンホール・長野県長野市)

勢いもあって、9/15(日)の2回を観劇。を、取り急ぎ。

相変わらず知人観たさに前知識もなく滑り込む。結果、個人的に直面してた身内の子離れ親離れ問題やら、農家由来の前時代的な死生観など…いつもより没入して見入ってしまう。

物語としては明瞭で、主題も明確。台詞や描写も具体的で分かりやすい。そんなにズレた解釈になっていない…ことを祈る。

なんつーか、ずーっと苦手だった寺山さんの母に対する思慕と嫌悪、恐怖、男子として自身では制御できない性と苦悩…みたいなのが、いつもより素直に受け取れた気がする。本当にどうにもならないんだろうなって。その癖、無邪気に煽るように付きまとう女達。ムカつくわな。「人の気も知らないで」はお互い様ではあるけど、男性の方が言語化の機会を得難いような気もする。その分、実は可哀想なのかもしれない…だからって、こちらが一方的に気を使う義理もないが。というのも個人的な話。

一回目は運転中に考え事が始まり、ギリギリに滑り込むことになった。おかげで花道のかぶりつき。マドンナ夜宵さんの手相の皺、駆け上がる風、袖、裾、の勢いを体感。亜楼覇さんの声は振動としてビリビリと。京子さんカワイイ。

んで、二回目。如月はつかさんがスゴいの。個人的には父方のきっちりした伯母に似ていて目が合うと緊張してしまうのだけど、所作とか凛として美しくて見惚れる。その分、美しい役のイメージしかなかったのが、狂女のところがしっかり狂ってて気持ち悪くって、女優さんやぁってなった。これまた個人的に身内が病気してた時を思い出してた。

その上での、正気(？)に戻ってからのラスボス感。登場からして目力すごくて。目を逸らしたいのに殺されそうでカエルみたいになってた。あの立ってるだけのシーンの迫力たるや。

なんつーか、卑猥な醜さとか、可愛さと情から憎みきれない逃げられないみたいな母の感じは京子さんの方が感じたけど、丹念に作り込まれた怖さとか怨念とか嫉妬とかこっちもあるなぁって…。

本当は、声量もあり完成度高く感じたマドンナ夜宵さんの女浪曲師が他の人だとどうなるんだろう…って興味からで、こちらのYumiさんは正統派の浪曲って印象なのに線の細い女学生っぽさのバランスが絶妙だった。せむし男もザ・役者の亜楼覇さんと素朴なオノさんが対比的でいながら、どちらの回もピッタリで…うーん、この。

スネーキー浩さん・雪之丞さんのカッコよさ、宮下リエさんの異形っぽさ、ヴィーナスの肉感、美少年・美少女のいかがわしさ、老婆のザワザワ感…様式美万歳。

本日楽日は、せむし男に中川清さん、マツに一樹玻瑠さん、そして浪曲師に昨日二回とも合いの手を勤めたジューシー奥村さん。行きたい…円熟の舞台だと思うんだ。いや、初日の覇月さんだって完成度高くキュートなはずなんよ、ミズタマリさんはもキッチリだろうしクリスさんも異形だし…行きたかった…が、今回は仕方ないね。

情緒不安定もあって、ヒロミ・デ・バルドーさんのクラリネットに終始涙ぐんでた。題名も知らないまま、何度も聞いてるのにね。カフェシアターでこんな気持ちになると思わんかった。個人的にも感慨深い舞台となりました。

ありがとうございます。