信州観劇日記

ことい

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松本いろいろ

『R.U.R.』シアターランポン(古市ビル4階・長野県松本市) 2025/6/14

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『何故今か?』わかった気になってアフタートークでは質問せず、聞けばよかったと思い返している。



「ロボット」という言葉の起源とされるSF界隈ないし工学分野において重要な意味を持つ戯曲。実際のところ、現代のロボットが意味する高度なメカと言うよりは、クローンに近い人工生物という印象。より人に近い。寿命があり、それが極端に短い設定というのも非人道的である。
技術の進歩への警鐘もあると思うのだけど、個人的には植民地支配や階級社会辺りへの課題提起に感じた。権力と知識を持つものは持たざるものを侮るべきでないし、知識を持たざるものはその知識によって自らの生が成り立っていることを知らねばならない。前者は革命前の貴族のそれであるし、後者はクメールルージュや文化大革命を思わせる。そう、人同士でやっているのだよ、それを。
人類とロボットの絶滅に向かう過程はどうにも息苦しいが、未来が提示されることに優しさを感じる。味わい深い。
どうなんだろうな、働かなくなったら繁殖って止まるのかな。それだけ疑問だったり。あと、我々がいなくても台頭する生物はいくらでもいるような気もする。それはそれでよい気はする。というより、次に滅ぼされるのではなく、穏やかに譲っていける心持ちでありたいと感じる。いや、これは単なる今の自分が望む世代交代なんかも。

今回、いつもの演出の方ではなかったのと、原作が手堅くそれに忠実であったように見えるので、所謂「シアターランポン」色ではなかったかもしれない。それでも、この土地、この劇団、この芝居、何より演劇自体に真摯に向き合う意志を強く感じた。

ちょっと個人的行きづらさがあり、実質『土砂降りボードヴィル』以来の観劇だと思ってる。いや、髙山さんのとか別役三部作とか見ごたえがあるのも観てきたけども。人狼もご一緒してたりするけど。それでも、自分が触れていいのか少し躊躇いがある。まぁ、いいものはいいのだから仕方ない。

あの時の熱意をそのままに経験が積み重ねられた表現、次回も気になる。色んな意味で。楽しみ。



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