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第二章
合流
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皇国歴一九六一年 厳冬
「あなたは帝国の言葉がお上手だ」
榊大尉は五十を超える部隊に、十人ほどのレベト軍人を加え、狸に合流した。あちら側から天使討伐において戦果をあげ続ける狸を間近でみたいといわれ、それを呑んだ。
「日常会話くらいですが」
巡は流暢なレベト語で握手をし、誠を腰が抜けるほど驚かせた。彼女は兵学校でレベト語を学んでいた。
「こちらはきみたちの戦いぶりを見学なさる方々だ。我々土戸の亀も援護するが、普段以上に奮戦したまえ」
亀とは榊が指揮する部隊の名であり、精鋭を引き抜いて北楽まで護衛をしにきている。亀には護衛対象とするのはレベト軍人ではなく隊長の榊だという共通認識があった。
「ウルフの活動が落ち着いているときいています。あなた方の勇姿を見たくもありますが、なにもないのが一番ですね」
談笑には貴族の風が十二分にある。レベトでは貴族出身の軍人が多く、彼らもそうである。
(いい人そうじゃん)
誠にはとても真実の提唱するような陰謀があるとは思えなかった。それを真実は素早く感じ取り、耳を引いた。
「いててて!」
「あいつらだとすれば、やれるか」
敵であれば、という意味なのだと理解すると、誠は軍人らしからぬあっけらかんとした態度で、皇国とは違うレベトの軍服をまじまじと眺めた。
寸胴のジャケットをベルトできつく締めている。ズボンは足の筋肉を強調するようで、ブーツは一目で分厚いものだとわかる。
皇国の刀ではなく、細いばかりのサーベルを吊っていたし、軍帽には毛皮が使われていた。
「あっちの制服は格好いいな」
と言って、わざわざ巡に通訳させた。
「隣の芝は青く見えるって言ってます」
「いやあ、やっぱ格好いいよ」
軍人は誠に年頃の男子という印象を強く持ったらしく、心からの微笑で、はにかみながら真実の隣につく誠を目で追った。
「そう思うよな、隊長」
その目は淀んでいる。天使に向けられるべき黒々とした情念が彼本来の暖かみを消し去っていた。
「質問の答えをきいてねえぞ」
「やるよ。今やるか?」
しかし口元は穏やかで、他国を羨む純真さがある。ただ目だけが殺気でいっぱいになって、よし行けと命じられれば、そのまま戦闘に移れるだろうということが容易にわかる。
「くっく、馬鹿だな。あとでだ」
レベト軍人の企みも、誠の殺気も、天使の周期が終わる寸前まで表に出ることはなかった。
明日にはまた束の間の休息が訪れるその日暮れ近く、無線が一斉に鳴った。
『犬の強襲。蟻と石もいる。いずれも数不明』
覚悟のあるか細い声。自分の死をすぐそこに幻視したものが発する弱さと、抗おうとする強さがあった。救援を求めながらも、自分たちだけで突破しようとする決死の暗い煌めきが、現在位置とともに無線から短く発せられ、狸と亀、そしてレベト軍人の表情を変えた。
「榊大尉」
真実はこの場で最も高い階級の皇国軍人に指示をあおいだ。レベト軍人には少佐がいたが、彼らには部隊の指揮権はない。
「隊列を組み直せ。急行する」
「我々が先んじます」
真実はぐんぐん進んでいく。少数部隊の強みは不意の事態にも迅速に対応できることであり、その点で狸は優秀だった。
榊の補佐官が通訳しているうちに、真実はすでに伝えられた砲声の激しくなる地点に焦点を合わせ、小さな足跡で進路を示している。
「誠、お前は天使をやれ。一匹も逃がすな、今度は、きっちりやれ」
誠はおうと息巻いた。フェンリルを逃したことがバレていると知り、それをごまかすためでもあった。
「巡、お前は今回、花火に集中しろ」
真っ先に敵へと切り込んでいく巡であり、彼女もそれが役割だと認識している。そこに間違いはない。
この命令に少し訝しんだが、はいと返事をした。
「随時指示する。その目標に、躊躇わずぶち込め」
そんなことを言われずとも、自分は命令に従う。そんな跳ねっ返りでむっとしたが、すぐにその目標が何であるか理解した。
フェンリルが現れるのならば、レベト軍人はどう動くのか。真実の推測通りの陰謀が存在すれば、見学以上のことをするだろう。その際には躊躇わずに下命するので、お前もそうしろという、狸のためだけの行動理由に思い至った。
(了解していいものか)
返事をしようかどうか悩む一瞬のうちに、
「嫌か」
そして、嫌なら私がやる、と真実は言う。
「いいえ。あなたより、私が撃った方が当たります」
と、巡自身も驚くほどに、素直な心が口から飛び出した。後悔もなく、どれだけ思慮を重ねてもそこに行き着くだろうという本心に、真実は笑う。つられてか、誠も肩を揺すった。
「朝日、笑うんじゃない。今も戦っている兵士がいるんだぞ」
「すいません。でも、隊長が笑うものですから」
「上官はいいんだよ。まったく、お前にも役目があるんだからしっかりしろよ」
「はい。頑張ります」
横顔はにやけてはいるが、目だけはすでに臨戦状態である。兵学校でみたものよりも、ずっと恐ろしく感じた。拳ではなくこれによって相手は死ぬのだろうと、巡はなんとなく真実のすぐ後ろに陣取って誠を視界から外した。
無線は他の応援部隊の到着と撤退がひっきりなしに報告をした。天使は続々と増えその数は不明である。
狸と亀は現場に近づく途中、幾度か戦闘を行った。これはすべて狸が処理した。
「あれだ」
真実は全景が見えたとき、そう呟いた。
ところどころはげて土がむき出しになっている雪原である。その上で無数の死体が転がり、またその上で血と弾丸、白刃が飛び交っている。軍服たちはなるべく集団であろうとしている様子だが、相手の数が多すぎるため、援軍はほとんど散らばっての個々での戦闘になっている。
『狸だ! 許せよ遅参の陣!』
花火構え。号令に巡は素早く反応し、誠のもとの合わせ四本を一斉にぶっ放した。狙いをつけなくても当たるような大合戦であり、天使の集団がまるごと弾けた。
「榊、亀を後方へ一度退却させる」
榊真千大尉は副官に指示を出し、レベト軍人を守るよう厳命した。その後、天使に向かって飛び出した狸に追従してきた。
「な、なにを」
「問答は無し」
すると速度を上げて刀を抜いた。狸の長であるかのように先頭に立ち、分厚い石のような皮膚を持つ天使ストーンを軽々と切り払った。
『土戸の亀、一匹だけだが加勢する』
「わは、格好つけすぎだって」
真実は半分笑いながら呆れ、その実力が誇らしく、
「おら誠! 榊が二匹だぞ。眼福だろ」
と、わけもなく興奮している。
「おう! 石はぶっ壊しておくから、あとは好き放題やれ!」
誠の目の前で、石が切り裂かれた。真実の刀がそれをやった。
「斬っておいてやるから、好き放題やんな」
「あー、朝日。ワタシのために石は割っておいてくれ」
巡はその鬼神のような太刀さばきに、いつになく遠慮がちになってそんなことを言った。
狸の名は、北楽では有名である。規律違反もなければ対人関係の悪化もない。佐野中佐のみが知る事件は別にすれば、聞いていた噂とはだいぶ違う。雪かきに積極的な誠や、北楽にきてからいよいよ軍人として地がかたまりつつある巡、そして平時はやかましいだけだが戦場では頼りになる真実に、北楽の軍服は全員が似たような感情でいる。
「狸は意外とやる」
そういう好感情があるから、狸の援護に高揚した。しかも土戸の榊もいる。彼女は若手のエースとして名高く、意気だけで戦闘は成り立たないが、戦闘の欠けてはならない部分が完全に補完された。
『もぐらの旦那もバッタの大友さんも、腰抜かしてんじゃねえだろうな!』
真実は工兵、強襲部隊の隊長たちを、そうやって奮起させた。彼らは少佐と中尉であり、これは暴言である。しかし戦中の生意気はある程度許されるような気風があったし、なによりこの可愛げのない狸のやり方は歳をくった連中にこそ好まれていた。
『あとで覚えてやがれマメ狸! お前ら負けんじゃねえぞ、あいつらには一匹も手柄をやるな!』
わざわざ無線で応答したのは飛蝗の大友林蔵中尉である。三十五歳で妻子のある身だが、三度の飯より戦好きで有名だった。
天使は増え続ける。花火によって地面がところどころ陥没している。そのちっぽけな塹壕に身を隠し、狸は少し休息した。
「みろ、姉貴なんかまだやってら。疲れってもんを知らねえんだ」
「隊長、それはそれで驚嘆しないといけないんですけど、あれを」
巡が小さく顎をしゃくった。その先にはレベト軍人と亀がいる。
「少し前に出過ぎではないでしょうか」
「さっき揉めてたから、多分もっと前で観察したいとか言ったんだろ。何があっても大丈夫って、そういう自信があんのかもな」
「目敏いなあ。あんな乱戦でよくわかったな」
「隊長はそういうことができなきゃならねえんだ。お前もな、後輩がいるんだからそのくらいできねえとさ」
真実は懐をまさぐり、チョコバーを一本取り出した。
「狸商店出張所だ。巡、三等分にしろ」
「これ購買の高いやつじゃないですか」
「ハネさんにもらったんだよ」
食ったら行くぞ。着装の点検してからですよ。そんなやり取りを誠は甘味とともに体に染み渡らせている。出血もなく、しかし天使は一撃で絶命させている。
(興奮はしている。なんで血が出るときとそうじゃないときがあるのかな)
一瞬だけの思考ともよべない頭の回転を止め、そういうときもある、と適当に納得した。手は真っ赤に染まっている。初出撃で負った怪我とは意味も度合いも違うその色に、確かな成長を感じた。
「行くぞ」
「はい」
少女はぱっと塹壕から飛び出した。誠もその後を追った。
「考え事はやめておけ」
重なる二つの声に、二つの笑声が重なった。
「う、うるせー。別にそんなのしてねえよ」
戦闘開始から一時間半が経過している。天使と軍人は増え続け、次第にその戦域も拡大していく。
「あなたは帝国の言葉がお上手だ」
榊大尉は五十を超える部隊に、十人ほどのレベト軍人を加え、狸に合流した。あちら側から天使討伐において戦果をあげ続ける狸を間近でみたいといわれ、それを呑んだ。
「日常会話くらいですが」
巡は流暢なレベト語で握手をし、誠を腰が抜けるほど驚かせた。彼女は兵学校でレベト語を学んでいた。
「こちらはきみたちの戦いぶりを見学なさる方々だ。我々土戸の亀も援護するが、普段以上に奮戦したまえ」
亀とは榊が指揮する部隊の名であり、精鋭を引き抜いて北楽まで護衛をしにきている。亀には護衛対象とするのはレベト軍人ではなく隊長の榊だという共通認識があった。
「ウルフの活動が落ち着いているときいています。あなた方の勇姿を見たくもありますが、なにもないのが一番ですね」
談笑には貴族の風が十二分にある。レベトでは貴族出身の軍人が多く、彼らもそうである。
(いい人そうじゃん)
誠にはとても真実の提唱するような陰謀があるとは思えなかった。それを真実は素早く感じ取り、耳を引いた。
「いててて!」
「あいつらだとすれば、やれるか」
敵であれば、という意味なのだと理解すると、誠は軍人らしからぬあっけらかんとした態度で、皇国とは違うレベトの軍服をまじまじと眺めた。
寸胴のジャケットをベルトできつく締めている。ズボンは足の筋肉を強調するようで、ブーツは一目で分厚いものだとわかる。
皇国の刀ではなく、細いばかりのサーベルを吊っていたし、軍帽には毛皮が使われていた。
「あっちの制服は格好いいな」
と言って、わざわざ巡に通訳させた。
「隣の芝は青く見えるって言ってます」
「いやあ、やっぱ格好いいよ」
軍人は誠に年頃の男子という印象を強く持ったらしく、心からの微笑で、はにかみながら真実の隣につく誠を目で追った。
「そう思うよな、隊長」
その目は淀んでいる。天使に向けられるべき黒々とした情念が彼本来の暖かみを消し去っていた。
「質問の答えをきいてねえぞ」
「やるよ。今やるか?」
しかし口元は穏やかで、他国を羨む純真さがある。ただ目だけが殺気でいっぱいになって、よし行けと命じられれば、そのまま戦闘に移れるだろうということが容易にわかる。
「くっく、馬鹿だな。あとでだ」
レベト軍人の企みも、誠の殺気も、天使の周期が終わる寸前まで表に出ることはなかった。
明日にはまた束の間の休息が訪れるその日暮れ近く、無線が一斉に鳴った。
『犬の強襲。蟻と石もいる。いずれも数不明』
覚悟のあるか細い声。自分の死をすぐそこに幻視したものが発する弱さと、抗おうとする強さがあった。救援を求めながらも、自分たちだけで突破しようとする決死の暗い煌めきが、現在位置とともに無線から短く発せられ、狸と亀、そしてレベト軍人の表情を変えた。
「榊大尉」
真実はこの場で最も高い階級の皇国軍人に指示をあおいだ。レベト軍人には少佐がいたが、彼らには部隊の指揮権はない。
「隊列を組み直せ。急行する」
「我々が先んじます」
真実はぐんぐん進んでいく。少数部隊の強みは不意の事態にも迅速に対応できることであり、その点で狸は優秀だった。
榊の補佐官が通訳しているうちに、真実はすでに伝えられた砲声の激しくなる地点に焦点を合わせ、小さな足跡で進路を示している。
「誠、お前は天使をやれ。一匹も逃がすな、今度は、きっちりやれ」
誠はおうと息巻いた。フェンリルを逃したことがバレていると知り、それをごまかすためでもあった。
「巡、お前は今回、花火に集中しろ」
真っ先に敵へと切り込んでいく巡であり、彼女もそれが役割だと認識している。そこに間違いはない。
この命令に少し訝しんだが、はいと返事をした。
「随時指示する。その目標に、躊躇わずぶち込め」
そんなことを言われずとも、自分は命令に従う。そんな跳ねっ返りでむっとしたが、すぐにその目標が何であるか理解した。
フェンリルが現れるのならば、レベト軍人はどう動くのか。真実の推測通りの陰謀が存在すれば、見学以上のことをするだろう。その際には躊躇わずに下命するので、お前もそうしろという、狸のためだけの行動理由に思い至った。
(了解していいものか)
返事をしようかどうか悩む一瞬のうちに、
「嫌か」
そして、嫌なら私がやる、と真実は言う。
「いいえ。あなたより、私が撃った方が当たります」
と、巡自身も驚くほどに、素直な心が口から飛び出した。後悔もなく、どれだけ思慮を重ねてもそこに行き着くだろうという本心に、真実は笑う。つられてか、誠も肩を揺すった。
「朝日、笑うんじゃない。今も戦っている兵士がいるんだぞ」
「すいません。でも、隊長が笑うものですから」
「上官はいいんだよ。まったく、お前にも役目があるんだからしっかりしろよ」
「はい。頑張ります」
横顔はにやけてはいるが、目だけはすでに臨戦状態である。兵学校でみたものよりも、ずっと恐ろしく感じた。拳ではなくこれによって相手は死ぬのだろうと、巡はなんとなく真実のすぐ後ろに陣取って誠を視界から外した。
無線は他の応援部隊の到着と撤退がひっきりなしに報告をした。天使は続々と増えその数は不明である。
狸と亀は現場に近づく途中、幾度か戦闘を行った。これはすべて狸が処理した。
「あれだ」
真実は全景が見えたとき、そう呟いた。
ところどころはげて土がむき出しになっている雪原である。その上で無数の死体が転がり、またその上で血と弾丸、白刃が飛び交っている。軍服たちはなるべく集団であろうとしている様子だが、相手の数が多すぎるため、援軍はほとんど散らばっての個々での戦闘になっている。
『狸だ! 許せよ遅参の陣!』
花火構え。号令に巡は素早く反応し、誠のもとの合わせ四本を一斉にぶっ放した。狙いをつけなくても当たるような大合戦であり、天使の集団がまるごと弾けた。
「榊、亀を後方へ一度退却させる」
榊真千大尉は副官に指示を出し、レベト軍人を守るよう厳命した。その後、天使に向かって飛び出した狸に追従してきた。
「な、なにを」
「問答は無し」
すると速度を上げて刀を抜いた。狸の長であるかのように先頭に立ち、分厚い石のような皮膚を持つ天使ストーンを軽々と切り払った。
『土戸の亀、一匹だけだが加勢する』
「わは、格好つけすぎだって」
真実は半分笑いながら呆れ、その実力が誇らしく、
「おら誠! 榊が二匹だぞ。眼福だろ」
と、わけもなく興奮している。
「おう! 石はぶっ壊しておくから、あとは好き放題やれ!」
誠の目の前で、石が切り裂かれた。真実の刀がそれをやった。
「斬っておいてやるから、好き放題やんな」
「あー、朝日。ワタシのために石は割っておいてくれ」
巡はその鬼神のような太刀さばきに、いつになく遠慮がちになってそんなことを言った。
狸の名は、北楽では有名である。規律違反もなければ対人関係の悪化もない。佐野中佐のみが知る事件は別にすれば、聞いていた噂とはだいぶ違う。雪かきに積極的な誠や、北楽にきてからいよいよ軍人として地がかたまりつつある巡、そして平時はやかましいだけだが戦場では頼りになる真実に、北楽の軍服は全員が似たような感情でいる。
「狸は意外とやる」
そういう好感情があるから、狸の援護に高揚した。しかも土戸の榊もいる。彼女は若手のエースとして名高く、意気だけで戦闘は成り立たないが、戦闘の欠けてはならない部分が完全に補完された。
『もぐらの旦那もバッタの大友さんも、腰抜かしてんじゃねえだろうな!』
真実は工兵、強襲部隊の隊長たちを、そうやって奮起させた。彼らは少佐と中尉であり、これは暴言である。しかし戦中の生意気はある程度許されるような気風があったし、なによりこの可愛げのない狸のやり方は歳をくった連中にこそ好まれていた。
『あとで覚えてやがれマメ狸! お前ら負けんじゃねえぞ、あいつらには一匹も手柄をやるな!』
わざわざ無線で応答したのは飛蝗の大友林蔵中尉である。三十五歳で妻子のある身だが、三度の飯より戦好きで有名だった。
天使は増え続ける。花火によって地面がところどころ陥没している。そのちっぽけな塹壕に身を隠し、狸は少し休息した。
「みろ、姉貴なんかまだやってら。疲れってもんを知らねえんだ」
「隊長、それはそれで驚嘆しないといけないんですけど、あれを」
巡が小さく顎をしゃくった。その先にはレベト軍人と亀がいる。
「少し前に出過ぎではないでしょうか」
「さっき揉めてたから、多分もっと前で観察したいとか言ったんだろ。何があっても大丈夫って、そういう自信があんのかもな」
「目敏いなあ。あんな乱戦でよくわかったな」
「隊長はそういうことができなきゃならねえんだ。お前もな、後輩がいるんだからそのくらいできねえとさ」
真実は懐をまさぐり、チョコバーを一本取り出した。
「狸商店出張所だ。巡、三等分にしろ」
「これ購買の高いやつじゃないですか」
「ハネさんにもらったんだよ」
食ったら行くぞ。着装の点検してからですよ。そんなやり取りを誠は甘味とともに体に染み渡らせている。出血もなく、しかし天使は一撃で絶命させている。
(興奮はしている。なんで血が出るときとそうじゃないときがあるのかな)
一瞬だけの思考ともよべない頭の回転を止め、そういうときもある、と適当に納得した。手は真っ赤に染まっている。初出撃で負った怪我とは意味も度合いも違うその色に、確かな成長を感じた。
「行くぞ」
「はい」
少女はぱっと塹壕から飛び出した。誠もその後を追った。
「考え事はやめておけ」
重なる二つの声に、二つの笑声が重なった。
「う、うるせー。別にそんなのしてねえよ」
戦闘開始から一時間半が経過している。天使と軍人は増え続け、次第にその戦域も拡大していく。
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