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運命の出会い
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「……今日はずっと部屋に籠ったままだったな。散歩でもするか……」
気分転換も兼ねて俺は宿屋を出た。目的もなく街を彷徨い、気づけば陽も落ちた裏路地へと迷い込んでいた。ここは貧民街に繋がる薄暗い通りで、まともな冒険者が好んで立ち入る場所ではない。
その時、建物の陰から小さなうめき声と、ガラの悪い男たちの下卑た笑い声が聞こえてきた。
「おいおい、こいつ見ろよ。上等な耳してやがるぜ」
「本当だ。こりゃ高く売れるぞ」
「ひっ……や、やめて……!」
女の子の怯えた声が確かに聞こえた。
聖騎士としての血が、その悲鳴を聞き過ごすことを許さなかった。
俺が物陰から様子を窺うと、そこには薄汚れた麻袋を被せられそうになっている、一人の少女がいた。震える背中か
らは、ふさふさとした狐のような耳と、立派な尻尾が覗いている。獣人の子供だ。
「おい、お前ら。その子から手を離しな」
俺が声をかけると、三人の男たちが一斉にこちらを振り向いた。手には錆びたナイフや棍棒が握られている。
「ああん? なんだテメェ。英雄様ごっこか?」
「こいつは俺たちが見つけた商品だ。横取りする気なら……」
「黙れ屑共。さっさと失せろ」
「んだとテメェ!」
すると一番手前にいた男の懐に飛び込んだ。強化した手甲を纏った拳が、男の鳩尾にめり込む。男は「ぐぼっ」という奇妙な声を上げて昏倒した。
「なっ!?」
残りの二人が驚きに目を見開く。一人がナイフを突き出してくるが、その動きは俺の目にはあまりにも遅い。俺はそれを鞘で弾き、強化されたロングソードの柄で顎を打ち据える。もう一人は、仲間があっさりと二人やられたのを見て、悲鳴を上げて逃げ出していった。
静寂が戻った路地裏で俺は少女に振り返った。少女は怯えた目で俺を見上げ、その場にへたり込んでいる。歳は十にも満たないだろう。着ている服はボロボロで、顔や手足は煤で汚れていた。
「……大丈夫か? 怪我は?」
俺が尋ねると、少女は小さく首を横に振った。だが、その目からは大粒の涙がこぼれ落ちている。
「こんな所に居たら危ないよ。親はどうしたんだ?」
だが少女は顔を横に振るだけだった。
「そうか……行くところがないのか?」
少女は、こくんと頷いた。その姿が、パーティを追放され、独りぼっちになった自分と重なる。俺は大きくため息をつくと、少女に向かって手を差し伸べた。
「……腹、減ってるんだろ。とりあえず、俺の宿に来い。何か食わせてやる」
少女は一瞬おずおずと俺の手を見つめた後、その小さな手を、そっと俺の手に重ねた。
宿屋に戻り、食堂で温かいスープとパンを注文してやると、少女は夢中でそれに食らいついた。よほど空腹だったのだろう。その姿を眺めながら、俺は自分のこれからについて考えていた。
この子をどうするか。このまま放り出すわけにもいかない。だが、今の俺に誰かを養う余裕など……
「……おにいちゃん」
スープを飲み干した少女が、俺の服の裾をくいっと引っ張った。
「……ありがとう」
「気にするな」
「あのね、おにいちゃんの剣と盾、すごく綺麗……」
「綺麗?」
「うん。なんだか、ポカポカする感じがする」
少女はそう言うと、こくりこくりと船を漕ぎ始めた。緊張の糸が切れ、満腹になったことで、一気に眠気が襲ってき
たのだろう。俺は彼女を抱き上げ、自分の部屋のベッドにそっと寝かせた。
スースーと安らかな寝息を立てる少女の顔を見ながら、俺の心に一つの決意が固まった。
この小さな命を守りたい。
そのためには、もっと強くならなければならない。どんな敵が相手でも、理不尽な暴力が相手でも、この子を決して傷つけさせないだけの力が。
俺はベッドの傍らで、愛用の剣と盾を握りしめた。
相性の問題はまだ解決していない。だが、立ち止まっている暇はない。
気分転換も兼ねて俺は宿屋を出た。目的もなく街を彷徨い、気づけば陽も落ちた裏路地へと迷い込んでいた。ここは貧民街に繋がる薄暗い通りで、まともな冒険者が好んで立ち入る場所ではない。
その時、建物の陰から小さなうめき声と、ガラの悪い男たちの下卑た笑い声が聞こえてきた。
「おいおい、こいつ見ろよ。上等な耳してやがるぜ」
「本当だ。こりゃ高く売れるぞ」
「ひっ……や、やめて……!」
女の子の怯えた声が確かに聞こえた。
聖騎士としての血が、その悲鳴を聞き過ごすことを許さなかった。
俺が物陰から様子を窺うと、そこには薄汚れた麻袋を被せられそうになっている、一人の少女がいた。震える背中か
らは、ふさふさとした狐のような耳と、立派な尻尾が覗いている。獣人の子供だ。
「おい、お前ら。その子から手を離しな」
俺が声をかけると、三人の男たちが一斉にこちらを振り向いた。手には錆びたナイフや棍棒が握られている。
「ああん? なんだテメェ。英雄様ごっこか?」
「こいつは俺たちが見つけた商品だ。横取りする気なら……」
「黙れ屑共。さっさと失せろ」
「んだとテメェ!」
すると一番手前にいた男の懐に飛び込んだ。強化した手甲を纏った拳が、男の鳩尾にめり込む。男は「ぐぼっ」という奇妙な声を上げて昏倒した。
「なっ!?」
残りの二人が驚きに目を見開く。一人がナイフを突き出してくるが、その動きは俺の目にはあまりにも遅い。俺はそれを鞘で弾き、強化されたロングソードの柄で顎を打ち据える。もう一人は、仲間があっさりと二人やられたのを見て、悲鳴を上げて逃げ出していった。
静寂が戻った路地裏で俺は少女に振り返った。少女は怯えた目で俺を見上げ、その場にへたり込んでいる。歳は十にも満たないだろう。着ている服はボロボロで、顔や手足は煤で汚れていた。
「……大丈夫か? 怪我は?」
俺が尋ねると、少女は小さく首を横に振った。だが、その目からは大粒の涙がこぼれ落ちている。
「こんな所に居たら危ないよ。親はどうしたんだ?」
だが少女は顔を横に振るだけだった。
「そうか……行くところがないのか?」
少女は、こくんと頷いた。その姿が、パーティを追放され、独りぼっちになった自分と重なる。俺は大きくため息をつくと、少女に向かって手を差し伸べた。
「……腹、減ってるんだろ。とりあえず、俺の宿に来い。何か食わせてやる」
少女は一瞬おずおずと俺の手を見つめた後、その小さな手を、そっと俺の手に重ねた。
宿屋に戻り、食堂で温かいスープとパンを注文してやると、少女は夢中でそれに食らいついた。よほど空腹だったのだろう。その姿を眺めながら、俺は自分のこれからについて考えていた。
この子をどうするか。このまま放り出すわけにもいかない。だが、今の俺に誰かを養う余裕など……
「……おにいちゃん」
スープを飲み干した少女が、俺の服の裾をくいっと引っ張った。
「……ありがとう」
「気にするな」
「あのね、おにいちゃんの剣と盾、すごく綺麗……」
「綺麗?」
「うん。なんだか、ポカポカする感じがする」
少女はそう言うと、こくりこくりと船を漕ぎ始めた。緊張の糸が切れ、満腹になったことで、一気に眠気が襲ってき
たのだろう。俺は彼女を抱き上げ、自分の部屋のベッドにそっと寝かせた。
スースーと安らかな寝息を立てる少女の顔を見ながら、俺の心に一つの決意が固まった。
この小さな命を守りたい。
そのためには、もっと強くならなければならない。どんな敵が相手でも、理不尽な暴力が相手でも、この子を決して傷つけさせないだけの力が。
俺はベッドの傍らで、愛用の剣と盾を握りしめた。
相性の問題はまだ解決していない。だが、立ち止まっている暇はない。
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