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リリを迎えた日から、俺の日常は一変した。
朝は、ベッドで寝ぼけているリリを起こすことから始まる。
「リリ、朝だぞ。起きないと食堂のパンがなくなる」
「んぅ……あと、ごふん……」
布団にくるまって、ケモ耳だけをぴょこんと出して抗議する姿は、なんとも微笑ましい。無理やり引っ張り
起こして顔を洗わせ、髪を結ってやる。最初はぎこちなかった手つきも、数日もすればすっかり慣れたものだ。
二人で食堂へ行くと、リリはいつも目を輝かせながら出された食事を頬張る。俺はその小さな口元についたパンくずを拭ってやりながら、自分のパンを齧る。
追放されてからずっと、一人で味気なく摂っていた食事が、今は温かくて満たされた時間になっていた。
食事の後は、俺たちの『仕事』の時間だ。
部屋の床にガラクタ武具と、そこから分解した特性の光の玉を広げる。
「さて、リリ先生。今日の鑑定をお願いします」
「うん! まかせて!」
俺が冗談めかして言うと、リリは小さな胸を張って、真剣な顔でキラキラと輝く光の玉を見つめ始めた。
「おにいちゃん、この赤くてトゲトゲしてる子は、すごく怒りんぼうだから、剣さんに入れるといいよ! きっと強くなる!」
「なるほど。『斬れ味』の特性か。じゃあ、こっちの青くてプルプルしてるのはどうだ?」
「うーんとね、その子は盾さんと仲良し! 盾さんに入れると、カチカチになるよ!」
リリの言葉は、子供らしい擬音や擬態語ばかりだ。だが、その表現は驚くほど的確に特性の本質を捉えていた。リリの『鑑定』に従って《武具融合》を試すと、面白いように成功し、失敗することはなくなった。
俺はリリの頭を優しく撫でる。
「すごいな、リリは。君のおかげで、俺の装備はどんどん強くなる」
「えへへー」
褒められると、リリは嬉しそうに尻尾をぱたぱたと揺らす。その姿が愛おしくて、俺は自然と笑みがこぼれた。
ある晴れた日の午後、俺はリリを連れて街の市場へ出かけた。いつまでも薄汚れた服を着せておくわけにはいかない。
「好きな服を選んでいいぞ」
「ほんと!?」
リリは生まれて初めての服選びに、目をきらきらさせて店の中を駆け回った。そして、一枚の簡素なワンピースの前で足を止める。
「これがいい……」
「それだけでいいのか? もっと綺麗なのもあるぞ」
「ううん。これがいいの。なんだか、お日様の匂いがするから」
彼女が選んだのは、飾り気のない、しかし清潔で温かみのある木綿のワンピースだった。俺はそれと、ついでに丈夫そうな革のブーツも買ってやった。
新しい服に着替えたリリは、少し照れくさそうに、しかし嬉しそうにくるりと一回転してみせる。その姿はどこからどう見ても、薄汚れた獣人の子供ではなく、愛らしい看板娘のようだった。
その夜、ベッドに入ったリリは、なかなか寝付こうとしなかった。
「どうした? 眠れないのか?」
「あのね、おにいちゃん」
リリは布団から顔を出すと、真剣な目で俺を見つめた。
「リリ、おにいちゃんのこと、守れるようになりたい」
「……お前は、俺が守る。だから心配するな」
「ううん。リリも、おにいちゃんを守るの。おにいちゃんがくれた、このポカポカのお返しがしたいから」
そう言うと、リリは俺の手に自分の小さな手を重ねた。
「だからね、明日からも、いっぱいキラキラのお手伝いするね!」
追放され、全てを失ったと思っていた。
だが、俺は今、何よりも温かく、守るべき宝物をこの手にしている。
「ああ、頼むな。相棒」
俺はリリの手を優しく握り返した。
追放されて絶望していた俺の心に、リリという名の優しい光が灯っていた。この光を絶やさないために、俺はもっと強くならなければ。
そんな生活の中、とある問題が浮上した。
「…………そろそろ懐がやばいな」
そう。金が底を尽きかけていたのだ。
調子に乗って色々と装備を買いすぎた。 武具分解のための装備品を買いまくってたからな。
どれも粗悪品で安値だったとはいえ、数が多くなれば出費も増えていく。
そろそろ本格的に稼げる依頼をこなさなければ。
「リリ。今日は宿で大人しくしているんだ。俺は冒険者ギルドに行ってくる」
「え……? いっちゃうの……?」
「安心しろ。今日中には戻れるはずさ」
「だ、だったらリリも一緒に行く!」
「ダメだ。こればかりはリリには任せられない。危険すぎる。俺一人で行くよ」
「でも……」
捨てられた子犬のような表情で見上げてくるリリ。
「安心しろ。ちょっと一仕事してくるだけだ。帰ったら上手いメシを食わせてやるから。それまで留守番しててくれ」
「うん………………」
「よし。いい子だ」
リリの頭を優しく撫でる。
何度か撫でているとリリの表情も和らいだ。
「んじゃ行ってくる」
「気を付けてね……!」
「ああ」
そして俺は宿を後にした。
朝は、ベッドで寝ぼけているリリを起こすことから始まる。
「リリ、朝だぞ。起きないと食堂のパンがなくなる」
「んぅ……あと、ごふん……」
布団にくるまって、ケモ耳だけをぴょこんと出して抗議する姿は、なんとも微笑ましい。無理やり引っ張り
起こして顔を洗わせ、髪を結ってやる。最初はぎこちなかった手つきも、数日もすればすっかり慣れたものだ。
二人で食堂へ行くと、リリはいつも目を輝かせながら出された食事を頬張る。俺はその小さな口元についたパンくずを拭ってやりながら、自分のパンを齧る。
追放されてからずっと、一人で味気なく摂っていた食事が、今は温かくて満たされた時間になっていた。
食事の後は、俺たちの『仕事』の時間だ。
部屋の床にガラクタ武具と、そこから分解した特性の光の玉を広げる。
「さて、リリ先生。今日の鑑定をお願いします」
「うん! まかせて!」
俺が冗談めかして言うと、リリは小さな胸を張って、真剣な顔でキラキラと輝く光の玉を見つめ始めた。
「おにいちゃん、この赤くてトゲトゲしてる子は、すごく怒りんぼうだから、剣さんに入れるといいよ! きっと強くなる!」
「なるほど。『斬れ味』の特性か。じゃあ、こっちの青くてプルプルしてるのはどうだ?」
「うーんとね、その子は盾さんと仲良し! 盾さんに入れると、カチカチになるよ!」
リリの言葉は、子供らしい擬音や擬態語ばかりだ。だが、その表現は驚くほど的確に特性の本質を捉えていた。リリの『鑑定』に従って《武具融合》を試すと、面白いように成功し、失敗することはなくなった。
俺はリリの頭を優しく撫でる。
「すごいな、リリは。君のおかげで、俺の装備はどんどん強くなる」
「えへへー」
褒められると、リリは嬉しそうに尻尾をぱたぱたと揺らす。その姿が愛おしくて、俺は自然と笑みがこぼれた。
ある晴れた日の午後、俺はリリを連れて街の市場へ出かけた。いつまでも薄汚れた服を着せておくわけにはいかない。
「好きな服を選んでいいぞ」
「ほんと!?」
リリは生まれて初めての服選びに、目をきらきらさせて店の中を駆け回った。そして、一枚の簡素なワンピースの前で足を止める。
「これがいい……」
「それだけでいいのか? もっと綺麗なのもあるぞ」
「ううん。これがいいの。なんだか、お日様の匂いがするから」
彼女が選んだのは、飾り気のない、しかし清潔で温かみのある木綿のワンピースだった。俺はそれと、ついでに丈夫そうな革のブーツも買ってやった。
新しい服に着替えたリリは、少し照れくさそうに、しかし嬉しそうにくるりと一回転してみせる。その姿はどこからどう見ても、薄汚れた獣人の子供ではなく、愛らしい看板娘のようだった。
その夜、ベッドに入ったリリは、なかなか寝付こうとしなかった。
「どうした? 眠れないのか?」
「あのね、おにいちゃん」
リリは布団から顔を出すと、真剣な目で俺を見つめた。
「リリ、おにいちゃんのこと、守れるようになりたい」
「……お前は、俺が守る。だから心配するな」
「ううん。リリも、おにいちゃんを守るの。おにいちゃんがくれた、このポカポカのお返しがしたいから」
そう言うと、リリは俺の手に自分の小さな手を重ねた。
「だからね、明日からも、いっぱいキラキラのお手伝いするね!」
追放され、全てを失ったと思っていた。
だが、俺は今、何よりも温かく、守るべき宝物をこの手にしている。
「ああ、頼むな。相棒」
俺はリリの手を優しく握り返した。
追放されて絶望していた俺の心に、リリという名の優しい光が灯っていた。この光を絶やさないために、俺はもっと強くならなければ。
そんな生活の中、とある問題が浮上した。
「…………そろそろ懐がやばいな」
そう。金が底を尽きかけていたのだ。
調子に乗って色々と装備を買いすぎた。 武具分解のための装備品を買いまくってたからな。
どれも粗悪品で安値だったとはいえ、数が多くなれば出費も増えていく。
そろそろ本格的に稼げる依頼をこなさなければ。
「リリ。今日は宿で大人しくしているんだ。俺は冒険者ギルドに行ってくる」
「え……? いっちゃうの……?」
「安心しろ。今日中には戻れるはずさ」
「だ、だったらリリも一緒に行く!」
「ダメだ。こればかりはリリには任せられない。危険すぎる。俺一人で行くよ」
「でも……」
捨てられた子犬のような表情で見上げてくるリリ。
「安心しろ。ちょっと一仕事してくるだけだ。帰ったら上手いメシを食わせてやるから。それまで留守番しててくれ」
「うん………………」
「よし。いい子だ」
リリの頭を優しく撫でる。
何度か撫でているとリリの表情も和らいだ。
「んじゃ行ってくる」
「気を付けてね……!」
「ああ」
そして俺は宿を後にした。
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