追放された聖騎士は《武具分解》と《武具融合》を駆使して成り上がる

くぬぎ

文字の大きさ
16 / 37

リリの決意

しおりを挟む
 翌日。
 俺たちはひたすら特性を抽出し続けていた。リリの「鑑定」があれば、どんな素材がどんな「キラキラ」を持っているか一目瞭然だった。

 だが薬草や鉱石では『素材』の特性ばかりしか手に入らなかった。
 しかも現状では『素材』のままだと使い道が不明と来たもんだ。なぜなら『素材』の特性はどんな装備品ですら武具融合できなかったからだ。

 リリにも原因がわからないらしい。
 なので現状は『素材』の特性は一旦置いておくことにした。

 やはり強化するには装備品から特性を抽出しなければならない。
 しかし、そのためには当然、元手となる資金と様々な素材が必要になる。俺は以前にも増して頻繁に冒険者ギルドへ足を運び、依頼をこなすようになっていた。

 その日も俺はオークの群れの討伐依頼を終え、夕暮れ時に宿屋へと戻った。

「ただいま。リリ」
「おにいちゃん。おかえりなさい!」

 俺の帰りを今か今かと待っていたリリが、ぱたぱたと駆け寄ってくる。だが、俺の左腕に巻かれた包帯に気づくと、その笑顔がさっと曇った。

「おにいちゃん、その腕、どうしたの……?」
「ああ。これか。オークのリーダーが持ってた斧が思ったより業物でな。少し掠っただけだ。もう痛みもない」

 俺は笑ってリリの頭を撫でたが、彼女は不安そうな目でじっと俺の腕を見つめている。その瞳が潤んでいることに、
 俺は気づかないふりをした。

 その夜。
 ベッドに入っても、リリはなかなか寝付こうとしなかった。いつもなら俺の腕の中ですぐに寝息を立て始めるのに、今日は何かを思い詰めたように、じっと天井を見つめている。

「どうした? 腕の傷なら本当に大したことないぞ」
「……うん」

 小さな返事。だが、その声は震えていた。

「おにいちゃんが……いなくなっちゃったらどうしようって……」
「馬鹿なこと言うな。俺がこんな傷で死ぬもんか。この程度の傷は冒険者なら日常茶飯事だ」
「でも……もし、もっとすごい魔物が出てきたら? おにいちゃんが、もっとひどい怪我をしちゃったら……?」

 リリは布団から顔を出し、真剣な目で俺を見つめた。その小さな手は、俺の服の裾をぎゅっと握りしめている。

「リリはおにいちゃんのキラキラを見るだけじゃなくて、おにいちゃんの隣で、おにいちゃんを守れるようになりたい」
「……リリ?」
「リリも……冒険者になる!」

 その言葉はあまりにも突拍子もなくて、俺は一瞬、何を言われたのか理解できなかった。

「だめに決まってるだろ。お前みたいな子供を、危険な場所に連れて行けるわけがない」
「子供じゃないもん! リリは、おにいちゃんの相棒だもん!」

 リリはむきになって言い返す。その必死な姿に、俺は頭ごなしに否定してしまったことを少しだけ後悔した。俺はゆっくりと体を起こし、リリと向き合う。

「いいかリリ。冒険者の世界は、お前が思っているよりもずっと厳しい。俺だってお前を守りながら戦えるほど器用じゃない」
「でもリリがいたら、おにいちゃんは怪我をしなくて済むかもしれない!」
「どういうことだ?」
「リリには、キラキラが見えるもん! 魔物のキラキラが、壁の向こうにあってもわかるよ! 毒のある罠があったら、そのキラキラもきっと見える! そうしたら、おにいちゃんは危ない目に遭わなくて済む!」

 リリの言葉に、俺はハッとさせられた。
 索敵能力。危険察知能力。
 確かにリリのその力は、戦闘において絶大な効果を発揮する可能性がある。俺が一人で索敵するよりも、遥かに正確で、広範囲の情報を得られるかもしれない。

 だがそれでも。彼女を危険に晒すことへの抵抗は簡単には消えなかった。俺にとってリリは、何よりも守るべき存在なのだから。

 だが黙り込むと、リリは目に涙をいっぱいに溜めて、俺の手に自分の小さな手を重ねた。

「お願いおにいちゃん……。リリを、お留守番させて、一人で危ないところに行かないで……。リリは、おにいちゃんがくれたこのポカポカのお返しがしたいの。おにいちゃんを守りたいの。お願い……」

 その震える声と、真っ直ぐな瞳に、俺の決意は揺らいだ。
 この子はただ守られるだけのか弱い少女じゃない。俺と対等な「相棒」として、隣に立ちたいと、そう願っているんだ。その強い想いを、俺が踏みにじっていいのだろうか。

 俺は大きく、深くため息をついた。

「……わかった」
「ほんと!?」
「ただし、三つ約束しろ」

 俺がそう言うと、リリはこくこくと力強く頷いた。

「一つ、俺の指示には絶対に従うこと。勝手な行動は許さない」
「うん!」
「二つ、少しでも危険だと感じたら、すぐに俺の後ろに隠れること」
「うん!」
「そして三つ目……絶対に、無理はしないこと。疲れたり、怖くなったりしたら、すぐに言うんだ。いいな?」
「うん! 約束する!」

 満面の笑みで答えるリリ。その笑顔を見て、俺は腹を括った。
 俺がこいつを守るんじゃない。俺たちが二人で、互いを守りながら戦っていくんだ。

「よし。じゃあ、明日はギルドに行くぞ。お前の冒険者登録のためにな」
「やったー! おにいちゃん、ありがとう!」

 リリは喜びのあまり、俺の首に抱きついてきた。
 その小さな体を抱きしめながら、俺はリリの髪を優しく撫でる。

「えへへ~……」

 気持ちよさそうにほほ笑むリリであった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

私の息子を“愛人の子の下”にすると言った夫へ──その瞬間、正妻の役目は終わりました

放浪人
恋愛
政略結婚で伯爵家に嫁いだ侯爵令嬢リディアは、愛のない夫婦関係を「正妻の務め」と割り切り、赤字だらけの領地を立て直してきた。帳簿を整え、税の徴収を正し、交易路を広げ、収穫が不安定な年には備蓄を回す――伯爵家の体裁を保ってきたのは、いつも彼女の実務だった。 だがある日、夫オスヴァルドが屋敷に連れ帰ったのは“幼馴染”の女とその息子。 「彼女は可哀想なんだ」 「この子を跡取りにする」 そして人前で、平然と言い放つ。 ――「君の息子は、愛人の子の“下”で学べばいい」 その瞬間、リディアの中で何かが静かに終わった。怒鳴らない。泣かない。微笑みすら崩さない。 「承知しました。では――正妻の役目は終わりましたね」

拾った年上侯爵が甘え上手すぎて、よしよししてたら婚約することになりました

星乃和花
恋愛
⭐︎火木土21:00更新ー本編8話・後日談8話⭐︎ 王都の市場で花屋をしているリナは、ある朝―― 路地裏で倒れている“美形の年上男性”を拾ってしまう。 熱で弱っているだけ……のはずが、彼はなぜか距離が近い。 「行かないで」「撫でて」「君がいると回復する」 甘えが上手すぎるうえに、褒め方までずるい。 よしよし看病してあげていたら、いつの間にか毎日市場に現れるようになり、 気づけば花屋は貴族の面会所(?)になっていて―― しかも彼の正体は、王都を支える侯爵家の当主だった!? 「君は国のために必要だ(※僕が倒れるから)」 年上当主の“甘え策略”に、花屋の心臓は今日ももたない。 ほのぼの王都日常コメディ×甘やかし捕獲ラブ、開幕です。

なりゆきで妻になった割に大事にされている……と思ったら溺愛されてた

たぬきち25番
恋愛
男爵家の三女イリスに転生した七海は、貴族の夜会で相手を見つけることができずに女官になった。 女官として認められ、夜会を仕切る部署に配属された。 そして今回、既婚者しか入れない夜会の責任者を任せられた。 夜会当日、伯爵家のリカルドがどうしても公爵に会う必要があるので夜会会場に入れてほしいと懇願された。 だが、会場に入るためには結婚をしている必要があり……? ※本当に申し訳ないです、感想の返信できないかもしれません…… ※他サイト様にも掲載始めました!

転生したら幼女でした!? 神様~、聞いてないよ~!

饕餮
ファンタジー
  書籍化決定!   2024/08/中旬ごろの出荷となります!   Web版と書籍版では一部の設定を追加しました! 今井 優希(いまい ゆき)、享年三十五歳。暴走車から母子をかばって轢かれ、あえなく死亡。 救った母親は数年後に人類にとってとても役立つ発明をし、その子がさらにそれを発展させる、人類にとって宝になる人物たちだった。彼らを助けた功績で生き返らせるか異世界に転生させてくれるという女神。 一旦このまま成仏したいと願うものの女神から誘いを受け、その女神が管理する異世界へ転生することに。 そして女神からその世界で生き残るための魔法をもらい、その世界に降り立つ。 だが。 「ようじらなんて、きいてにゃいでしゅよーーー!」 森の中に虚しく響く優希の声に、誰も答える者はいない。 ステラと名前を変え、女神から遣わされた魔物であるティーガー(虎)に気に入られて護られ、冒険者に気に入られ、辿り着いた村の人々に見守られながらもいろいろとやらかす話である。 ★主人公は口が悪いです。 ★不定期更新です。 ★ツギクル、カクヨムでも投稿を始めました。

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して二年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。 【ご報告】 2月28日より、第五章の連載を再開いたします。毎週金・土・日の20時に更新予定です。 また、誤字脱字の修正および一部表現の見直しを行いました。ただし、記載内容の趣旨に大きな変更はございません。 引き続きよろしくお願いいたします。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

処理中です...