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リリの決意
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翌日。
俺たちはひたすら特性を抽出し続けていた。リリの「鑑定」があれば、どんな素材がどんな「キラキラ」を持っているか一目瞭然だった。
だが薬草や鉱石では『素材』の特性ばかりしか手に入らなかった。
しかも現状では『素材』のままだと使い道が不明と来たもんだ。なぜなら『素材』の特性はどんな装備品ですら武具融合できなかったからだ。
リリにも原因がわからないらしい。
なので現状は『素材』の特性は一旦置いておくことにした。
やはり強化するには装備品から特性を抽出しなければならない。
しかし、そのためには当然、元手となる資金と様々な素材が必要になる。俺は以前にも増して頻繁に冒険者ギルドへ足を運び、依頼をこなすようになっていた。
その日も俺はオークの群れの討伐依頼を終え、夕暮れ時に宿屋へと戻った。
「ただいま。リリ」
「おにいちゃん。おかえりなさい!」
俺の帰りを今か今かと待っていたリリが、ぱたぱたと駆け寄ってくる。だが、俺の左腕に巻かれた包帯に気づくと、その笑顔がさっと曇った。
「おにいちゃん、その腕、どうしたの……?」
「ああ。これか。オークのリーダーが持ってた斧が思ったより業物でな。少し掠っただけだ。もう痛みもない」
俺は笑ってリリの頭を撫でたが、彼女は不安そうな目でじっと俺の腕を見つめている。その瞳が潤んでいることに、
俺は気づかないふりをした。
その夜。
ベッドに入っても、リリはなかなか寝付こうとしなかった。いつもなら俺の腕の中ですぐに寝息を立て始めるのに、今日は何かを思い詰めたように、じっと天井を見つめている。
「どうした? 腕の傷なら本当に大したことないぞ」
「……うん」
小さな返事。だが、その声は震えていた。
「おにいちゃんが……いなくなっちゃったらどうしようって……」
「馬鹿なこと言うな。俺がこんな傷で死ぬもんか。この程度の傷は冒険者なら日常茶飯事だ」
「でも……もし、もっとすごい魔物が出てきたら? おにいちゃんが、もっとひどい怪我をしちゃったら……?」
リリは布団から顔を出し、真剣な目で俺を見つめた。その小さな手は、俺の服の裾をぎゅっと握りしめている。
「リリはおにいちゃんのキラキラを見るだけじゃなくて、おにいちゃんの隣で、おにいちゃんを守れるようになりたい」
「……リリ?」
「リリも……冒険者になる!」
その言葉はあまりにも突拍子もなくて、俺は一瞬、何を言われたのか理解できなかった。
「だめに決まってるだろ。お前みたいな子供を、危険な場所に連れて行けるわけがない」
「子供じゃないもん! リリは、おにいちゃんの相棒だもん!」
リリはむきになって言い返す。その必死な姿に、俺は頭ごなしに否定してしまったことを少しだけ後悔した。俺はゆっくりと体を起こし、リリと向き合う。
「いいかリリ。冒険者の世界は、お前が思っているよりもずっと厳しい。俺だってお前を守りながら戦えるほど器用じゃない」
「でもリリがいたら、おにいちゃんは怪我をしなくて済むかもしれない!」
「どういうことだ?」
「リリには、キラキラが見えるもん! 魔物のキラキラが、壁の向こうにあってもわかるよ! 毒のある罠があったら、そのキラキラもきっと見える! そうしたら、おにいちゃんは危ない目に遭わなくて済む!」
リリの言葉に、俺はハッとさせられた。
索敵能力。危険察知能力。
確かにリリのその力は、戦闘において絶大な効果を発揮する可能性がある。俺が一人で索敵するよりも、遥かに正確で、広範囲の情報を得られるかもしれない。
だがそれでも。彼女を危険に晒すことへの抵抗は簡単には消えなかった。俺にとってリリは、何よりも守るべき存在なのだから。
だが黙り込むと、リリは目に涙をいっぱいに溜めて、俺の手に自分の小さな手を重ねた。
「お願いおにいちゃん……。リリを、お留守番させて、一人で危ないところに行かないで……。リリは、おにいちゃんがくれたこのポカポカのお返しがしたいの。おにいちゃんを守りたいの。お願い……」
その震える声と、真っ直ぐな瞳に、俺の決意は揺らいだ。
この子はただ守られるだけのか弱い少女じゃない。俺と対等な「相棒」として、隣に立ちたいと、そう願っているんだ。その強い想いを、俺が踏みにじっていいのだろうか。
俺は大きく、深くため息をついた。
「……わかった」
「ほんと!?」
「ただし、三つ約束しろ」
俺がそう言うと、リリはこくこくと力強く頷いた。
「一つ、俺の指示には絶対に従うこと。勝手な行動は許さない」
「うん!」
「二つ、少しでも危険だと感じたら、すぐに俺の後ろに隠れること」
「うん!」
「そして三つ目……絶対に、無理はしないこと。疲れたり、怖くなったりしたら、すぐに言うんだ。いいな?」
「うん! 約束する!」
満面の笑みで答えるリリ。その笑顔を見て、俺は腹を括った。
俺がこいつを守るんじゃない。俺たちが二人で、互いを守りながら戦っていくんだ。
「よし。じゃあ、明日はギルドに行くぞ。お前の冒険者登録のためにな」
「やったー! おにいちゃん、ありがとう!」
リリは喜びのあまり、俺の首に抱きついてきた。
その小さな体を抱きしめながら、俺はリリの髪を優しく撫でる。
「えへへ~……」
気持ちよさそうにほほ笑むリリであった。
俺たちはひたすら特性を抽出し続けていた。リリの「鑑定」があれば、どんな素材がどんな「キラキラ」を持っているか一目瞭然だった。
だが薬草や鉱石では『素材』の特性ばかりしか手に入らなかった。
しかも現状では『素材』のままだと使い道が不明と来たもんだ。なぜなら『素材』の特性はどんな装備品ですら武具融合できなかったからだ。
リリにも原因がわからないらしい。
なので現状は『素材』の特性は一旦置いておくことにした。
やはり強化するには装備品から特性を抽出しなければならない。
しかし、そのためには当然、元手となる資金と様々な素材が必要になる。俺は以前にも増して頻繁に冒険者ギルドへ足を運び、依頼をこなすようになっていた。
その日も俺はオークの群れの討伐依頼を終え、夕暮れ時に宿屋へと戻った。
「ただいま。リリ」
「おにいちゃん。おかえりなさい!」
俺の帰りを今か今かと待っていたリリが、ぱたぱたと駆け寄ってくる。だが、俺の左腕に巻かれた包帯に気づくと、その笑顔がさっと曇った。
「おにいちゃん、その腕、どうしたの……?」
「ああ。これか。オークのリーダーが持ってた斧が思ったより業物でな。少し掠っただけだ。もう痛みもない」
俺は笑ってリリの頭を撫でたが、彼女は不安そうな目でじっと俺の腕を見つめている。その瞳が潤んでいることに、
俺は気づかないふりをした。
その夜。
ベッドに入っても、リリはなかなか寝付こうとしなかった。いつもなら俺の腕の中ですぐに寝息を立て始めるのに、今日は何かを思い詰めたように、じっと天井を見つめている。
「どうした? 腕の傷なら本当に大したことないぞ」
「……うん」
小さな返事。だが、その声は震えていた。
「おにいちゃんが……いなくなっちゃったらどうしようって……」
「馬鹿なこと言うな。俺がこんな傷で死ぬもんか。この程度の傷は冒険者なら日常茶飯事だ」
「でも……もし、もっとすごい魔物が出てきたら? おにいちゃんが、もっとひどい怪我をしちゃったら……?」
リリは布団から顔を出し、真剣な目で俺を見つめた。その小さな手は、俺の服の裾をぎゅっと握りしめている。
「リリはおにいちゃんのキラキラを見るだけじゃなくて、おにいちゃんの隣で、おにいちゃんを守れるようになりたい」
「……リリ?」
「リリも……冒険者になる!」
その言葉はあまりにも突拍子もなくて、俺は一瞬、何を言われたのか理解できなかった。
「だめに決まってるだろ。お前みたいな子供を、危険な場所に連れて行けるわけがない」
「子供じゃないもん! リリは、おにいちゃんの相棒だもん!」
リリはむきになって言い返す。その必死な姿に、俺は頭ごなしに否定してしまったことを少しだけ後悔した。俺はゆっくりと体を起こし、リリと向き合う。
「いいかリリ。冒険者の世界は、お前が思っているよりもずっと厳しい。俺だってお前を守りながら戦えるほど器用じゃない」
「でもリリがいたら、おにいちゃんは怪我をしなくて済むかもしれない!」
「どういうことだ?」
「リリには、キラキラが見えるもん! 魔物のキラキラが、壁の向こうにあってもわかるよ! 毒のある罠があったら、そのキラキラもきっと見える! そうしたら、おにいちゃんは危ない目に遭わなくて済む!」
リリの言葉に、俺はハッとさせられた。
索敵能力。危険察知能力。
確かにリリのその力は、戦闘において絶大な効果を発揮する可能性がある。俺が一人で索敵するよりも、遥かに正確で、広範囲の情報を得られるかもしれない。
だがそれでも。彼女を危険に晒すことへの抵抗は簡単には消えなかった。俺にとってリリは、何よりも守るべき存在なのだから。
だが黙り込むと、リリは目に涙をいっぱいに溜めて、俺の手に自分の小さな手を重ねた。
「お願いおにいちゃん……。リリを、お留守番させて、一人で危ないところに行かないで……。リリは、おにいちゃんがくれたこのポカポカのお返しがしたいの。おにいちゃんを守りたいの。お願い……」
その震える声と、真っ直ぐな瞳に、俺の決意は揺らいだ。
この子はただ守られるだけのか弱い少女じゃない。俺と対等な「相棒」として、隣に立ちたいと、そう願っているんだ。その強い想いを、俺が踏みにじっていいのだろうか。
俺は大きく、深くため息をついた。
「……わかった」
「ほんと!?」
「ただし、三つ約束しろ」
俺がそう言うと、リリはこくこくと力強く頷いた。
「一つ、俺の指示には絶対に従うこと。勝手な行動は許さない」
「うん!」
「二つ、少しでも危険だと感じたら、すぐに俺の後ろに隠れること」
「うん!」
「そして三つ目……絶対に、無理はしないこと。疲れたり、怖くなったりしたら、すぐに言うんだ。いいな?」
「うん! 約束する!」
満面の笑みで答えるリリ。その笑顔を見て、俺は腹を括った。
俺がこいつを守るんじゃない。俺たちが二人で、互いを守りながら戦っていくんだ。
「よし。じゃあ、明日はギルドに行くぞ。お前の冒険者登録のためにな」
「やったー! おにいちゃん、ありがとう!」
リリは喜びのあまり、俺の首に抱きついてきた。
その小さな体を抱きしめながら、俺はリリの髪を優しく撫でる。
「えへへ~……」
気持ちよさそうにほほ笑むリリであった。
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