追放された聖騎士は《武具分解》と《武具融合》を駆使して成り上がる

くぬぎ

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大きな壁

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  ホブゴブリンとの激闘から数日。俺とリリは、冒険者として日々の依頼をこなし、着実に実力と資金を蓄えていた 。リリの戦闘センスは日に日に磨かれ、俺との連携も完璧なものになりつつある。

 俺たちの強さの根幹は、俺の《武具分解》と《武具融合》スキル、そしてリリの鑑定能力にある。ガラクタ武具を買い集め、分解して『劣化』や『微』といった低ランクの特性を抽出し、それをひたすら融合させていく。

 これまでの検証で、俺たちはランクアップの法則性を見出していた。
  『微』といった低ランクの特性は、10個集めれば一つ上の『小』ランクになる。そして、その『小』ランクの特性を10個集めれば、さらにその上の『中』ランクへと進化する。

 つまり、『中』ランクの特性を一つ作るためには、元となる低ランクの特性が1000個必要になる計算だ。
 それは途方もなく地道で、骨の折れる作業だった。だが、俺たちはコツコツとそれを続け、リリの装備は今や、並の冒険者が持つ武具とは比較にならないほどの性能を誇っていた。特にリリの円盾に宿した『物理防御強化(中)』は、オークの棍棒すら弾き返すほどの強度を実現していた。

 その日も俺たちは宿屋の一室で、いつものように装備の強化に励んでいた。

「おにいちゃん、この剣さん、もっと速くなりたいって言ってる」
「よし、わかった。じゃあ、昨日までの依頼で貯めた『俊敏性(小)』を全部つぎ込んで、『俊敏性(中)』にランクアップさせるぞ」

 俺は、ストックしてあった10個の『俊敏性(小)』の光の玉を、リリのショートソードに次々と融合させていく。そ
 して、10個目の光が剣身に吸い込まれた瞬間、剣がひときわ強い輝きを放った。

『――特性《俊敏性(中)》が発現しました』

「よし、成功だ!」
「わあ! 剣さんがすごく喜んでる!」

 リリは生まれ変わった剣を手に取り、嬉しそうに素振りをしている。その姿に俺も満足感を覚えていた。
 この調子でいけば、いずれは『大』ランク、さらにはその上の『特大』ランクの特性だって夢じゃない。そう思っていた。




「さて。次は俺の盾も強化しておくか」

 俺は自分の大盾に、ストックしてあった11個目の『物理防御強化(中)』の特性を融合させようとした。すでに俺の盾には、10個の『中』ランク特性が宿っている。これを融合させれば、ついに『大』ランクへと進化するはずだ。

「頼むぞ……《武具融合》!」

 俺がスキルを発動させると、光の玉はいつも通り、すっと盾に吸い込まれていった。盾が眩い光を放つ。成功を確信した俺は、急いで盾の鑑定を行った。

 しかし。

「……なんでだ?」

 鑑定結果に表示されたのは、『物理防御強化(中)』のままだった。ランクは上がっていない。

「おにいちゃん、どうしたの?」
「……いや。おかしいな」

 俺はもう一つ、『物理防御強化(中)』を融合させてみる。
 だが結果は同じだった。

「ランクアップしない……? どうしてだ? 『小』から『中』へは、10個でランクアップしたのに……!」

 俺はそこである嫌な可能性に思い至った。
 もしかして、ランクが上がるごとに、次のランクアップに必要な個数が増えるのではないか?
 いや。それどころか、桁が一つ、変わるのでは……?

 俺はこの仮説を検証するため、なけなしの資金をはたいて街中の武器屋を駆け回り、分解用のガラクタ武具を大量に買い集めた。そして、長時間かけて、ひたすら分解と融合を繰り返し、『物理防御強化(中)』の特性を作り続けた。

 リリも、俺の異様な雰囲気を察してか、何も言わずに俺の作業を手伝ってくれた。

 そして、運命の日。
 俺は、99個の『物理防御強化(中)』が宿った俺の大盾に、記念すべき100個目の『中』ランク特性を、震える手で融合させた。

 頼む、動いてくれ……!

 光の玉が盾に吸い込まれた瞬間、今までとは比較にならないほどの、部屋中が白く染まるほどの閃光が迸った。

 光が収まった後、俺は恐る恐る盾を鑑定する。

『――特性《物理防御強化(大)》が発現しました』

「……はは」

 俺は、乾いた笑いを漏らした。

「やっぱり、そうか……」

『中』から『大』へのランクアップに必要な個数は、10個ではなかった。
 100個だ。

 絶望的な数字だった。
『大』ランクの特性を一つ作るために、『中』ランクが100個必要。その『中』ランクを作るのに『小』が10個必要。

 つまり、元をたどれば、最低ランクの特性が、100 × 10000で、実に100万個も必要になるのだ。

「……まじかよ」

 俺は、その場にへたり込んだ。
 一つの特性を『大』にするだけで、これほどの時間と金がかかる。全身の装備を『大』ランクで揃えるなど、ガラクタ武具を何万個も分解しなければならない。

 いや待て。
 そうだよ。『大』が最高ランクじゃない。その上のランクが存在する可能は十分ある。
 だって『小』の下に『微』が存在するからな。ならば『大』より上のランクが存在すると考えるのが妥当だろう。

『大』より上のランクになるにはいったいどれだけ『大』を集めたらいいんだ……?

 一体何ヶ月……いや、何年かかる……?

 そのために必要な資金は? 時間は? 労力は?

 俺たちの強さの根幹を支えていたスキルに、とてつもなく大きな壁が立ちはだかった瞬間だった。

「おにいちゃん……」

 リリが心配そうに俺の顔を覗き込む。俺は、そんなリリに、力なく笑いかけることしかできなかった。
 最強への道は、俺が思っていたよりも、遥かに遠く、険しいものだったらしい。

 どうするかな……
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