追放された聖騎士は《武具分解》と《武具融合》を駆使して成り上がる

くぬぎ

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厄災①

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 俺とリリが地下墓地へと向かうべく宿屋を出ると、街の状況は、俺が思っていた以上に悪化していた。すでに墓地から溢れ出したアンデッドの一部が、街の防壁を乗り越え、外縁の地区にまで侵入し始めていたのだ。人々の悲鳴と、
 警鐘を乱打する音が、不協和音となって夜の街に響き渡る。

「くそっ、間に合わなかったか!」

 衛兵たちが必死に防衛線を築こうとしているが、次から次へと現れるアンデッドの数に、明らかに押されていた。
 ゾンビの鈍重な動きに惑わされれば、物陰から飛び出してきたスケルトンの錆びた剣に切り裂かれる。その連携の取れていないはずの物量が、純粋な脅威となっていた。

「おにいちゃん、あっち!」

 リリが指さしたのは一人の若い衛兵が、数体のゾンビに囲まれて窮地に陥っている場所だった。

「行くぞ!」

 俺はリリに合図し駆け出した。大盾を構え、ゾンビの群れに側面から突っ込む。まるで鉄の塊が突進してきたかのような衝撃に、ゾンビたちが面白いように吹き飛んだ。

「大丈夫か!」
「あ、あなたは……冒険者のアルゼストさん! 助かります!」

 衛兵は安堵の表情を浮かべたが、すぐに表情を引き締める。

「リリ、援護を頼む!」
「うん!」

 俺は衛兵と背中合わせになり、防衛線の一角を担う。次々と襲いかかってくるアンデッドの攻撃を、俺の大盾がことごとく受け止め、弾き返していく。その隙を突き、リリが俊敏な動きで敵の側面や背後に回り込み、ショートソードでその動きを的確に止めていった。
 リリはアンデッドの弱点である頭部や、動きの基点となる関節を、本能的に見
 抜いているようだった。

 その時、俺たちの戦いを見ていた他の冒険者たちが次々と加勢してきた。

「おい……あそこの盾役、すげえぞ! 全然崩れねえ!」
「あの獣人のチビもやけに動きがいいな! よし、俺たちも続くぞ!」

 俺が作り出した揺るぎない防御拠点。それを中心に、自然と他の冒険者たちとの連携が生まれていった。俺の盾を信頼し、両手剣を振るう戦士が前線を押し上げ、弓使いが後方から援護射撃を行う。俺の守りがあるからこそ、彼らは自分の攻撃に集中できるのだ。

「アルゼストさん、だったな! 右翼が手薄だ、少し押し上げてくれ!」
「了解した!」

 俺はかつてパーティを率いていた頃のように、戦況を瞬時に判断し、的確な指示を飛ばしていた。追放され、捨て去ったはずの聖騎士としての経験が、今、この場所で、俺の血肉となって活きている。

 リリもまた、人々の間でその真価を発揮していた。

「そこのお兄さん! そのスケルトン、右足の骨にヒビが入ってる! そこを狙って!」

 小柄な体をいかして戦場を軽やかに動き回るリリ。

「お姉さん! 危ない! すぐ後ろの家の屋根に、弓を持ったのがいるよ!」

 リリの『目』は、もはや武具の特性だけを見抜くにとどまらない。敵の弱点、隠れた脅威、戦場の流れそのものを、色や形で直感的に捉えているのだ。リリの的確な助言が多くの冒険者の命を救い、戦況を有利に導いていく。

 最初は「子供が戦場で何を」と訝しんでいた冒険者たちも、リリの異常なまでの洞察力に舌を巻き、やがては「狐耳の嬢ちゃん」の言葉に、全幅の信頼を寄せるようになっていた。

 俺が防衛の要となり、リリが戦場の司令塔となる。
 俺たち二人が中心となり、それまで烏合の衆だった冒険者たちは、一つの強固な「パーティ」として機能し始めていた。

 数時間に及ぶ激しい攻防の末、街に侵入してきたアンデッドの第一波を、俺たちはついに押し返すことに成功した。

「はぁ、はぁ……。やった、のか……?」

 一人の冒険者が、膝に手をつきながら呟く。周囲には、破壊されたアンデッドの残骸が散らばり、誰もが疲労困憊だったが、その顔には確かな達成感が浮かんでいた。

「いや、まだだ」

 俺は、地下墓地の方向を睨みながら言った。

「今のは溢れ出してきた一部に過ぎない。本当の戦いは、これからだ」

 俺の言葉に、冒険者たちがごくりと唾を飲む。
 その時、俺たちの輪の中に武器屋の店主であるドルガンが、巨大な戦斧を担いでやってきた。

「旦那、嬢ちゃん、見事な戦いっぷりだったぜ。街の連中もあんたたちのおかげで助かったって、感謝してたぜ」
「ドルガンさん……」
「どうやらとんでもない夜になりそうじゃねえか。オレっちも、ドワーフの血が騒ぐってもんよ。地下墓地に行くんだろ? この頑固な骨董品も、一枚噛ませてもらうぜ」

 ドルガンの言葉に、他の冒険者たちも奮い立った。

「そうだ! ここまで来たら、最後まで付き合うぜ!」
「元凶を叩かなきゃ、朝までこれが続くだけだ!」

 俺は集まった冒険者たちの顔を見渡した。その瞳には自分の街を、仲間を、そして誇りを守ろうとする、本物の戦士の光が宿っていた。

「……感謝する」

 俺は自然と頭を下げていた。
 追放され一人で戦うと決めたはずだった。だが今は違う。
 俺の周りには、こんなにも頼もしい仲間たちがいる。

「おいテメェら! これよりオレらは地下墓地へと突入し、アンデッドの根源を叩ぞ!」

 ドルガンの叫びに続いて俺も叫ぶ。

「俺が先陣を切り、敵の攻撃を全て引き受ける! みんなは俺の後に付いてきてくれ!」

 俺がそう叫ぶと、「「「応!!」」」という、地鳴りのような雄叫びが、夜の街に響き渡った。

 懐で呪われた特性『怨念の力』が、まるでこの熱気に呼応するかのように、不吉な脈動を強めた気がした。
 俺はリリの手を強く握る。

「行くぞ、リリ!」
「うん、おにいちゃん!」

 この場に居る全員が街を護ろうと一致団結し、災厄へと立ち向かう。
 これだけの人数を率いるのは初めての経験だったけど、悪くないと思ってしまった。
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