音だけが、残ったままだった。

小説練習家

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追章

作者の独白

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やはり、あの探偵を雇ったのは失敗だったか。

いや、違う。
私の作品を完全に完成させるには、やはり必要だった。

鉄の扉の向こうで、足音が遠ざかっていく。
ここは静かだ。
夜でも、朝でもない。
物語の外側だ。

私は、長い間この舘を作品として扱ってきた。
赤い花を配置し、光を制限し、人を選び、役割を与えた。
夜と朝を分け、沈黙に意味を持たせた。

人はそれを支配と呼ぶだろう。
だが私にとっては、構成だ。

伏線を張り、余白を残し、
読者──いや、住人たちが勝手に意味を見出すように仕向ける。

死でさえ、例外ではない。
無秩序な殺しなど、ひとつもなかった。
すべては夜の延長線上にあり、
この館が"そうなる"ように書かれていた。

……ひとつを除いては。

あの事件。
記録に残らないはずだった死。
私の想定から、確かに外れた出来事。

作者である私が、
その理由を知らない。

それは、致命的だった。

知らないまま書くこともできただろう。
だが、それでは未完成だ。
私は自分の作品に、この館のすべてを綴りたかった。

だから、探偵を雇った。

愚かな選択に見えるだろう。
犯人である私自身が、
自分を暴く可能性のある存在を招き入れるなど。

だが、あれは賭けだった。

私が知らない一行を、
誰かに書かせるための。

探偵は、よく働いた。
私の構造を読み解き、
夜の輪郭に指をかけた。

そして──
彼は、私が見落としていた"一人"に辿り着いた。

皮肉なものだ。
私の知らない事件は、
私が最も信頼していた装置によって起きていた。

完璧だと思っていた夜は、
すでに、私の手を離れていたのだ。

捕まったことに、後悔はない。
作者が物語の責任を取るのは、当然だ。

むしろ、安堵している。

これで、すべてを書ける。

なぜ館が生まれたのか。
なぜ夜が必要だったのか。
そして、なぜ夜は制御できなくなったのか。

最後の章まで、
私はもう、知っている。

——それだけで、十分だ。

物語は、完成した。
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