7 / 23
リスタート
しおりを挟む屋敷内を一通り案内してもらって、お風呂でゆっくりしたあとハルト様と一緒に遅い夕食。お粥の量少なかったし余裕で食べれそう。
まともなご飯久しぶりだな、って思ってたらお腹に優しそうなメニューばっかだった。普通に日本食だしザ・王子様なハルト様が箸でお茶碗もってるの違和感。
「まだ疲れているだろう?きっとすぐ眠れるから、食べたらまたゆっくり休むと良い。明日は一緒に服や旅行に必要そうなものを買いに行こう」
久しぶりのデートだなってにこにこ言ってるけど、ゲームですよって突っ込んでも意味ないのはもうわかった。
「仕事とかないんですか?」
「儀式前に全部終わらせていたし、臣籍降下の準備くらいだな」
準備万端ですね。
「街に出るのは楽しそうです、本とか欲しい」
漫画なさそうだし小説でいいから読みたい。あー、新連載の続き読みたかったな。
「好きなところに行こう、楽しみにしている。じゃ、おやすみ」
口にちゅっとしてからハルト様が部屋から出て行った。少女漫画な行動控えて欲しい。
「………まだはやいけど寝てしまおう」
ほとんど寝てはいたけど、心理的に疲れる1日だった。
***
次の日。今度はちゃんと朝に起きれた、久しぶり朝日。
起きてあくびしながら部屋のシャワーを浴びて、髪をタオルドライしているとノックがされる。
ハルト様だろうな…と返事をして、少し経ってからやっぱりハルト様があらわれた。
「おはよう、よく寝たか?ああ、髪は俺が乾かすからこっちへ」
「おはようございます。もう結構拭きましたよ」
「やりたいだけだ、嫌でないならさせて欲しい。おいで」
手招きされて、大人しく椅子に座って後ろからハルト様に続きをしてもらう。
「以前のピンクゴールドの髪も良かったが、今の色の方がサクラに良く似合っていて一段と美しいな」
まぁ、日本人の顔に合うのはそりゃ黒に決まってますね。
「よし、大体良いな。あとはドライヤーか」
「え、ドライヤーあるんですかこの世界」
ないかと思ってた。ご飯もだけど乙女ゲーム世界だから日本基準なのかな、普通にコンセントにさしてるし。
ブツブツ考えてる間にドライヤーも終わった。
最後に櫛で丁寧に梳かされて、多分頭にキスされた。
「サラサラで綺麗な髪だ。俺の髪は真っ直ぐにならないし、羨ましい」
上から下に何度も髪を撫でつけながら、ハルト様が言う。
ふわふわ頭可愛くて似合ってるけどなぁ。可愛いとか言ったら嫌がるか。
「ずっと撫でていたいが、サクラは暇だろうし街に出るか。まずはどこに行きたい?」
「えーと……本は買ったら読みたくなっちゃうから最後がいいけどあとは特に」
「では適当にうろつきながら目に入った店から入っていくか。ああ楽しみだ、早速いこう!」
テンション上がったハルト様に連れられて外へ出る。
大きい家がかなりの距離を空けて建ち並んでて、自然いっぱい。葉っぱの隙間から注ぐ太陽の光が気持ちいい。
「今日は馬車使わないんですね」
「近いし、サクラの体調も良いようだしな。それにまた前みたいに二人で歩いて街に出たかった。サクラは言われたくないのかもしれないが、本当に楽しかった大切な思い出なんだ」
「嫌って言うか、私じゃない誰かの話を聞いてるようでなんかちょっと」
立ち止まって、考えながら喋る。
「どこそこに行ったとかは私もわかるんですよ、ゲームでやってるから。でも細かい会話とか、その時の気持ちとか、そういう記憶はないわけで。なのにハルト様はそれを大事そうに話すじゃないですか」
「うん」
「私には思い出がないのに。事実だ本人だって言われても、それを共有出来てないんです。ハルト様が語る思い出を持ってるのは私じゃなくて、確かに私だったんだろうけど、でも違くて……なんだろ、私だと思えない」
ハルト様は真剣な顔をしながら聞いてくれた。
長くなるかな、こんなところで話すことじゃなかったかも。
動かないで考えてるハルト様の手をひいて、木陰のベンチに二人で座った。
「………余りにも変わらないサクラに何か勘違いしてしまっていたみたいだ。大切な思い出なのは間違いないが、俺のサクラは7年前に一度消えてしまった。来世出会うために呼び寄せた、またサクラに会えるなら他はどうでも良かった。そうだった筈なのに、今世で元気なサクラに会って欲が出てしまった」
座ったときのまま握られていた手に力がはいった。
「サクラ、サクラが大好きだ。以前と変わらないサクラに会えてとても嬉しかった。だが俺はサクラの魂を持つ者を呼んだんだ、変わらぬサクラに喜ぶのは、前世を語るのはやめよう」
前世とは違うんですけどね、私死んだわけじゃないし。でもいま真面目な話だし突っ込めないな。
「もう一度、最初から始めなければいけなかった。間違っていた……ごめんなさい」
許せとか、許してくれとかじゃないんだ。
ごめんなさいって…王子様がごめんなさいだって。
「そんな反省してもらおうとした訳じゃないんですけど…むしろ罪悪感感じちゃうからって伝えたかったような」
「いや、俺が悪い。サクラ、もう一度此処からはじめてくれないか。今のサクラを愛している一人の男として見てほしい」
覗き込んでうるうる上目遣いで言われる。この人分かっててやってるのかなぁ。
「わかりました、もういいですから。分かってもらえたならそれで。感謝もしてますし……あ、愛されてるのは私だって分かりますから」
うぅ、愛なんて言葉吐くの恥ずかしい。
「……ありがとうサクラ。大好きだ、愛してる、サクラだけを想ってる」
「こっ恥ずかしい….」
握っていた手を指を交差して握り直された。恋人繋ぎってヤツだなぁこれ。
「初デートをしよう、サクラ。沢山遊んで、沢山話して、楽しい思い出に」
ハルト様はそう言うと繋いだ手をあげて顔を寄せて、映画みたいに私の手にキスをした。
「顔を見せて、サクラ」
「いや、ちょっともう…勘弁してください」
恥ずかしいんだって。赤くなってるの自分でもわかるし。
「可愛い。かわいー…」
繋げた手はそのままに、唇と唇が触れる。
スッと顔に溜まってた熱が冷めてった。
キスされて赤面が収まるなんて、一体私はどうなってるんだ。
「……サクラは手強いな」
私をおかしな体質にした張本人はそう一言呟いたあと、破顔した。
0
あなたにおすすめの小説
冷徹団長の「ここにいろ」は、騎士団公認の“抱きしめ命令”です
星乃和花
恋愛
⭐︎完結済ー全16話+後日談5話⭐︎
王都最硬派、規律と責任の塊――騎士団長ヴァルド・アークライトは、夜の見回り中に路地で“落とし物”を拾った。
……いや、拾ったのは魔物の卵ではなく、道端で寝ていた少女だった。しかも目覚めた彼女は満面の笑みで「落とし物です!拾ってくださってありがとうございます!」と言い張り、団長の屋敷を“保護施設”だと勘違いして、掃除・料理・当番表作りに騎士の悩み相談まで勝手に開始。
追い出せば泣く、士気は落ちる、そして何より――ヴァルド自身の休息が、彼女の存在に依存し始めていく。
無表情のまま「危ないから、ここにいろ」と命令し続ける団長に、周囲はざわつく。「それ、溺愛ですよ」
騎士団内ではついに“団長語翻訳係”まで誕生し、命令が全部“愛の保護”に変換されていく甘々溺愛コメディ!
モブが乙女ゲームの世界に生まれてどうするの?【完結】
いつき
恋愛
リアラは貧しい男爵家に生まれた容姿も普通の女の子だった。
陰険な意地悪をする義母と義妹が来てから家族仲も悪くなり実の父にも煙たがられる日々
だが、彼女は気にも止めず使用人扱いされても挫ける事は無い
何故なら彼女は前世の記憶が有るからだ
【完結】番としか子供が産まれない世界で
さくらもち
恋愛
番との間にしか子供が産まれない世界に産まれたニーナ。
何故か親から要らない子扱いされる不遇な子供時代に番と言う概念すら知らないまま育った。
そんなニーナが番に出会うまで
4話完結
出会えたところで話は終わってます。
図書館でうたた寝してたらいつの間にか王子と結婚することになりました
鳥花風星
恋愛
限られた人間しか入ることのできない王立図書館中枢部で司書として働く公爵令嬢ベル・シュパルツがお気に入りの場所で昼寝をしていると、目の前に見知らぬ男性がいた。
素性のわからないその男性は、たびたびベルの元を訪れてベルとたわいもない話をしていく。本を貸したりお茶を飲んだり、ありきたりな日々を何度か共に過ごしていたとある日、その男性から期間限定の婚約者になってほしいと懇願される。
とりあえず婚約を受けてはみたものの、その相手は実はこの国の第二王子、アーロンだった。
「俺は欲しいと思ったら何としてでも絶対に手に入れる人間なんだ」
神様の手違いで、おまけの転生?!お詫びにチートと無口な騎士団長もらっちゃいました?!
カヨワイさつき
恋愛
最初は、日本人で受験の日に何かにぶつかり死亡。次は、何かの討伐中に、死亡。次に目覚めたら、見知らぬ聖女のそばに、ポツンとおまけの召喚?あまりにも、不細工な為にその場から追い出されてしまった。
前世の記憶はあるものの、どれをとっても短命、不幸な出来事ばかりだった。
全てはドジで少し変なナルシストの神様の手違いだっ。おまけの転生?お詫びにチートと無口で不器用な騎士団長もらっちゃいました。今度こそ、幸せになるかもしれません?!
ゲーム未登場の性格最悪な悪役令嬢に転生したら推しの妻だったので、人生の恩人である推しには離婚して私以外と結婚してもらいます!
クナリ
ファンタジー
江藤樹里は、かつて画家になることを夢見ていた二十七歳の女性。
ある日気がつくと、彼女は大好きな乙女ゲームであるハイグランド・シンフォニーの世界へ転生していた。
しかし彼女が転生したのは、ヘビーユーザーであるはずの自分さえ知らない、ユーフィニアという女性。
ユーフィニアがどこの誰なのかが分からないまま戸惑う樹里の前に、ユーフィニアに仕えているメイドや、樹里がゲーム内で最も推しているキャラであり、どん底にいたときの自分の心を救ってくれたリルベオラスらが現れる。
そして樹里は、絶世の美貌を持ちながらもハイグラの世界では稀代の悪女とされているユーフィニアの実情を知っていく。
国政にまで影響をもたらすほどの悪名を持つユーフィニアを、最愛の恩人であるリルベオラスの妻でいさせるわけにはいかない。
樹里は、ゲーム未登場ながら圧倒的なアクの強さを持つユーフィニアをリルベオラスから引き離すべく、離婚を目指して動き始めた。
P.S. 推し活に夢中ですので、返信は不要ですわ
汐瀬うに
恋愛
アルカナ学院に通う伯爵令嬢クラリスは、幼い頃から婚約者である第一王子アルベルトと共に過ごしてきた。しかし彼は言葉を尽くさず、想いはすれ違っていく。噂、距離、役割に心を閉ざしながらも、クラリスは自分の居場所を見つけて前へ進む。迎えたプロムの夜、ようやく言葉を選び、追いかけてきたアルベルトが告げたのは――遅すぎる本心だった。
※こちらの作品はカクヨム・アルファポリス・小説家になろうに並行掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる