乙女ゲームの攻略やめたら、王子様に誘拐された。

えも

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桜と千花

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ハルト様とマークスさんだけだった私の日常に千花が加わって、少し賑やかさが増した生活がはじまった。

ハルト様はお城に行く日が少し増えて、今日はマークスさんも居ないから千花とクッキーを頬張りながら部屋でダラダラお喋り。
これは確かに名目なだけで全然侍女さんじゃない。良かった。


「へー、今月いっぱい」

「うん。書面上はまだだけど、もう領地の方で生活するって。それでしばらくこっちこれないから、お出かけしない?色々食べ納めに」

朝ハルト様がお出掛けしておいでって言ってくれたから、千花にお誘い。

「いーよぉ、私あんまり詳しくないけど。小洒落たカフェとかより食べ歩き系でしょー?」

「あとは千花の荷物少ないから何か買っとけって」

「マジありがたや。じゃ朝イチでマークスさんに頼んどくよ、明日行くって言ったんならもう殿下が頼んでそうだけど」

「ハルト様出かけるのに?」

「他にも護衛の人居るじゃん。サクラはマークスさんに慣れてるからさぁ」

「あ、じゃあ明日は護衛じゃなくてマークスさん普通に居てくれないかな?マークスさんすっっごい食べるんだよ、あれ一見の価値あり」

にこにこ話しながらどんどん口の中に食べ物が吸い込まれてくイリュージョン凄かった。

「まぁ…あの人ならOKしそうか。いーよ言っとく。殿下にお礼がてら見送りでもする?」

「ハルト様出掛けるときは毎回朝ごはん食べたあと玄関までバイバイしに行ってるよ」

「えーそうなんだ。午前中玄関付近極力近付くな指令出てたのそれだな」

そんなのあったの?

「あはは、邪魔しないためもあるだろーけど桜が使用人見るとお辞儀して挨拶するからみんなあんまり近付きたくないんじゃん。めんどいもんそんな雇い主」

だってねぇ、雇い主はハルト様で私は居候だし。

「あんたが何て言っても周りは伴侶として見るもんねぇ。他に好きな人なんか作れる状況じゃないな」

「あ、でも前マークスさんに言われたけど、多分好きな人出来たって言ったら解放して影から見守るスタンスに変わるよって」

「影から見るんだ。あの殿下に出来るのそんなこと」

ハルト様のことよく知ってるマークスさんが言うんだから出来るはず。

「そんで来世現れるって」

「あっはは、来世!」

手を叩いて千花が笑う。

「現れそう、シレッと現れそう!探し出して見つけそう」

「召喚で魂繋がっちゃったからどっかで絶対会えるらしいよ」

「へぇー、でも一応解放したり来世恋人決定なわけじゃないあたりサクラの意思尊重しようとするとこはイイね。もう嫁候補やめて嫁になっちゃいなよ」

温泉街で撮った写真が入った写真立てを手に持って見ながら千花が言う。

「嫁候補…」

「ねー何が嫌なの?あんな愛してくれて美形なイイ男なのに。お似合いだよ」

私にもよくわからない。

「嫌とかじゃなくてさ…うーん、私はドキドキ回路が切れちゃってるのかもしんない」

「ドキドキにこだわりすぎじゃない?好きだなーとか思わないの?」

「好きだな~とは思うよ。でもさ、好きって恋愛の好きだけじゃないじゃん」

千花もマークスさんも好きだもん。


「う~ん…桜の恋愛モード見たことないもんなぁ。でもちょっとでも好きかもって思うならもういいじゃん」

「えぇ、そんな感じだと失礼じゃん。あんなに好き好き言ってくれる人に恋愛よくわかんないけど好きかもです?って言うの」

「マークスさんとキス出来る?桜」

写真立てを棚に戻して、ソファにドスンと座りながら聞かれる。
あれでしょ?好きじゃなかったらキスも出来ないよってやつ言いたいんでしょ。

「え~、無理だよ。無理だけどさ」

「だからそーゆーことじゃないのー?若い頃なんて好きな人としかキスとか出来ないじゃん」

「大人は出来るの?」

「人によるし状況による」

んんん?

「それだと大人とか子供とか関係なくない?」

「経験の問題?数回の中の1回と、数百回中の1回って精神的ハードル違うじゃん。あるわけないけど、おっさんにキスしなきゃ死んじゃうぜって場面あったら私普通にキス以上の事出来るわ。私は命のが大事」

「いやそんな極論…」

そんな状況あったら誰でもそうなるでしょ。

「本当?そのへんのおっさんにキスするの想像つく?」

「想像はつかないけど……」

「想像つかないのが経験の有無な感じしない?」

「経験って…千花そんなに私居なくなってから彼氏いたの?こっち生まれてからとかも」

普通に気になる。


「えー、日本ではそれなりに」

「私の知ってる人いる?」

「初カレ大学入ってからだから桜知らない人だね」

「残念。こっちでは?なんでマークスさんいかなかったの、大好きな推しだったのに」

実際会ったら好きになっちゃうもんでもないの?

「だってゲームの推しと恋愛は違うじゃん。もちろん推しだったわけだから顔も中身もかっこいいー!とはなるけどそれだけだよ」

「そこから好きになったりはしないの?」

「何もないのになんないよ。桜~、私日本で40くらいまで生きたんだわ、白髪もあるような年なわけよ。彼氏欲しい~って言ってた青春時代はもうとっくの昔に一旦通り過ぎたのさ。なんか考えたら桜より恋愛が遠いな、前世思い出してからこっちであの人ステキ♡ってなったことないわ」

なんてこと、こんなに美人なのに。

「思い出す前はあった?」

「あったあった、すぐあの人ステキー♡ってなってた。それこそ騎士団の練習に参加してるマークスさん見に行ったりもしてたよ、顔の好みは生まれ変わっても変わってなかったみたいですわ」

おぉ、実は恋の芽があったんだ。

「思い出したらもうなんか情熱がなくなっちゃって、スッカリ行き遅れよ。でも桜は通り過ぎてないじゃん、青春ど真ん中じゃん。のほほーんとしてるけど」

「のほほんと幸せに過ごさせてもらってます。無理やり好きとか考えなくていいよってマークスさんに言われてから今日までホントあんまり考えてなくて。ハルト様もそれで良い感じだし」

「それにしてもねぇ…一緒に居るの嫌じゃないしキスも嫌じゃないんでしょ?好き好き言われっぱなしじゃなくて話してみたら?自分で考えるんじゃなくて殿下と話し合いだよ」

なるほど。

「そうだね、話してみる」

マークスさんも千花もそうだけど、それぞれなるほどってなるからハルト様と話したらまた色々違うかもしれない。

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