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王子様のこうげき
しおりを挟む私の顔を包むようにハルト様の両手が頬に触れる。
「サクラ」
伺うようにゆっくりと唇を舐められて、ビクッとして開いた口に舌が入り込んでくる。歯と舌を何度もなぞられて、そのうち舌を吸いとるように絡められた。
「っあの、っん」
口が離れた時に何か喋らないと、と声を出したけどまたすぐに塞がれる。
なんだっけ、どうすればいんだったっけ。あ、気持ち悪かったら押せって言ってた。気持ち悪くなかったらどうすればいいの?
いつの間にか右手は指を絡ませて繋がれてて、痛いくらいに握られてる。
息苦しくてクラクラしてきた頃、ようやく口が自由になった。
「……はぁ、…サクラ」
息を整えようと口で呼吸をしていたら、ハルト様が喋りだした。
「押し除けられなかったから、調子に乗ってしまった。気持ち悪くはなかった?俺はすごく嬉しくてドキドキしたけど」
「気持ち悪くは、なかったです…」
むしろ何か––––気持ち良かったような…?
そう思った自分に驚いて、一気に顔に熱が溜まる。
「っう、うわぁぁぁ…、なんか、あの、」
「うん」
顔を両手で押さえて落ち着こうとするけど、全然むり。
「……っ、ドキドキしました…してます」
「本当?!」
ハルト様が嬉しそうに覗き込んできたけど、ちょっと待って落ち着きたいんだって。
「あのっ、ち、ちかっ、」
「近い?いつもより遠い、ついさっきだってこうやって」
言いながらまた緩く抱きしめられた。
「つひゃぁぁ!わぁっ、た、たんま!」
「サクラ?」
グイッとハルト様の胸を押して、離れてもらう。
「えっ、私なんで…あんなっ、普通に、」
心臓バクバクいってる。抱きしめられるとか、よく考えたらとんでもないことじゃん!
「恥ずかしい…ど、ドキドキとまんないんです、けど」
「いつも普通にしていたのに?」
「う、うぅ…何か急に」
どうにか落ち着こうと少し下を向いて深呼吸してみる。効果はあらわれない。
膝の上に置いていた手にハルト様の手が重ねられて、……ちょっと今はこの行動すら耐えられそうにない。
すっごいドキドキしてあわあわなってるのに、ハルト様は更に赤くなった筈の私の顔を上目遣いで見つめながら、重ねた手で手首をつかんで、手のひらに噛み付くようにキスをした。
ひいぃーーー!!
今の状況で少女漫画の王子様するのやめてほしい。落ち着くどころかどんどん悪化していってる。
そのままハルト様は指をからめて、指先、手の甲、手首、腕といろんな場所にキスしてくる。その間も視線は外れない。
「嬉しいー…はじめてサクラが俺にドキドキした」
「ちょっと、一旦落ち着かせてほしいんです、けど」
「嫌だ」
「うひゃあ」
今度は肩に両腕をまわされて、抱きしめられてはいない、けどこれ顔が全部見えてしまう。
おでこをくっつけられて、たまに鼻が当たって、至近距離でうるうるハルト様と目が合ってしまった。目尻があかい。瞳には私しか映ってなくて、すごく恥ずかしいのに、目が逸らせない。
「ドキドキする?」
「し、します…」
「嬉しい、かわいい。大好きサクラ」
だからこんな近くで喋ったら息まで当たるんですって。さっきからあり得ないほど心臓バクバクしてるのに、まだ上があるのかどんどん鼓動が速くなる。
頬にキスされて、じっと見つめられて、触れるだけの短いキスを繰り返される。
「ドキドキしてるって言ってるのに…もうちょっとお手柔らかに」
「今こそ攻め時だ、今度は間違いない。こんなに良い反応がかえってくるのにやめられるわけがない……駄目?サクラ」
「うっ、だめ、とかじゃなくて」
下から潤んだ目に蕩けた笑顔で首を傾げられて、至近距離の可愛い攻撃に逆らえない。
「可愛い、大好き。嬉しい、愛してる––––」
ゆっくり顔が近付いてきて、長いキスがはじまった。
心臓こわれる。
クラクラしながら何とかハルト様が口を離した瞬間に離れて、おやすみなさいと叫びながら部屋を飛び出した。
「しっ、しぬっ」
パタパタと逃げ帰り、自分のベッドへダイブする。
「おかしい、話しをしに行ったはずだったのに」
まだ収まらない心臓あたりを掴んで蹲って、枕に顔を埋めてどうにか寝ようと目をギュッと瞑る。
今までのほほんと受け入れていた行動にさえドキドキしだすなんて、今更どうすればいいんだ。明日ちゃんと顔見れるようにしなくちゃ。
グダグタ考えてたら深夜まで眠れなかった。
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