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おでかけ
しおりを挟む次の日起きたら、結構な寝坊をしてしまってハルト様はもう出掛けたあとだった。
ぼーっとベッドの上で何もせずに居たら千花がやってきて、早く着替えて外に行こうと急かされる。
「もー、桜そんな寝起き悪いわけじゃないでしょ?何そんなに昨日遅くまで殿下と話してたの」
「いや、話はそんなにしていない…けど」
もそもそ着替えて顔を洗って、二人で玄関まで歩きながらお喋りする。
これどこまで千花に話していいのかな、全部話すの恥ずかしい。
「なーによ今更でしょ、前世からの付き合いじゃん」
「前世なのは千花だけじゃん…いや、なんか、ドキドキさせるためのハルト様の策略だった気が」
話の流れ的にそんな感じする、あの辺記憶朧気だけど。
「だからどんな話だったのよー」
「えぇと、ドキドキしないけど好きかもって言ったら、ハルト様ももうあんまドキドキしないよって言って」
「へぇ?慣れたから?」
「なんかそんな感じ。そんで、こう…気がついたら濃厚な感じの」
「ふむ、エロい感じの?」
変換しないで。間違ってはない気がするのがまた恥ずかしい。
「……をされて、なんかすごい恥ずかしくなっちゃって逃げた」
「べろちゅーされてテンパった」
なんで分かるの?
千花は真っ赤になった私の顔を見ながら、桜との付き合いは長いんだからとふふんと得意気に言った。
「ドキドキした?」
「した、したけど…よく考えたらあんなことされたら誰にだってドキドキするような」
これ恋のときめきとかと違くない?昨日ぐるぐる考えてたらもっとわかんなくなっちゃったんだけど。
「えぇー、違ったらきもっ!ってなってどうにか逃げようとすんじゃない、別に脅されたわけでも羽交い締めにされてたわけでもないんだし」
「だから逃げたって」
「キモくて逃げるのと恥ずくて逃げるのはちが…あ、マークスさんきたけど話続けてい?」
玄関で待ってたらヒラヒラ手を振りながらマークスさんがやってきた。恥ずかしいから話は続けたくない。
「二人ともお待たせ~、外出ていいよ、馬車来た。あ、サクラちゃんおめでとー」
おめでとうってなんだ。
「朝ハルト送ってった時超ご機嫌だったよ、おめでとー」
「いや、あのおめでとうはわけわかんないです…」
「ちょっと前進、おめでとうは可笑しくなくない?はい、乗って~」
マークスさんに促され、千花と三人で馬車に乗り込む。
「んで、結局どうなったのさ」
話続けようとしないで欲しい。
「ラブラブに一歩踏み出した感じでしょ?ハルトから聞いたらそんな感じだった」
ハルト様は何を喋ったんだ。
「一歩ぉ~?逃げないでもっとガッと踏み込めば良かったのに」
「あの状況で更に踏み込めって…大体話しに行ったんだよ?結局ほとんど出来てないし」
「スキンシップは話し合いを凌駕する」
「聞いたことないよそんなの…ああハルト様の顔見るのがおそろしい」
今日の夜帰ってくるよね、どんな顔して会えばいいの。
「なんで?」
「恥ずかしい。ところで馬車停まったよ、おりよーよ」
「え、ここで話切る気?やーよせっかくの桜の恋バナ」
ニヤニヤ千花とにこにこマークスさんに両手を引かれて馬車を降り、そのままカフェに連れてかれた。
「オレコーヒーにするけど、二人はオレンジだよね。それで、サクラちゃん何か恥ずかしいの?」
マークスさんがスマートに全員分注文しながら聞いてくる。お話続行ですか、そうですか。
「ありがとうございます…アレ恥ずかしくない人居ません」
「ちゅーしただけでしょ?今までとそう変わんないじゃん」
「チカちゃんさすがにそれは…変わらないことはないでしょ」
ですよねマークスさん。めっちゃ違うよ。
千花は受け取ったジュースを飲みながら目を細めて私を見る。
「殿下にドキドキしない問題解決したじゃん」
「他の問題が勃発した!ちょっとも~からかってばっかりじゃん千花っ」
「桜の恋バナ初めてだからたのしーい♡大体そーんな顔して話しててさぁ、好きじゃないかもしれないとか言うのが可笑しい」
顔赤い自覚はあるけども。
「今だけじゃないし。温泉街で見たときとかも、超笑顔でホヤホヤしてたじゃん。あの顔は殿下にしか向けないのに、のほほんと考えなさすぎて自覚しなかっただけでしょ。そこはマークスさんの助言もあるっぽいけど」
「あ~、うん…そこはごめんね。こんな何ヶ月もそのままだとは思わなくて」
指をさされたマークスさんが苦笑いして言うけど、ダメだったのか。
「サクラちゃん考えすぎるか考えなさすぎるか両極端だね」
口を尖らせた私の手を千花が掴んで、テーブルの上に置いていたマークスさんの手に重ねる。
「何してんの千花」
「ほーら、なんともないじゃん。さっき馬車乗る時普通にマークスさんに支えてもらってた時も桜普通な顔だったし、誰にでも反応するわけじゃないっしょ」
「いや、手だけなら今までだってハルト様に反応してないし」
重ねられた手を離して、マークスさんに謝りながら返事をする。
「そー思ってるだけじゃん?普段の顔と無表情は別よ?無理くり平静保とうとしてるだけなんだから」
「ああ、なるほど。サクラちゃんそんな感じあるね」
そうだったっけ。
「そんな気もしてくるけど……なんか騙されてるような気もする」
「も~、桜うだうだ言い過ぎ。大体好きじゃなきゃいけないわけでもないじゃん、理由なんて好きになれそうだからでいいでしょ。惚れた腫れたが一生に一度って決まってるわけでもあるまいし」
来世とか言っちゃうハルト様相手に?
「ああ、殿下に引き摺られてるのか。そんで腰が引けてんだ」
千花のその言葉が胸にストンと落ちた。
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