血と束縛と

北川とも

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第1話

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 思わず賢吾を睨みつけると、唇を塞がれて両足の間をまさぐられる。ラテックス手袋越しではない、ごつごつとした大きな手に直に敏感なものを握られ、和彦は賢吾の下で身を捩っていた。両足を開かされ、腰が割り込まされる。その状態で手早く和彦のものは扱かれていた。
「うっ、ああっ……」
「うちの息子を骨抜きにした体がどんなものか、たっぷり味わわせてもらうぞ。お前も、初めての相手に愛想よくしろ。――可愛がってやるから」
 もう片方の手が胸に這わされると、突起を指で挟まれて強く抓り上げられる。痛みとも疼きともつかない感覚が胸に生まれ、その感覚が消える前に賢吾の口腔に含まれて、歯を立てられていた。
 男二人が横になっているため、いくら大きいとはいえ窮屈に感じるソファの上で自由に動くこともできず、和彦は片手を伸ばして背もたれに掴まる。そうしないと床に転げ落ちそうだった。
 賢吾に唇を吸われながら、否応なく反応することを要求された和彦のものは集中的に先端を責められる。ビクビクと腰を震わせると、腿から尻にかけて撫で回された。
「俺は前戯にあまり時間をかけない性質だ」
 唐突な賢吾の言葉に、息を喘がせながらも和彦は軽く鼻を鳴らす。
「……最初からそんなものを期待していると思ったのか」
「不満なら、今度じっくり堪能させてやる」
 意味深な言葉に目を見開いたが、薄く笑った賢吾が指を舐めている姿を見て体が熱くなり、真意を問うどころではなくなった。
「あっ、ううっ」
 濡れた指に内奥の入り口をまさぐられ、容赦なく挿入される。痛みと異物感に呻かされながら和彦は、性急に内奥を湿らされて、広げられる。重量のある賢吾の体の重みによって、ソファに埋まりそうになり、たまらず賢吾の肩に片手をかけた。
 ねっとりと内奥を指で撫で回され、腰から背筋にかけて痺れるような感覚が這い上がってくる。長い指が出し入れされると、思わず腰が揺れていた。異常な状況に、確実に自分の理性はおかしくなっているとわかってはいるが、どうにもならない。
 いっそのこと考えることをやめてしまえば楽になれると、和彦は前回辱められたときに学習してしまっていた。考えることをやめ、与えられる感覚だけに従順になってしまえば、とりあえず現状は耐えられる。
 ヤクザの一方的な愛撫に感じつつある自分の姿にも。
「反応がいいな。もうひくつき始めた」
 指を付け根まで突き入れられて息を喘がせた和彦に、賢吾が囁いてくる。円を描くように指が蠢かされるが、和彦を感じさせるためというより、手っ取り早く内奥を柔らかくするためだろうが、強引な指の動きに和彦はときおり痛みを感じながらも、官能を刺激される。
「あっ――」
 戯れのように内奥の浅い部分を指の腹で押し上げられた瞬間、和彦はソファに足を突っ張らせていた。腰が震えるような快感が生まれたのだ。
「おもちゃで遊ばれている姿を見ながら感じていたが、お前がつき合ってきた男は、きちんとここを開発してくれていたようだな」
 喉を反らして感じる和彦に対して、賢吾は容赦なく内奥の浅い部分を攻め立てながら、汗ばんだ胸元を舐め上げてくる。生理的な反応から涙を滲ませながら、和彦は緩く首を左右に振る。このときまた、三田村と目が合っていた。
 同性と体を重ねる以外で、特殊な性癖は持ち合わせていないつもりの和彦だが、このときから自信がなくなる。見られることが、もう一つの愛撫になっているようだった。
「こっちを見ろ」
 賢吾に言われ、反射的に従ってしまう。すかさず唇を塞がれた和彦は、賢吾と舌を絡め合いながら、内奥から指を出し入れされる。
 体を起こした賢吾がベルトを外し始め、さすがにじっくりと観察する気にもなれず、和彦は片手で両目を覆う。
「……一応、恥らっているのか?」
 からかうような言葉を賢吾からかけられ、力なく応じる。
「うるさい……」
 低い笑い声に続いて、ベルトの金属音とファスナーを下ろす音が聞こえた。
 両足を抱えられて胸に押し付けられるようになって、やむなく和彦は両目を覆った手を外す。目の前の光景の何もかもが生々しくて、圧倒される。
 両足を開いた自分の姿も、高められるだけ高められて放置された自分のものも、腰を密着させ、今まさに自分の中に押し入ってこようとしている男の姿も、その男の凶器も。
「うっ」
 片足だけを抱え直されてから賢吾のものが擦りつけられ、ぐっと内奥に押し込まれてくる。
 征服されていると、頭ではなく、体で実感した。熱く硬いものにゆっくりと内奥を埋め尽くされ、犯されていきながら、和彦は賢吾の圧倒的な存在感を味わわされていた。
「あっ、あっ、あぁっ――」
 一番太い部分を呑み込まされ、苦しさに喘ぐ。そんな和彦を、賢吾は唇に笑みを湛えて見下ろしていた。
「喘いでるな、先生」
 そう言って賢吾の指先に唇を擦られてから、懸命に太いものを呑み込んでひくついている内奥の入り口をなぞられた。和彦は小さく悲鳴を上げて腰を揺する。
「上の口も、下の口も」
 腰を突き上げられて侵入が深くなる。被虐的な悦びが、内奥を犯される苦しみをあっという間に上回っていた。
 賢吾がさらに腰を進めたとき、和彦の体に異変が起こる。ソファの上で背を反らし、強く背もたれを掴んだまま、絶頂に達していた。賢吾が見ている前で噴き上げた白濁とした精が、下腹部から胸にかけて飛び散る。
 内奥に賢吾のものを迎え入れただけで、自分が達したのだとわかったとき、初めて和彦の中で羞恥心が湧き起こり、激しくうろたえる。同時に、内奥の高ぶりをきつく締め付けていた。
 軽く腰を揺すった賢吾が、荒い呼吸を繰り返す和彦の髪を撫でてから、首筋を伝い落ちる汗を指先で拭ってきた。
「行儀が悪いな。入れられただけでイクなんて。――もっと俺を楽しませろ」
 あごを掬い上げられて唇を吸われながら、賢吾に内奥の奥深くをゆっくりと突き上げられる。達したばかりだというのに和彦は、熱い快感のうねりを感じていた。
「は、あぁ――……」
「ここが、悦んでいる。よく締まってる。同じ感触を自分の息子が味わったのかと思ったら、興奮するな。俺の下で喘いでるのが、お前みたいな男だというのも、いい」
 力強い律動を刻まれ、和彦は声を抑えきれない。ソファの背もたれを掴むのをやめ、両腕を賢吾のワイシャツ越しの背に回してしがみつく。

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