血と束縛と

北川とも

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第20話

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「俺としては、先生の機嫌より、艶っぽい表情をしていた理由のほうが気になるな。南郷に口説かれていると思って、そういう顔になったのだとしたら、俺も嫉妬に狂う男にならないと」
 冗談めかしてはいるが、こちらを見据えてくる賢吾の目は蛇のように冷たい。牙を突き立ててくるように和彦の心を容赦なく抉ってこようとしているのだ。
 痛みを与えることだけが、相手を恐れさせる手段ではない。賢吾を目の前にすると、それがよくわかる。
 脳裏に蘇りそうになる昼間の出来事を、和彦は必死に抑え込む。賢吾と里見の存在を交わらせるわけにはいかないのだ。
 どちらも、和彦にとっては特別な男だからこそ。
「会長からの誕生日プレゼントのことで、あんたに叱られるんじゃないかとビクビクしていたんだ。……会長からのプレゼントだと思っていたら、どうやら南郷さんからのプレゼントみたいで、当の会長からは、意味ありげな総和会からのバッジを贈られた。そんなぼくが、あんたからどう見えているかなんて、わかるはずがない」
「オヤジ、か……」
 守光の話題が確実に、賢吾を刺激したようだった。突然、勢いよく立ち上がった賢吾に腕を掴まれて、和彦は強引に引き立たされる。引きずられるようにして連れて行かれた隣の部屋には、すでに布団が敷かれていた。
 突き飛ばされて布団の上に倒れ込んだ和彦の上に、大蛇が這い寄るように賢吾がゆっくりとのしかかってくる。
 耳に唇が押し当てられ、それだけで和彦は小さく呻き声を洩らしてしまう。浴衣の裾を割り広げて賢吾の手が入り込み、いきなり下着を引き下ろされたときには、全身を羞恥で熱くする。何度経験しようが、こういうときの反応に困るのだ。
 帯を解かれ、羽織ごと浴衣を剥ぎ取られると、賢吾の視線から体を隠すものは何もなくなる。和彦の体を観察するように賢吾は目を細めた。
「――この体目当てで、何人の怖い男たちが先生に貢ぐようになるんだろうな」
「ぼくは、貢いでほしいなんて頼んだことも、思ったこともないぞ。あんたはどれだけ、ぼくを性質の悪い〈オンナ〉にしたいんだ」
「したいんじゃない。先生はもう十分に、性質が悪いだろ。今、それを証明してやる」
 そんなことを言った賢吾に、突然片足を掴み上げられる。和彦は反射的に体を起こそうとしたが、意に介した様子もなく、賢吾は思いがけない行動に出た。
「何してるんだっ……」
 足の甲に賢吾の唇が押し当てられる。和彦は慌てて足を引こうとしたが、すかさず今度は足の指に噛みつかれた。
 痛くはないが思いがけない感触に、和彦は動けなくなる。やろうと思えば、賢吾は和彦の足の指を食いちぎれるのだ。もちろん、そんなことはしないだろうが。
 和彦は、控えめに抗議した。
「……汚いから、やめてほしい……。なんだか、すごく申し訳ない気分なんだ」
「風呂に入ったばかりだろ」
「でも、歩き回っているんだ……」
 賢吾は楽しげな笑みを唇に浮かべ、こちらに見せつけるように舌を足の指に這わせる。ゾクゾクするような感覚が足元から這い上がってきて、和彦は息を詰める。
 足の指を口腔に含まれて愛撫された経験は、和彦にはない。だからこそ、感覚的にも、視覚的にも強烈だ。しかも、こんなことをしているのが――。
「長嶺組の組長に足を舐めさせるなんざ、性質が悪いというより、怖いオンナだ」
「舐めてほしいなんて、言ってないっ……」
「たまには、違うところを舐められるのもいいだろ?」
 賢吾の視線が向けられたのは、和彦の両足の中心だった。与えられる刺激の強さに、素直すぎる欲望は身を起こしかけている。あまりの羞恥に眩暈がして、必死に身を捩ろうとしたが、容赦ない男の手に和彦の欲望は掴まれ、上下に扱かれた。
「あうっ」
 ビクンと大きく体を震わせて仰け反ると、賢吾は再び足の指を噛んでくる。爪先から熱い感覚が這い上がり、欲望を扱かれていることもあって、和彦は掴まれた足を突っ張らせて感じていた。
 賢吾の舌先が爪先からゆっくりと移動し、ふくらはぎから内腿へと這わされる。両足を大きく左右に開かれて、当然のように賢吾の頭が潜り込んできた。
 すでに和彦のものは先端が濡れており、賢吾の舌にくすぐるように舐められる。括れまでを口腔に含まれて、甘やかすように柔らかく吸引されると、あまりの心地よさに和彦は喉を鳴らす。しかし賢吾は、和彦にこの程度の快感を与えただけでは満足せず、柔らかな膨らみを揉みしだいてくる。
「うっ、うっ……、うくぅっ――」
「せっかくだから、ここも舐めてやる」

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