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第21話
(23)
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今まさに、中嶋の肉を食らおうとしているのだ。
「うっ、うあっ」
和彦の上で、中嶋が背をしならせる。それと同時に、繋いだ手をぐっと握り締められた。
内奥深くに収まっている中嶋のものが脈打ったのを感じ、和彦は小さく呻き声を洩らす。すると中嶋も、苦しげに息を吐く合間に呻き声を洩らした。見ることはできないが、中嶋の体に何が起こっているのかは、感じることができた。
「――……ひどい奴だな、君の〈オトコ〉は」
和彦がそっと囁くと、眉をひそめていた中嶋が口元に微苦笑を浮かべる。
「物騒な男ばかり相手にしている先生にそう言われると、なんだか胸を張りたくなりますよ」
ここで中嶋の腰が大きく揺れ、和彦の内奥で熱い欲望も蠢く。秦が、己の快感のために律動を繰り返すと、その動きに合わせて中嶋の腰は揺れ、必然的に和彦の内奥で動くことになる。
とんでもなくふしだらで、淫らな行為に及んでいるという興奮が、和彦を狂わせる。種類の違う快感を同時に味わっている中嶋は、それ以上かもしれない。
秦が動くたびに声を上げる中嶋は、快感に酔いしれた表情を隠そうともしていない。繋いでいた手を解くと、和彦は中嶋の頭を引き寄せて深い口づけを与える。
「羨ましいですね。わたしも仲間に入れてもらいたいのですが――」
舌を絡ませている最中に、わずかに息を弾ませた秦が声をかけてくる。和彦は、一瞬息を詰めた。中嶋と繋がっている部分に、秦が指を這わせてきたのだ。堪らず内奥を収縮させると、中嶋の欲望が一層逞しさを増す。
秦が声を洩らして笑った。
「……すごいな。わたしと先生が繋がっているわけじゃないのに、先生の中の動きが、中嶋を通して伝わってきますよ。わたしの動きも、先生には伝わっていますよね?」
秦が大胆に腰を使い、中嶋が掠れた声を上げる。和彦の内奥では中嶋の欲望が力強く脈打ち、秦の律動に合わせて動く。
中嶋のものを受け入れているのは和彦だが、まるで中嶋を犯しているような感覚だった。おそらく、律動を繰り返す秦に、和彦は自分の欲望を重ねているのだ。
和彦の内奥深くを抉るように突き上げて、息を乱して中嶋が言った。
「今、先生、すごく感じましたよね? 中がものすごく熱くなって、きつく締まったんです。でも襞が、蕩けそうなぐらい柔らかい」
身を焼かれそうな羞恥に一度は唇を噛んだ和彦だが、すかさず中嶋に仕返しをする。中嶋の耳元に唇を寄せ、今囁かれた言葉をそっくり囁き返したのだ。
「――秦は、君が今感じている感触を、堪能しているんだ」
野心をたっぷり腹に抱えているヤクザは、目に見えてうろたえたあと、堪えきれないように歓喜の声を上げた。
息もかかるほど間近にある中嶋の顔を見つめて、和彦は不思議な感慨深さに浸っていた。
限りなく友人に近い男と、とうとう体を重ねてしまったのだが、気恥ずかしさや後ろめたさとは無縁だ。ただ、いままでにない体験をしたのだという高揚感は、厄介な種火として胸の奥で燻っている。
自分は、秦と中嶋との行為を純粋に楽しんで、そして気に入ったのだと、和彦は分析する。他の男たちとのような、愛情や執着をぶつけ合うような行為ではなかったが、受け止める和彦にとっては精神的にとても楽だった。
この世界に引きずり込まれるまでの和彦にとって、セックスとはまさにこういうものだった。精神的な結びつきよりも、肉体的な快楽を求め、決して相手に深入りはしない。とにかく和彦は、相手に縛られることなく、自由だった。
閉鎖的なこの世界で、自由な感覚を味わうというのも妙な感じだが――。
和彦が苦笑を洩らしていると、ベッドが微かに揺れる。中嶋の反対隣で休んでいた秦が、静かにベッドから抜け出すところだった。
何げなく振り返った秦が、目を開けている和彦に気づいて微笑みかけてくる。
「まだ寝てないんですか、先生」
「……刺激的なセックスの余韻に浸っていた」
和彦の言葉に、髪を掻き上げた秦は艶やかな笑みを浮かべる。
「わたしは、中嶋と初めてセックスをするときは、それこそ虎と格闘するぐらいの事態を覚悟していたんですが、先生が中嶋に付き添ってくれて、助かりました。――こいつは本当に、気持ちよさそうだった」
秦は気遣うようにそっと、中嶋の剥き出しの肩を撫でた。
「中嶋の、男として、ヤクザとしてのプライドをわたしが気にかけてやれない分、先生がこいつを守ってくれた。そしてわたしは、思わぬ役得として、先生とも間接的にセックスできた」
「ことが終わったあとは、中嶋くんを抱き締めてやるぐらいしてやったらどうだ」
「当の中嶋が、先生のほうに身を寄せているので、なんとも手が出しにくくて……」
「うっ、うあっ」
和彦の上で、中嶋が背をしならせる。それと同時に、繋いだ手をぐっと握り締められた。
内奥深くに収まっている中嶋のものが脈打ったのを感じ、和彦は小さく呻き声を洩らす。すると中嶋も、苦しげに息を吐く合間に呻き声を洩らした。見ることはできないが、中嶋の体に何が起こっているのかは、感じることができた。
「――……ひどい奴だな、君の〈オトコ〉は」
和彦がそっと囁くと、眉をひそめていた中嶋が口元に微苦笑を浮かべる。
「物騒な男ばかり相手にしている先生にそう言われると、なんだか胸を張りたくなりますよ」
ここで中嶋の腰が大きく揺れ、和彦の内奥で熱い欲望も蠢く。秦が、己の快感のために律動を繰り返すと、その動きに合わせて中嶋の腰は揺れ、必然的に和彦の内奥で動くことになる。
とんでもなくふしだらで、淫らな行為に及んでいるという興奮が、和彦を狂わせる。種類の違う快感を同時に味わっている中嶋は、それ以上かもしれない。
秦が動くたびに声を上げる中嶋は、快感に酔いしれた表情を隠そうともしていない。繋いでいた手を解くと、和彦は中嶋の頭を引き寄せて深い口づけを与える。
「羨ましいですね。わたしも仲間に入れてもらいたいのですが――」
舌を絡ませている最中に、わずかに息を弾ませた秦が声をかけてくる。和彦は、一瞬息を詰めた。中嶋と繋がっている部分に、秦が指を這わせてきたのだ。堪らず内奥を収縮させると、中嶋の欲望が一層逞しさを増す。
秦が声を洩らして笑った。
「……すごいな。わたしと先生が繋がっているわけじゃないのに、先生の中の動きが、中嶋を通して伝わってきますよ。わたしの動きも、先生には伝わっていますよね?」
秦が大胆に腰を使い、中嶋が掠れた声を上げる。和彦の内奥では中嶋の欲望が力強く脈打ち、秦の律動に合わせて動く。
中嶋のものを受け入れているのは和彦だが、まるで中嶋を犯しているような感覚だった。おそらく、律動を繰り返す秦に、和彦は自分の欲望を重ねているのだ。
和彦の内奥深くを抉るように突き上げて、息を乱して中嶋が言った。
「今、先生、すごく感じましたよね? 中がものすごく熱くなって、きつく締まったんです。でも襞が、蕩けそうなぐらい柔らかい」
身を焼かれそうな羞恥に一度は唇を噛んだ和彦だが、すかさず中嶋に仕返しをする。中嶋の耳元に唇を寄せ、今囁かれた言葉をそっくり囁き返したのだ。
「――秦は、君が今感じている感触を、堪能しているんだ」
野心をたっぷり腹に抱えているヤクザは、目に見えてうろたえたあと、堪えきれないように歓喜の声を上げた。
息もかかるほど間近にある中嶋の顔を見つめて、和彦は不思議な感慨深さに浸っていた。
限りなく友人に近い男と、とうとう体を重ねてしまったのだが、気恥ずかしさや後ろめたさとは無縁だ。ただ、いままでにない体験をしたのだという高揚感は、厄介な種火として胸の奥で燻っている。
自分は、秦と中嶋との行為を純粋に楽しんで、そして気に入ったのだと、和彦は分析する。他の男たちとのような、愛情や執着をぶつけ合うような行為ではなかったが、受け止める和彦にとっては精神的にとても楽だった。
この世界に引きずり込まれるまでの和彦にとって、セックスとはまさにこういうものだった。精神的な結びつきよりも、肉体的な快楽を求め、決して相手に深入りはしない。とにかく和彦は、相手に縛られることなく、自由だった。
閉鎖的なこの世界で、自由な感覚を味わうというのも妙な感じだが――。
和彦が苦笑を洩らしていると、ベッドが微かに揺れる。中嶋の反対隣で休んでいた秦が、静かにベッドから抜け出すところだった。
何げなく振り返った秦が、目を開けている和彦に気づいて微笑みかけてくる。
「まだ寝てないんですか、先生」
「……刺激的なセックスの余韻に浸っていた」
和彦の言葉に、髪を掻き上げた秦は艶やかな笑みを浮かべる。
「わたしは、中嶋と初めてセックスをするときは、それこそ虎と格闘するぐらいの事態を覚悟していたんですが、先生が中嶋に付き添ってくれて、助かりました。――こいつは本当に、気持ちよさそうだった」
秦は気遣うようにそっと、中嶋の剥き出しの肩を撫でた。
「中嶋の、男として、ヤクザとしてのプライドをわたしが気にかけてやれない分、先生がこいつを守ってくれた。そしてわたしは、思わぬ役得として、先生とも間接的にセックスできた」
「ことが終わったあとは、中嶋くんを抱き締めてやるぐらいしてやったらどうだ」
「当の中嶋が、先生のほうに身を寄せているので、なんとも手が出しにくくて……」
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