血と束縛と

北川とも

文字の大きさ
460 / 1,289
第21話

(22)

しおりを挟む
「中嶋の中のことは、今はまだ先生のほうがよく知っているんですよ。だから、頼みます」
 そう囁いてきた秦に手を取られ、たっぷりの唾液を絡めるようにして指を舐められた。和彦は秦と場所を入れ替わると、中嶋の片足を抱え上げ、内奥の入り口を濡れた指でまさぐる。中嶋は息を喘がせながら、唇だけの笑みを向けてきた。
「一息に入れてもらってかまいませんよ」
「乱暴なのは、ぼくの趣味じゃない。……多分、この男も」
 和彦がちらりと背後を振り返ると、秦は意味ありげに自分の指を舐めていた。その行為の意味を即座に理解した和彦は、全身を羞恥で熱くする。まさかと思ったが、今のこの状況では、どんな淫らな行為が行われても不思議ではない。
 何より、和彦は期待している――。
「先生?」
 中嶋に呼ばれて我に返った和彦は、前に一度そうしたように、狭い内奥に慎重に指を挿入する。できる限り綻ばせて、苦痛が少ないようにしてやりたかった。
「うっ、うぅっ」
 ゆっくりと指を動かすと、ビクビクと体を震わせながら中嶋が声を上げる。覚えのある感触が指にまとわりつく。戸惑いつつも中嶋の襞と粘膜は、愛撫に応えようとしているのだ。
 中嶋の内奥がひくつき始め、和彦の指の動きに合わせて収縮を繰り返す。強気に見つめ返してくる中嶋を煽るように、和彦はそっと囁いた。
「……いやらしいな。初めてのときは、こんなに物欲しげな反応はしなかったのに」
「いやらしさなら、先生も負けていないと思いますよ」
 秦が、背後から和彦の肩に唇を押し当ててくる。ハッとしたときには、和彦の秘裂に秦の指が入り込み、内奥をまさぐられる。
「やっ、め……」
 和彦は慌てて身を捩ろうとしたが、強引に秦の指が内奥に挿入されてくる。異物感に呻いたときには、秦の指をしっかりと咥え込んで締め付けていた。
「いい反応ですね、先生。この調子で中嶋をしっかりと、可愛がってやってください」
 秦の指が巧みに内奥で蠢き、和彦は息を弾ませる。すると中嶋が片手を伸ばし、頬に触れてきた。
「先生、気持ちいいですか?」
 和彦は言葉で返事をする代わりに、中嶋の内奥で大胆に指を動かした。
 反り返った中嶋のものが、切なげに泣いていた。先端からはしたなく透明なしずくを滴らせ、内奥への愛撫にしっかりと感じているのがわかる。もっともそれは、和彦も同じだ。内奥から指を出し入れしながら、秦はもう片方の手で和彦のものを緩く扱き上げてくるのだ。
 和彦と中嶋の息遣いが乱れ、切迫してくる。中嶋はともかく、快感によって和彦は、愛撫する手が止まりがちになっていた。その瞬間を待っていたようにやっと秦が手を引き、ほっとする間もなく和彦はベッドに押し倒される。
 上気した顔でのしかかってきた中嶋が、和彦の両足の間に腰を割り込ませてきた。綻んだ内奥の入り口に押し当てられた中嶋のものは、熱く高ぶっている。
「――……前に先生、俺が秦さんに犯されたあとなら、俺に犯されてもいいと言いましたよね」
「この状況は、順番が違う」
「些細な違いです。ほんの、数分ほどの違いだ」
 悪びれた様子もなく、したたかな笑みを浮かべて中嶋は腰を進めた。中嶋の男を示すものが力強く押し込まれ、和彦の内奥は犯される。
「うあっ、あっ、ああっ――」
 熱く潤んだ襞と粘膜を擦り上げられ、和彦は喉を反らす。痛みも、苦しいほどの異物感も確かにあるのだが、中嶋の欲望を受け入れているという実感のほうが強烈で、倒錯した悦びが背筋を駆け上がってくる。
 じっくりと丁寧に内奥を押し広げられ、中嶋と深々と繋がる。数回の律動を繰り返した中嶋は、片手を伸ばして枕を掴むと、それを和彦の腰の下に入れた。ぐっと欲望を突き込まれ、内奥深くを抉られる。
「先生……」
 中嶋に呼ばれ、てのひらをしっかりと重ねて指を絡める。緩やかに腰を動かしながら、中嶋は何度も熱い吐息をこぼす。
「すごいな。俺、先生の中に入っている。……男を抱いているんだ」
「今夜は、だからな。次は、ぼくが君を抱かせてもらう」
 ニヤリと笑った中嶋に、唇に軽いキスを落とされる。一方で、深く繋がった部分は熱を孕み、覚えのある肉の愉悦がじわじわと広がってくる。冷静に中嶋をリードしていくつもりの和彦だったが、すでにもう危うい。内奥深くを突き上げられるたびに堪えきれない声を上げ、中嶋のものをきつく締め付けていた。
 二人は行為に没頭しかけていたが、ふいに中嶋の動きが止まり、羞恥と動揺が入り混じった表情を浮かべた。和彦が視線を向けた先では、秦が中嶋の背後に忍び寄り、何かをしている最中だった。
 秦は、静かな興奮を湛えた目をしていた。和彦と目が合うと、優雅で艶やかな存在感を放つ男は、肉を食らう獣のような笑みを唇に刻む。

しおりを挟む
感想 92

あなたにおすすめの小説

何故か正妻になった男の僕。

selen
BL
『側妻になった男の僕。』の続きです(⌒▽⌒) blさいこう✩.*˚主従らぶさいこう✩.*˚✩.*˚

執着

紅林
BL
聖緋帝国の華族、瀬川凛は引っ込み思案で特に目立つこともない平凡な伯爵家の三男坊。だが、彼の婚約者は違った。帝室の血を引く高貴な公爵家の生まれであり帝国陸軍の将校として目覚しい活躍をしている男だった。

奇跡に祝福を

善奈美
BL
 家族に爪弾きにされていた僕。高等部三学年に進級してすぐ、四神の一つ、西條家の後継者である彼が記憶喪失になった。運命であると僕は知っていたけど、ずっと避けていた。でも、記憶がなくなったことで僕は彼と過ごすことになった。でも、記憶が戻ったら終わり、そんな関係だった。 ※不定期更新になります。

かわいい美形の後輩が、俺にだけメロい

日向汐
BL
過保護なかわいい系美形の後輩。 たまに見せる甘い言動が受けの心を揺する♡ そんなお話。 【攻め】 雨宮千冬(あめみや・ちふゆ) 大学1年。法学部。 淡いピンク髪、甘い顔立ちの砂糖系イケメン。 甘く切ないラブソングが人気の、歌い手「フユ」として匿名活動中。 【受け】 睦月伊織(むつき・いおり) 大学2年。工学部。 黒髪黒目の平凡大学生。ぶっきらぼうな口調と態度で、ちょっとずぼら。恋愛は初心。

帝は傾国の元帥を寵愛する

tii
BL
セレスティア帝国、帝国歴二九九年――建国三百年を翌年に控えた帝都は、祝祭と喧騒に包まれていた。 舞踏会と武道会、華やかな催しの主役として並び立つのは、冷徹なる公子ユリウスと、“傾国の美貌”と謳われる名誉元帥ヴァルター。 誰もが息を呑むその姿は、帝国の象徴そのものであった。 だが祝祭の熱狂の陰で、ユリウスには避けられぬ宿命――帝位と婚姻の話が迫っていた。 それは、五年前に己の采配で抜擢したヴァルターとの関係に、確実に影を落とすものでもある。 互いを見つめ合う二人の間には、忠誠と愛執が絡み合う。 誰よりも近く、しかし決して交わってはならぬ距離。 やがて帝国を揺るがす大きな波が訪れるとき、二人は“帝と元帥”としての立場を選ぶのか、それとも――。 華やかな祝祭に幕を下ろし、始まるのは試練の物語。 冷徹な帝と傾国の元帥、互いにすべてを欲する二人の運命は、帝国三百年の節目に大きく揺れ動いてゆく。 【第13回BL大賞にエントリー中】 投票いただけると嬉しいです((꜆꜄ ˙꒳˙)꜆꜄꜆ポチポチポチポチ

秘花~王太子の秘密と宿命の皇女~

めぐみ
BL
☆俺はお前を何度も抱き、俺なしではいられぬ淫らな身体にする。宿命という名の数奇な運命に翻弄される王子達☆ ―俺はそなたを玩具だと思ったことはなかった。ただ、そなたの身体は俺のものだ。俺はそなたを何度でも抱き、俺なしではいられないような淫らな身体にする。抱き潰すくらいに抱けば、そなたもあの宦官のことなど思い出しもしなくなる。― モンゴル大帝国の皇帝を祖父に持ちモンゴル帝国直系の皇女を生母として生まれた彼は、生まれながらの高麗の王太子だった。 だが、そんな王太子の運命を激変させる出来事が起こった。 そう、あの「秘密」が表に出るまでは。

側妻になった男の僕。

selen
BL
国王と平民による禁断の主従らぶ。。を書くつもりです(⌒▽⌒)よかったらみてね☆☆

好きなあいつの嫉妬がすごい

カムカム
BL
新しいクラスで新しい友達ができることを楽しみにしていたが、特に気になる存在がいた。それは幼馴染のランだった。 ランはいつもクールで落ち着いていて、どこか遠くを見ているような眼差しが印象的だった。レンとは対照的に、内向的で多くの人と打ち解けることが少なかった。しかし、レンだけは違った。ランはレンに対してだけ心を開き、笑顔を見せることが多かった。 教室に入ると、運命的にレンとランは隣同士の席になった。レンは心の中でガッツポーズをしながら、ランに話しかけた。 「ラン、おはよう!今年も一緒のクラスだね。」 ランは少し驚いた表情を見せたが、すぐに微笑み返した。「おはよう、レン。そうだね、今年もよろしく。」

処理中です...