459 / 1,289
第21話
(21)
しおりを挟む
そう中嶋から言葉をかけられると同時に、秦にベッドに引き上げられる。
二人がかりでワイシャツを脱がされ、スラックスと下着を引き下ろされる頃には、和彦は形だけの抵抗の空しさを味わっていた。本当に嫌なら逃げ出せばいいのだ。二人は決して、和彦に無理強いはしない。
和彦に覆い被さってきた中嶋が唇を重ね、剥き出しになっている欲望同士を擦りつけてくる。そんな二人を眺めながら、秦は悠然とシャツを脱いでいた。
広いベッドの上で、何も身につけていない体をしっかりと重ねているうちに、羞恥心が少しずつ剥ぎ取られていくようだった。まるで獣同士が無邪気にじゃれ合っているようで、なんだか楽しくさえなってくるが、次第に中嶋の体が熱くなってくるのを感じて、これは儀式のようなものだと悟る。
「……緊張していたのか?」
思わず和彦が尋ねると、〈女〉の顔をした中嶋は頷いた。
「先生がいてくれてよかった。そうじゃないと俺は多分、ベッドに転がったまま、初心な乙女みたいに体を震わせていましたよ」
「経験豊富な元ホストが、何言ってるんだ」
「経験じゃ、先生と秦さんには負けます――」
ここで中嶋がビクリと体を震わせ、唇を引き結ぶ。楽しげに和彦と中嶋の会話を聞いていた秦が、ようやく動いたのだ。
和彦に覆い被さっている中嶋の両足の間で、差し込まれた秦の手が妖しく動いていた。小さく声を洩らした中嶋の髪を掻き上げてから、和彦は唇を啄んでやる。すぐに互いの唇を吸い合い、舌を絡め合っていたが、ふっと和彦の上から中嶋の重みがなくなる。ベッドの上に座った秦の両腕の中に、中嶋はいた。
今度は秦と中嶋が、濃厚な口づけを交わし始める。胸元をまさぐられた中嶋が大きく息を吸い込むのを見て、和彦は体を起こす。すかさず秦が目配せしてきて、中嶋の足を左右に開かせた。一瞬、逡巡はしたものの、好奇心と欲情が入り混じった衝動に和彦は勝つことができなかった。
和彦は、中嶋の欲望に手を伸ばすと、てのひらに包み込む。緩やかに上下に扱いてやると、切なげな声を上げた中嶋が腰を震わせる。
快感に身を震わせる〈女〉の姿に、和彦はゾクゾクするような興奮を覚えた。自分に快感を与えてくれる男たちは、いつもこんな興奮を味わっているのだろうかと思ったら、さらに中嶋を感じさせたくなる。
「――楽しそうですね、先生」
手の中で中嶋のものが熱くなり始めた頃、秦が話しかけてくる。和彦は意識しないまま笑んでいた。
「楽しいんだ。自分がいつもされていることを、中嶋くんにしていると思ったら。なんだか妙な気分でもあるし。でも、楽しいことに間違いはない」
「楽しそうな先生を見ていると、こちらも妙な気分になってきますよ」
「秦さんだけじゃないですよ。俺も、妙な気分だ。……先生を抱きたくてたまらない」
そんなことを言った中嶋の手に頭を引き寄せられ、唇を重ねる。すぐに舌を絡め始めると、和彦の両足の間をまさぐる手があった。中嶋の手かと思ったが、すぐにそれが秦の手だとわかる。そして和彦は、今度は秦との口づけを堪能する。差し出した舌を絡め合い、唾液を交わしていると、和彦の欲望に触れている手が入れ替わる。今度こそ、中嶋の手だ。
口づけの相手が替わると、愛撫を加えてくる手も入れ替わり、それが倒錯した感覚と高揚感を生み出していく。例えようもなく淫らな行為に耽っているという自覚は、官能を高める媚薬でしかない。
中嶋の胸の突起を秦の指が弄り、もう片方の突起を和彦が舌先でくすぐる。和彦の胸の突起を指先で摘まみ上げてくるのは、中嶋だ。
「あうっ」
和彦の指が、中嶋のものの先端を擦り上げた途端、声が上がる。中嶋の先端は、すでに濡れていた。それを秦に知らせると、最初から手加減するつもりはないらしい。秦はどこか嬉々とした様子で中嶋をベッドに仰向けにして、両足の間に顔を埋めた。
「うああっ……」
再び中嶋は声を上げ、上体を仰け反らせる。和彦は、中嶋の顔を真上から覗き込む。野心たっぷりだと自負するヤクザは、すがるような目で和彦を見上げてきた。向けられる眼差しに誘われるように顔を寄せ、唇を吸ってやる。
「……先生が触れてやると、中嶋はよく反応する。今だって、涎の量が一気に増えましたよ」
上目遣いとなって秦は笑った。それでなくても艶やかな存在感を放つ美貌の男は、中嶋の精気を少しずつ吸い取って、妖しいほどだ。
まるで中嶋と和彦に見せつけるように、秦は大胆に舌を動かして、反り返った欲望を舐め上げる。そのたびに中嶋は声を洩らし、身を震わせる。
このまま二人の行為に任せて自分は控えておこうかと思った和彦だが、頭を上げた秦に手招きされ、耳元にあることを囁かれる。無理だと言おうとしたが、秦に抱き寄せられた。
二人がかりでワイシャツを脱がされ、スラックスと下着を引き下ろされる頃には、和彦は形だけの抵抗の空しさを味わっていた。本当に嫌なら逃げ出せばいいのだ。二人は決して、和彦に無理強いはしない。
和彦に覆い被さってきた中嶋が唇を重ね、剥き出しになっている欲望同士を擦りつけてくる。そんな二人を眺めながら、秦は悠然とシャツを脱いでいた。
広いベッドの上で、何も身につけていない体をしっかりと重ねているうちに、羞恥心が少しずつ剥ぎ取られていくようだった。まるで獣同士が無邪気にじゃれ合っているようで、なんだか楽しくさえなってくるが、次第に中嶋の体が熱くなってくるのを感じて、これは儀式のようなものだと悟る。
「……緊張していたのか?」
思わず和彦が尋ねると、〈女〉の顔をした中嶋は頷いた。
「先生がいてくれてよかった。そうじゃないと俺は多分、ベッドに転がったまま、初心な乙女みたいに体を震わせていましたよ」
「経験豊富な元ホストが、何言ってるんだ」
「経験じゃ、先生と秦さんには負けます――」
ここで中嶋がビクリと体を震わせ、唇を引き結ぶ。楽しげに和彦と中嶋の会話を聞いていた秦が、ようやく動いたのだ。
和彦に覆い被さっている中嶋の両足の間で、差し込まれた秦の手が妖しく動いていた。小さく声を洩らした中嶋の髪を掻き上げてから、和彦は唇を啄んでやる。すぐに互いの唇を吸い合い、舌を絡め合っていたが、ふっと和彦の上から中嶋の重みがなくなる。ベッドの上に座った秦の両腕の中に、中嶋はいた。
今度は秦と中嶋が、濃厚な口づけを交わし始める。胸元をまさぐられた中嶋が大きく息を吸い込むのを見て、和彦は体を起こす。すかさず秦が目配せしてきて、中嶋の足を左右に開かせた。一瞬、逡巡はしたものの、好奇心と欲情が入り混じった衝動に和彦は勝つことができなかった。
和彦は、中嶋の欲望に手を伸ばすと、てのひらに包み込む。緩やかに上下に扱いてやると、切なげな声を上げた中嶋が腰を震わせる。
快感に身を震わせる〈女〉の姿に、和彦はゾクゾクするような興奮を覚えた。自分に快感を与えてくれる男たちは、いつもこんな興奮を味わっているのだろうかと思ったら、さらに中嶋を感じさせたくなる。
「――楽しそうですね、先生」
手の中で中嶋のものが熱くなり始めた頃、秦が話しかけてくる。和彦は意識しないまま笑んでいた。
「楽しいんだ。自分がいつもされていることを、中嶋くんにしていると思ったら。なんだか妙な気分でもあるし。でも、楽しいことに間違いはない」
「楽しそうな先生を見ていると、こちらも妙な気分になってきますよ」
「秦さんだけじゃないですよ。俺も、妙な気分だ。……先生を抱きたくてたまらない」
そんなことを言った中嶋の手に頭を引き寄せられ、唇を重ねる。すぐに舌を絡め始めると、和彦の両足の間をまさぐる手があった。中嶋の手かと思ったが、すぐにそれが秦の手だとわかる。そして和彦は、今度は秦との口づけを堪能する。差し出した舌を絡め合い、唾液を交わしていると、和彦の欲望に触れている手が入れ替わる。今度こそ、中嶋の手だ。
口づけの相手が替わると、愛撫を加えてくる手も入れ替わり、それが倒錯した感覚と高揚感を生み出していく。例えようもなく淫らな行為に耽っているという自覚は、官能を高める媚薬でしかない。
中嶋の胸の突起を秦の指が弄り、もう片方の突起を和彦が舌先でくすぐる。和彦の胸の突起を指先で摘まみ上げてくるのは、中嶋だ。
「あうっ」
和彦の指が、中嶋のものの先端を擦り上げた途端、声が上がる。中嶋の先端は、すでに濡れていた。それを秦に知らせると、最初から手加減するつもりはないらしい。秦はどこか嬉々とした様子で中嶋をベッドに仰向けにして、両足の間に顔を埋めた。
「うああっ……」
再び中嶋は声を上げ、上体を仰け反らせる。和彦は、中嶋の顔を真上から覗き込む。野心たっぷりだと自負するヤクザは、すがるような目で和彦を見上げてきた。向けられる眼差しに誘われるように顔を寄せ、唇を吸ってやる。
「……先生が触れてやると、中嶋はよく反応する。今だって、涎の量が一気に増えましたよ」
上目遣いとなって秦は笑った。それでなくても艶やかな存在感を放つ美貌の男は、中嶋の精気を少しずつ吸い取って、妖しいほどだ。
まるで中嶋と和彦に見せつけるように、秦は大胆に舌を動かして、反り返った欲望を舐め上げる。そのたびに中嶋は声を洩らし、身を震わせる。
このまま二人の行為に任せて自分は控えておこうかと思った和彦だが、頭を上げた秦に手招きされ、耳元にあることを囁かれる。無理だと言おうとしたが、秦に抱き寄せられた。
84
あなたにおすすめの小説
かわいい美形の後輩が、俺にだけメロい
日向汐
BL
過保護なかわいい系美形の後輩。
たまに見せる甘い言動が受けの心を揺する♡
そんなお話。
【攻め】
雨宮千冬(あめみや・ちふゆ)
大学1年。法学部。
淡いピンク髪、甘い顔立ちの砂糖系イケメン。
甘く切ないラブソングが人気の、歌い手「フユ」として匿名活動中。
【受け】
睦月伊織(むつき・いおり)
大学2年。工学部。
黒髪黒目の平凡大学生。ぶっきらぼうな口調と態度で、ちょっとずぼら。恋愛は初心。
執着
紅林
BL
聖緋帝国の華族、瀬川凛は引っ込み思案で特に目立つこともない平凡な伯爵家の三男坊。だが、彼の婚約者は違った。帝室の血を引く高貴な公爵家の生まれであり帝国陸軍の将校として目覚しい活躍をしている男だった。
帝は傾国の元帥を寵愛する
tii
BL
セレスティア帝国、帝国歴二九九年――建国三百年を翌年に控えた帝都は、祝祭と喧騒に包まれていた。
舞踏会と武道会、華やかな催しの主役として並び立つのは、冷徹なる公子ユリウスと、“傾国の美貌”と謳われる名誉元帥ヴァルター。
誰もが息を呑むその姿は、帝国の象徴そのものであった。
だが祝祭の熱狂の陰で、ユリウスには避けられぬ宿命――帝位と婚姻の話が迫っていた。
それは、五年前に己の采配で抜擢したヴァルターとの関係に、確実に影を落とすものでもある。
互いを見つめ合う二人の間には、忠誠と愛執が絡み合う。
誰よりも近く、しかし決して交わってはならぬ距離。
やがて帝国を揺るがす大きな波が訪れるとき、二人は“帝と元帥”としての立場を選ぶのか、それとも――。
華やかな祝祭に幕を下ろし、始まるのは試練の物語。
冷徹な帝と傾国の元帥、互いにすべてを欲する二人の運命は、帝国三百年の節目に大きく揺れ動いてゆく。
【第13回BL大賞にエントリー中】
投票いただけると嬉しいです((꜆꜄ ˙꒳˙)꜆꜄꜆ポチポチポチポチ
奇跡に祝福を
善奈美
BL
家族に爪弾きにされていた僕。高等部三学年に進級してすぐ、四神の一つ、西條家の後継者である彼が記憶喪失になった。運命であると僕は知っていたけど、ずっと避けていた。でも、記憶がなくなったことで僕は彼と過ごすことになった。でも、記憶が戻ったら終わり、そんな関係だった。
※不定期更新になります。
オム・ファタールと無いものねだり
狗空堂
BL
この世の全てが手に入る者たちが、永遠に手に入れられないたった一つのものの話。
前野の血を引く人間は、人を良くも悪くもぐちゃぐちゃにする。その血の呪いのせいで、後田宗介の主人兼親友である前野篤志はトラブルに巻き込まれてばかり。
この度編入した金持ち全寮制の男子校では、学園を牽引する眉目秀麗で優秀な生徒ばかり惹きつけて学内風紀を乱す日々。どうやら篤志の一挙手一投足は『大衆に求められすぎる』天才たちの心に刺さって抜けないらしい。
天才たちは蟻の如く篤志に群がるし、それを快く思わない天才たちのファンからはやっかみを買うし、でも主人は毎日能天気だし。
そんな主人を全てのものから護る為、今日も宗介は全方向に噛み付きながら学生生活を奔走する。
これは、天才の影に隠れたとるに足らない凡人が、凡人なりに走り続けて少しずつ認められ愛されていく話。
2025.10.30 第13回BL大賞に参加しています。応援していただけると嬉しいです。
※王道学園の脇役受け。
※主人公は従者の方です。
※序盤は主人の方が大勢に好かれています。
※嫌われ(?)→愛されですが、全員が従者を愛すわけではありません。
※呪いとかが平然と存在しているので若干ファンタジーです。
※pixivでも掲載しています。
色々と初めてなので、至らぬ点がありましたらご指摘いただけますと幸いです。
いいねやコメントは頂けましたら嬉しくて踊ります。
魔王の息子を育てることになった俺の話
お鮫
BL
俺が18歳の時森で少年を拾った。その子が将来魔王になることを知りながら俺は今日も息子としてこの子を育てる。そう決意してはや数年。
「今なんつった?よっぽど死にたいんだね。そんなに俺と離れたい?」
現在俺はかわいい息子に殺害予告を受けている。あれ、魔王は?旅に出なくていいの?とりあえず放してくれません?
魔王になる予定の男と育て親のヤンデレBL
BLは初めて書きます。見ずらい点多々あるかと思いますが、もしありましたら指摘くださるとありがたいです。
BL大賞エントリー中です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる