血と束縛と

北川とも

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第35話

(16)

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 蜜を含んだように手足が重く、頭もぼうっとしている状態の和彦だが、それでも羞恥を感じることはできる。
「嫌だ。見るな……」
「俺には見る権利がある。俺が、お前をここまでトロトロにした」
 鷹津は、愛撫は加えてこない。ひたすら、食い入るように見つめてくる。和彦は羞恥に喘ぎ、弱々しく上体を捩って鷹津の視線から逃れようとするが、しっかり両足を押さえられているため、どうすることもできない。鷹津が愉悦を含んだ声で言った。
「見られるだけで、感じるのか? ひくつき始めたぞ」
「……うる、さいっ……」
「尻から、ダラダラと俺の精液を垂らして言う言葉じゃないな。また、注ぎ込んでほしいだろ」
 露骨な言葉で嬲られ、煽られて、和彦は息を喘がせる。鷹津が顔を寄せてきて、戯れのように軽く唇を吸い上げてきたが、それだけで和彦の胸の奥が疼き、尽きたはずの官能の泉が噴き上がる。自分から鷹津の頭を引き寄せて、唇を重ねていた。
「んっ、ふぅ……」
 情熱的に唇と舌を貪り合う一方で、鷹津の指が再び内奥の入り口をまさぐり始める。中に指を迎え入れたくて和彦が腰を揺らすと、鷹津に片手を取られ、下肢へと導かれた。半ば強引に触れさせられたのは、自身の内奥の入り口だった。鷹津に言われるまでもなく自覚はあったが、蕩けて潤った部分は、浅ましくひくついている。
「俺が欲しいなら、誰にも見せたことのないような媚態で、俺を誘ってみせろ」
「無理だ……。できない、そんなこと……」
「俺が見たいと言ってもか?」
 無理だ、と弱々しく答えた和彦は顔を背けるが、自身の内奥の入り口から指を退けることはできない。耳元で鷹津が笑った息遣いを感じ、羞恥と高揚感から眩暈がした。
 和彦の下腹部の陰りをまさぐりながら、鷹津が囁いてくる。
「俺の頼みが聞けないなら、本当にここを剃ってやろうか。俺は、どっちでもいいがな。――あとで、長嶺の男たちが、お前のここを見るたびに、顔をしかめるだけだ」
 欲望の根元をそっと擦られて、和彦は息を詰める。さんざん精を搾り取られたはずなのに、微かに高ぶるものがあった。
 いつもであれば強引に行為に及んでくる鷹津が、今に限っては様子が違う。じっくりと言葉で嬲りながら、指先や吐息すら武器として使い、和彦を淫らに追い詰めてくる。
 両足を抱え直され、鷹津の強い眼差しを受けているうちに、和彦の意識がふっと揺らぐ。理性と呼べるものはとっくに失っており、指先は欲情のままに動いていた。緩くなっている内奥の入り口は、和彦自身の指を嬉々として呑み込み、見境なく締め付けてくる。熱く、柔らかくなっている襞と粘膜がまとわりつき、ぴったりと吸い付いてくる。
 初めて及ぶ行為ではないが、自分自身の淫らさを如実に物語っている部分に触れるのは、居たたまれない気持ちになる。同時に、被虐的な悦びも感じるのだ。
 鷹津は口元に笑みを湛え、掠れた声で言った。
「自分の指で感じているだろ、お前」
 それを聞いた途端、和彦の内奥がきつく収縮する。これ以上鷹津の顔を見ることができず、堪らず目を閉じていたが、だからこそ、鷹津の眼差しをより意識することになる。
「あっ、はあっ、はあぁっ……」
 ベッドの上で響くのは、和彦の喘ぎ声と、淫靡な湿った音だけだった。
 付け根まで挿入した指をゆっくりと内奥から引き抜くと、ドロリと鷹津の精が垂れ落ちる。腰を震わせながら、再び指を挿入して、内奥を掻き回すように蠢かしているうちに、頭の芯が揺れるような感覚に襲われる。そのまま意識をどこかに連れ去られてしまいそうで、反射的に和彦は目を開いたが、相変わらず鷹津が見つめていた。
 目が合うと、まるで愛しいものに触れるように、抱え上げている和彦の膝に唇を押し当ててくる。
「一心に指を動かしているから、俺のことなんて忘れたのかと思ったぞ」
「……秀」
 和彦はそう鷹津を呼ぶと、内奥から指を抜き取る。待ちかねていたように、鷹津が高ぶった欲望の先端を内奥の入り口に押し当ててきた。
「今日は、この体位では初めてだったな」
 そんなことを話しかけてきながら、ゆっくりと鷹津が腰を進めてくる。和彦は上体を悶えさせながら内奥に逞しいものを呑み込み、必死に締め付ける。
「あっ、あっ、あぁっ――」
 内奥深くを重々しく突かれて、頭の先から爪先にまで快美さが行き渡る。和彦はのたうちながら頭上のクッションを必死に握り締め、抱えられた両足を揺らす。
「また、突っ込まれただけで、イッたのか? 尻がビクビクと痙攣してるぞ。――惜しいな。これだけいやらしくて具合がいいのに、美味い蜜だけは垂らさないんだからな。まあ、だからこそ、男たちが必死に精液を注ぎ込んでやりたくなるんだろうが」

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