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あれに見ゆるは
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武闘国家へ入国した直後、プロヴォ族の襲撃から始まった思わぬタイミングでの並び立つ者たち序列十五位との戦闘。
フェアトが吐き気を堪えながらも性欲の権化を討ち、かと思えば殆ど関係ないところでスタークが制御不能な新しい戦法を無意識下で編み出すなど色々ありはしたが、それはさておき。
「──アレか? あたしらの目指してた場所ってのは」
「みたいですね。 えぇと、確か……」
そんな双子と神晶竜、それに加えて大陸一の処刑人まで同行している三人と二匹の一行は、ついに目的地へと到着し。
「武闘国家皇都、〝チィロン〟。 魔闘技祭の開催地だ」
「……どうも」
少し離れた場所に位置する高い丘から見下ろしつつ、まるで一つの芸術作品であるかのように均整の取れた菱形の壁に囲まれた皇都を改めて俯瞰する。
街並みの〝色彩〟を表現するなら──〝朱、たまに黒〟。
魔導国家のように色とりどりというわけではなく、また天を衝くほどの巨城が聳え立っているわけでもない朱色と黒の街並みを見ていると、まるで皇都そのものが〝盤〟であるかのような少々平べったい印象を受ける。
では栄えていないのか? というとそんなわけもなく。
どうやら武闘国家における栄華の示し方とは、〝縦に伸ばす〟のではなく〝横に広げる〟事にあるらしく、この皇都を統治している〝皇帝〟は面積の四分の一近くを占めているかもしれぬほど規模が大きく横長の城に居るのだろう事は容易に想像できた。
……と、そんな風に見ていたのはフェアトだけであり。
「魔闘技祭も楽しみじゃああるが、まずは師匠に会いてぇなぁ。 あン時からどんだけ強くなったか見てもらいてぇしよ」
「……向こうの目的も同じですし、すぐに会えるのでは?」
「だよな! ッし、行こうぜ!」
『『りゅーっ!!』』
姉の興味が、すでに魔闘技祭と自身の師匠であるキルファにしかない事を察したフェアトの呆れ返ったような声音に気づく事もなく、パイクとシルドを矛と指輪に戻した一行が馬車を納めて丘を下り、平べったく見えていた皇都の壁を見上げるくらいの位置まで足を運んだ辺りで。
「──魔闘技祭への参戦希望者はこちらの門へどうぞー!」
「お、何だ?」
「観光や行商が目的の人とは入口が違うんですかね」
何故か正面に二つある大きな門のうち、ほんの少しサイズで劣れど明らかに頑丈さで勝っている灰色の門の前に立つ、ボディラインの強調や深いスリットが特徴的な衣装を着た女性たちが魔闘技祭への参戦を希望する者たちを誘導しており、スタークを筆頭にそちらへ向かってみたところ。
「お集まりいただきありがとうございます! 正午の部は一旦ここまでで締め切らせていただきまして、これより皆様には魔闘技祭への参戦の権利を懸けて〝試しの門〟に挑んでいただきます! これは強制であり失敗した場合は参戦はもちろん観戦する事も不可能となってしまいますので悪しからず!」
そこで行われんとしていたのは、〝予選の予選〟。
歯に衣着せぬ言い方をするなら、〝弱者の篩い落とし〟。
「ルールは簡単、この門を通るだけ! ただし見ての通り試しの門は非常に重厚かつ堅牢! 生半可な〝力〟では開扉どころかヒビを入れる事も難しい〝開かずの門〟でございます!」
一見すると簡素極まりないルールだが、〝開かず〟というのは誇張でも何でもないらしく、そう解説する女性の後ろで控えていた屈強な男性が渾身の力で振るった巨大な槌の一撃は、ヒビを入れるどころか逆に槌そのものや反動によって男性の腕の方にダメージが入る始末。
こんな代物を並の人間が突破できるわけもなく、まさに篩い落としであると、ここまで来てようやく実感したらしい一部の参戦希望者が僅かに物怖じしたのを感じたからかどうかはともかく。
「腕力や脚力でこじ開けるも良し! 武器を振るって突き破るも良し! 魔法を使って押し通るも良し! さぁ、我こそはという者たちよ! 見事この試しの門を打ち破り、かの【始祖の武闘家】キルファ様に挑む為の権利を得てみせよ!!」
「「「うおぉおおおおおおおおッ!!」」」
素手でも武器でも魔法でも、〝力〟を示す事ができるのであれば手段は問わない、それこそが魔闘技祭の誇る絶対のルールだという事を改めて告げるかのような希望者たちの背を押す鼓舞を受け、物怖じしていた者たちをも巻き込んだ盛り上がりを見せる中。
「流石は武闘国家、さっそく愉しませてくれんなぁオイ」
(あぁ嫌な予感……)
ここに至るまで散々感じてきた嫌な予感を、またしても感じずにはいられない歪んだ笑みを湛えるスタークに、フェアトはただただ戦々恐々とするしかなくなっていたのだった。
フェアトが吐き気を堪えながらも性欲の権化を討ち、かと思えば殆ど関係ないところでスタークが制御不能な新しい戦法を無意識下で編み出すなど色々ありはしたが、それはさておき。
「──アレか? あたしらの目指してた場所ってのは」
「みたいですね。 えぇと、確か……」
そんな双子と神晶竜、それに加えて大陸一の処刑人まで同行している三人と二匹の一行は、ついに目的地へと到着し。
「武闘国家皇都、〝チィロン〟。 魔闘技祭の開催地だ」
「……どうも」
少し離れた場所に位置する高い丘から見下ろしつつ、まるで一つの芸術作品であるかのように均整の取れた菱形の壁に囲まれた皇都を改めて俯瞰する。
街並みの〝色彩〟を表現するなら──〝朱、たまに黒〟。
魔導国家のように色とりどりというわけではなく、また天を衝くほどの巨城が聳え立っているわけでもない朱色と黒の街並みを見ていると、まるで皇都そのものが〝盤〟であるかのような少々平べったい印象を受ける。
では栄えていないのか? というとそんなわけもなく。
どうやら武闘国家における栄華の示し方とは、〝縦に伸ばす〟のではなく〝横に広げる〟事にあるらしく、この皇都を統治している〝皇帝〟は面積の四分の一近くを占めているかもしれぬほど規模が大きく横長の城に居るのだろう事は容易に想像できた。
……と、そんな風に見ていたのはフェアトだけであり。
「魔闘技祭も楽しみじゃああるが、まずは師匠に会いてぇなぁ。 あン時からどんだけ強くなったか見てもらいてぇしよ」
「……向こうの目的も同じですし、すぐに会えるのでは?」
「だよな! ッし、行こうぜ!」
『『りゅーっ!!』』
姉の興味が、すでに魔闘技祭と自身の師匠であるキルファにしかない事を察したフェアトの呆れ返ったような声音に気づく事もなく、パイクとシルドを矛と指輪に戻した一行が馬車を納めて丘を下り、平べったく見えていた皇都の壁を見上げるくらいの位置まで足を運んだ辺りで。
「──魔闘技祭への参戦希望者はこちらの門へどうぞー!」
「お、何だ?」
「観光や行商が目的の人とは入口が違うんですかね」
何故か正面に二つある大きな門のうち、ほんの少しサイズで劣れど明らかに頑丈さで勝っている灰色の門の前に立つ、ボディラインの強調や深いスリットが特徴的な衣装を着た女性たちが魔闘技祭への参戦を希望する者たちを誘導しており、スタークを筆頭にそちらへ向かってみたところ。
「お集まりいただきありがとうございます! 正午の部は一旦ここまでで締め切らせていただきまして、これより皆様には魔闘技祭への参戦の権利を懸けて〝試しの門〟に挑んでいただきます! これは強制であり失敗した場合は参戦はもちろん観戦する事も不可能となってしまいますので悪しからず!」
そこで行われんとしていたのは、〝予選の予選〟。
歯に衣着せぬ言い方をするなら、〝弱者の篩い落とし〟。
「ルールは簡単、この門を通るだけ! ただし見ての通り試しの門は非常に重厚かつ堅牢! 生半可な〝力〟では開扉どころかヒビを入れる事も難しい〝開かずの門〟でございます!」
一見すると簡素極まりないルールだが、〝開かず〟というのは誇張でも何でもないらしく、そう解説する女性の後ろで控えていた屈強な男性が渾身の力で振るった巨大な槌の一撃は、ヒビを入れるどころか逆に槌そのものや反動によって男性の腕の方にダメージが入る始末。
こんな代物を並の人間が突破できるわけもなく、まさに篩い落としであると、ここまで来てようやく実感したらしい一部の参戦希望者が僅かに物怖じしたのを感じたからかどうかはともかく。
「腕力や脚力でこじ開けるも良し! 武器を振るって突き破るも良し! 魔法を使って押し通るも良し! さぁ、我こそはという者たちよ! 見事この試しの門を打ち破り、かの【始祖の武闘家】キルファ様に挑む為の権利を得てみせよ!!」
「「「うおぉおおおおおおおおッ!!」」」
素手でも武器でも魔法でも、〝力〟を示す事ができるのであれば手段は問わない、それこそが魔闘技祭の誇る絶対のルールだという事を改めて告げるかのような希望者たちの背を押す鼓舞を受け、物怖じしていた者たちをも巻き込んだ盛り上がりを見せる中。
「流石は武闘国家、さっそく愉しませてくれんなぁオイ」
(あぁ嫌な予感……)
ここに至るまで散々感じてきた嫌な予感を、またしても感じずにはいられない歪んだ笑みを湛えるスタークに、フェアトはただただ戦々恐々とするしかなくなっていたのだった。
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