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第一章 繋がり

家族サービス

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 和也と茂はセックスを終えて、ベッドでマッタリとくつろいでいた。

 「お父さん・・・これからは時々、気が向いたららお父さんと呼びますね・・・」

 「気が向いたらね・・・茂君、いいけど、てっきり親子プレーでもしているのかと思ってたよ」和也は笑う。

 「ひどいなぁ!和也さん!お父さんと言う呼び方は親しみを込めて呼んでるんですよ!」

 「ごめんごめん、茂君、もちろん構わないけど、何となく照れ臭くてね・・・ただ息子に犯されていると思ったら興奮したなぁ!」

 「そりゃ良かったですけど、僕は母子家庭で育ったからお父さんが欲しかったんですよ・・・」

 「そうだったよな、いいよ!好きなだけお父さんと呼んで、ところで、茂君、今日はこれから予定はあるのかな?」

 「お父さん、あ、和也さん、今日は相方に会う予定があるんですけど、何かありますか?」

 「俺への呼び方、『和也さん』に戻ったのね・・・相方さんに会うのか・・・じゃあ仕方ないか・・・」

 「相方の話しをして現実に戻りました!和也さん!」茂は笑う。

 「いゃぁ、もし良かったらウチに来て夕食を一緒にと思ったんだけど、久しぶりだから嫁も喜ぶだろうと思ってね・・・でも、また今度だね・・・」

 「すみません、和也さん、また連絡しますね・・・そうそう、和也さん、今日は家族サービスしてみてはいかがですか?」

 「家族サービス?」

 「和也さん、さっき作ったペペロンチーノを作ってあげるとか、もちろん洗い物まで含めて」

 「でも、茂君、嫁は朝から機嫌が悪かったからなぁ・・・また色々とやると火に油を注いでしまうんじゃないかと思うんだけど・・・」

 「うーん、何と言うか・・・そう言う時の女性の心理って・・・期待したいけど、期待出来ない、嫌々やってもらうのは嫌だ、やらせたみたいになるのはもっと嫌だ、でもどこかでやっぱり期待したい・・・みたいな複雑な状況だと思うんですよ・・・和也さん」

 「茂君、難しいなぁ・・・ちょっとわからない・・・」

 「じゃあズバリ!簡単に言うと、奥さんはもっと和也さんに構ってもらいたいんじゃないかなぁ、もっと関心をもってもらいたいんだと思います・・・」

 「あぁぁぁ・・・関心か・・・茂君、痛いところ着くね・・・」

 「和也さん、女性に関心がなくても、家族を守りたいなら、最大限に関心があるフリをしないといけないんじゃないですか?あ、もちろん僕の私見ですけど・・・」

 「茂君・・・茂君の言うことは最も過ぎて、バッサリと刀で斬られた気分だよ・・・」和也は凹む。

 「あぁぁ・・・和也さん、ごめんなさい!僕、キツ過ぎるちゃうことか多々あるみたいで、相方にも良く言われるんです・・・本当、すみません!」

 「大丈夫だよ・・・俺は年相応に色々と経験してるから、ちょっとやそっとのことじゃ、へこたれない・・・痛いけど・・・」和也は苦笑いした。

 「あぁぁ・・・和也さん、今更気にしないでって言うのも変ですが、和也さんは優しくていい旦那さんでしょうし、いいお父さんです!少なくとも僕にとってはいいお父さんです!」

 「ありがとう・・・茂君・・・気安めでも嬉しいよ・・・」しょんぼりとする和也だった。

 「あぁぁぁ・・・和也さん、怒ってます?」

 「怒っていないよ・・・ちょっと痛いだけ・・・」

 「和也さん、すみません、和也さんから変わると奥さんもきっと変わりますよ!頑張ってください!」

 「ありがとう、茂君、さて、そろそろ帰らないと・・・」

 和也は茂のマンションを後にし、自転車を漕ぐ。

 「茂君、心配そうな顔をしていたな・・・俺が怒っていると思っているのかな・・・茂君の言っていることは事実だし、鋭いし・・・」

 「茂君は俺のことを心配してくれているんだろうな・・・あの若さでしっかりしている・・・本当は甘えん坊だけど、素直に甘えられなくて・・・でも俺には心を許してくれているんだろうな」

 和也は茂のことを考えて愛おしい思いになった。

 「そうだな、茂君の言う通りだ!今日の夕飯は俺が用意しよう!」和也は嫁に電話をし、スーパーに向かった。

 嫁は茂の言う通り、和也が夕飯を作る事に電話越しで明らかに怪訝な様子が伺えたが、後片付けまでやると伝えると、渋々納得された。

 和也はスーパーでニンニクとソーセージ、鷹の爪、スパゲッティ、オリーブオイル、カット野菜サラダ、キュウリとトマト、エリンギは2パックで100円だったので2パックを買った。

 家に着きキッチンで買ってきたものを広げていると、嫁がやってきた。

 「あなた!あら、嫌だ、ニンニクも鷹の爪もスパゲッティもオリーブオイルもうちにあるじゃない!あぁ~カット野菜って割高なのよね・・・」

 「折角作る気満々だったのに、そう言われるとやる気が失せる・・・」和也はため息をする。

 「あら、ごめんなさい・・・まあいいわ・・・ニンニクとスパゲティは古い方から使ってね、鷹の爪とオリーブオイルは開いているのがあるから・・・ソーセージもいいけどベーコンなら冷蔵庫に入っているわよ」嫁はサラッと言い残しキッチンを離れた。

 和也は湯を沸かし、古いニンニクと鷹の爪を冷蔵庫から探した。茂から教わった通り、下ごしらえをしながら洗い物もした。

 「あら、あなた!いつからそんなに手際が良くなったの?あなたが料理をした後は、シンクが洗い物が一杯でうんざりしてたのよ・・・」嫁は様子を見に来て声を掛けてきた。

 「うわぁ・・・茂君の言った通りだった・・・」和也は笑う。

 「えっ?茂君?あなた茂君に会ったの?」

 「今日の昼間にジムで偶然会ってね、その後、茂君にペペロンチーノを教えてもらったんだよ。あと後片付けしながら料理するようにって・・・」

 「さすがよね、茂君は・・・私も何かつまみを作るわ!ニンニクもたっぷりあるしエリンギ1パック頂戴ね、あなた!」

 「あぁ、どうせエリンギは余るから、使っていいよ・・・」

 「じゃあ、ニンニクとエリンギ、ベーコンでアヒージョを作るわ!」

 「嫁と一緒に料理をするなんて、こんな事を今までしたことがあっただろうか・・・何だか嫁は凄く楽しそうに見える・・・」和也は思った。

 「ねぇ、あなた、茂君なんだけどね、ちょっと心配なのよ・・・」

 「茂君の何が心配なの?」和也は嫁に聞き返した。

 「茂君はいい子過ぎるのよ・・・人の顔色を読むのが上手で、人の事を鋭く見抜いてしまうところあるでしょ・・・全てを理解して達観しているみたいなところもあるし・・・」

 「それは凄いことじゃないか!俺も時々茂君の前ではタジタジだよ・・・」

 「あなた・・・確かに凄いことなんだけど、多分・・・生きていく為に必要だった処世術なんじゃないかなぁって感じるのよ・・・」

 「処世術?生きていく為に必要だった?」和也は嫁が言っていることがさっぱりわからなかった。

 「茂君は母子家庭で義理のお父さんになりそうな人も何人かいたけど、お母さんは仕事もあってあんまり家にいなかったって言うじゃない・・・」

 「それでいて、兄妹三人の長男でしょう?背伸びして、大人の顔色見ながら上手く立ち振る舞っていたんじゃないかと思ってね・・・」

 「そう言うもんなのかな・・・考えたことなかったよ・・・」

 「私は中学の教員と言う仕事柄、複雑な家庭を沢山見ているからちょっと気になってね・・・」

 「最近では機能不全家族って言うのよ、そういった家庭で育った子は全てじゃないんだけど、だいたいグレるか、めちゃくちゃいい子かの二極化するのよね・・・あとは妙に道徳的になったりとか・・・」

 「機能不全家族?前にニュースで見たような・・・でも、じゃあ茂君はめちゃくちゃいい子の方だね・・・何が心配なの?」

 「機能不全家族って、最近家族が少ないでしょう、おじいちゃんおばあちゃんと同居でもないし、隣近所との関係性が希薄じゃない?母子家庭とか・・・」

 「子どもが愛情不足で育つのよ・・・愛情が不足すると、情緒が安定しなかったり、自分を大事に出来なかったりするようになるから・・・」嫁は語りだした。

 「私は茂君が色々と我慢しているんじゃないかと思ってね・・・無意識に我慢するのが当たり前、自分よりも他人を優先させたりとか・・・」

 「知らず知らずに無理をする癖がついていたりと・・・大人になってから病みやすかったりするから、それが心配なのよね・・・」

 「考え過ぎじゃないの?」和也は嫁に言う・・・

 「まあ、そうよね・・・考え過ぎね!きっと・・・でも我が家ではたっぷりと茂君には甘えてもらいたいのよ!」

 「そうだね・・・茂君には我が家では甘えてもらいたいね・・・」和也も嫁に同意した。

 「さぁ出来た!ペペロンチーノが完成だっ!」

 「アヒージョも出来たわよ!子ども達呼んで来るわね!」嫁は2階に上がって行った。

 和也は食卓にペペロンチーノ、アヒージョ、サラダを並べた。

 ビールを開けて、家族4人の楽しい夕食を和也は過ごした。

 食後、約束通り、和也は洗い物をしながら茂の事を考えてしまう・・・

 「確かに茂君はあの年代にしちゃ出来過ぎるかな・・・でも、考え過ぎかな・・・俺には甘えるようになってきたのはきっと良いことなんだろう・・・」

 「俺の体を求めてくるのも、きっと父親に甘えたかった気持ちもあるんだろな・・・」

 和也は茂のことも今まで以上に大事にしたいと思った。

 「しかし、今日の嫁は楽しそうだった・・・やっぱり俺が変われば嫁も変わるのか・・・茂君の言った通りだな・・・」

 「だとすると、やっぱり俺が悪かったのかな・・・?いやいや、全部が全部、そんなこともないだろう・・・でも・・・」

 和也は自問自答をするのだった。

 





 
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