牢獄の宝石姫

日野リア

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きっかけは

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 突然の訃報。

 毎日の日課となっていた教会通いの最中のことだった。
 魔獣王が無事に討伐されて歓喜にわく国民たちの間に衝撃がはしる。
 
 訃報?それは一体誰の?
 
 慌てて迎えに来た家の使用人が何かを言っている。
 まるで水中にいるかのように私の耳は音をうまく拾ってくれない。
 どうしたの。
 私は使用人にたずねた。
 おかしい、声を出そうとすると何かがひっかかっているように喉が引き攣った。
 馬車に押し込まれ、窓から流れる景色をぼんやりとただ見つめている。
  
 そうだ、魔獣王が討伐されたのだからナギも帰ってきているはずよね。
 たったの二年離れていただけだったけれど、その二年はとても辛かった。ナギの活躍がときおり耳に飛び込んできたが、怪我をしていないか、ちゃんとご飯は食べれているのかとか、不安でしようがなかった。

「クーニャ…」

 馬車から降りると母がいた。
 父も兄妹もいる。
 みんな揃ってどうしたのだろう。

「クリツァーニャちゃん…」

 ナギのお母様やお父様まで。
 みんなでナギのお迎えなんて素敵ね。

 私は揃ったみんなの顔色に気づきながらも、自分のために気づかないふりをした。

 だから、部屋の中央に置かれた台の上で、白い布を被せられた誰かが寝ているのも、突然泣き出したナギのお母様のことも。
 ぜんぶぜんぶ認めたくない。
 なにかの間違いだって叫びたい。
 この場からすぐに逃げ出したい。
 ほら、きっとすぐに後ろからナギが「ただいま」って。

 ――――――抱きしめてくれるから。

 口が震えてうまく話せない。
 だんだんと自然に下がってしまった目線を上に戻せない。

 ナギのお父様が白い布に手をかけている。

「やめて!」

 私は叫んだ。
 私はこれ以上ないほどの大声で叫んだ。
 そして、ナギのお父様に掴みかかろうとして兄にとめられる。

「やめて!お願い!やめてええええええええ!」






 気がつけば、自室で呆然としていた。
 あれは夢だったのだろうか。
 
 コロリと何かが手のひらに落ちてきた。
 それは美しい宝石だった。
 一体どこから?
 青く光るその石は、太陽にかざすと深海のように神秘的な輝きを放った。

 キラキラと、キラキラと。

 まるで何かがこぼれていくように。
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