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ティジャーラの宝
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砦の裏門と建物の間、黄砂に囲まれた場所にヤシの木とは別に枯れ木のような木が二本植わっていた。
「これが原木にございますか?」
「はい。砦内では一本ずつあれば十分事足ります。砦の外で本来は栽培できないはずの木が栽培できておりますのは、女神様より賜りし我が一族の秘術があればこそでございます」
だから黄砂漠ではあえて栽培地を造らなかったのだ。一族以外で、砦に不用意に近づく人間が現れないように赤砂漠や白砂漠の一部の村や集落で栽培できるようにしていたのだろう。そしてそれを歴代の砂漠の女神の一族が秘密裏に守っていたのだ。
「ではまず、これを王宮におわす陛下の御許へお持ちして王宮で大切に育てさせていただきます。そして、あの廃墟となってしまった黄砂漠と赤砂漠の間にあった集落で育てられるようにします。当面は王宮とあの集落の二か所で良いと思います。あの集落の村は王族と一部の商人以外は知らない国内の地図にも載らない村ですからある程度の秘密は保たれるでしょう」
「そのようにお願いいたします」
「はい」
「それでは枝をお取りいたしましょう」
「枝、ですか?」
植樹にご神木を抜いていくことは、さすがに無理だろうとは思ってはいたが、枝でも大丈夫なのだろうか。
「ご神木自体に秘術がかけられておりますので小枝でも王宮の庭に植樹されますと、おそらくすぐにこれくらいに育ちますでしょう。栽培方法や植樹方法など記載された書物は王宮の書庫にもございますでしょうから、それを見られればよろしいかと思います」
イラージュはそれぞれから細い枝を二本切って、祭壇から持ってきていた絹布にくるむとサマラに手渡した。
「ありがとうございます」
サマラは丁寧に礼を述べた。
これで『ティジャーラの宝』が甦る。
そう思うと何か大きな仕事を一つ終えた気分になった。
「さてここでの御用もこれにてお済でございましょう。今夜にも空飛ぶ絨毯で王宮へお送り致しましょうか? 本来でしたら裏の出口の門は夜明けにしか開かないのですが、空飛ぶ絨毯は別でございますから」
「お願いします、と早速言いたいところなのですが、それまでに教えて頂きたいことがあるのですが」
「何でございましょうか?」
「こちらにも外の情報というのは伝わってきているのでしょうか?」
「もちろんでございます。商人はもともと有能な情報屋でもあります。この砦にいるだけでティジャーラ国内のことは元より、大陸中の動きがわかるようになっております」
「そうですか。良かった」
「何をお知りになりたいのですか?」
「実は……」
サマラは自分が王都から出てからの王宮内の動き、それにカーズィバとタージル一行の最新情報、そしてもう一つ気になっていたことを尋ねた。
そうしてその夜、西の山脈の中腹から空飛ぶ絨毯が東に向けて飛んでいった。
「これが原木にございますか?」
「はい。砦内では一本ずつあれば十分事足ります。砦の外で本来は栽培できないはずの木が栽培できておりますのは、女神様より賜りし我が一族の秘術があればこそでございます」
だから黄砂漠ではあえて栽培地を造らなかったのだ。一族以外で、砦に不用意に近づく人間が現れないように赤砂漠や白砂漠の一部の村や集落で栽培できるようにしていたのだろう。そしてそれを歴代の砂漠の女神の一族が秘密裏に守っていたのだ。
「ではまず、これを王宮におわす陛下の御許へお持ちして王宮で大切に育てさせていただきます。そして、あの廃墟となってしまった黄砂漠と赤砂漠の間にあった集落で育てられるようにします。当面は王宮とあの集落の二か所で良いと思います。あの集落の村は王族と一部の商人以外は知らない国内の地図にも載らない村ですからある程度の秘密は保たれるでしょう」
「そのようにお願いいたします」
「はい」
「それでは枝をお取りいたしましょう」
「枝、ですか?」
植樹にご神木を抜いていくことは、さすがに無理だろうとは思ってはいたが、枝でも大丈夫なのだろうか。
「ご神木自体に秘術がかけられておりますので小枝でも王宮の庭に植樹されますと、おそらくすぐにこれくらいに育ちますでしょう。栽培方法や植樹方法など記載された書物は王宮の書庫にもございますでしょうから、それを見られればよろしいかと思います」
イラージュはそれぞれから細い枝を二本切って、祭壇から持ってきていた絹布にくるむとサマラに手渡した。
「ありがとうございます」
サマラは丁寧に礼を述べた。
これで『ティジャーラの宝』が甦る。
そう思うと何か大きな仕事を一つ終えた気分になった。
「さてここでの御用もこれにてお済でございましょう。今夜にも空飛ぶ絨毯で王宮へお送り致しましょうか? 本来でしたら裏の出口の門は夜明けにしか開かないのですが、空飛ぶ絨毯は別でございますから」
「お願いします、と早速言いたいところなのですが、それまでに教えて頂きたいことがあるのですが」
「何でございましょうか?」
「こちらにも外の情報というのは伝わってきているのでしょうか?」
「もちろんでございます。商人はもともと有能な情報屋でもあります。この砦にいるだけでティジャーラ国内のことは元より、大陸中の動きがわかるようになっております」
「そうですか。良かった」
「何をお知りになりたいのですか?」
「実は……」
サマラは自分が王都から出てからの王宮内の動き、それにカーズィバとタージル一行の最新情報、そしてもう一つ気になっていたことを尋ねた。
そうしてその夜、西の山脈の中腹から空飛ぶ絨毯が東に向けて飛んでいった。
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