チートを貰えなかった落第勇者の帰還〜俺だけ能力引き継いで現代最強〜

あおぞら

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第1章 落第勇者の帰還

第2話 落第勇者、帰還する②

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 あれから俺や師匠のみならず、他の冒険者も参戦したことで、数万以上いた魔王軍も既に半分くらいまで減っている。

 俺もそこそこ頑張った。
 まぁ本気ではないけど。
 しかしそれは他の冒険者達も一緒だ。
 
 と言うのも、魔王軍のモンスター達は、3分の2がパトリシアさんと元剣神さんに狩り尽くされた。
 お陰であの2人がモンスターに近づいたら逃げ出すほどだ。

「相変わらず凄いですね、パトリシアさん」
「……そうだな。ま、まぁ俺は1対多はあまり得意じゃないし、広範囲攻撃なんてないからそこまで倒せてないだけだ。決してパトリシアの方が強いわけじゃないからな」

 俺が純粋にパトリシアさんを褒めると、師匠は言い訳を並べ出した。
 こう言う所が子供っぽいんだよな。
 実力は随一なのに……全く勿体無い。
 
「本当に勿体無い……」
「あ? なんか言ったか?」
「いえ、何も。あ、来てますよ。そりゃ」

 俺は師匠に近寄ってきたデュラハンを一瞬の内に剣をざっと100回振って消し飛ばす。
 でも余計だったかもしれない。

「何余計なことをしてくれてんだ弟子よ。これくらいの奴に俺がやられるわけないだろうが!」

 師匠はそう言って1度腕を振ると、その風圧だけで屈強なオーガたちが吹き飛ばされていく。
 そして俺に守られたのが気に入らないのか、俺の周りにいるモンスターを駆逐してゆくのだが、そのスピードが桁違いだ。
 1秒の間に10体くらいは余裕で倒している。
 流石に俺じゃ、8割くらい本気を出さないとああは行かない。
 もう中年なのに頑張るよな。

「弟子、お前も手伝え! サボることは俺が許さないぞ!」

 師匠が俺の周りのモンスターを駆逐した癖に理不尽なことを言うよな。
 しかし俺もお金の為に頑張らないといけない。
 
「【身体強化:Ⅲ】」

 俺は自身のスキルの力を解放。
 その瞬間に体がミシッと言う音を立て、心臓のあたりの皮膚から赤い亀裂が浮かび上がってきて、首の辺りまで亀裂が入った。
 更に髪が少し舞い、目も銀色へと変化する。
 
 ふぅ……相変わらず痛い。
 でもそろそろ俺もやらないとお金を貰え無くなってしまうからしょうがない。
 
 俺は近くに——と言っても1km以上も先だが——いた15体程のトロールの小隊に突っ込む。

『な"、何者だ!?』

 トロールの中で一際大きいトロールが声を上げるが——ごめんな? それには応えている時間はないんだ。
 後ろで師匠がキレてるからさ。

「——ごめん」

 俺は、相棒である魔剣——破壊剣を振り下ろす。
 その瞬間にトロールの再生能力などお構いなしとばかりに真っ二つになり、消し飛んだ。

「グルぁ!? ウガウガ!?」
 
 いきなりリーダーを失ったトロールたちは混乱状態になるが、俺は好機とばかりに剣を振るっていく。
 1体、2体とどんどん数が減っていき、僅か10数秒でトロールの小隊は全滅した。
 
 俺は剣についた血を飛ばし、鞘に剣を戻そうとするが———

「———チッ! いきなり押し寄せてくるなよな」
 
 今まで統率の取れていた魔王軍のモンスターたちが、突然意思を失ったかの様に半狂乱になりながら特攻して来た。
 それはここだけではない様で、師匠の所は勿論、パトリシアさんや元剣神さん、他の冒険者の元にも押し寄せている。

 どうやら魔王がそろそろヤバいみたいだな……じゃないとこんな状態になるのはおかしいし。

 このモンスター達は魔王がコントロールしているので、コントロールから外れたのだろう。
 俺は剣で攻撃を受け流し、時には反撃をして対応する。
 
「早く倒してくんねぇかな、光輝っ!」

 俺は魔王と対峙している光輝に届くことのない注文をする。
 正直言ってこの状態はヤバい。
 俺は範囲攻撃なんて持ってないからどうしても取り零しが出てくるので、そいつらが外壁を攻撃してしまうのだ。
 
 俺は必死に剣を振るって敵を薙ぎ倒していく。
 それでもまだ終わりが見えない。
 
 俺がもう1段階奥の手を使おうかと思っていた時、突然モンスターの動きが止まり、何もしていないのに光となって消えていくではないか。
 一見不思議な現象だが、俺はすぐに原因に気がついた。

「…………やっとやりやがったか……光輝……。遅かったな……」

 光輝たち勇者が遂に魔王を倒したのだ。
 その証拠にモンスターが消えている他に俺の足元に1度だけ見たことのある魔法陣が出現した。

 ———そう、何を隠そう俺たちをこの世界へと連れて来た異世界転移陣だ。

「おーい弟子! 大丈夫———って何だそれは!?」

 俺の元に駆け寄って来た師匠が転移陣をみて驚くが、俺のことは予め言っていたので、直ぐに落ち着きを取り戻した。

「……遂にお前もお役御免ってか?」
「そうみたいですね。まぁ元々帰りたかったので異論はないんですけど、もう少し事前に言って欲しかったのは有りますね」

 俺は肩をすくませてそう言う。
 
「まぁそれは俺も最初に聞いていたから何も言わんが……元気でいろよ」

 師匠が恥ずかしそうに頭をガシガシ掻きながら言ってくる。
 流石ツンデレおじさん。デレもちゃんと入っていて完璧です。

「師匠こそ、早くパトリシアさんに告白して下さいよ。俺は帰る前に見たかったです。2人が腕組んでるのとか」
「それはお前が俺をおちょくりたいだけだろ!」
「そんなことはありませんよ」

 まぁ半分は。
 そうそう、師匠はパトリシアさんに惚れているくせに、何やかんや言って告白をしていなかったのだ。
 振られるのが怖いと言う意外とヘタレな理由で。
 
 そんな何でもないことを師匠と話していると、そろそろ時間がやって来た。
 
「俺がいなくなったら絶対に告白して下さいよ。師匠はそろそろ幸せにならないと」
「…………わぁったよ。覚悟を決める」

 その言葉通り、キリッとした表情になる師匠。
 
「ならよしです。——では少し軽いですが、さよなら! そして、俺を弟子にしてくれてありがどうございました!」

 俺は師匠に深くお辞儀をしてから眩い光に包まれた。





☆☆☆





 

 ———意識が覚醒する。

 俺は目をゆっくりと開き、辺りを確認する。
 そこは転移されら時にいた教室でも、自分の部屋でもなく、病院の病室だった。
 その証拠に俺の腕には点滴がされており、病衣を身に纏っていた。

「…………戻って来たのか……?」

 俺はベッドから立ち上がって外の景色を見ながらそう言う。
 外には10年ぶりの懐かしの景色が広がっていた。

 俺がしばしこの景色に釘付けになっていると、病室のドアが開き、女性と女子2人と男性1人が入ってくる。
 それは俺の両親と妹だ。

「大丈夫なの隼人!? 1ヶ月も意識がなかったのよ!?」
 
 母さんが俺に抱きつきながらそう言ってくる。

 ………………1ヶ月?

「1ヶ月だと……?」

 俺は戻って来れた安心感より違和感が気になった。
 それに応えてくれたのは妹のはるかだった。

「そうだよおにぃ! おにぃは1ヶ月もずっと寝たきりだったんだよ!」

 俺はそんな妹の言葉に激しく動揺する。
 
 そんな馬鹿な……たった・・・1ヶ月だと……?
 俺は10年間も彼方の異世界に居たんだぞ……?
 分からない……残りの9年11ヶ月はどこに行ったんだ?




 ———どうやら俺が思っていたよりややこしい事態が起こっている様だ。
 
 俺は誰にも気づかれない様に大きなため息を吐いた。
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