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第1章 劣等生の復讐 第1部 新たなる可能性

第1部プロローグ 学園都市の有名人

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 ―――2050年。
 その年に地球ではある大きな変化が起きた。

 突如地球のさまざまな場所で、空間が裂けると言う奇妙なことが発生した。
 その裂け目は様々はニュースやTVなどでも報道され、一気にその認知度は上がっていく。
 それと同時に世界の様々な者たちがその正体を解明しようと研究を開始した。

 しかしその裂け目を調べれば調べるほど分からなくなる。
 研究者はなぜ入ることができないのか、なぜこの地球に出現したのかを必死に調査したが、何も掴むこともできなかった。
 しかし時間が経つにつれ、どんどんと裂け目が大きくなっていく。
 それに不安を覚えていたのは、その近くに住む住民たちだ。
 研究者たちの元に毎日のように「早く解明しろ」などの催促が届くようになった。
 研究者たちは更にお金をかけて調査するが、結局分からないままだった。

 そして遂に2058年7月9日に、オーストラリア大陸のある場所で今後人類が窮地に立たされる出来事が初めて発生する。

 そこにあった裂け目が突如急激に膨張し、地球を――空間を侵食し出した。
 どんどんと裂け目は広がっていき、とうとう大陸の10分の1を覆うように深淵に染まってしまう。

 しかしそれだけでは終わらない。
 建物が突然見たこともない木やつるに巻き付かれて倒壊し、道路は地面が地割れのように割れてそこから草が生えていき、ほんの数日で草原に変わってしまった。
 こうして裂け目があった場所にはあり得ない程の変化が発生し、とてもじゃないが人間が住めるような場所ではなくなった。

 これには全人類が驚きを隠せなかった。
 数多な国でこの出来事が報道される事となり、遂にはこの出来事を知らない人間がいないと言うくらいまで認知されることに。
 
 しかしこれで終わりではなかった。
 それどころかこれからが本当の始まりであった。
 
 土地が変化した後、ラノベやアニメに出てくるモンスターの様な生き物が現れ始める。
 そして生き物達は始めは変化した土地の中で生活していたが、ほんの数ヶ月ほどで移動を始めて無差別に近くの都市を攻撃し、人間を含めたさまざまな動物を捕食し始めた。

 人類はなんとか食い止めようと軍隊を送り込んだりミサイルを撃ったりしてみるが、現代兵器ではそこまでの成果が得られなかった。
 なんとモンスターには現代兵器の殆どが効かなかったのだ。

 そうして人類は対抗する手段が得られぬまま時間が過ぎていった結果、次第に数と土地を減らしていった。
 最終的には南極全土が次元の裂け目に侵食された―――ダンジョンに変化し、
 しかしそんなある時、1人の研究者が偶然ある物質を発見することとなる。
 その物質はモンスターの体内から発見され、《マナ》と名付けられることとなった。

 《マナ》は今までに存在した物質とは全く別物だった。
 まず気体のように触っている感覚は無いのに、条件によってははっきりと見ることが出来、更にさまざまな色に変化した。
 しかしそれよりも重要な報告が彼らにもたらされる。

 その報告とは―――その物質は全ての性能を上げる効果があったと言うことだ。

 何故それがわかったかと言うと、それには1人のおバカのお陰であった。
 
 ある研究者が全く進まない研究に苛立って、モンスターの死体から取り出した魔石と名付けられた《マナ》の濃縮石を投げたことが原因だった。
 魔石は鉄の壁に当たり砕け散る。
 それを見た研究者達が悲鳴をあげて魔石だったものを拾い上げようとすると、全て当たった壁に吸収されてしまった。
 しかしその壁を調べると、何と一般の鉄よりも10倍ほど硬度が高くなっていた。

 そこからさまざまな実験が行われる。
 そしてその実験で得られた結果をもとに、人類は《魔導バングル》を開発した。

 《魔導バングル》は簡単に言うと、空気中のマナを吸収して、使用者が魔術を使えるようにした物だ。
 その力は凄まじく、人体にマナを纏わせる《身体強化魔術》のお陰で下級のモンスターは倒せるようになった。

 しかしいくら人体を強化したところで、モンスターには敵わない。
 そんな人類は、新たな魔術を開発した。
 これは後の人類が最も使い、世界で一番有名になる魔術だ。

 その名は《召喚魔術》。

 世界中にある神話や伝承の中の自分に合った生物を召喚、契約をし使役する魔術だ。
 この魔術が開発されたお陰で、強いモンスターをも倒せるようになった。

 人類はモンスターに対抗する手段を手に入れたのだ。




☆☆☆



 

 時は流れて2250年。

 人類とってダンジョンという出来事が既に日常になってきていた。
 現代日本では、今までの高等学校の7割を廃止。
 なぜなら召喚術士としての才能を持った子供が全体の7割を占める様になっているからだ。

 そして召喚術士としての最低限の才能があれば必ず15歳から6年間、国立召喚術士育成学園都市に通うことが義務付けられた。
 現在学園都市には何十万人程の生徒が通っており、日本の全ての召喚術士の卵が集まっている。

 そのため学園都市は日本列島から100kmほど離れた人工島に拠点を構えていて、広さは東京都と同じくらいの大きさだ。
 そしてその島の全てが学園都市の施設になっている。
 例えば校舎や運動場、寮などの一般の学園にもある物は勿論のこと、ホテルや大型ショッピングモール、コンビニに電車やバスなどの一般の都市にある物が全て揃っている。

 その為一般的に孤島は生活が大変なイメージがあるが、この学園都市は物凄く快適な生活が送れる為、観光地としても栄えているのだと言う。
 要するに学園都市は最高に住みやすいということだ。

 そんな学園都市には、世界的に有名な生徒が何人もいる。

 例えば学園都市の生徒会長や副会長は、代々強力な召喚術士を輩出している名家出身で、世界中から引き抜きが頻繁に行われるほどだ。
 勿論その他にも有名な生徒は沢山いる。

 しかしその中でも特に有名な生徒が2人いた。

 1人は今年入ってきた新入生。
 なんと学園都市100年以上の歴史の中で、歴代最高得点で主席入学。
 更に世界でも数人しかおらず、日本では初の適合率どちらも人類最高の100%の逸材。
 そして龍川家と言う日本でも有数の召喚魔術の名家の生まれである。

 その新入生の名前は龍川双葉たつかわふたば
 既にダンジョン攻略の実績もある彼女は、全世界から注目されている。

 そしてもう1人は、双葉とは全く逆の意味で有名だ。

 その生徒は現在18歳の1年生で、留年3年目の劣等生。
 マナ適合率は上層部以外に知られている値は10%とされているが、実際の数値は双葉と並ぶ100%だ。
 しかしその一方で召喚適合率が歴代召喚術士最低の10%と底辺の中の底辺。

 適合率10%では、召喚術士としてやっていける確率はほぼ0%だ。
 そもそも5%~15%の人間はほぼいない。
 それに実際には20%代の生徒ですら、ほとんど全員が召喚術士になれないのに10%でも愚直に足掻く変人。

 こんなにも召喚術士として才能がないことが分かれば、普通の人だと留年と決まった瞬間に諦めているだろう。
 しかしその生徒は退学せず、留年1年目の時には勉強していた。

 そのお陰で座学の成績は毎回1位。
 魔術の成績もトップクラス。
 しかし召喚魔術が使えないため学年最下位で結局留年。

 更に2年目からは、よく授業を抜けてはどこかに行くようになってしまった。
 しかしどの教師にも、既にその生徒に教えることはないという理由で放置されていた。 

 その生徒の名前は八条降魔はちじょうこうま

 何を隠そうこの物語の主人公である。

 さぁ、いずれ最強になる召喚術士の物語を始めよう———


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