そしてふたりでワルツを

あっきコタロウ

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外伝(むしろメイン)

閑話一   #マリクなう

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メイン:みんな  ジャンル:ギャグ時空

ギャグ時空とは。本編と一切関係のない不思議時空のことである(もはや二次創作です)

==================================================
 
 何かと忙しい吾妻邸で過ごす毎日。そんななか、マリクが空き時間のほとんどをつぎ込んでいる趣味、庭いじり。主人から「好きにしていい」と与えられた庭は、(元)侯爵家の名に恥じない広さを誇る。
 かつてスラムの王と恐れられた銀狼も今やただの一使用人。しかし、ここにいる間だけは、一国一城の主。
 目の前の土からぴょっこりと顔を出している若くて小さな双葉は、手間をかければかけるだけ立派に育つことを、マリクは知っている。植物は裏切らない。害虫や害獣などの邪魔が入らなければ。

「マリク~! なう!」

 ……邪魔が入らなければ。


 なうなう鳴きながらぴょんぴょん跳ねてやって来たのは、言わずもがなお屋敷の奥様・カミィ。背後にはこれまたいつものように不気味なニヤニヤ笑いを浮かべる主人・ジュンイチの姿もセット。

 奥様の手には、何やら見たことのない機械。
 小さな手のひらから少しはみ出すくらいの、四角くて薄い……なんじゃこりゃ。

「マリク! お庭なう!」
 
 奥様は眉間にしわをよせるマリクの前におもむろに機械をかざし、指でトンとタッチ。カシャリと軽快な音が鳴る。
 
「わぁい! 撮れたぁ!」
「カミィちゃん、撮影したあとは、ハッシュタグをつけてツブヤキ呟きボタンをタップだよ」
「はっしゅたぐ?」
「そう。"#"の記号をつけて、マリクなうとでも入れてご覧」

「おい、何してる? なんだその機械? また変なもんつくったのか?」
 近寄って主人夫婦の手元を見やる。謎の機械には、右手にスコップ、左手に肥料の入ったバケツを装備したマリクの姿が鮮明に映し出されていた。

「あっ!? 俺だ。写真か? カメラなのかこれ?」
「んー。ちょっと違う。スマフォンだよ」
「スマフォン! いいのかそれ!? 世界観的に!」
この世界ワルツシリーズは基本的に僕がつくったって言えば何でもありだから。それにほら、ここはギャグ時空! 本編とは違うんだ。このアプリツブヤキッターをつくったのも僕だ」

 メタ的やりとりをする男性ふたりの隣で、カミィはツブヤキ投稿ボタンをタップタップ!

【おにわでおはなそだててrうまりく #マリクなう 画像つきツブヤキ】
 誤字も無変換もなんのその。そのままツブヤキタップタップ! イエス! 二重投稿!

 ピロンと即座に鳴り響く通知音。

「わぁ~。デコくんとボコくんからもうお返事がきたよ。ツブヤキッターっておもしろいねぇ。お手紙よりはやーい」
「リアルタイム通信だからね」
「なんて書いてあんだ?」



カミィ【おにわでおはなそだててrうまりく #マリクなう 画像つきツブヤキ】
 |
デコ 【手袋が手袋グローブってより”軍手”って感じがしますね】
 |
ボコ 【ちょwwそれwwwwww草不可避www大草原www菜園だけに、なんつって! 直接ボスにはぜってー言えねーww】



「見えてんぞ、ボコ」
 と、つぶやき(リアル)してもボコには届かない。スマフォンを通してツブヤキッターで呟かないとな!

「このツブヤキッターてのはアレか。電話の文字バージョンみたいなもんか?」
「察しがいいね。厳密には全然違うけど、今はその解釈でいいよ。僕は今日一日はカミィちゃんを観察する日だから説明が必要なら後日するよ」
「今日っつか毎日そうじゃねえか」

「おもしろいから一緒に見てる?」
「じゃあ屋敷へ戻って見よう。マリクくんお茶出して」
「おう」

 というわけで、一同集まったのは吾妻邸ダイニング。
 テーブルの真ん中にカミィが陣取り、ジュンイチとマリクが左右から覗き込む。

「ジュンイチくん、この、はっしゅたぐって、なぁに?」
「ハッシュタグはね、このタグがついたツブヤキをまとめて閲覧できる機能だよ。今話題のツブヤキなんかも見れるよ」
「#マリクなうはまださっきのいっこしかないね」
「マリクくんのなうをツブヤキできるのはカミィちゃんだけだからね」

 そっかぁ。と声を落とすカミィ。仮に他人からマリクのなうを得たとして一体何が面白いというのか。マリク本人は理解に苦しむ。

「じゃあ次はこれにしてみよう」
 とカミィがいかにも雑に選んだのは【#噂のイケメン】タグ。

 瞬時に画面が切り替わり、タグ付きツブヤキがずらり。
 ツブヤキの内容は主に「○○で見た!」というような目撃情報。察するに、噂のイケメンとやらを見かけたら報告するためのハッシュタグらしい。位置情報はオフィーリア国周辺のみならず、聞いたことのないような遥か彼方の地まで。こんなに普及してたのか、スマフォン&ツブヤキッター。

「なんだよ噂のイケメンっ……て!?」
 あまり興味深いタグではないなと、カミィの横から画面をスクロールさせていたマリクの目にとまったのは一件の画像つきツブヤキ。マリクは目を疑って、画面に釘付けになった。

「お、おいこれ、もしかして」
 画像には紛れもなく見知った顔。見間違うはずがない。悔しい程に美しい月色の髪と突き抜けるような蒼穹の瞳。その造形があまりにも目立ちすぎるためか、噂のイケメンタグは数日おきにそこかしこでツブヤキされている。

 同時に気になるのは……ときおり目撃情報に混ざる、怪談めいたツブヤキ。
【#噂のイケメン タグで呟いた人は、殺されてしまうらしい】と……。それを裏付けるように、ツブヤキしたアカウントはのきなみその後の更新が無い。
 それでもこのタグのツブヤキが止まないのは、噂好きの人の業だろうか。好奇心は猫を殺す。この場合殺されるのは猫ではないが。

「あのふたり……」
 実際の彼らを知っている人間からすると、怪談は都市伝説でなく、まぎれもない事実となる。

 その時、マリクは確かに見た。ジュンイチの瞳が鈍く光る様を。
 そして、気づいてしまったのだ。彼がこの、リアルタイム情報ツールをつくった真意に。

 マリクは身震いして、「前から思ってたけど、できればこいつジュンイチは敵に回したくねえな」と心のツブヤキボタンをタップした。

***

おまけ(ある日のトーマス)

「どいつもこいつも人の写真を勝手に撮ろうとしやがって腹が立つ。いや、まてよ? これを逆に利用して信者を募り、俺様の国家を築けば良いんじゃないか? そうだ。使えるものは使えば良い。わははは」

トーマス【噂のイケメン公式アカウント。僕と一緒に国家をつくりませんか?】

「完璧だ……。あとは愚かな豚どもが集まるのを待つだけ」

管理者からのメッセージ【不適切な表現によりアカウントが削除されました】

「俺様が一体、何をした!」

答え:国を滅ぼしました。
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