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第二章 メインヒロイン決定戦 

エイミー ウッド

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「授業中すみません。私、魔法学園を辞めて来て、これからはこちらでお世話になりたいのですが、窓口はどちらですか?」

エイミー ウッドは、何の取り得もないただのモブだった。ただひとつハーフエルフであるという一点のみが他の人とは違っていた。 

本来であれば普通の結婚をして普通に年を取る。エイミーは心の底からそんな普通の事を望んでいた。だが運命はエイミーにそれをさせてくれなかった。自身の家系が分家から本家へと昇格してしまったのだ。ただのモブのはずだったエイミーは男爵から子爵の令嬢となり、その事で一気に注目されてしまう。

普通の家系であれば、本家となったくらいで子爵にまでは出世はしない。ただ歴史の真実を知るフルムーン公爵がその仕掛け人として裏で動いた結果だった。 

そして、1つ階級が上がっただけなのに、本人の意図しない所でエイミー ウッドの周りにあった空気が一変した。 

これまでエイミーを無視していた男爵令嬢達が、エイミーに擦り寄るように近づいて来たのだ。 

エイミーは、この事態にひどく動揺する。エイミーは普通だけが好きだった。男爵の地位ですら不相応だと感じていたのに、それよりも更に上の階級にされてしまったのだ。 

このままいくと、自分だけの最高に普通な生活が脅かされてしまう。そこで、エイミーはすぐに魔法学園を辞め、学園の隣にある塾ヒロシに通う事を決意する。

しかし、それがエイミーの目指す普通である事に於いて、もっとも間違いの行動である事にエイミーはまだ気づいていない。 

講師は突然現れたエイミーを見ると大笑いをしながら頷いている。 

「わはははは。才能の原石よ。まさか自分からやって来るとはな。さっそくだが俺のパーティーなどに登録しても良いかな?」 

エイミーは戸惑いつつも返事をしてしまう。

「え? あ……はい。」 

「ふむふむ。承諾ありがとう。よし、では明日からよろしくなエイミー ウッド。」 

エイミーは、先生らしき人物のその言葉を聞いてとても恐ろしくなる。教会関係者でもなしに名前が分かるなんて普通では考えられないからだ。

「なぜ私の名前を? 私はまだ名乗っていないと思いますが。」 

「あはははは。なに。そんな事は気にするな。それより自分のステータスを確認してみろ。これでお前は特別だ。ただこれはお前の素晴らしい人生の始まりに過ぎない。」 

「そんなっ! 高ランクのジョブに高ランクのモンスターカードがたくさん。……なんで? 私は強くなんてなりたくありません。普通に平凡に生きたいんです。」 

エイミーは珍しく大声を張り上げる。あってはならない事が現実に起きてしまった。エイミーにとっては普通が一番。こんなにも自分が特別になる事は望んでいないのだ。だが、講師はエイミーを否定する。

「それは駄目だ。君には俺の導きにより英雄になって貰う。君にはその素質があるんだ。」 

だが、普通になりたくて魔法学園を辞めてきたエイミーにとって、英雄になるなんて自分の信念とは真逆の目標。あってはならない。講師にはハッキリと言い返す。

「私は普通が良いんです。身の丈に合わない評価を受ける事は苦痛でしかないんです。」 

しかし、エイミーの魂の叫びに講師はもっと大きな声で対抗する。

「甘ったれるな! いいかエイミー。お前が英雄になっても、それは選択肢をより多く得られるだけだ。お前が普通を目指すなら、それより劣悪な環境しか選べない。なぜなら目標を低く設定する事で、自ら努力する事を怠り、最低の結果が待っている事になるからだ。普通の生活だと? 世界の平均は極貧の生活を送っている平民なんだぞ。お前が普通でありたいなら強くなり自ら普通を選べる環境を作れ。」 

エイミーは、普通の生活を夢見ていた。普通の人と普通に結婚し、何不自由しない生活を送る。ただ、そんな生活は普通であれば絶対に在り得ない。シリーは今朝塾長から聞いた驚愕の事実を使い、ここぞとばかりに、エイミーに語り掛ける。 

「この世界は約18年周期で歴史が繰り返される。 

聖魔循環期サイクル 

魔王期オクトは、約8年間、魔王の侵攻により人類に危機が訪れる時代だ。 

そして、英雄が育ち魔王を討伐し、新しい魔王が力を蓄えるまでの英雄期セブン 

人類の平和な期間は魔王討伐後のこの約10年間だけだ。 

この聖魔循環期サイクルにより、世界には貧困が溢れている。普通を目指すとは、貧困の辛い生活を目指すという事なのだ。

そして、俺が言った英雄とはこの英雄期セブンを作り出す英雄の事ではない。

未来永劫、人類に平和をもたらす存在、真の英雄の事だ。」 

エイミーは普通の生活がしたい。その為には何でも自分が出来る事の為に努力をする覚悟だ。講師のいうように今まで考えていた普通は、全て平和な事が前提としてあり、普通の人々が苦しい生活を余儀なくされていた事は知らなかった。そして、自分が考えていた普通は人類が危機に苦しみ平均である極貧生活を送る事ではない。ここでやっと自分の考えが間違っている事に気付いた。 

「……なります。私は英雄になる。そして、自分の力で、目立たず、それでいて毎日楽しく生きられるような普通の生活を自分で築きます。絶対に普通の人生を送ってみせる。」 

「わはははは。入塾おめでとう。それでは、エイミーはあそこの席に座ってくれ。これから楽しい課外授業に行く事になるぞ。」

 こうして、新入生エイミー ウッドの特別教室入りが確定した。






◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇   

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現在の進行中のルート №5 エイミー ウッド  
17歳 ハーフエルフのモブ子爵令嬢ルート 

「普通って特別にならないと掴めないものだっただんですね。シリー先生、私普通の生活を勝ち取る為に、英雄になります。ですが、普通を勝ち取ったら、その時は隣にいてくれませんか? 先生の笑顔、私の普通に必要かもしれません。」

投票方法は簡単です。ヒロインの名前を書くだけです。

小説家になろう読者様
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カクヨム読者様
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アルファポリス読者様
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とさせて頂きます。レビューの場合を星の数と同じとさせて頂くのは、よりこの作品が好きな方の投票を反映させたいと思ったからです。

皆様に楽しいをお届け出来るよう、これからも精一杯頑張りますので宜しくお願い致します。 
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