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第二章 メインヒロイン決定戦
スカーレットとエクレア大いに走る
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――ルートC 繁殖迷宮 お宝狩猟
スカーレット フルムーンと エクレア ゴールドは、お互いに顔を合わせ最悪の気分になっていた。危険なAランクで講師や仲間達と逸れてしまった。そして、この絶望的な状態で、よりにもよって一番相性の悪い相手と二人きりになった。
スカーレットは、講師達か生徒ならアマンダかニックが良かった。
一方でエクレアは、講師か連れのセイラが良かった。
スカーレットは尻餅をついて着地した事で、お知りに回復魔法をかけている。
「いてててて。何でよりにもよって、あんたとなのよ。」
「それはこっちの台詞だわね。」
スカーレットは立ち上がると、部屋の扉の前に『モンスターを討伐し1000の宝箱を獲得せよ』という石板を発見する。
「宝を千回ドロップさせるまで、魔物を退治し続けるって無理なんじゃ。宝箱は素材ではなくドロップアイテムよ。それに、あんたは盾で私は回復専門よ。」
「アタッカーがいなければ話にならないわね。早くシリー先生達を見つけて、合流しないとね。だけど、私はその前にセイラを探さないといけないから、じゃあね。」
エクレアは扉に手を掛けるが、その前に、スカーレットがエクレアの腕を握りそれを制止した。
「まてまてまて。あなた一人で行く気なの?」
「そうだけど。何か問題あるかしら?」
「落ち着きなさい。私達は逸れてしまったの。せっかく同じ場所にいるのに、別々に行動するなんて馬鹿過ぎるわ。」
「五月蠅いわね。あんたも言ったように、私はあなたとは一緒にいられない。私は一刻もはやくセイラを見つけるのよ。」
「分かった。あんたと一緒にセイラを見つければ良いんでしょ? 回復は出来るから、私を置いて行かないで。」
しかし、そのスカーレットの妥協案に、エクレアは異を唱える。
「ふんっ。これだから世間知らずのお嬢様は嫌いなのよね。良いかしら。私は伯爵令嬢であると共に商人の娘よ。こちらにメリットが無ければあなたの言い分は通らないと思いなさい。」
エクレアの高圧的な物言いを、スカーレットは我慢する。
「……うん。分かった。」
「まず、私と行動を共にする利は、私が有用な盾スキルを既にいくつか持っているという事でしょうね。私はゆくゆくはゴールド商会を率いる者として、敵を引き付けるだけでなく、自分より強い敵を想定して訓練をしてきたから強敵に対しては逃げる事も出来る。そして、こちらの要求は、まず最初にこれまでの非礼を詫びなさい。次にこれから、私の言動には絶対に逆らわないと約束して。それから、あなたと一緒に行動する事のメリットも教えて欲し――」
だが、エクレアが言葉を終える前に、スカーレットの堪忍袋の緒が切れる。
「調子に乗るなっー! やってられない。もう良い。さようなら。」
実はエクレアは、最初から一人で行く気は無かった。交渉を自分に都合よく成立させる為に、相手を不安にさせる所からスタートさせたのである。だが、スカーレットは元々は王妃を目指していた程に気が強い。プライドも人一倍高いのだ。
立場を逆転させ、今度はエクレアの方がスカーレットの腕を握る。
「……ちょっと。外は危険でいっぱいなのよ。死ぬかもしれない。いや、絶対に死ぬ事になるわ。こんな事くらいで諦めるの?」
「は? あんた何を言っているの? そんなの知らないわよ。私は回復が得意だからなんとかなるかもね。交渉は決裂という事で! お達者で。」
スカーレットは頭に血が上っている。こうなってしまうと、大好きなシリーにでも止められない限りは引く事はないだろう。
「待って。ごめんなさい。私が言い過ぎたわ。最初ので良い。セイラを探すのを手伝って。もちろん先に違う人が見つかっても仕方が無い。」
ひとりだけで外に出る事は、死に直結するという事は二人共理解している。だからこそ、エクレアが謝罪した事で、スカーレットも怒りを収める。
「そうね。それなら協力して、セイラから仲間を探しましょう。これがモンスターを倒すという事なら私達は最悪のコンビだわ。でもその反面。仲間を見つけるまで生き延びるという一点に於いて、私達は最強だと言える。」
「そうね。防御は任せて頂戴。閃光スキルを持っているから、敵が強すぎたら、逃げましょう。」
「うん。それなら回復は私に任せて。」
それから、約10分。二人で作戦を練り、エクレアが扉を開け外に出る。扉の外は森の中のような景色。ただし、まるで間伐されたように木は密集しておらず所々で戦闘が出来るようなフィールドにはなっている。遠くを見れば小さな平原などもある。まるで誰かが意図して作ったように平原や森が共存し、動物が住みやすそうな不思議な空間だった。
二人が少し歩くと、巨大な牙を持つ虎のようななモンスターが、牙を剥きだしにして、スカーレット達を歓迎していた。全長四メートルはある巨大モンスターに、二人は、悲鳴を上げ走り出していた。
「きゃーーーーっ!! 何よあれ。普通のモンスターじゃない。絶対死ぬ。」
「きゃーーーっ!! 怖さがCランクの比じゃない。作戦意味なかったわ。絶対無理―!」
『がはははは。スカーレット。エクレア。もしかして、逃げているのか? 言っておくが、お前等はそこで最後まで二人だけだ。おそらくこのダンジョンは3つの別々のダンジョンが1つとして機能している。その証拠に私は今ダンジョンのボスモンスターを何度も討伐しているのだ。だが、ボスが何度も復活するダンジョンなんて聞いた事がない。これは私がいる場所のダンジョン核が本体で、別の場所のダンジョン核の力を吸収しているのだと思う。今お前達がいる場所のボスか、もうひとつの方のダンジョンのボス。もしくは、その両方のダンジョンのボスを倒す事で、はじめて、このダンジョンをクリアする事になるのだろう。だからお前達はお前達の力だけでダンジョンを攻略しろ。それでは健闘を祈る。』
「シリー先生。盾と回復で、どうやって敵を倒せばいいの? 教えてください。」
「アタッカーがいない。攻略なんてとても無理だわ! 方法があるなら教えてよ。」
『だが、私は何も教えない。しかし、モンスターを討伐し続ける事で、ここを乗り越えるだけの力を与えた。失敗しても良い。自分達が強くなる方法は自分達の頭で考えろ。それでは接続を遮断する。』
「「切らないでーー! 教えてっー!!」」
通信を遮断されたスカーレットとエクレアは、走りながら声を合わせて叫んでいた。
スカーレット フルムーンと エクレア ゴールドは、お互いに顔を合わせ最悪の気分になっていた。危険なAランクで講師や仲間達と逸れてしまった。そして、この絶望的な状態で、よりにもよって一番相性の悪い相手と二人きりになった。
スカーレットは、講師達か生徒ならアマンダかニックが良かった。
一方でエクレアは、講師か連れのセイラが良かった。
スカーレットは尻餅をついて着地した事で、お知りに回復魔法をかけている。
「いてててて。何でよりにもよって、あんたとなのよ。」
「それはこっちの台詞だわね。」
スカーレットは立ち上がると、部屋の扉の前に『モンスターを討伐し1000の宝箱を獲得せよ』という石板を発見する。
「宝を千回ドロップさせるまで、魔物を退治し続けるって無理なんじゃ。宝箱は素材ではなくドロップアイテムよ。それに、あんたは盾で私は回復専門よ。」
「アタッカーがいなければ話にならないわね。早くシリー先生達を見つけて、合流しないとね。だけど、私はその前にセイラを探さないといけないから、じゃあね。」
エクレアは扉に手を掛けるが、その前に、スカーレットがエクレアの腕を握りそれを制止した。
「まてまてまて。あなた一人で行く気なの?」
「そうだけど。何か問題あるかしら?」
「落ち着きなさい。私達は逸れてしまったの。せっかく同じ場所にいるのに、別々に行動するなんて馬鹿過ぎるわ。」
「五月蠅いわね。あんたも言ったように、私はあなたとは一緒にいられない。私は一刻もはやくセイラを見つけるのよ。」
「分かった。あんたと一緒にセイラを見つければ良いんでしょ? 回復は出来るから、私を置いて行かないで。」
しかし、そのスカーレットの妥協案に、エクレアは異を唱える。
「ふんっ。これだから世間知らずのお嬢様は嫌いなのよね。良いかしら。私は伯爵令嬢であると共に商人の娘よ。こちらにメリットが無ければあなたの言い分は通らないと思いなさい。」
エクレアの高圧的な物言いを、スカーレットは我慢する。
「……うん。分かった。」
「まず、私と行動を共にする利は、私が有用な盾スキルを既にいくつか持っているという事でしょうね。私はゆくゆくはゴールド商会を率いる者として、敵を引き付けるだけでなく、自分より強い敵を想定して訓練をしてきたから強敵に対しては逃げる事も出来る。そして、こちらの要求は、まず最初にこれまでの非礼を詫びなさい。次にこれから、私の言動には絶対に逆らわないと約束して。それから、あなたと一緒に行動する事のメリットも教えて欲し――」
だが、エクレアが言葉を終える前に、スカーレットの堪忍袋の緒が切れる。
「調子に乗るなっー! やってられない。もう良い。さようなら。」
実はエクレアは、最初から一人で行く気は無かった。交渉を自分に都合よく成立させる為に、相手を不安にさせる所からスタートさせたのである。だが、スカーレットは元々は王妃を目指していた程に気が強い。プライドも人一倍高いのだ。
立場を逆転させ、今度はエクレアの方がスカーレットの腕を握る。
「……ちょっと。外は危険でいっぱいなのよ。死ぬかもしれない。いや、絶対に死ぬ事になるわ。こんな事くらいで諦めるの?」
「は? あんた何を言っているの? そんなの知らないわよ。私は回復が得意だからなんとかなるかもね。交渉は決裂という事で! お達者で。」
スカーレットは頭に血が上っている。こうなってしまうと、大好きなシリーにでも止められない限りは引く事はないだろう。
「待って。ごめんなさい。私が言い過ぎたわ。最初ので良い。セイラを探すのを手伝って。もちろん先に違う人が見つかっても仕方が無い。」
ひとりだけで外に出る事は、死に直結するという事は二人共理解している。だからこそ、エクレアが謝罪した事で、スカーレットも怒りを収める。
「そうね。それなら協力して、セイラから仲間を探しましょう。これがモンスターを倒すという事なら私達は最悪のコンビだわ。でもその反面。仲間を見つけるまで生き延びるという一点に於いて、私達は最強だと言える。」
「そうね。防御は任せて頂戴。閃光スキルを持っているから、敵が強すぎたら、逃げましょう。」
「うん。それなら回復は私に任せて。」
それから、約10分。二人で作戦を練り、エクレアが扉を開け外に出る。扉の外は森の中のような景色。ただし、まるで間伐されたように木は密集しておらず所々で戦闘が出来るようなフィールドにはなっている。遠くを見れば小さな平原などもある。まるで誰かが意図して作ったように平原や森が共存し、動物が住みやすそうな不思議な空間だった。
二人が少し歩くと、巨大な牙を持つ虎のようななモンスターが、牙を剥きだしにして、スカーレット達を歓迎していた。全長四メートルはある巨大モンスターに、二人は、悲鳴を上げ走り出していた。
「きゃーーーーっ!! 何よあれ。普通のモンスターじゃない。絶対死ぬ。」
「きゃーーーっ!! 怖さがCランクの比じゃない。作戦意味なかったわ。絶対無理―!」
『がはははは。スカーレット。エクレア。もしかして、逃げているのか? 言っておくが、お前等はそこで最後まで二人だけだ。おそらくこのダンジョンは3つの別々のダンジョンが1つとして機能している。その証拠に私は今ダンジョンのボスモンスターを何度も討伐しているのだ。だが、ボスが何度も復活するダンジョンなんて聞いた事がない。これは私がいる場所のダンジョン核が本体で、別の場所のダンジョン核の力を吸収しているのだと思う。今お前達がいる場所のボスか、もうひとつの方のダンジョンのボス。もしくは、その両方のダンジョンのボスを倒す事で、はじめて、このダンジョンをクリアする事になるのだろう。だからお前達はお前達の力だけでダンジョンを攻略しろ。それでは健闘を祈る。』
「シリー先生。盾と回復で、どうやって敵を倒せばいいの? 教えてください。」
「アタッカーがいない。攻略なんてとても無理だわ! 方法があるなら教えてよ。」
『だが、私は何も教えない。しかし、モンスターを討伐し続ける事で、ここを乗り越えるだけの力を与えた。失敗しても良い。自分達が強くなる方法は自分達の頭で考えろ。それでは接続を遮断する。』
「「切らないでーー! 教えてっー!!」」
通信を遮断されたスカーレットとエクレアは、走りながら声を合わせて叫んでいた。
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