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噂
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どこにでもあるチェーン店の居酒屋に清子は足を踏み入れると後ろから晶も入ってくる。どうやら追いかけてきたらしく、晶は少し息が切れていた。
「二名様ですか?」
無愛想な長髪の店員が、聞いてきた。
「あ、いいえ。「三島出版」の方がいると思うのですけど。」
「はい。ご案内します。」
そう言って靴を脱ぐように促した。靴箱になっていて、一つのは子に二つ靴を入れれるようになっている。その一つに清子は自分のパンプスを入れると、その上の段に晶は自分のスニーカーを入れた。
「何するんですか。」
「いいだろ?靴くらい。」
妙なところで噂が立つものだ。出来れば親しくはしたくない。だが晶はすぐにその靴箱の扉を閉めると、その無愛想な店員のあとを付いていく。
半個室になっているテーブルのようで、目張りはのれんだけ。できあがっているサラリーマンたちが笑い声を上げている。
「お前、居酒屋行くの?」
「こんなところにはあまり来ませんね。」
だったらどういうところに行くのだろう。知りたいのに清子はそれ以上何も言わなかった。もし史といるのだったらもっと話をしているのだろうか。そう思うと嫉妬しそうになる。
「こちらです。」
のれんを上げてもらって、二人は中にはいるともうビールのピッチャーが数個あいていて、盛り上がっているようだった。
「おー来た来た。二人そろってきたのか?」
「仲良いねぇ。」
「やーだ。中野さんったら、一緒に来ただけじゃん。」
清子は入り口の住ぐそばに座り、ちらりと史をみる。史との距離は少し離れている。これで誤解されずにすむだろう。
「お前、何飲むんだよ。」
隣には晶が座ってきた。そして飲み放題のドリンクのメニューを差し出す。
「生を。」
「生?じゃあ、俺も生二つ。」
すると晶の方に、一人の男が話しかけてきた。
「今日は何の撮影だったんだ。」
「今日はAV男優。ほら、結構キャリア長いけど、イケメンの男優いるじゃん。」
「あー。わかるような……何であいつ女性向けのやつでないのかな。」
「さぁな。いろんなタイプが居て男優も面白いな。今日撮ったやつ、カメラ向ける前は超無気力でさ、何かヤクでもやってんのかなって思った。」
「記事になるの?」
「それをするのが明神さんだろ?」
すると史の隣にいた香子が少し笑う。
「そうよ。それがプロだから。」
「言うねぇ。」
運ばれてきた生ビールを手に渡されると、改めて乾杯をする。そして清子はそれを口に運ぶ。
「……はー……。」
その飲んだ量に、晶は驚いて見ていた。三分の一は減った気がする。
「お前、そんなに一気に飲んで大丈夫か?」
「何でですか?」
「空きっ腹だろ?昼も食ってないし。」
向こうにいた史が言う。
「酔ったことがないらしいよ。」
「ザルか。すごいな。」
前に飲めないと言っていた人は、気にしないようにビールを飲んでいた。嘘を付かれたのに、彼は何も思わないらしい。
「あーでも今日のインタビューで面白いこと言ってたな。あの男優。」
「何?」
「セックスはアレのでかさじゃなくて、使いようだって。」
「へぇ……どう使うのかね。その男チ○コでかいんだろ?」
「ほとんどモザイク入ってるからなぁ。それでファンタジーになるんだろうし。」
きわどい会話をしているのに、清子は気にしないようにサラダを摘んでいる。その様子に、隣に座っていた女が声をかける。
「徳成さん、大丈夫?」
「何がですか?」
「普通の女の子にはきつい会話でしょう?」
清子はそのサラダには言っているレタスを口に入れて、首を傾げた。
「別に……。仕事なら。」
「え?徳成さんって、男とセックスしたことがあるの?」
その言葉に思わずせき込んだ。
「……処女だと思われてたんですか?」
「そうじゃないかって言ってたんだけど……。」
女はちらりと史をみる。二人で居酒屋デートをしていたのを見てしまったのだ。その後、史と消えてもおかしくないだろうに、何もしていないと言うことはやっぱり処女なのかと、さっきまで噂をしていたのだ。
「違います。」
「まじで?いつ?誰と?」
「……。」
まさか高校生の時に隣に座っている晶が最初とは言えないだろう。清子は咳払いをすると、晶が口を出した。
「梶原さんは?」
「あたし?」
「何人してんの?」
「やーだ。数なんかいちいち数えてないわよ。」
「そう言えば、あのローターは使用感どうだった?」
「いまいち。」
上手く違う話題に振れたようだ。正直ほっとした。
食事よりも酒をよく飲む人だと思った。清子はビールの後、ずっと熱燗を飲んでいる。そしてやはり口数は少なく、問われていることに答えているだけだった。自分から質問をしたりはしない。
その様子を史は見ながら、煙草を取り出した。すると香子が声をかけた。
「徳成さんって、あまり饒舌ではないですよね。」
「べらべら喋られてもね。」
それを一本くわえて火をつける。そのとき晶が清子に耳打ちをした。すると清子の口元がとがる。何を話したのだろう。自分の知らないことを話したのだろうか。
「くそ。」
「どうしたんですか?」
「ライターのオイル切れ。」
すると向こうにいた清子が、手を伸ばしてきた。
「何?」
「オイル切れたのだったらどうぞ。」
そう言って清子は自分の使っていたジッポーを手渡した。
「……ありがとう。」
ジッポーを受け取ると、それで火をつける。使い込まれているジッポーだ。古いもののように見えるが、よく手入れをされている。
「徳成さんは喫煙歴が長いの?」
「二十からです。」
「煙草とお酒は二十からでしょ?」
香子が言うと、周りはどっと笑う。
「建前、建前。」
「そうだな。でもさぁ、煙草もお酒も二十からって言ってんのに、セックスは二十からとかって言う規制はないよな。」
「でもロリは駄目だし、ショタも捕まるぞ。」
「わかってるよ。」
清子はジッポーを受け取ると、自分の煙草にも火をつけた。
「それって……。」
そのジッポーを見て、晶は少し表情を変えた。
「……。」
また二人で何か話している。それが二人の距離のようだと思った。
「二名様ですか?」
無愛想な長髪の店員が、聞いてきた。
「あ、いいえ。「三島出版」の方がいると思うのですけど。」
「はい。ご案内します。」
そう言って靴を脱ぐように促した。靴箱になっていて、一つのは子に二つ靴を入れれるようになっている。その一つに清子は自分のパンプスを入れると、その上の段に晶は自分のスニーカーを入れた。
「何するんですか。」
「いいだろ?靴くらい。」
妙なところで噂が立つものだ。出来れば親しくはしたくない。だが晶はすぐにその靴箱の扉を閉めると、その無愛想な店員のあとを付いていく。
半個室になっているテーブルのようで、目張りはのれんだけ。できあがっているサラリーマンたちが笑い声を上げている。
「お前、居酒屋行くの?」
「こんなところにはあまり来ませんね。」
だったらどういうところに行くのだろう。知りたいのに清子はそれ以上何も言わなかった。もし史といるのだったらもっと話をしているのだろうか。そう思うと嫉妬しそうになる。
「こちらです。」
のれんを上げてもらって、二人は中にはいるともうビールのピッチャーが数個あいていて、盛り上がっているようだった。
「おー来た来た。二人そろってきたのか?」
「仲良いねぇ。」
「やーだ。中野さんったら、一緒に来ただけじゃん。」
清子は入り口の住ぐそばに座り、ちらりと史をみる。史との距離は少し離れている。これで誤解されずにすむだろう。
「お前、何飲むんだよ。」
隣には晶が座ってきた。そして飲み放題のドリンクのメニューを差し出す。
「生を。」
「生?じゃあ、俺も生二つ。」
すると晶の方に、一人の男が話しかけてきた。
「今日は何の撮影だったんだ。」
「今日はAV男優。ほら、結構キャリア長いけど、イケメンの男優いるじゃん。」
「あー。わかるような……何であいつ女性向けのやつでないのかな。」
「さぁな。いろんなタイプが居て男優も面白いな。今日撮ったやつ、カメラ向ける前は超無気力でさ、何かヤクでもやってんのかなって思った。」
「記事になるの?」
「それをするのが明神さんだろ?」
すると史の隣にいた香子が少し笑う。
「そうよ。それがプロだから。」
「言うねぇ。」
運ばれてきた生ビールを手に渡されると、改めて乾杯をする。そして清子はそれを口に運ぶ。
「……はー……。」
その飲んだ量に、晶は驚いて見ていた。三分の一は減った気がする。
「お前、そんなに一気に飲んで大丈夫か?」
「何でですか?」
「空きっ腹だろ?昼も食ってないし。」
向こうにいた史が言う。
「酔ったことがないらしいよ。」
「ザルか。すごいな。」
前に飲めないと言っていた人は、気にしないようにビールを飲んでいた。嘘を付かれたのに、彼は何も思わないらしい。
「あーでも今日のインタビューで面白いこと言ってたな。あの男優。」
「何?」
「セックスはアレのでかさじゃなくて、使いようだって。」
「へぇ……どう使うのかね。その男チ○コでかいんだろ?」
「ほとんどモザイク入ってるからなぁ。それでファンタジーになるんだろうし。」
きわどい会話をしているのに、清子は気にしないようにサラダを摘んでいる。その様子に、隣に座っていた女が声をかける。
「徳成さん、大丈夫?」
「何がですか?」
「普通の女の子にはきつい会話でしょう?」
清子はそのサラダには言っているレタスを口に入れて、首を傾げた。
「別に……。仕事なら。」
「え?徳成さんって、男とセックスしたことがあるの?」
その言葉に思わずせき込んだ。
「……処女だと思われてたんですか?」
「そうじゃないかって言ってたんだけど……。」
女はちらりと史をみる。二人で居酒屋デートをしていたのを見てしまったのだ。その後、史と消えてもおかしくないだろうに、何もしていないと言うことはやっぱり処女なのかと、さっきまで噂をしていたのだ。
「違います。」
「まじで?いつ?誰と?」
「……。」
まさか高校生の時に隣に座っている晶が最初とは言えないだろう。清子は咳払いをすると、晶が口を出した。
「梶原さんは?」
「あたし?」
「何人してんの?」
「やーだ。数なんかいちいち数えてないわよ。」
「そう言えば、あのローターは使用感どうだった?」
「いまいち。」
上手く違う話題に振れたようだ。正直ほっとした。
食事よりも酒をよく飲む人だと思った。清子はビールの後、ずっと熱燗を飲んでいる。そしてやはり口数は少なく、問われていることに答えているだけだった。自分から質問をしたりはしない。
その様子を史は見ながら、煙草を取り出した。すると香子が声をかけた。
「徳成さんって、あまり饒舌ではないですよね。」
「べらべら喋られてもね。」
それを一本くわえて火をつける。そのとき晶が清子に耳打ちをした。すると清子の口元がとがる。何を話したのだろう。自分の知らないことを話したのだろうか。
「くそ。」
「どうしたんですか?」
「ライターのオイル切れ。」
すると向こうにいた清子が、手を伸ばしてきた。
「何?」
「オイル切れたのだったらどうぞ。」
そう言って清子は自分の使っていたジッポーを手渡した。
「……ありがとう。」
ジッポーを受け取ると、それで火をつける。使い込まれているジッポーだ。古いもののように見えるが、よく手入れをされている。
「徳成さんは喫煙歴が長いの?」
「二十からです。」
「煙草とお酒は二十からでしょ?」
香子が言うと、周りはどっと笑う。
「建前、建前。」
「そうだな。でもさぁ、煙草もお酒も二十からって言ってんのに、セックスは二十からとかって言う規制はないよな。」
「でもロリは駄目だし、ショタも捕まるぞ。」
「わかってるよ。」
清子はジッポーを受け取ると、自分の煙草にも火をつけた。
「それって……。」
そのジッポーを見て、晶は少し表情を変えた。
「……。」
また二人で何か話している。それが二人の距離のようだと思った。
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