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対面
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電話の相手は愛だった。興奮したように愛は、一気に清子に対する暴言を吐いている。普段愛は人の悪いところを決して言わない。悪いと思っていても、言い方によってはろくでもない噂を立てられるからだ。
だが今の愛はそのことを考えられないようだ。たまらず史は、清子の部屋を出てアパートの外に出た。これから何をしようとしているのか愛は知ることはないし、史が誰と居るのかもわかっていない。だからおそらくこんなことを言っているのだろう。
「きっとあの徳成さんって人にそそのかされたのよ。何も知らないような顔をして、卑しい女だわ。」
想像はしていた。清子の祖母の掃除と墓参り、そして晶の父の見舞い。それだけならこんな時間にならない。何かしている。その何かとは、セックス以外無いだろう。一度セックスをした仲なのだ。きっとしている。
「そうとは限らないよ。二人にとって育った街だ。見たいものも訪れたいところもあったはずだ。」
「でも……。」
「今は俺も久住の味方はしたくない。だが君の様子に、久住が出て行くのも何となくわかる。」
「……。」
「俺だって疑いたくないけど、それ以上に清子が参っているんだ。やってあげるのは、側にいることだけだ。そしてそれが出来るのは俺しか居ないと思う。」
「ずいぶん聖人みたいなことを言うのね。晶とあの子がセックスをしていても嫉妬しないの?あたしはするわ。」
これが男と女の差なのかもしれない。確かに怒りはあるが、あんな状態の清子に対して自分の感情に正直になったまま、感情のままに責めることなど出来るだろうか。
「だったら……君は、久住の過去の女にも嫉妬するのか?あいつ、結構言い寄られて、断らなかったからな。」
「……。」
「裸の女の写真を撮ることもあるだろうな。その女に対して嫉妬するのか?」
「そんな問題じゃないわ。あたしは……。」
「どっちにしても帰る家はそこしかないんだったら、おとなしく待っておけよ。どっちにしても俺は明日久住に会うだろうから、あいつの言い分も聞く。」
そして清子のことも聞く。本当に寝たのだろうかと。
部屋に帰ってくると、清子は部屋着に着替えてベッドに横になっていた。静かな寝息をたてているのを見て、疲れているのだろうと思った。それもそうだ。夕べはあまり寝ていない割に、今日はたくさん動いたのだろう。それに晶とセックスをしたのであればさらに疲労は蓄積されている。
史はそのベッドに腰掛けると、清子の頬にかかっている髪を避けた。そして唇を寄せようとしたとき、再び史の携帯電話が鳴った。
相手を見ると、そこには晶の名前があった。今一番声を聞きたくない相手だ。だが取らないわけにはいかないだろう。
「もしもし。」
「あ……編集長。今いい?」
「あぁ……。」
晶は車に乗り、会社の近くにある小さなアパートの一室にいた。古くてぼろいアパートで、トイレもキッチンも共同。近くに銭湯があり、風呂はそこに通うしかないようなところだった。
だが晶にとっては解約したくない部屋だった。今は仕事部屋として、愛の部屋に置けない薬剤や暗室を片隅に作っているが、昔はここで寝泊まりしていた。女を連れ込んだこともあったが、アパートの外観だけで去っていくような女ばかりだった。当然、愛もこの場所を知らない。というか、知ってもこの中にまでは入らないだろう。
「……そんなつまらないことで俺を巻き込まないでくれ。」
史はそういうと、ため息をついた。
「痴話喧嘩とでも思ってんのか?」
「それ以外何があるんだ。」
「……悪いけど清子と寝た寝てないはどうでも良い。でもあまり知らないような奴のことを平気で侮辱するのは、耐えれないな。」
「お前はだからゴシップ記者には向いてないんだ。」
「頼まれてもするかよ。」
ちょうどいい。史はそのまま窓を開けてベランダにでる。そしてドアを閉めると晶に聞く。
「お前、本当に清子と寝たのか?」
「は?」
「もしそうなら、俺も気分がいいわけがないだろう。」
「彼氏面かよ。」
確かに恋人というわけではない。だが何度か寝た。それを晶に取られるのは気分が悪いのだ。
「……寝たよ。」
その言葉に史は少しため息をつく。
「十年前な。」
「そんな昔のことを聞いてない。今日寝たのかと聞いているんだ。」
「……そんなことを聞いてどうするんだよ。清子はあんたのものじゃないだろう?」
「お前のものでもない。」
すると晶は少し黙り、史にいう。
「……誰のものでもないだろ。あいつはまだ「一人」だってことが抜けてねぇんだ。今日一緒にいてわかったよ。あいつには信用できる奴が祖母さんしか居なかったんだ。だから祖母さんを失ったとき、せめて家だけは守ろうと思ったんだろう。けど……それもあっさり取られた。身内だってそんな感じだ。信用なんか出来るわけがない。」
いつか聞いた。人は裏切るものなのだと。そう思わせたくなかったのに、そう思わせるようなことがあったのだ。
「俺は一人なんて思わせたくない。俺はあいつを忘れなかったから。」
「愛にはなんと言うんだ。」
「愛に言って良いよ。ここにいるって。でもたぶん愛は来ないだろうな。俺も帰らない。」
「自然消滅をねらっているのか?」
「……。」
「そんな別れ方をしたら、いずれ現場で鉢合わせをしたとき気まずくないか?」
「けど……あんな言い方をすると思ってなかった。」
「誰もが傷つかない言い方なんか出来るわけがないだろう。女をなんだと思っているんだ。腫れ物に触るように、お前を扱うわけがない。どこまで王様の気分なんだ。」
たまらずに言ってしまった。そんな甘っちょろい言葉がでるとは思ってなかったから。
「いいわけ。」
「え?」
「とにかく、俺は愛とは離れたい。だから愛に場所を聞かれたらここの場所を言ってもいいし、止めない。けど、愛はここに来ないと思う。俺も戻る気はない。そう言っておいてくれないか。」
晶はそれだけをいうと、電話を切った。そしてため息をつく。
モノが多いだけで掃除は出来ている。布団もこの間干したばかりだ。その布団の上で横になる。すると数時間前の出来事が腕に戻ってくるようだった。
柔らかくて細くて、入れ込む度に赤くなり声を上げる清子の体が愛しい。
「晶……。」
名前を呼ぶ声が甘い。それを思いながら、晶もまた眠りについた。
だが今の愛はそのことを考えられないようだ。たまらず史は、清子の部屋を出てアパートの外に出た。これから何をしようとしているのか愛は知ることはないし、史が誰と居るのかもわかっていない。だからおそらくこんなことを言っているのだろう。
「きっとあの徳成さんって人にそそのかされたのよ。何も知らないような顔をして、卑しい女だわ。」
想像はしていた。清子の祖母の掃除と墓参り、そして晶の父の見舞い。それだけならこんな時間にならない。何かしている。その何かとは、セックス以外無いだろう。一度セックスをした仲なのだ。きっとしている。
「そうとは限らないよ。二人にとって育った街だ。見たいものも訪れたいところもあったはずだ。」
「でも……。」
「今は俺も久住の味方はしたくない。だが君の様子に、久住が出て行くのも何となくわかる。」
「……。」
「俺だって疑いたくないけど、それ以上に清子が参っているんだ。やってあげるのは、側にいることだけだ。そしてそれが出来るのは俺しか居ないと思う。」
「ずいぶん聖人みたいなことを言うのね。晶とあの子がセックスをしていても嫉妬しないの?あたしはするわ。」
これが男と女の差なのかもしれない。確かに怒りはあるが、あんな状態の清子に対して自分の感情に正直になったまま、感情のままに責めることなど出来るだろうか。
「だったら……君は、久住の過去の女にも嫉妬するのか?あいつ、結構言い寄られて、断らなかったからな。」
「……。」
「裸の女の写真を撮ることもあるだろうな。その女に対して嫉妬するのか?」
「そんな問題じゃないわ。あたしは……。」
「どっちにしても帰る家はそこしかないんだったら、おとなしく待っておけよ。どっちにしても俺は明日久住に会うだろうから、あいつの言い分も聞く。」
そして清子のことも聞く。本当に寝たのだろうかと。
部屋に帰ってくると、清子は部屋着に着替えてベッドに横になっていた。静かな寝息をたてているのを見て、疲れているのだろうと思った。それもそうだ。夕べはあまり寝ていない割に、今日はたくさん動いたのだろう。それに晶とセックスをしたのであればさらに疲労は蓄積されている。
史はそのベッドに腰掛けると、清子の頬にかかっている髪を避けた。そして唇を寄せようとしたとき、再び史の携帯電話が鳴った。
相手を見ると、そこには晶の名前があった。今一番声を聞きたくない相手だ。だが取らないわけにはいかないだろう。
「もしもし。」
「あ……編集長。今いい?」
「あぁ……。」
晶は車に乗り、会社の近くにある小さなアパートの一室にいた。古くてぼろいアパートで、トイレもキッチンも共同。近くに銭湯があり、風呂はそこに通うしかないようなところだった。
だが晶にとっては解約したくない部屋だった。今は仕事部屋として、愛の部屋に置けない薬剤や暗室を片隅に作っているが、昔はここで寝泊まりしていた。女を連れ込んだこともあったが、アパートの外観だけで去っていくような女ばかりだった。当然、愛もこの場所を知らない。というか、知ってもこの中にまでは入らないだろう。
「……そんなつまらないことで俺を巻き込まないでくれ。」
史はそういうと、ため息をついた。
「痴話喧嘩とでも思ってんのか?」
「それ以外何があるんだ。」
「……悪いけど清子と寝た寝てないはどうでも良い。でもあまり知らないような奴のことを平気で侮辱するのは、耐えれないな。」
「お前はだからゴシップ記者には向いてないんだ。」
「頼まれてもするかよ。」
ちょうどいい。史はそのまま窓を開けてベランダにでる。そしてドアを閉めると晶に聞く。
「お前、本当に清子と寝たのか?」
「は?」
「もしそうなら、俺も気分がいいわけがないだろう。」
「彼氏面かよ。」
確かに恋人というわけではない。だが何度か寝た。それを晶に取られるのは気分が悪いのだ。
「……寝たよ。」
その言葉に史は少しため息をつく。
「十年前な。」
「そんな昔のことを聞いてない。今日寝たのかと聞いているんだ。」
「……そんなことを聞いてどうするんだよ。清子はあんたのものじゃないだろう?」
「お前のものでもない。」
すると晶は少し黙り、史にいう。
「……誰のものでもないだろ。あいつはまだ「一人」だってことが抜けてねぇんだ。今日一緒にいてわかったよ。あいつには信用できる奴が祖母さんしか居なかったんだ。だから祖母さんを失ったとき、せめて家だけは守ろうと思ったんだろう。けど……それもあっさり取られた。身内だってそんな感じだ。信用なんか出来るわけがない。」
いつか聞いた。人は裏切るものなのだと。そう思わせたくなかったのに、そう思わせるようなことがあったのだ。
「俺は一人なんて思わせたくない。俺はあいつを忘れなかったから。」
「愛にはなんと言うんだ。」
「愛に言って良いよ。ここにいるって。でもたぶん愛は来ないだろうな。俺も帰らない。」
「自然消滅をねらっているのか?」
「……。」
「そんな別れ方をしたら、いずれ現場で鉢合わせをしたとき気まずくないか?」
「けど……あんな言い方をすると思ってなかった。」
「誰もが傷つかない言い方なんか出来るわけがないだろう。女をなんだと思っているんだ。腫れ物に触るように、お前を扱うわけがない。どこまで王様の気分なんだ。」
たまらずに言ってしまった。そんな甘っちょろい言葉がでるとは思ってなかったから。
「いいわけ。」
「え?」
「とにかく、俺は愛とは離れたい。だから愛に場所を聞かれたらここの場所を言ってもいいし、止めない。けど、愛はここに来ないと思う。俺も戻る気はない。そう言っておいてくれないか。」
晶はそれだけをいうと、電話を切った。そしてため息をつく。
モノが多いだけで掃除は出来ている。布団もこの間干したばかりだ。その布団の上で横になる。すると数時間前の出来事が腕に戻ってくるようだった。
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