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夜会
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謝恩会の日。清子は気が進まなかったが、S区にある、レンタルドレスの店にいた。色とりどりのドレスが並ぶ店内で、清子はため息をつきながらそのドレスをぼんやりとして眺めている。どれが良いのかなどわかるはずがない。こんなものとは縁がない生活をしていたのだから。
「徳成さん。どれを選んでも三千円で良いって言ってるわ。」
香子はそういって駆け寄ってきた。
「ヘアメイクもしてくださるんですか?」
すると香子はうなずいて笑う。
「仁がしてくれるくらいだから、プロとは言えないけどね。」
仁というのは、香子の恋人だ。バーで働く仁は、来年の夏に別の街でライブハウスをするらしい。今の職場も、お酒を学ぶために働いているようなものだった。
遠距離は大丈夫なのだろうか。少し不安になったが、香子はあっけらかんとしている。
「明神さんは遠距離大丈夫なんですか?」
清子はドレスを見ながらそう聞くと、香子は少し複雑そうな表情になる。
「どうかしました?」
「うん……。この間、役員会があったじゃない。」
「あぁ……。」
「まだ正式ではないんだけど、あの雑誌の企画はなくなりそうなのよ。」
「え?」
「やっぱ一過性のブームなのかもしれないって言う会社の方針。仕方ないわね。」
「だったら、「pink倶楽部」に?」
「今ね、課を変えて貰おうと思って。」
「え?」
「地方へ行きたいと思って。ほら……あたしAVのこともあったから、ちょっと取材も大変なのよね。」
香子の画像も、動画も、ウェブ上では引っかからなくなった。だがやはり保存していた人が居たのだろう。荒い画像で見つけることは出来る。
清子はそれが不可能だと思っていたが、やはり上手をいくものはいるのだろう。
「だから課を?」
「そう。地方紙に行こうと思って。」
新聞社ではないのだから、地方へ行くというのはどういうことなのだろう。
「あの……地方紙って?」
「タウン誌。そっちは本格的に乗り出してるみたいだから、そっちへ行ってみようと思って。」
「……良いんじゃないんですか。」
おそらく仁についていきたいと思っているのだろう。それくらい思いこんだら一直線なのだ。うらやましいと思う。
「ね、徳成さん。これ良いんじゃない?」
そういって香子が手に取ったのは、紺色のドレスだった。光沢があって、肩が開いている。少しかがめば胸が見えそうだ。だがその分スカートは長くスリットが入っている。
「あの……もう少し布があった方が……。」
「何言ってんのよ。これ以上布があるのってないよ。これにショールを羽織れば肩も隠れるから。」
「あぁ……それなら……。」
しかし歩く度に、スリットから足が見えそうだ。あまり動かなければ見えないかもしれない。そう思ってそのドレスを手にした。
「あたしこっちにするわ。」
香子が手にしたのは赤いドレスだった。やはり胸元が大きく開いていて、香子の豊かな胸がこぼれそうだと思う。
「これってそのまま着るんですか?」
「じゃなくて中にコルセットを着るから。」
「コルセット……。」
小さい頃を思い出す。小学校の近所に剣道の道場があって、そこで動議を来ていた小さい子供がいた。あれとは違うのだろう。
ドレスを選ぶと、会計を済ませようとレジへ向かった。すると玄関のドアベルが鳴る。誰かお客さんなのだろう。
「すいません。取り置きして貰ったものですけど。」
その顔に清子は驚いてその人を見た。
「……慎吾さん。」
慎吾も驚いて清子を見ていた。
「清子。どうしたんだこんなところで。」
「今日は謝恩会で、ドレスを着ないといけないって言うから……。」
「あぁ。そうか。忘年会とか、そんな時期だな。」
香子も支払いを済ませて、次は清子の番になった。すると香子は少し不服そうに慎吾を見る。
「仕事?」
「そう。明日撮影らしくて、新妻もの。」
「えー?新妻ものなら、ドレスなんかあまり映らないじゃない?それに会社にもあるでしょ?」
「さすがにウェディングドレスはないな。」
ウェディングドレスならなおさらちらっとしか映らないだろうに、どうしてこんなところでレンタルしてまでこだわるのだろう。
「香子は、どんなドレスなんだ。」
初めて名前を呼ばれた気がする。その受け答えに少しドキッとした。
「あたし……ほら。こんな感じ。」
「赤か。似合うだろうな。」
更にドキッとする。やばい。こんな男にときめいている場合ではないのに。
「清子は?」
「紺色です。それにショールを羽織りますから。」
「ふーん。なんかこう……ごてごてしたのが集まるんだろうな。」
「そう言わないの。」
誤魔化すために少し強い口調になってしまった。だが慎吾は気にしていないようだ。
「清子。今度の講習、予約してていいのか?」
清子も支払いを済ませると、慎吾の方を向いた。
「えぇ。お願いします。」
「クリスマスイブだぞ。」
「気にしませんよ。ただの休日です。」
慎吾も荷物を受け取ると、店を出る。仁との待ち合わせは、駅の近くのカフェだ。慎吾はまだ用事があるらしく、そこで別れる。
駅へ向かう香子は少し複雑だった。名前を呼ばれただけ。なのにどうしてこんなにどきどきするのだろう。
「明神さん。どうかしました?」
さっきまでうるさいくらい話しかけられていたのに、急に黙ってしまったから心配になったのだ。
「ねぇ……徳成さん。」
「はい?」
「慎吾さんって……徳成さんをずっと呼び捨てで呼んでるよね?いつから?」
「最初からですね。外国で生活をしていたので、そっちの方が良いみたいです。」
「あー。」
なるほどそう言うことか。意識した自分があほらしいと思った。
自分には仁がいる。器が大きくて、何でも受け入れてくれる優しい人だ。
駅前のカフェにはいると、混雑した店内にも関わらず一目でわかる人がいた。背の高いゴシックロリータファッション。店内の人は物珍しそうに仁を遠巻きに見ていた。
だが香子は気にしないように仁に近づく。
「お待たせ。」
「可愛いドレスを選んだ?」
「えぇ。」
「あとで見せて貰うわね。徳成さんはどんなドレスかしら。」
「なんか……仮装行列みたいな……。」
その言葉に二人は思わず笑ってしまった。
「徳成さん。どれを選んでも三千円で良いって言ってるわ。」
香子はそういって駆け寄ってきた。
「ヘアメイクもしてくださるんですか?」
すると香子はうなずいて笑う。
「仁がしてくれるくらいだから、プロとは言えないけどね。」
仁というのは、香子の恋人だ。バーで働く仁は、来年の夏に別の街でライブハウスをするらしい。今の職場も、お酒を学ぶために働いているようなものだった。
遠距離は大丈夫なのだろうか。少し不安になったが、香子はあっけらかんとしている。
「明神さんは遠距離大丈夫なんですか?」
清子はドレスを見ながらそう聞くと、香子は少し複雑そうな表情になる。
「どうかしました?」
「うん……。この間、役員会があったじゃない。」
「あぁ……。」
「まだ正式ではないんだけど、あの雑誌の企画はなくなりそうなのよ。」
「え?」
「やっぱ一過性のブームなのかもしれないって言う会社の方針。仕方ないわね。」
「だったら、「pink倶楽部」に?」
「今ね、課を変えて貰おうと思って。」
「え?」
「地方へ行きたいと思って。ほら……あたしAVのこともあったから、ちょっと取材も大変なのよね。」
香子の画像も、動画も、ウェブ上では引っかからなくなった。だがやはり保存していた人が居たのだろう。荒い画像で見つけることは出来る。
清子はそれが不可能だと思っていたが、やはり上手をいくものはいるのだろう。
「だから課を?」
「そう。地方紙に行こうと思って。」
新聞社ではないのだから、地方へ行くというのはどういうことなのだろう。
「あの……地方紙って?」
「タウン誌。そっちは本格的に乗り出してるみたいだから、そっちへ行ってみようと思って。」
「……良いんじゃないんですか。」
おそらく仁についていきたいと思っているのだろう。それくらい思いこんだら一直線なのだ。うらやましいと思う。
「ね、徳成さん。これ良いんじゃない?」
そういって香子が手に取ったのは、紺色のドレスだった。光沢があって、肩が開いている。少しかがめば胸が見えそうだ。だがその分スカートは長くスリットが入っている。
「あの……もう少し布があった方が……。」
「何言ってんのよ。これ以上布があるのってないよ。これにショールを羽織れば肩も隠れるから。」
「あぁ……それなら……。」
しかし歩く度に、スリットから足が見えそうだ。あまり動かなければ見えないかもしれない。そう思ってそのドレスを手にした。
「あたしこっちにするわ。」
香子が手にしたのは赤いドレスだった。やはり胸元が大きく開いていて、香子の豊かな胸がこぼれそうだと思う。
「これってそのまま着るんですか?」
「じゃなくて中にコルセットを着るから。」
「コルセット……。」
小さい頃を思い出す。小学校の近所に剣道の道場があって、そこで動議を来ていた小さい子供がいた。あれとは違うのだろう。
ドレスを選ぶと、会計を済ませようとレジへ向かった。すると玄関のドアベルが鳴る。誰かお客さんなのだろう。
「すいません。取り置きして貰ったものですけど。」
その顔に清子は驚いてその人を見た。
「……慎吾さん。」
慎吾も驚いて清子を見ていた。
「清子。どうしたんだこんなところで。」
「今日は謝恩会で、ドレスを着ないといけないって言うから……。」
「あぁ。そうか。忘年会とか、そんな時期だな。」
香子も支払いを済ませて、次は清子の番になった。すると香子は少し不服そうに慎吾を見る。
「仕事?」
「そう。明日撮影らしくて、新妻もの。」
「えー?新妻ものなら、ドレスなんかあまり映らないじゃない?それに会社にもあるでしょ?」
「さすがにウェディングドレスはないな。」
ウェディングドレスならなおさらちらっとしか映らないだろうに、どうしてこんなところでレンタルしてまでこだわるのだろう。
「香子は、どんなドレスなんだ。」
初めて名前を呼ばれた気がする。その受け答えに少しドキッとした。
「あたし……ほら。こんな感じ。」
「赤か。似合うだろうな。」
更にドキッとする。やばい。こんな男にときめいている場合ではないのに。
「清子は?」
「紺色です。それにショールを羽織りますから。」
「ふーん。なんかこう……ごてごてしたのが集まるんだろうな。」
「そう言わないの。」
誤魔化すために少し強い口調になってしまった。だが慎吾は気にしていないようだ。
「清子。今度の講習、予約してていいのか?」
清子も支払いを済ませると、慎吾の方を向いた。
「えぇ。お願いします。」
「クリスマスイブだぞ。」
「気にしませんよ。ただの休日です。」
慎吾も荷物を受け取ると、店を出る。仁との待ち合わせは、駅の近くのカフェだ。慎吾はまだ用事があるらしく、そこで別れる。
駅へ向かう香子は少し複雑だった。名前を呼ばれただけ。なのにどうしてこんなにどきどきするのだろう。
「明神さん。どうかしました?」
さっきまでうるさいくらい話しかけられていたのに、急に黙ってしまったから心配になったのだ。
「ねぇ……徳成さん。」
「はい?」
「慎吾さんって……徳成さんをずっと呼び捨てで呼んでるよね?いつから?」
「最初からですね。外国で生活をしていたので、そっちの方が良いみたいです。」
「あー。」
なるほどそう言うことか。意識した自分があほらしいと思った。
自分には仁がいる。器が大きくて、何でも受け入れてくれる優しい人だ。
駅前のカフェにはいると、混雑した店内にも関わらず一目でわかる人がいた。背の高いゴシックロリータファッション。店内の人は物珍しそうに仁を遠巻きに見ていた。
だが香子は気にしないように仁に近づく。
「お待たせ。」
「可愛いドレスを選んだ?」
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