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奪う
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ビルを出ると、慎吾は携帯電話を取り出した。そして清子を見下ろす。
「悪いけど、あの史の番号を教えてくれないか。」
「え……。」
「直接、話をしたい。それから……弁解を聞いて俺が納得すれば、素直に君を史に返すから。」
その言葉に清子は動揺しながら、番号を教えた。
それに電話をする慎吾を見て、確かに第三者からの意見を聞くのは普通ではない清子にとってはいいのかもしれないと思っていた。
「……慎吾です。えぇ……。とんでもない。講習があったから声をかけただけです。ちょっと話があって……。」
少し離れたところで話をしている。その間、清子は煙草を取り出して火をつけた。だがその指は震えている。そのとき後ろから声がかかった。
「清子。」
振り返ると、そこには晶の姿があった。いつものボックス型の黒いバッグを持っている。
「久住さん。」
「終わったのか?講習。」
「えぇ。そっちも撮影が?」
「あぁ。ほら見て見ろよ。」
そう言って晶は携帯電話を取り出して、その写真を清子に見せる。するとそこにはこぼれ落ちそうな胸を持った女性の水着姿が写っていた。
「何を見せるんですか。」
「うらやましいだろ?」
「別に。」
頬を膨らませた清子に、晶は少し笑う。
「いつもの調子が出てきたな。良かった。」
その言葉に清子は意外そうに久住をみる。
「ずっとこわばってたからな。さっき地下で会ったときも、どっか無理しているような気がした。」
今日がクリスマスでなければ、今日が特別な日でなければ、何も思うことはなかった。史と恋人でなければ、普通に仕事の仲間だと思えば、こんなに意識することはなかった。
「そんなにこわばってましたか。」
「あぁ。そうだ。お前、これやるよ。」
そう言って晶は、バッグの中からかわいらしいラッピングの施されたビニールの袋を手渡した。
「何?」
中身は見えないようになっている。それをあけてみると、清子の顔がひきつった。
「そこで配ってたんだよ。俺、必要ないし。」
「……私も必要ないですよ。」
「何?あいつと生でしてんのか?ガキが出来るだろ?」
「やめてくださいよ。そんなことを言うの。」
そのラッピングの中には、コンドームが二つ入っている。おそらくクリスマスだからとセックスをするカップルが多いのを見越してのことだ。
すると晶はまだ話をしている慎吾を横目に、こそっと清子に聞く。
「お前、来てるか?」
「何が?」
「生理。前……思わず……。」
その言葉に清子は頬を赤らめた。そうだ。この人とは秋ほどに一度セックスをしたのだ。何回も中で出されてしまい、そのたびにどうにかなりそうだった。
「大丈夫です。この間きましたから。」
「ふーん。まぁ……何回してもガキが出来ない夫婦もいるしな。そんなものなのかな。」
出来てれば良かった。そうすれば史から奪えるのに。
「久住さんはどこに行くんですか?」
煙草を消して、清子は晶に聞く。すると晶は少し笑っていった。
「明日も休みじゃん。だから一度実家に帰る。兄貴がいるしさ。」
「……そうでしたか。」
「お前も帰る?載せようか?」
「いいえ。今日は……。」
すると電話を終えた慎吾が清子に近づいてきた。慎吾の表情は少し険しい。
「史は、駅のカフェにいるそうだ。」
「そうでしたか。」
「……行くか?」
おそらく変なことはなかったのだろう。浮気や二股なら、清子を奪ってやろうと思っていた考えが消えた。
AV男優だったのだ。だから一途な人とは思えなかったのに、案外清子しか見ていなかった。それがかえって悔しい。
そのとき晶の携帯電話が鳴る。それに反応して、晶は電話を取った。
「もしもし。え?どこにいるの?お前。」
晶はふと前を見る。するとそこには見覚えのある人がいた。それは愛だった。
「晶。」
高い身長なのに、さらに高いヒールを履いていてとても大きな人に見える。おそらくこの高さなら晶も、慎吾よりも背が高い。
「何?お前、今日何の用?」
「年末に海外の撮影が入ったの。それで美容室へ行って、それから……プレゼントを選んでたわ。」
「プレゼント?」
「クリスマスじゃない。何の他意もないわ。今日撮影をするスタッフにも配る予定にしてるの。」
大きな紙袋はそのためか。愛はそう言って、その紙袋の中から小さなラッピングをされた袋を取り出して、晶に手渡す。そしてその横にいる清子や慎吾にも視線を送ると、その袋を二人にも手渡した。
「何だよ。食えるもの?」
「違うわ。ハンドクリーム。あたしが好きなヤツ。」
「あー。何かすげぇ臭いのするヤツな。」
「文句があるなら返して。」
「やだよ。どうせオーガニックとかのヤツだろ?もらっとく。」
愛の出現に、慎吾はその袋を手にしたまま見上げていた。この女はどの面を下げて、清子の前に立っているのだろう。モデルとかをしている女はその辺の常識がないのだろうか。
「あんた。」
思わず慎吾は愛に声をかける。
「何?」
「あんたよく清子の前に立てるよな。」
清子はその言葉に、思わずその包みを落としかけた。
「え?」
「そこで史と抱き合ってたろう?史が清子の恋人だって知っててやったのか?」
慎吾の無神経な言葉に、清子の手が震える。
「抱き合ってって……あんなの一瞬じゃない。しかもこっちにはこっちの事情があって……。」
「あいつはさっき、あんたが詰め寄ってきたのをなだめただけだと言ってた。どんな事情があるにしても、こんな往来の場でする事じゃない。結局あんたも史も、こいつを傷つけた。」
すると愛は、その高いヒールをならし、慎吾に詰め寄る。
「何を言っているの?取ったのはそっちが先。」
「え?」
「徳成さん。この際、はっきりさせましょうよ。ね?お互いもやもやしたままだと……あれ?」
清子がいたと思った。だがそこには清子の姿がない。そして、晶の姿もなかった。
「どこへ……。」
そのころ清子は晶に手を引かれて、駐車場へ向かっていた。そして自分の車に清子を押し込めて、運転席に晶が乗り込む。
「久住さん……。」
「黙ってろよ。」
そう言って晶は、素早く清子の唇に軽くキスをするとエンジンをかけた。
「悪いけど、あの史の番号を教えてくれないか。」
「え……。」
「直接、話をしたい。それから……弁解を聞いて俺が納得すれば、素直に君を史に返すから。」
その言葉に清子は動揺しながら、番号を教えた。
それに電話をする慎吾を見て、確かに第三者からの意見を聞くのは普通ではない清子にとってはいいのかもしれないと思っていた。
「……慎吾です。えぇ……。とんでもない。講習があったから声をかけただけです。ちょっと話があって……。」
少し離れたところで話をしている。その間、清子は煙草を取り出して火をつけた。だがその指は震えている。そのとき後ろから声がかかった。
「清子。」
振り返ると、そこには晶の姿があった。いつものボックス型の黒いバッグを持っている。
「久住さん。」
「終わったのか?講習。」
「えぇ。そっちも撮影が?」
「あぁ。ほら見て見ろよ。」
そう言って晶は携帯電話を取り出して、その写真を清子に見せる。するとそこにはこぼれ落ちそうな胸を持った女性の水着姿が写っていた。
「何を見せるんですか。」
「うらやましいだろ?」
「別に。」
頬を膨らませた清子に、晶は少し笑う。
「いつもの調子が出てきたな。良かった。」
その言葉に清子は意外そうに久住をみる。
「ずっとこわばってたからな。さっき地下で会ったときも、どっか無理しているような気がした。」
今日がクリスマスでなければ、今日が特別な日でなければ、何も思うことはなかった。史と恋人でなければ、普通に仕事の仲間だと思えば、こんなに意識することはなかった。
「そんなにこわばってましたか。」
「あぁ。そうだ。お前、これやるよ。」
そう言って晶は、バッグの中からかわいらしいラッピングの施されたビニールの袋を手渡した。
「何?」
中身は見えないようになっている。それをあけてみると、清子の顔がひきつった。
「そこで配ってたんだよ。俺、必要ないし。」
「……私も必要ないですよ。」
「何?あいつと生でしてんのか?ガキが出来るだろ?」
「やめてくださいよ。そんなことを言うの。」
そのラッピングの中には、コンドームが二つ入っている。おそらくクリスマスだからとセックスをするカップルが多いのを見越してのことだ。
すると晶はまだ話をしている慎吾を横目に、こそっと清子に聞く。
「お前、来てるか?」
「何が?」
「生理。前……思わず……。」
その言葉に清子は頬を赤らめた。そうだ。この人とは秋ほどに一度セックスをしたのだ。何回も中で出されてしまい、そのたびにどうにかなりそうだった。
「大丈夫です。この間きましたから。」
「ふーん。まぁ……何回してもガキが出来ない夫婦もいるしな。そんなものなのかな。」
出来てれば良かった。そうすれば史から奪えるのに。
「久住さんはどこに行くんですか?」
煙草を消して、清子は晶に聞く。すると晶は少し笑っていった。
「明日も休みじゃん。だから一度実家に帰る。兄貴がいるしさ。」
「……そうでしたか。」
「お前も帰る?載せようか?」
「いいえ。今日は……。」
すると電話を終えた慎吾が清子に近づいてきた。慎吾の表情は少し険しい。
「史は、駅のカフェにいるそうだ。」
「そうでしたか。」
「……行くか?」
おそらく変なことはなかったのだろう。浮気や二股なら、清子を奪ってやろうと思っていた考えが消えた。
AV男優だったのだ。だから一途な人とは思えなかったのに、案外清子しか見ていなかった。それがかえって悔しい。
そのとき晶の携帯電話が鳴る。それに反応して、晶は電話を取った。
「もしもし。え?どこにいるの?お前。」
晶はふと前を見る。するとそこには見覚えのある人がいた。それは愛だった。
「晶。」
高い身長なのに、さらに高いヒールを履いていてとても大きな人に見える。おそらくこの高さなら晶も、慎吾よりも背が高い。
「何?お前、今日何の用?」
「年末に海外の撮影が入ったの。それで美容室へ行って、それから……プレゼントを選んでたわ。」
「プレゼント?」
「クリスマスじゃない。何の他意もないわ。今日撮影をするスタッフにも配る予定にしてるの。」
大きな紙袋はそのためか。愛はそう言って、その紙袋の中から小さなラッピングをされた袋を取り出して、晶に手渡す。そしてその横にいる清子や慎吾にも視線を送ると、その袋を二人にも手渡した。
「何だよ。食えるもの?」
「違うわ。ハンドクリーム。あたしが好きなヤツ。」
「あー。何かすげぇ臭いのするヤツな。」
「文句があるなら返して。」
「やだよ。どうせオーガニックとかのヤツだろ?もらっとく。」
愛の出現に、慎吾はその袋を手にしたまま見上げていた。この女はどの面を下げて、清子の前に立っているのだろう。モデルとかをしている女はその辺の常識がないのだろうか。
「あんた。」
思わず慎吾は愛に声をかける。
「何?」
「あんたよく清子の前に立てるよな。」
清子はその言葉に、思わずその包みを落としかけた。
「え?」
「そこで史と抱き合ってたろう?史が清子の恋人だって知っててやったのか?」
慎吾の無神経な言葉に、清子の手が震える。
「抱き合ってって……あんなの一瞬じゃない。しかもこっちにはこっちの事情があって……。」
「あいつはさっき、あんたが詰め寄ってきたのをなだめただけだと言ってた。どんな事情があるにしても、こんな往来の場でする事じゃない。結局あんたも史も、こいつを傷つけた。」
すると愛は、その高いヒールをならし、慎吾に詰め寄る。
「何を言っているの?取ったのはそっちが先。」
「え?」
「徳成さん。この際、はっきりさせましょうよ。ね?お互いもやもやしたままだと……あれ?」
清子がいたと思った。だがそこには清子の姿がない。そして、晶の姿もなかった。
「どこへ……。」
そのころ清子は晶に手を引かれて、駐車場へ向かっていた。そして自分の車に清子を押し込めて、運転席に晶が乗り込む。
「久住さん……。」
「黙ってろよ。」
そう言って晶は、素早く清子の唇に軽くキスをするとエンジンをかけた。
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