不完全な人達

神崎

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火祭り

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 コーヒーを入れて、三人はテーブルにつくと清子はベーグルを手にした。レタスやトマト、目玉焼きが挟まっている。ベーグル自体にもゴマが練り込まれていて、風味が良かった。
「これ一つでお腹一杯になりそう。」
「そんな小さいのでか?だからお前細いんだよ。ほら、こっちのチョコのヤツ美味いって言ってたじゃん。」
 晶はそういってそのチョコレートがたっぷりは言っているパンを勧めた。
「チョコレートとコーヒーは合うからね。」
「そうですね。」
 いつか東二の店で試食したマシュマロとチョコのお菓子は、評判が良いらしい。タウン誌にこの間載っていた気がする。
「久住は今日仕事だったのか?」
「あぁ。新聞社の方な。」
 晶は最近、「三島出版」と提携している新聞社の仕事を受けている。裏でこそこそと裏ビデオのパッケージを撮るよりは新聞社の写真を撮った方が金になるし、表立って写真を撮ることが出来るから。
「収入では追い抜かれそうだ。」
「言うな。言うな。俺だって別に進んで撮ろうと思ってねぇから。っとそうだった。俺、これから別件の仕事に行くんだけどさ、あんたら二人も行かない?」
「え?」
 その言葉に思わずパンを食べる手を止めて、晶をみる。
「ほら、うちの地元でさ、大晦日に火祭りするだろ?あれを撮ってきて欲しいんだとよ。」
「あぁ……あれだけは、祖母も出てましたね。」
 大晦日の夜に歌番組やバラエティをみる習慣はなかったが、毎年港へ行き櫓をくんでいるところに火を起こすのだ。そこへ今年一年守ってくれた護符やお守りなどをくべたりして、その火で餅を焼く。その餅を食べれば、来年一年の無病息災が約束されるのだという。
「そんな迷信信じちゃいねぇけどな。でも見栄えはするから撮ってきて欲しいんだと。」
 本当に迷信だと思う。清子の祖母は毎年それにでていたが、その年の春に祖母が亡くなったのだから。
「いいんじゃないか。気になるようだったら行こう。」
 史はそういって清子をみる。だが清子は少し気後れしているようだった。
「終わったら帰るってわけじゃないんですよね。うちはまだ泊まれるような状況じゃないですし、茂さんに迷惑がかからないでしょうか。」
「いいんだよ。一人であの家にグダグダ居るよりは、兄貴だって人がいた方が良いに決まってるから。」
「そうですか……。」
「実家に行くんだったら、そっから行けばいいし。」
「何かおみやげを持って行かないと……それから、史の実家の方にも何か買っていかないといけませんね。」
「良いよ。適当で。」
 気負うような家ではない。それにメインはきっとこの間産まれた甥っ子なのだろうから。
「あ。うちは良いよ。この間、取材に行った先でさ、美味そうなベーコンが売ってて、これをみやげにするから。」
 何でも良い。二人にさせたくなかった。

 食事を終えると、晶の携帯電話が鳴る。その相手を見て、晶は不機嫌そうに舌打ちをした。
「はい……。はい……わかりました。今からそっち行って……十三時には間に合うと思います。あとは祭りの方ですね。終わって速攻で行きます。」
 晶は電話を切ると、ため息をついた。
「どうした。仕事か?」
「スポーツ紙のヤツ。ストリップにAVのMIHARUが出るらしいから、出演前にインタビューするって、そのリハも写真撮ってきてくれって。」
「間に合うのか?」
「間に合わせるって。今からS区行ってと……。終わったらこっち来るわ。」
「わかった。その間、こっちは土産でも買っていこう。」
 晶はそういって煙草を消すと、席を立った。
「じゃあ、またあとで。連絡するわ。」
「あぁ。」
 晶が部屋を出てリビングに戻ってくると、清子はカップに残ったコーヒーを入れていた。結局あまり食べていなかったようだが、普段からあまり食べない人だ。これで夜まで食べないのだから、貧血になるのも当たり前だろう。
「いつ出ますか?」
「え?」
「お土産屋さんは、今日は早めに閉まってしまうでしょうね。何が良いでしょうか。お酒は……。」
 コップを置いて、考えを巡らせている。すると清子の体を後ろから抱きしめた。
「明日で良いよ。きっと明日も開いているから。帰る途中のサービスエリアで買っても良いし。それより今まで我慢してたんだ。もう我慢できない。」
 その言葉に清子はその体に伸ばされた手に手を重ねた。
「キスして良い?」
 首もとに唇を寄せる。そして軽く吸い上げると、清子の口から声が漏れた。
「あっ……。」
 赤くなる頬が後ろからでもわかる。そのままキスがしたい。
 清子をこちらに向けると、顎を持ち上げる。そして軽く唇を重ねた。そのまま額を合わせて抱きしめた。
「コップが倒れてしまいます。」
「そうだね。だったらベッドに行こうか。」
 手を引いて、ベッドルームへ向かう。そこはほかの部屋と比べても薄暗い。遮光カーテンをまだ引いているからだった。
 そのベッドのそばで立ったまま、清子の唇にキスをする。舌で唇を開けると、その舌が絡んできた。
「ん……。」
 唇を離すと、清子の目がトロンとしてきた。頬は上気しているのに、視線を逸らしている。
「清子……好きだよ。」
「あの……。」
「ん?」
「いいえ……何でも……。」
 視線を逸らして、何か言いたそうだった。だがそのセーターを脱がせてシャツを脱がせると、清子の言いたいことがわかった。
「これ、まだ着ているの?」
 カッと顔が赤くなる。胸を押さえている下着は黒いレースの下着だったのだ。清子の体は細いのに、その割には胸がある方だ。
「下も見せて。」
 そういってジーパンに手をかける。するとブラとお揃いの黒い下着が穿かれている。大事なところは生地は厚めにしているが、その横やお尻の部分はレースのみで肌が見えている。
「いいね。とても綺麗だよ。」
「あの……恥ずかしいです。」
「誰も見てないよ。俺しか見てない。ほら。そのままここを触って。」
 そういって史は恥ずかしそうにしている清子の手を握り、まだジーンズ越しの性器に手を持ってくる。そこはもう堅くなりつつあるようだ。
「大きくなってる……。」
「君のそんな姿を見たからだ。それにずっとしてなかったからね。溜まってるし。」
「しないんですか?」
「何を?」
「自己処理。」
 すると史は清子の耳元で言う。
「してないよ。君はしてる?」
「したことないです。」
「だったら今度見せ合いながらしようか。」
「いやです。」
「そうだね。見せ合いながらするくらいなら、セックスした方が良いな。」
 そういって史は自分も服を脱ぎ始めた。薄暗いとは言っても、まだ日が高い昼間だ。なのにこんなことをしている罪悪感が、また清子をかき立てる。そしてキスをする度に、晶が無理矢理したキスを思い出ししていた。
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