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遺書
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IT部門のオフィスは、奇妙な空気が流れていた。清子が貧血で倒れた日にここの部門の飲み会があったようだが、それで何かあったのだろう。だが清子は我関せずと、自分の仕事だけを見ていた。
空気が悪かろうと良かろうと、自分は自分の仕事をするだけだ。そう思いながら社内チャットをチェックした。そしてメールボックスをみる。
「……。」
見覚えのないメールが届いていた。だがアドレスだけは知っている。それを開封すると、それは社長からのメッセージだった。
今度の土曜日に、清子の実家の取り壊しをするらしい。と言っても骨組みや土台などはそのままで、中のリフォームや朽ちている柱を打ち直すらしい。その様子を見に行くなら行けばいいということらしい。
社長にはせめて風呂釜はガスをつけても良いが、薪の風呂を使えるようにもして欲しいと言ったらそれは残してくれたらしい。少しほっとした。
だが一年ごとに身長を測るようにつけられた柱に傷も、清子が謝ってふすまに付けたシミもなくなってしまうのだ。
そう言えば冬山祥吾の容態はどうなのだろう。それも含めて土曜日はその町へ行ってみるのもいいだろう。
「おはよう。徳成さん。」
コーヒーを持った川西がやってきた。
「おはようございます。」
「体調はもういいの?」
「えぇ。ご心配をかけました。」
清子は倒れた日から少しずつ、昼食を食べるようにしていた。最初は一口サイズのようかんなどだったが、最近はやっとおにぎりくらいは食べれるようになった。朝米を炊いたときについでに握ってくるのだ。史は最終的には社内食の定食くらいは食べれるようにした方がいいと言っていたのだが、そんなに入りそうにはない。
「この間、教えてくれた講習会みたいなあぁいう感じの講習会は無いかな。」
「あぁ……プログラミングですか。確か……。」
清子はバッグを取り出して、ファイルを取り出す。そして中をチェックすると、この間慎吾が教えてくれた講習会のリストを見つける。
「全部で三回コースのヤツがあるんですよ。ちょっと高いけれど、申し込みますか?」
「徳成さんはどうするの?」
「私は……こっちの方を。」
そう言って指さした講習は、ウィルス関係の講習会だった。だが日付を見てため息を付く。
「どうしたの?」
「あ……行こうと思ってたんですけど……都合が合いそうにないです。別の日のモノにします。」
珍しいこともあるもんだ。何を置いても講習会や勉強会を優先すると思っていたのに。
「おはよう。」
そう言って朝倉が清子に声をかけた。
「おはようございます。」
だが川西はさっと体を避けて、自分のデスクに戻っていく。きっとこのオフィスの空気がぎすぎすしているのは、この二人に何かあったからだろう。
男と女がいるのだ。何もないわけがない。それで辞めていった人や、部署を変えた人なんかをずっと見てきた清子には、見慣れた光景でもあった。
昼休憩になり、清子はいつものようにパソコンをスリープ状態にしてバッグとコートを手に持った。そのとき、朝倉が清子に声をかける。
「徳成さん。よかったらちょっと出ないか。」
「昼食は持ってきているので、ご心配なく。」
「ちょっと話もあるから。」
何の話かわからないが、嫌な予感しかしない。だが断れないだろう。
「叔父とは知り合いだと行っていたか。」
「あぁ……東二さんですか。」
年末に空気を悪くした。それ以来会っていない。まともに話も出来るだろうか。
「時間的には、もう閉めてる時間ですよね。」
「今日は少し待ってもらった。君がコーヒーが好きだと言っていたから。」
よけいなことをするな。そう思いながら、朝倉と一緒にオフィスを出る。そしてゲートをくぐると、冷たい風が吹き抜けた。
「さむっ。」
「日がないから、さらに寒いですね。」
スーツの上にダウンのコートを着ているだけ。しかもあまり厚手のモノではない。なのにそんなに寒くないのだろうか。
「徳成さんはいつも同じコートだな。」
「えぇ。もう長いです。」
「ダウンはどうしても羽が出てくる。そうなればへたってくるが、買い直す気はないのか。」
「無いですね。まだ暖かいし。」
それが強がりなのはわかる。その首元は鳥肌が立っているから。
公園へやってくると、コーヒーの匂いがする。相変わらず良い香りのモノだ。
「尊。いらっしゃい。」
最近はサンドイッチなんかも置いているらしく、昼過ぎまでは屋台をしているらしい。東二は、清子を少し見て微笑んだ。
「徳成さんもいらっしゃい。」
「どうも。」
朝倉はさっき買った牛丼を手にしていたので、コーヒーを二つと置いてあったお菓子を手にした。
「珍しいな。二人で来るのは。」
「ちょっと話があってね。」
「女関係か。尊は結構昔は遊んでたからなぁ。」
「叔父さんほどじゃないから。」
やはり女の関係のことか。清子はそう思いながら、コーヒーを受け取る。すると朝倉は買ったお菓子も清子に手渡した。
「え?」
「口止め料。」
「いりません。」
「でも君は感じているだろう?うちのオフィスがちょっと気まずい雰囲気になってるの。」
「……何かあったのだろうとは思いましたが、それを言うこともないと思っていたので。」
すると東二も面白そうに、朝倉をみる。
「オフィスの人間に手を出したのか。ろくでもないな。お前は。上司なのだろうに。」
「わかってるんだけどさ……止められなくて。」
朝倉はそう言ってため息をつく。その様子に東ニは驚いたように清子をみた。
「徳成さん。尊がこんな感じになっているのは初めて見る。相談に乗ってやって。」
「面倒。それに……男と女のことで私がアドバイスできると思いませんが。」
「君は順調なんだろう。」
「……まぁ……一応。」
コーヒーを口にすると、清子の胸が少し痛んだ。
あの日、何度も晶を求めた。史の前では絶対しないことをしてしまった。それはセックスを楽しむことだ。
本来セックスはそんなものじゃない。だが、晶が相手ではそれも無意味な言葉に思える。ただひっついていたかったし、感じさせて欲しかった。
空気が悪かろうと良かろうと、自分は自分の仕事をするだけだ。そう思いながら社内チャットをチェックした。そしてメールボックスをみる。
「……。」
見覚えのないメールが届いていた。だがアドレスだけは知っている。それを開封すると、それは社長からのメッセージだった。
今度の土曜日に、清子の実家の取り壊しをするらしい。と言っても骨組みや土台などはそのままで、中のリフォームや朽ちている柱を打ち直すらしい。その様子を見に行くなら行けばいいということらしい。
社長にはせめて風呂釜はガスをつけても良いが、薪の風呂を使えるようにもして欲しいと言ったらそれは残してくれたらしい。少しほっとした。
だが一年ごとに身長を測るようにつけられた柱に傷も、清子が謝ってふすまに付けたシミもなくなってしまうのだ。
そう言えば冬山祥吾の容態はどうなのだろう。それも含めて土曜日はその町へ行ってみるのもいいだろう。
「おはよう。徳成さん。」
コーヒーを持った川西がやってきた。
「おはようございます。」
「体調はもういいの?」
「えぇ。ご心配をかけました。」
清子は倒れた日から少しずつ、昼食を食べるようにしていた。最初は一口サイズのようかんなどだったが、最近はやっとおにぎりくらいは食べれるようになった。朝米を炊いたときについでに握ってくるのだ。史は最終的には社内食の定食くらいは食べれるようにした方がいいと言っていたのだが、そんなに入りそうにはない。
「この間、教えてくれた講習会みたいなあぁいう感じの講習会は無いかな。」
「あぁ……プログラミングですか。確か……。」
清子はバッグを取り出して、ファイルを取り出す。そして中をチェックすると、この間慎吾が教えてくれた講習会のリストを見つける。
「全部で三回コースのヤツがあるんですよ。ちょっと高いけれど、申し込みますか?」
「徳成さんはどうするの?」
「私は……こっちの方を。」
そう言って指さした講習は、ウィルス関係の講習会だった。だが日付を見てため息を付く。
「どうしたの?」
「あ……行こうと思ってたんですけど……都合が合いそうにないです。別の日のモノにします。」
珍しいこともあるもんだ。何を置いても講習会や勉強会を優先すると思っていたのに。
「おはよう。」
そう言って朝倉が清子に声をかけた。
「おはようございます。」
だが川西はさっと体を避けて、自分のデスクに戻っていく。きっとこのオフィスの空気がぎすぎすしているのは、この二人に何かあったからだろう。
男と女がいるのだ。何もないわけがない。それで辞めていった人や、部署を変えた人なんかをずっと見てきた清子には、見慣れた光景でもあった。
昼休憩になり、清子はいつものようにパソコンをスリープ状態にしてバッグとコートを手に持った。そのとき、朝倉が清子に声をかける。
「徳成さん。よかったらちょっと出ないか。」
「昼食は持ってきているので、ご心配なく。」
「ちょっと話もあるから。」
何の話かわからないが、嫌な予感しかしない。だが断れないだろう。
「叔父とは知り合いだと行っていたか。」
「あぁ……東二さんですか。」
年末に空気を悪くした。それ以来会っていない。まともに話も出来るだろうか。
「時間的には、もう閉めてる時間ですよね。」
「今日は少し待ってもらった。君がコーヒーが好きだと言っていたから。」
よけいなことをするな。そう思いながら、朝倉と一緒にオフィスを出る。そしてゲートをくぐると、冷たい風が吹き抜けた。
「さむっ。」
「日がないから、さらに寒いですね。」
スーツの上にダウンのコートを着ているだけ。しかもあまり厚手のモノではない。なのにそんなに寒くないのだろうか。
「徳成さんはいつも同じコートだな。」
「えぇ。もう長いです。」
「ダウンはどうしても羽が出てくる。そうなればへたってくるが、買い直す気はないのか。」
「無いですね。まだ暖かいし。」
それが強がりなのはわかる。その首元は鳥肌が立っているから。
公園へやってくると、コーヒーの匂いがする。相変わらず良い香りのモノだ。
「尊。いらっしゃい。」
最近はサンドイッチなんかも置いているらしく、昼過ぎまでは屋台をしているらしい。東二は、清子を少し見て微笑んだ。
「徳成さんもいらっしゃい。」
「どうも。」
朝倉はさっき買った牛丼を手にしていたので、コーヒーを二つと置いてあったお菓子を手にした。
「珍しいな。二人で来るのは。」
「ちょっと話があってね。」
「女関係か。尊は結構昔は遊んでたからなぁ。」
「叔父さんほどじゃないから。」
やはり女の関係のことか。清子はそう思いながら、コーヒーを受け取る。すると朝倉は買ったお菓子も清子に手渡した。
「え?」
「口止め料。」
「いりません。」
「でも君は感じているだろう?うちのオフィスがちょっと気まずい雰囲気になってるの。」
「……何かあったのだろうとは思いましたが、それを言うこともないと思っていたので。」
すると東二も面白そうに、朝倉をみる。
「オフィスの人間に手を出したのか。ろくでもないな。お前は。上司なのだろうに。」
「わかってるんだけどさ……止められなくて。」
朝倉はそう言ってため息をつく。その様子に東ニは驚いたように清子をみた。
「徳成さん。尊がこんな感じになっているのは初めて見る。相談に乗ってやって。」
「面倒。それに……男と女のことで私がアドバイスできると思いませんが。」
「君は順調なんだろう。」
「……まぁ……一応。」
コーヒーを口にすると、清子の胸が少し痛んだ。
あの日、何度も晶を求めた。史の前では絶対しないことをしてしまった。それはセックスを楽しむことだ。
本来セックスはそんなものじゃない。だが、晶が相手ではそれも無意味な言葉に思える。ただひっついていたかったし、感じさせて欲しかった。
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