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別離の条件
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最初に御影がやってきた日から、御影は毎日のように「pink倶楽部」の部署に顔を出してきた。午後から清子がここに来るというので、それを狙って午後からやってくる。もちろんその時間は給与が発生するわけではないが、御影はどうしてもここに来たときに使えるような人材になりたいと思っていたのだろう。
清子も特にそれを嫌がるわけでもなく、予備のノートパソコンを置いて指示をしていた。
「ネット販売を?」
御影は少し驚いたように清子をみる。
「えぇ。企画としてはもう上層部に通じている話です。通れば実行に移すことはできるのですが、それを管理するのはどうしてもここになるんです。」
「こんだけ仕事量があれば、そこまで手は回らないですよ。」
「なので、あなたにお願いしようと思っていました。バックナンバーは今でも取り寄せようと思えば取り寄せることはできますが、最新号は送料を含めてこの値段になります。それからパッケージは透けないように厚手の紙を。」
「そうですね。そっちの方が良いかも。」
「バックナンバーを購入するページがあるので、それに最新号の購入ページを付け加えてください。」
史はその様子を少し遠巻きに見ているようだった。距離が近い。最近、清子とキスやセックスどころか話すら出来ていない。朝はIT部門へ行っているし、昼からはずっとこの調子だ。就業時間が近づくと、IT部門へ向かいそのままいつ帰ったのかわからない。ここへ来る前に喫煙所で会う晶の方が距離が近い気がした。
もやもやする。時間がとれないのが一番のネックだ。それに最近は、自分の方も忙しい。新たにやってくる編集長への引き渡しや、新たに出版するタウン誌の打ち合わせなど、残業をしないのが奇跡だと思った。
「では、そのようにお願いします。」
清子はそう言ってまた自分のパソコンに目を落とす。
「SNSを開設してるんですよね。」
「えぇ。」
話を降られて、清子はそのページをクリックした。
「受け答えがビジネス的だなと思って。」
「それの方が角が立たないで、こちらの要望に応えられます。そして相手方の要望には出来る限り答えたいと思いますから。」
「答えられる要望って?読者に何か求めているんですか?」
「そうですね……。例えば、私たちで把握できない女優でも良い方も居ます。原石のような方ですね。そういう方を見つけるのは、ファンの方が早いですから。」
「なるほど。こっちも利用しているって事ですね。」
「今は昔と違って、良いからと言って気軽にデビューできるわけではないのでしょうが、それでも一般の映画よりは数が圧倒的に多い。すべて把握できませんし。」
「マニアみたいな人が居るんですか。」
すると清子はページをクリックする。
「この方とこの方は、良く知っていますね。」
「へぇ……。」
「あと、この方は昔のAVを良く知ってます。過去作を紹介するのにとても良いですね。」
こういうところでも活用しているのだ。SNSは諸刃の剣だと思う。だがうまく利用すれば、それだけネタに出来る。
「荒らしは出ませんか。」
「出ないことはないです。」
その言葉に清子は三沢やあのスポーツ紙の女性記者を思い出す。
「対処は慎重にしてください。事と場合によっては釈明をするようにしてください。」
「編集長の?」
「そうですね。一番の責任者ですから。」
危ないときは何度もあった。だが史が正直に受け答えをしたことや、晶が手を打ったことでそれは逃れられたのだ。
「こういうところは荒らしが沢山出そうですね。」
「どこの部署でも同じですよ。週刊誌や週刊漫画雑誌だとさらに多いそうです。」
清子は画面を見ると、メッセージが届いていた。それを開くと、少しため息を付く。
「どうかしました。」
「あぁ……。IT部門のことですね。ちょっとプリントアウトをしないと。」
そう言ってプリントをクリックして立ち上がると、オフィスの片隅にあるプリンターに足を運んだ。するとプリンターがエラーを起こしている。どうやら用紙がないらしい。
それを見て清子はオフィスを出て行くと、隣の倉庫に向かった。相変わらず薄暗い倉庫の電気をつけると、奥にある脚立に近づいて手を伸ばす。その時後ろでドアが閉まる音がした。
「ん?」
ふと見るとそこには史が居た。
「編集長も何か?」
「プリンター用紙が切れててね。」
「あぁ。取りに来たんですか。良いですよ。私、それを取りに来たんです。」
すると清子は脚立を置くと、それに上がる。そしてその紙の束を手にすると、脚立を降りた。
「在庫が残り少ないですね。あとで……。」
その時史が清子の二の腕をつかむ。そして清子を抱き寄せた。
「こうするのは久しぶりだね。」
そう言われて清子は素直にその胸の中でうなづいた。
「そうですね。でもここでは……。」
「ちょっとでもこうしていたいんだけど……。」
体は素直に抱かれている。だがそれが本当に求めているかというと、違う気がした。だがそれをはねのけられない。
「今日、うちに来ない?」
「……いいんですか?」
「断る理由はないよ。その前にデートもしたい。S駅まで行かないか。」
「何かあるんですか?」
「屋台が出ている。行ったことないだろ?」
清子は少し笑うと、史を見上げる。やはり清子の好きなものばかりを把握している男だ。小洒落たレストランよりも、居酒屋。ワインやシャンパンよりは熱燗が良い。
「屋台は、昔行ったことがあるんです。南の方の町に居たことがあって、ずらっと屋台が並んでました。」
「へぇ……。それとは趣が違うかもしれないけど、楽しいところだった。君がきっと気に入ると思うから。」
「行ってみたいです。」
「楽しみにしてる。」
史はそう言って清子の唇に軽くキスをする。そして倉庫を二人で出ていった。すると、向こうから帰ってくる晶が二人に手を降った。
「おー。お疲れっす。」
「久住。どうだった。メンズストリップは。」
「んー。男のヤツも良いな。性別を越えて綺麗だったよ。」
「それは良かった。」
「音楽とか照明が入るとまた違うんだろうけどな。」
晶は数日前、髪を切った。目まで覆うような髪はなくなりこの国の人ではない顔立ちは綺麗だと評判になっている。だがそれと同時に額の傷が、目立つようになった。
綺麗な顔立ちに、女性社員が言い寄ろうとしていたようだが、その傷がありもしない噂を立てられて結局言い寄られないらしい。どちらにしても晶にとっては迷惑だ。
「んでさ、そこの男がちょっと面白いヤツでさ。すげぇ、ハーフみたいに綺麗な顔立ちしてんのに、好きなものが屋台なんだってさ。」
「屋台?S駅の?」
「そう、そう。S区まで電車で一本じゃん。だから終わったら行って飲んでるらしいんだよ。そこで顔なじみになったり、わけわかんねぇおやじと意気投合することもあるんだと。」
「それは、ずいぶん庶民的だな。」
「何?編集長、お洒落なレストランとかの方が良い?」
「いいや。屋台には屋台の良さがあるよ。」
「だよな。だからさ、行かねえ?」
「え?」
清子は驚いて晶をみる。
「屋台にカップ酒。熱燗もほら陶器じゃなくてステンレスのヤツでくれたりさ。楽しそうじゃん。」
まるでアトラクションに乗る前の子供のようだ。そう思いながら清子は見ていた。
「今度……。」
今日は清子と二人で行きたいと思っていた。だから晶は邪魔だと思っていたのだが、清子がそんな史を止めるようにいう。
「今日、行ってみようかと思ってました。」
「マジで?俺も行って良い?」
その言葉に史は口をとがらせる。
「あー。編集長が嫌がってる。」
「え?あ、余計なことを言いました?」
清子がそう聞くと、史は笑いながら言う。
「いいや。別に。久住は車を置いてくるか?」
「そうするよ。駅で待ってて。」
するとオフィスから、香子が出てくる。その三人の会話を聞いていたのか、笑顔で近づいてきた。
「あたしも行きたい。」
「明神も?」
「良いじゃん。たまには屋台のおでん食べたい。」
ますます邪魔が増えた。笑顔でうなずくが、史は心の中で舌打ちをしていた。
清子も特にそれを嫌がるわけでもなく、予備のノートパソコンを置いて指示をしていた。
「ネット販売を?」
御影は少し驚いたように清子をみる。
「えぇ。企画としてはもう上層部に通じている話です。通れば実行に移すことはできるのですが、それを管理するのはどうしてもここになるんです。」
「こんだけ仕事量があれば、そこまで手は回らないですよ。」
「なので、あなたにお願いしようと思っていました。バックナンバーは今でも取り寄せようと思えば取り寄せることはできますが、最新号は送料を含めてこの値段になります。それからパッケージは透けないように厚手の紙を。」
「そうですね。そっちの方が良いかも。」
「バックナンバーを購入するページがあるので、それに最新号の購入ページを付け加えてください。」
史はその様子を少し遠巻きに見ているようだった。距離が近い。最近、清子とキスやセックスどころか話すら出来ていない。朝はIT部門へ行っているし、昼からはずっとこの調子だ。就業時間が近づくと、IT部門へ向かいそのままいつ帰ったのかわからない。ここへ来る前に喫煙所で会う晶の方が距離が近い気がした。
もやもやする。時間がとれないのが一番のネックだ。それに最近は、自分の方も忙しい。新たにやってくる編集長への引き渡しや、新たに出版するタウン誌の打ち合わせなど、残業をしないのが奇跡だと思った。
「では、そのようにお願いします。」
清子はそう言ってまた自分のパソコンに目を落とす。
「SNSを開設してるんですよね。」
「えぇ。」
話を降られて、清子はそのページをクリックした。
「受け答えがビジネス的だなと思って。」
「それの方が角が立たないで、こちらの要望に応えられます。そして相手方の要望には出来る限り答えたいと思いますから。」
「答えられる要望って?読者に何か求めているんですか?」
「そうですね……。例えば、私たちで把握できない女優でも良い方も居ます。原石のような方ですね。そういう方を見つけるのは、ファンの方が早いですから。」
「なるほど。こっちも利用しているって事ですね。」
「今は昔と違って、良いからと言って気軽にデビューできるわけではないのでしょうが、それでも一般の映画よりは数が圧倒的に多い。すべて把握できませんし。」
「マニアみたいな人が居るんですか。」
すると清子はページをクリックする。
「この方とこの方は、良く知っていますね。」
「へぇ……。」
「あと、この方は昔のAVを良く知ってます。過去作を紹介するのにとても良いですね。」
こういうところでも活用しているのだ。SNSは諸刃の剣だと思う。だがうまく利用すれば、それだけネタに出来る。
「荒らしは出ませんか。」
「出ないことはないです。」
その言葉に清子は三沢やあのスポーツ紙の女性記者を思い出す。
「対処は慎重にしてください。事と場合によっては釈明をするようにしてください。」
「編集長の?」
「そうですね。一番の責任者ですから。」
危ないときは何度もあった。だが史が正直に受け答えをしたことや、晶が手を打ったことでそれは逃れられたのだ。
「こういうところは荒らしが沢山出そうですね。」
「どこの部署でも同じですよ。週刊誌や週刊漫画雑誌だとさらに多いそうです。」
清子は画面を見ると、メッセージが届いていた。それを開くと、少しため息を付く。
「どうかしました。」
「あぁ……。IT部門のことですね。ちょっとプリントアウトをしないと。」
そう言ってプリントをクリックして立ち上がると、オフィスの片隅にあるプリンターに足を運んだ。するとプリンターがエラーを起こしている。どうやら用紙がないらしい。
それを見て清子はオフィスを出て行くと、隣の倉庫に向かった。相変わらず薄暗い倉庫の電気をつけると、奥にある脚立に近づいて手を伸ばす。その時後ろでドアが閉まる音がした。
「ん?」
ふと見るとそこには史が居た。
「編集長も何か?」
「プリンター用紙が切れててね。」
「あぁ。取りに来たんですか。良いですよ。私、それを取りに来たんです。」
すると清子は脚立を置くと、それに上がる。そしてその紙の束を手にすると、脚立を降りた。
「在庫が残り少ないですね。あとで……。」
その時史が清子の二の腕をつかむ。そして清子を抱き寄せた。
「こうするのは久しぶりだね。」
そう言われて清子は素直にその胸の中でうなづいた。
「そうですね。でもここでは……。」
「ちょっとでもこうしていたいんだけど……。」
体は素直に抱かれている。だがそれが本当に求めているかというと、違う気がした。だがそれをはねのけられない。
「今日、うちに来ない?」
「……いいんですか?」
「断る理由はないよ。その前にデートもしたい。S駅まで行かないか。」
「何かあるんですか?」
「屋台が出ている。行ったことないだろ?」
清子は少し笑うと、史を見上げる。やはり清子の好きなものばかりを把握している男だ。小洒落たレストランよりも、居酒屋。ワインやシャンパンよりは熱燗が良い。
「屋台は、昔行ったことがあるんです。南の方の町に居たことがあって、ずらっと屋台が並んでました。」
「へぇ……。それとは趣が違うかもしれないけど、楽しいところだった。君がきっと気に入ると思うから。」
「行ってみたいです。」
「楽しみにしてる。」
史はそう言って清子の唇に軽くキスをする。そして倉庫を二人で出ていった。すると、向こうから帰ってくる晶が二人に手を降った。
「おー。お疲れっす。」
「久住。どうだった。メンズストリップは。」
「んー。男のヤツも良いな。性別を越えて綺麗だったよ。」
「それは良かった。」
「音楽とか照明が入るとまた違うんだろうけどな。」
晶は数日前、髪を切った。目まで覆うような髪はなくなりこの国の人ではない顔立ちは綺麗だと評判になっている。だがそれと同時に額の傷が、目立つようになった。
綺麗な顔立ちに、女性社員が言い寄ろうとしていたようだが、その傷がありもしない噂を立てられて結局言い寄られないらしい。どちらにしても晶にとっては迷惑だ。
「んでさ、そこの男がちょっと面白いヤツでさ。すげぇ、ハーフみたいに綺麗な顔立ちしてんのに、好きなものが屋台なんだってさ。」
「屋台?S駅の?」
「そう、そう。S区まで電車で一本じゃん。だから終わったら行って飲んでるらしいんだよ。そこで顔なじみになったり、わけわかんねぇおやじと意気投合することもあるんだと。」
「それは、ずいぶん庶民的だな。」
「何?編集長、お洒落なレストランとかの方が良い?」
「いいや。屋台には屋台の良さがあるよ。」
「だよな。だからさ、行かねえ?」
「え?」
清子は驚いて晶をみる。
「屋台にカップ酒。熱燗もほら陶器じゃなくてステンレスのヤツでくれたりさ。楽しそうじゃん。」
まるでアトラクションに乗る前の子供のようだ。そう思いながら清子は見ていた。
「今度……。」
今日は清子と二人で行きたいと思っていた。だから晶は邪魔だと思っていたのだが、清子がそんな史を止めるようにいう。
「今日、行ってみようかと思ってました。」
「マジで?俺も行って良い?」
その言葉に史は口をとがらせる。
「あー。編集長が嫌がってる。」
「え?あ、余計なことを言いました?」
清子がそう聞くと、史は笑いながら言う。
「いいや。別に。久住は車を置いてくるか?」
「そうするよ。駅で待ってて。」
するとオフィスから、香子が出てくる。その三人の会話を聞いていたのか、笑顔で近づいてきた。
「あたしも行きたい。」
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