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人体改造の男
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インスタントだがコーヒーを入れると、部屋の中にふわっとコーヒーの匂いが広がる。コーヒーのはいったカップをトレーに乗せて、春川はダイニングテーブルに持って行った。いすには北川と、その斜め向かいに桂が座っている。Tシャツを着ているが、その体はシャツ越しでも鍛えられているのがわかった。
この体に抱かれたのか。
北川は少しため息を付く。
確かにその気配はあった。達哉と仕事デートをして、それを見せて欲しいと春川が言い出し、一人で見ているのは違和感があるからついて来た男の人が桂だったと思う。
デートが終わり一人で駅へ向かっていくとき、ちらりと二人をみた。どこにでも行るカップルに見える。まさかそのころから二人は男と女だったのだろうか。
彼女はコーヒーを口に含み、ため息を付く。紹介して欲しいと言い出したのは、春川だった。ただ単に興味があるからだと思って、紹介したのだがまさかこんなことになるとは思っても見なかった。
「俺らがデキてるの、反対なんですか。」
春川が桂の隣に座ったとき、彼がやっと口を開く。その言葉に北川はため息混じりにいう。
「デキてるの?」
その言葉に春川は桂を見上げる。
「……セックスはしましたよ。」
桂はそういうとコーヒーを口に含んだ。その口調が「歯を磨いた」とか「食事をした」と同じくらいの口調だったのを聞いて、北川は春川の方をみる。
「春川さん。もちろんだけど、冬山さんには言ってないんですよね。」
「言ってませんよ。言えるわけがないじゃないですか。」
「だったら隠れてこそこそ会ってたってこと?」
「会える時間はあまりなかったです。連絡も取れなかったし。なおかつ、私には旦那がいるから……そう思って彼を拒否してました。」
その言葉は彼も初めて聞く言葉だった。ぽつり、ぽつりとはなし口調はいつもと違う。絞り出すような声で彼女は語っていた。
「でも無理です。離れれば離れるほど会いたくなるし、声を聞きたくなるし、拒否をすれば受け入れたくなる。」
「ルー。」
思わず抱きしめたくなる。だが北川は肘をテーブルに載せて、頭を抱えていた。
「桂さんは?」
「俺?」
「好きなの?」
「好きだよ。」
「でも人妻よ?どんな旦那でも彼女の旦那なの。それをわかってて手を出したの?そんなに鬼畜なの?それにあなただったらわざわざ人妻に手を出さなくても相手ならいるでしょう?」
ひどい言い方だと思った。だが桂は冷静に言う。
「仕事セックスばっかしてるけど、感情なんかない。感情を持って、女を抱きたいと思ったのは彼女だけだ。人妻だから手を出したとか、人妻だから手を出してはいけないとか考えたこともない。」
「……人妻ものには出てるのに?」
「詳しいね。」
「これでもエロ雑誌の編集者ですからね。」
「有能だ。だったらこれも黙ってられるんじゃないの?」
「……でもあなたにとっても、今一番大事な時期じゃない?やっとまともな映画にでれるチャンスが巡ってきたんでしょう?イメージ悪くなるわ。」
「彼女と離れないといけないなら、そんなチャンス捨ててしまえばいい。」
「元々彼女はあなたのものでもないわ。」
自分の責任だ。彼と彼女を会わせたのは自分だし、こんなにどっぷりと彼らがはまりこんでいるとは思ってなかった。
「春川さん。」
「はい。」
「冬山さんのことはどうするんですか?このまま黙っておくんですか?確かにかなり歳は上ですけど、彼が死ぬまで待つんですか?」
「……いいえ。祥吾さんにも隠したいことがあるのでしょうし、私にもそれが出来たということです。」
「ということはこのまま?」
「いつまで出来るかわからない。でももし桂さん……啓治のことが彼に知られるなら……私にも考えがありますから。稚拙ですけどね。」
そういって彼女はコーヒーを飲み、テーブルに置く。
彼女は彼女なりに祥吾に愛想を尽かしていたのだ。それに耐えていただけ。その逃げ道が桂だっただけの話かもしれない。
だとしたら、この関係はそう長く続かない。だいたい、桂が他の女とセックスをしていて彼女は耐えきれるのだろうか。
「理由はわかりました。でもここで会うのはやめて欲しいんです。一応会社の持ち物だし、ラブホテル代わりにされても……。」
「そうですね。それは謝ります。」
「じゃあ、私帰ります。昨日寝てなくて。」
「すいません。校了のあとに寄って貰って。」
「いいんです。上司から様子を見に行けと言われてました。まぁそんなことを言われなくても来るつもりでしたけどね。あぁ、鍵は管理人に預けて貰えばいいんで。あとは精算します。」
席を立ち、彼女は玄関の方へ向かう。それに二人はついて行った。
「あぁ。北川さん。」
思わず桂に声をかけられた。彼女は振り向いてそちらをみる。
「達哉があんたを気に入ってましたよ。よかったら今度、プライベートで会ってやってくれませんか。」
その言葉に彼女の頬が少し赤くなる。
「さすがに口が上手ですよね。AV男優ってみんなあんな感じなんですか?」
「さぁ。どうでしょうね。」
「桂さんも口が上手ね。」
「俺のは役に入ったらってだけですよ。普段は女を口説くこともしない。めんどくさいから。彼女以外はね。」
彼の視線は春川に向けられた。その様子に、ますますため息を付いて北川は出ていく。
ドアが閉まったとたん、桂と春川は視線を合わせる。そして彼は彼女の背中に手を伸ばし、彼女は彼の首に手を伸ばした。激しく唇を重ねて、彼は彼女を壁に押しつけた。
「……昨日沢山したのに。」
「抱き足りない。」
彼は再び彼女の唇を割り、舌を這わせる。そしてシャツの中に手を入れてきた。
「んっ……。」
「抱けば抱くほど欲しくなるな。好きだよ。」
「体だけ?」
「あんただから。」
「本当に息を吐くように甘い言葉を言うのね。」
「全部あんたの前でしか言わない。」
下着のホックをとり、その間から手を入れてくる。胸に触れられる度に吐息が激しくなる。
「今日……仕事は?」
「夕方に撮影以外の仕事があるだけ。あんたは?」
「資料を……集めるの頼まれてる……んっ!」
指先で乳首を摘んできた。それだけでどうにかなりそうだ。
「どうせコンドームあと一個しかないし、あと一回で済ませよう。」
彼は彼女を抱き抱えると、ソファに彼女を押し倒した。そしてシャツを脱がせる。
この体に抱かれたのか。
北川は少しため息を付く。
確かにその気配はあった。達哉と仕事デートをして、それを見せて欲しいと春川が言い出し、一人で見ているのは違和感があるからついて来た男の人が桂だったと思う。
デートが終わり一人で駅へ向かっていくとき、ちらりと二人をみた。どこにでも行るカップルに見える。まさかそのころから二人は男と女だったのだろうか。
彼女はコーヒーを口に含み、ため息を付く。紹介して欲しいと言い出したのは、春川だった。ただ単に興味があるからだと思って、紹介したのだがまさかこんなことになるとは思っても見なかった。
「俺らがデキてるの、反対なんですか。」
春川が桂の隣に座ったとき、彼がやっと口を開く。その言葉に北川はため息混じりにいう。
「デキてるの?」
その言葉に春川は桂を見上げる。
「……セックスはしましたよ。」
桂はそういうとコーヒーを口に含んだ。その口調が「歯を磨いた」とか「食事をした」と同じくらいの口調だったのを聞いて、北川は春川の方をみる。
「春川さん。もちろんだけど、冬山さんには言ってないんですよね。」
「言ってませんよ。言えるわけがないじゃないですか。」
「だったら隠れてこそこそ会ってたってこと?」
「会える時間はあまりなかったです。連絡も取れなかったし。なおかつ、私には旦那がいるから……そう思って彼を拒否してました。」
その言葉は彼も初めて聞く言葉だった。ぽつり、ぽつりとはなし口調はいつもと違う。絞り出すような声で彼女は語っていた。
「でも無理です。離れれば離れるほど会いたくなるし、声を聞きたくなるし、拒否をすれば受け入れたくなる。」
「ルー。」
思わず抱きしめたくなる。だが北川は肘をテーブルに載せて、頭を抱えていた。
「桂さんは?」
「俺?」
「好きなの?」
「好きだよ。」
「でも人妻よ?どんな旦那でも彼女の旦那なの。それをわかってて手を出したの?そんなに鬼畜なの?それにあなただったらわざわざ人妻に手を出さなくても相手ならいるでしょう?」
ひどい言い方だと思った。だが桂は冷静に言う。
「仕事セックスばっかしてるけど、感情なんかない。感情を持って、女を抱きたいと思ったのは彼女だけだ。人妻だから手を出したとか、人妻だから手を出してはいけないとか考えたこともない。」
「……人妻ものには出てるのに?」
「詳しいね。」
「これでもエロ雑誌の編集者ですからね。」
「有能だ。だったらこれも黙ってられるんじゃないの?」
「……でもあなたにとっても、今一番大事な時期じゃない?やっとまともな映画にでれるチャンスが巡ってきたんでしょう?イメージ悪くなるわ。」
「彼女と離れないといけないなら、そんなチャンス捨ててしまえばいい。」
「元々彼女はあなたのものでもないわ。」
自分の責任だ。彼と彼女を会わせたのは自分だし、こんなにどっぷりと彼らがはまりこんでいるとは思ってなかった。
「春川さん。」
「はい。」
「冬山さんのことはどうするんですか?このまま黙っておくんですか?確かにかなり歳は上ですけど、彼が死ぬまで待つんですか?」
「……いいえ。祥吾さんにも隠したいことがあるのでしょうし、私にもそれが出来たということです。」
「ということはこのまま?」
「いつまで出来るかわからない。でももし桂さん……啓治のことが彼に知られるなら……私にも考えがありますから。稚拙ですけどね。」
そういって彼女はコーヒーを飲み、テーブルに置く。
彼女は彼女なりに祥吾に愛想を尽かしていたのだ。それに耐えていただけ。その逃げ道が桂だっただけの話かもしれない。
だとしたら、この関係はそう長く続かない。だいたい、桂が他の女とセックスをしていて彼女は耐えきれるのだろうか。
「理由はわかりました。でもここで会うのはやめて欲しいんです。一応会社の持ち物だし、ラブホテル代わりにされても……。」
「そうですね。それは謝ります。」
「じゃあ、私帰ります。昨日寝てなくて。」
「すいません。校了のあとに寄って貰って。」
「いいんです。上司から様子を見に行けと言われてました。まぁそんなことを言われなくても来るつもりでしたけどね。あぁ、鍵は管理人に預けて貰えばいいんで。あとは精算します。」
席を立ち、彼女は玄関の方へ向かう。それに二人はついて行った。
「あぁ。北川さん。」
思わず桂に声をかけられた。彼女は振り向いてそちらをみる。
「達哉があんたを気に入ってましたよ。よかったら今度、プライベートで会ってやってくれませんか。」
その言葉に彼女の頬が少し赤くなる。
「さすがに口が上手ですよね。AV男優ってみんなあんな感じなんですか?」
「さぁ。どうでしょうね。」
「桂さんも口が上手ね。」
「俺のは役に入ったらってだけですよ。普段は女を口説くこともしない。めんどくさいから。彼女以外はね。」
彼の視線は春川に向けられた。その様子に、ますますため息を付いて北川は出ていく。
ドアが閉まったとたん、桂と春川は視線を合わせる。そして彼は彼女の背中に手を伸ばし、彼女は彼の首に手を伸ばした。激しく唇を重ねて、彼は彼女を壁に押しつけた。
「……昨日沢山したのに。」
「抱き足りない。」
彼は再び彼女の唇を割り、舌を這わせる。そしてシャツの中に手を入れてきた。
「んっ……。」
「抱けば抱くほど欲しくなるな。好きだよ。」
「体だけ?」
「あんただから。」
「本当に息を吐くように甘い言葉を言うのね。」
「全部あんたの前でしか言わない。」
下着のホックをとり、その間から手を入れてくる。胸に触れられる度に吐息が激しくなる。
「今日……仕事は?」
「夕方に撮影以外の仕事があるだけ。あんたは?」
「資料を……集めるの頼まれてる……んっ!」
指先で乳首を摘んできた。それだけでどうにかなりそうだ。
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