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もう一つの恋
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アリスがタクシーを降りて、タクシーの中は北川と達哉の二人っきりになった。仕事とはいえ、一度はデートをした仲だ。北川は隣に座っている彼を意識しないように、せわしなく携帯電話をあたっている。達哉はぼんやりと外を見ていたが、やっと彼女の方を向いた。
「家は近いの?」
すると彼女はその指を止めて、彼の方を向く。
「そうね。駅の近く。」
「女の子だもんね。近い方がいいよ。」
彼はそう言って少し微笑む。
「無事に家に帰ったかしら。」
「え?」
「春川さん。あんな人に言い寄られて転ぶとは思わなかったけど。」
「……それって桂さん?」
その言葉に彼女は少し驚いた表情で彼をみる。
「知ってるの?」
「うん。」
彼女はため息を付くと、携帯をしまって外を見る。流れるのは遅くまであいている居酒屋やキャバクラの看板ばかりだ。
「押され弱いとは思わなかったわ。まぁ、旦那さんにも押されて結婚したようなものだし。」
「そうなんだ。でもいいんじゃない?ずっとレスだったって言ってたし、女でも性欲があるんだろうから。それを満たすのに違う相手を……。」
「いくらレスでもだめよ。何言ってんの?」
その言葉に達哉はむっとしたように言う。
「でもあの二人の様子を見た?超幸せそうだったじゃん。それを止めるの?あんた。」
「それでもだめよ。」
「あんた、何か不倫とかそういうのに恨みでもあるの?」
「……父親がね、まぁ、スーパーで店長してたんだけどそこのパートのおばさんと一度デキてね。それっきり帰ってこない。そのおかげで母親が店長代わりしてたけど結局噂も立てられるし、店長業務も家のこともしてたら激務であたしが大学卒業したと同時に死んだの。」
「……それを恨んで?」
「父親があんな人と一緒にならなかったらっていつでも思うから。」
そんな理由があれば、不倫をするというのに嫌悪感を持つのは当たり前だろう。
「あ、運転手さん。そこで下ろしてください。」
北川はそういって駅前を指定した。
「俺も降りるよ。」
「達哉さんもこの辺なの?」
「うん。」
彼はそういって、彼女と一緒にタクシーを降りた。駅はもうとっくに閉まっていて、もう人は少ない。ホームレスなんかがうろうろしているようだ。
「送るよ。」
「大丈夫。ここで解散しましょう?」
「ううん。一人で帰せないよ。」
モテるわけだ。彼女は納得して、彼とともに歩いていく。
「俺の家もこの近所でね。」
「え?もっと良い所に住んでるんじゃないの?」
「桂さんだって、そんな良い所に住んでるわけじゃないよ。長いからって沢山出てるからって、良い生活をしてるわけじゃない。だいたいAV男優だからって言ったら部屋を借りれないこともあるんだし。」
「何で?」
「たかがAV男優だからだろ?」
「たかが……ね。」
正直彼女もそう思っていた。しかし今日、そしてこの間、達哉とデートをしてその印象はがらりと変わっていく。
思ったよりもストイックだ。アスリートのような体つき、体力、精力、そういったものが必要になってくる。
「どうやって借りたの?」
「元AV男優の愛川航って知ってる?」
「あぁ。少し前に一世風靡した人ね。」
「その人が引退して、マンションとかアパートのオーナーになってる。その人のアパート借りた。」
「そうなの。」
そういって彼女は自分が住んでいるアパートの前にたどり着いた。
「ここ。」
「え?マジで?俺もここなんだけど。」
「何階?」
「二階。」
「マジで?あたしもだけど。」
少し達哉は笑い、彼女をみる。
「だったらどっかですれ違ってるかもね。」
「そうね。」
五階建てのアパート。エレベーターはついているが、それを使わない。二人は階段を上がり、二階にたどり着いた。
「あたしその一番奥なの。」
「そっか。じゃあ、ここで良いかな。」
そういって彼は一つ間を空けて、自分の部屋の前に立つ。
「そうね。」
自分の部屋に行くのをためらった。そして彼も彼女を帰すのをためらっている自分がいる。
「おやすみなさい。」
流されてはいけない。彼女はそう思いながら、自分の部屋へ向かおうとした。そのときだった。
達哉は鍵を開けると、彼女の方へ向かう。そして彼女の二の腕をつかんだ。
「え?」
ドアを開けると、彼女を部屋に押し込んだ。そして彼女を壁に押しつける。少しおびえた表情をしていた。だが彼はあくまで優しい微笑みで、彼女を見下ろす。
「ごめん。こんなに強引に誘うつもりはなかったんだけど。」
「……誘ってたの?」
「うん。」
彼は彼女の髪にふれる。結んでいた髪に手を伸ばした。
「酔ってる?」
「俺、酒飲んでないよ。弱いんだ。」
「……。」
彼はそういって彼女の頬に手をおいた。そして顎に手をおくと、彼女の唇に軽くキスをした。
「……。」
抵抗されなかった。それどころか、彼の体に手を伸ばしてくる。
「彼氏いるんじゃなかったっけ?」
「別れた。」
「そっか。」
「あなたのことずっと気になってたのよ。」
「俺も気になってたよ。」
彼も彼女を少し離すと、もう一度キスをした。今度は舌を入れる。
「んっ……。」
苦しそうに声を上げる彼女。それが可愛いと思った。
「明日香。あんたの飲んだ酒で酔いそうだ。」
「でもここじゃいや。」
「すげぇ可愛い。ね?ベッドルーム。連れて行って良い?」
「わざわざ聞くの?」
「だったらお姫様だっこでもしようか?首に手を回して。されたことない?」
「覚えてないわ。」
よく鍛えられた体に、彼女は手を伸ばす。すると足下がふわっと浮いた。広いベッドルームに連れてこられて、彼は彼女をベッドに下ろした。そしてまたキスを重ねる。
「家は近いの?」
すると彼女はその指を止めて、彼の方を向く。
「そうね。駅の近く。」
「女の子だもんね。近い方がいいよ。」
彼はそう言って少し微笑む。
「無事に家に帰ったかしら。」
「え?」
「春川さん。あんな人に言い寄られて転ぶとは思わなかったけど。」
「……それって桂さん?」
その言葉に彼女は少し驚いた表情で彼をみる。
「知ってるの?」
「うん。」
彼女はため息を付くと、携帯をしまって外を見る。流れるのは遅くまであいている居酒屋やキャバクラの看板ばかりだ。
「押され弱いとは思わなかったわ。まぁ、旦那さんにも押されて結婚したようなものだし。」
「そうなんだ。でもいいんじゃない?ずっとレスだったって言ってたし、女でも性欲があるんだろうから。それを満たすのに違う相手を……。」
「いくらレスでもだめよ。何言ってんの?」
その言葉に達哉はむっとしたように言う。
「でもあの二人の様子を見た?超幸せそうだったじゃん。それを止めるの?あんた。」
「それでもだめよ。」
「あんた、何か不倫とかそういうのに恨みでもあるの?」
「……父親がね、まぁ、スーパーで店長してたんだけどそこのパートのおばさんと一度デキてね。それっきり帰ってこない。そのおかげで母親が店長代わりしてたけど結局噂も立てられるし、店長業務も家のこともしてたら激務であたしが大学卒業したと同時に死んだの。」
「……それを恨んで?」
「父親があんな人と一緒にならなかったらっていつでも思うから。」
そんな理由があれば、不倫をするというのに嫌悪感を持つのは当たり前だろう。
「あ、運転手さん。そこで下ろしてください。」
北川はそういって駅前を指定した。
「俺も降りるよ。」
「達哉さんもこの辺なの?」
「うん。」
彼はそういって、彼女と一緒にタクシーを降りた。駅はもうとっくに閉まっていて、もう人は少ない。ホームレスなんかがうろうろしているようだ。
「送るよ。」
「大丈夫。ここで解散しましょう?」
「ううん。一人で帰せないよ。」
モテるわけだ。彼女は納得して、彼とともに歩いていく。
「俺の家もこの近所でね。」
「え?もっと良い所に住んでるんじゃないの?」
「桂さんだって、そんな良い所に住んでるわけじゃないよ。長いからって沢山出てるからって、良い生活をしてるわけじゃない。だいたいAV男優だからって言ったら部屋を借りれないこともあるんだし。」
「何で?」
「たかがAV男優だからだろ?」
「たかが……ね。」
正直彼女もそう思っていた。しかし今日、そしてこの間、達哉とデートをしてその印象はがらりと変わっていく。
思ったよりもストイックだ。アスリートのような体つき、体力、精力、そういったものが必要になってくる。
「どうやって借りたの?」
「元AV男優の愛川航って知ってる?」
「あぁ。少し前に一世風靡した人ね。」
「その人が引退して、マンションとかアパートのオーナーになってる。その人のアパート借りた。」
「そうなの。」
そういって彼女は自分が住んでいるアパートの前にたどり着いた。
「ここ。」
「え?マジで?俺もここなんだけど。」
「何階?」
「二階。」
「マジで?あたしもだけど。」
少し達哉は笑い、彼女をみる。
「だったらどっかですれ違ってるかもね。」
「そうね。」
五階建てのアパート。エレベーターはついているが、それを使わない。二人は階段を上がり、二階にたどり着いた。
「あたしその一番奥なの。」
「そっか。じゃあ、ここで良いかな。」
そういって彼は一つ間を空けて、自分の部屋の前に立つ。
「そうね。」
自分の部屋に行くのをためらった。そして彼も彼女を帰すのをためらっている自分がいる。
「おやすみなさい。」
流されてはいけない。彼女はそう思いながら、自分の部屋へ向かおうとした。そのときだった。
達哉は鍵を開けると、彼女の方へ向かう。そして彼女の二の腕をつかんだ。
「え?」
ドアを開けると、彼女を部屋に押し込んだ。そして彼女を壁に押しつける。少しおびえた表情をしていた。だが彼はあくまで優しい微笑みで、彼女を見下ろす。
「ごめん。こんなに強引に誘うつもりはなかったんだけど。」
「……誘ってたの?」
「うん。」
彼は彼女の髪にふれる。結んでいた髪に手を伸ばした。
「酔ってる?」
「俺、酒飲んでないよ。弱いんだ。」
「……。」
彼はそういって彼女の頬に手をおいた。そして顎に手をおくと、彼女の唇に軽くキスをした。
「……。」
抵抗されなかった。それどころか、彼の体に手を伸ばしてくる。
「彼氏いるんじゃなかったっけ?」
「別れた。」
「そっか。」
「あなたのことずっと気になってたのよ。」
「俺も気になってたよ。」
彼も彼女を少し離すと、もう一度キスをした。今度は舌を入れる。
「んっ……。」
苦しそうに声を上げる彼女。それが可愛いと思った。
「明日香。あんたの飲んだ酒で酔いそうだ。」
「でもここじゃいや。」
「すげぇ可愛い。ね?ベッドルーム。連れて行って良い?」
「わざわざ聞くの?」
「だったらお姫様だっこでもしようか?首に手を回して。されたことない?」
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